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2021.03.24

「老ける」ストレスと「若返る」ストレスの差とは|「金銭的なストレス」が最も老けるという研究も


メンタルの負荷には「老けるストレス」と「若返るストレス」の2種類があり、なかでも悪影響が大きかったのは「金銭的なストレス」のようです(写真:buritora/PIXTA)

メンタルの負荷には「老けるストレス」と「若返るストレス」の2種類があり、なかでも悪影響が大きかったのは「金銭的なストレス」のようです(写真:buritora/PIXTA)

心身を若く健康に保つには、運動などで適度な「負荷」をかけることが有効ですが、メンタルにもある種の「ストレス」を与えることも有効だといいます。サイエンスライター・鈴木祐氏に、最新のデータをもとにした「老けるストレス」と「若返るストレス」の違い、体を若返らせる「快いストレス」の与え方などを解説してもらいました。

※本稿は『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』(かんき出版)より一部抜粋・編集したものです。

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ストレスはないに越したことはない?

健康と若返りには、「苦痛」と「回復」のサイクルが必須です。

自分の心と体へ意図的にダメージを与え、心身が受けたダメージを徹底的に癒やす。この2つのフェーズを繰り返すことによって、生まれながらに持つ心身の若返りシステムが働き出すことがわかっています。

例えば、体に負荷をかける「運動」や、野菜に含まれるポリフェノールなどの「毒物」が健康に作用するのも同じ原理です。

このように、苦痛と回復を与えることで効果を得られるのは肉体だけではありません。メンタルにストレスを与えることも有効です。

が、そう言われて、抵抗感を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。

「ストレス社会」と呼ばれる現代において、いま以上の負荷をメンタルにかけたくないと感じるのは自然な話。仕事で疲れ切ったあとは、ただただ心身を休めたいと思う人が大半でしょう。

まず押さえておきたいのは、メンタルの負荷には「老けるストレス」と「若返るストレス」の2種類がある点です。

老けるストレス:人間関係の不満や人生への不安などが頭のなかで繰り返される慢性的なメンタルの負荷

若返るストレス:何らかの目標に向かって努力しているときに味わう精神的な緊張感

最初の「老けるストレス」は、つねにあなたの心につきまとう不安や怒りなどの感情を意味します。嫌いな上司と顔を合わせなければならなかったり、仕事場が不安定で将来が見えなかったり、なにも楽しいことがなