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2021.05.21

50歳手前で「早期退職」に踏み切れた3つの理由|人生後半もうひと仕事できる人の思考・行動法


早期退職やリタイアを考えている人が知っておくべき、早期退職後に身を助ける条件とは(写真:jessie /PIXTA)

早期退職やリタイアを考えている人が知っておくべき、早期退職後に身を助ける条件とは(写真:jessie /PIXTA)

「早期退職」と聞いて、皆様はどんな印象をお持ちになりますか。ネガティブでしょうかポジティブでしょうか。

コロナ以前から、多くの日本企業が、業績が黒字であっても早期退職を募集する傾向がありました。そして、新型コロナウイルスの蔓延で経済の状況は大きく変わり、業績不振を理由とするものも加わって、ますます早期退職の募集が増えています。

実は私自身も、約4年前に50歳を控えて早期退職しています。実はその時点で早期退職するつもりはなかったのですが、ある出来事がきっかけで急きょ募集締め切りギリギリに応募し、退職することになりました。

「人生後半」の生き方を考える時代

その後、早期退職を募集する会社が目立つようになる一方、定年の延長などが取りざたされる中、50代を中心にこれからの働き方や生き方を改めて考えるよう迫られています。(私は「後半戦世代」と呼んでいます)。こうした中、多くの人が今後どんな仕事をして、どうキャリアを築けばいいのか、もっと言えば人生をどう過ごし、終えればいいのかについて迷っている人が多いと感じています。

私は2年前から Facebookグループを作り、早期退職をはじめ、これからの人生の歩み方についての記事を紹介するとともに、私自身の経験や意見を添えることを毎日2回続け、これまでに1400回ほど投稿してきました。そこで本稿ではこれまでの経験を踏まえて、早期退職や人生後半の生き方に関するヒントをみなさんに提供できればと思っています。

前述の通り、実はその時点で早期退職をするつもりはありませんでした。退職をする3カ月前、私は出向先の通信会社で働いており、出向元である広告会社から新しい事業を検討しているので戻ってこないか、と声をかけられて出向元に戻ったところでした。

ところが、ちょうどその時期に出向元の若手社員が自殺したことが報道され、その理由が度重なる残業による過労死ではないか、ということで世間を賑わせることになりました。これが今に続く働き方改革の出発点となったと言っていい出来事です。

事態は日に日に大きく取り上げられるようになり、戻ってやる予定だった新しい事業はとても着手できるような状況ではなくなってしまいました。こうした中、早期退職の募集が始まり、当初は応募しないつもりでしたが、新規事業に着手できない状態の中、ギリギリになって応募することにしたのです。

会社の中で、自分のやることがないまま数カ月から数年を待機して過ごすことも選択肢としてあったかもしれません。在籍していれば、評価が悪かったとしても毎月一定の給料はもらえるわけですから。ただ、自分の場合は間もなく50歳になるという年齢の節目を迎え、この先残された人生の時間の中で自分がどれだけのことをやれるかと考えた時に、場合によっては数年という時間をじっと待つために使うことは考えられない、と思ったのです。

「早めに会社をやめる未来」考えるように

こうして早期退職に突然応募することになったわけですが、「早めに会社をやめる未来」については、実は30代の頃にある人と出会ったことをきっかけに、漠然とながらずっと考えていました。

その方は、私が30代半ばの頃に仕事で関係のあった NGO に入ってきた当時50歳の女性です。20〜30代がほとんどのその組織に50歳の人が入ってくるというのは大変珍しく思い、その理由を尋ねました。

彼女が答えてくれたのは、とても印象的なキャリアプランでした。「自分は外資系の企業で日本支社のトップになり、自分なりに目指すキャリアのゴールを達成したと思うけれど、自分は70歳まで働きたいと思っている。60歳に定年を迎える頃には年齢的に気力や体力が衰えることも考えておかなければならず、それから70歳までの10年では短いのではないかと考えた。そこで50歳からの20年あれば一仕事できるであろうと思って、転職してきた」というのです。

私自身も仕事は大好きですので、自分が働けるうちは働きたいとその頃から思っていました。しかし、会社を早めに辞めて次の仕事に移るという発想は、当時の私にはなかったので、この考え方、キャリアプランには大変魅力を感じました。そこで自分も50歳前後になったら今の仕事を辞めて別の仕事に移り、そこから70歳くらいまでもう一仕事することを、心に決めていたのです。妻にもその話をしていました。

早期退職後の具体的なプランはありませんでしたが、この会社を辞めたら自分は何をして食べていけばいいのだろう、とはことあるごとに考えていました。考えるうちに、自分に何か専門と言えるスキルや知識があることが、仕事を続けていくためのキーになるのでは、と思うようになっていきました。

それまでにも何度か早期退職の募集があり、いつか応募する日が来るかもしれない、とは思っていましたので、募集があるたびに応募条件には関心がありました。募集が始まってから応募を考えるのでは遅いと思い、心の準備、そして次にする仕事の準備がなければ応募は難しい、とも考えていました。

思いがけず「専門性」を身つけることに

心の準備は別として、次の仕事の準備についてどうすればいいか。これも明確にそう意識して始めたことではなかったのですが、当時、私は広告会社の社員としてある携帯電話メーカーを担当しており、主に商品のマーケティングの仕事をしていました。

その仕事を通じて携帯電話や通信の業界に大変興味を引かれ面白いと感じたので、一般的には広告会社の仕事の範囲を超える内容にも積極的に踏み込んでいました。そうしているうちに、顧客企業から正式にそうした業務の発注打診をいただき、通信業界の専門的内容に踏み込んだ業務を正式にすることになったのです。

その頃はちょうど i モードやEZweb といった携帯電話でのインターネットサービスが急激に普及し、スマートフォンが登場する直前までの間のタイミングでしたので、業界全体の変化を日々感じながら仕事をしていました。いよいよスマホの登場が近くなった頃、人事異動となり、希望が叶って通信会社の担当に。ここでも本業とはやや異なる中期経営計画立案のサポートや、新規市場開拓に関する業務を手がけることになりました。

こうして3年ほどが経過したころ通信会社から出向を打診され、お受けしました。当初は通信業界に関するマーケティングの担当をする予定でしたが、ある事情から新規事業であるスタートアップの投資・育成の仕事をすることに。まったく畑違いのため、出向元・出向先両方と相談し、私の出向については明確に期限を定めず、半年ごとに出向契約を更新する形になりました。結果的に5年半出向し、スタートアップに関する知識や経験を積むことができたのです。

このように、私は会社に入って最初10年は広告・マーケティングの仕事を、その後の約10年で携帯電話や通信の仕事を、そして会社員の最後の5年半程をスタートアップに関連した仕事をすることによって、大きくは3つの専門性を持った知識や経験を得ることになりました。今もこの3つが仕事をする際の柱となる知識やスキル、あるいは人のつながりの基礎になっています。

ある1つの業界に関するスキルを持つ人はその業界の人数だけいますが、異なる知識やスキルの掛け合わせとなればそうした人の数はぐっと減ります。さらに3つ4つと組み合わせていくと、ますます希少性が高まっていきます。

もちろん希少性が高くてもニーズがないジャンルのスキルや知識であれば、なかなかそれで仕事を得ることは難しいかもしれません。しかし、幸いにも、通信やスタートアップに関する知識は今もニーズがあるものとして活用できますし、広告やマーケティングに関しては、実務に関わっていた頃とは大きく様変わりしたものの、基本的な部分は今でも通用するところがあって、これも自分にとっては大切な財産になっています。

会社員を続けていく中で、こうした専門性をもった人材になるか、あるいはジェネラリストとなるかについては、自分自身も大変迷った時期がありましたが、結果的には専門性を重視した選択を行ってきたことが、早期退職に踏み切れた理由の1つです。

SNSのつながりが大きな財産に

もう1つ、振り返って自分が早期退職に踏み切れたと思う理由に、 SNS で人とつながりを作れていたことがあります。2008年に日本で初めて発売された iPhone を発売日に行列して購入し、そのiPhone を使ってまだサービス開始から日が浅かった Twitter を始めました。

今では Twitterもかなり様変わりしましたが、その頃はまだ有名人や報道機関などは使っておらず、ユーザーは新しいものへの感度が高い個人が中心でした。Twitterでやりとりをするようになったユーザー同士が実際に顔を合わせることも多かったため、私も多くの人たちと知り合うことになりました。

当時はまったく意識していませんでしたが、今考えると、この当時の人のつながりが早期退職にあたって大きな支えになりました。早期退職に応募したものの、まだ正式な内定がある前に、内々にその話をTwitterがきっかけで知り合った友人にしたところ、早速早期退職後の仕事のオファーをもらったり、独立するにあたってのアドバイスをもらったりしたのです。今でもそうした関係は、多くの人と続いています。

社外での人間関係を作ることは、自分はさほど特別なことと思ってはいなかったのですが、一般的にはそうでもないようです。特に昇進・昇格を目指す場合は、社内の人間関係の方が重要であるために、こうした社外の人間関係を作る時間が相対的に取りにくいせいかもしれません。

独立してからも通用するためには社内の人間関係だけでは十分ではありません。これも結果論ではありますが、スマホの普及とともに SNS で人とのつながりを作れたことも、自分にとっては早期退職を決断する上で大きなプラスになりました。

最後にもう1つ、早期退職に踏み切れた理由と思うことに、仕事に対して偏見、ないしこだわりがないことがあるかもしれない、と感じています。

留年して資格の勉強をしていた時、学費と生活費を稼ぐためにアルバイトをしていたのですが、具体的には家庭教師と清掃の仕事をしていました。これは、なるべく時給換算した時に高い支払いを受けられる仕事と、時給は安くても毎日自宅の近くで時間を有効活用できる仕事を選んだ結果でした。初めての清掃の仕事は、当時住んでいたアパート近くの店の閉店後の掃除でしたが、年中無休で仕事があり、勉強しても効率の悪い深夜の時間に稼ぐことができたので、自分にとっては一石二鳥だったのです。

仕事を通じた経験は時給以上の価値があった

稼ぐという観点でも理にかなっていましたが、今振り返ると、仕事を通じた経験は、もらっていた時給以上の価値がありました。閉店近い時間のお客様の様子、閉店後一緒に働いた社員やアルバイトとの会話など、自分が知らなかった世界で、大変興味深いものでしたし、別な現場では当時まだ少なかった中国人留学生と一緒に働くことになり、これもよい経験でした。

今になって、こうした社会の基礎を支える人々が「エッセンシャルワーカー」と呼ばれ、その存在に少し陽が当たるようになりましたが、その仕事の世界をリアルに知っており、リアリティーをもって語れる人、言語化できる人は、多くないように思います。そして適度に体を動かしながら黙々とこなす清掃の仕事が、私の性に合っていたし、勉強やデスクワークのように頭を動かすことと組み合わせることで、とてもリフレッシュできました。

こうした経験があったので、早期退職後は、清掃のアルバイトなども含めていろいろな仕事を組み合わせて働けばいいし、それによって生活のリズムを作ったり、健康を維持したりすればいい、と思っていましたし、実際にそのとおりになっています。学生の頃には意識していませんでしたが、今は運動不足の解消につながるメリットも感じます。

そして、仕事や稼ぎの量を、アルバイト仕事の量の増減で調整することもできますから、独立して仕事が完全になくなる恐怖から自由になれる、有益な精神安定剤でもあります。ほかの仕事との兼ね合いで働き先も何度か変えていますが、私の仕事全体の組み立て方にあったシフトを認めてもらえる会社で、今でも清掃のアルバイトを続けています。

自分に見えていない世界を知る機会にもなり、社会の成り立ちをより深く知るという点でも大変興味深く、また、一緒に働く仕事仲間との会話も新鮮で楽しく、さまざまな人の人生を垣間見させてもらう機会にもなっています。

自分が早期退職できたのは、振り返ってみると、偶然に以下の3つの条件がそろったからでした。1)早いうちから早期退職する可能性を考え、社外でも通用する専門的なスキルや知識を身につけていたこと、2)社内や専門分野以外にもSNSを通じて幅広く人のつながりを得ていたこと、3)やる仕事についてこだわりや偏見にとらわれずにいられたこと。これから早期退職などで新たなステップを踏もうとしている方は、こうした条件を意識的にクリアしておくことをおすすめします。

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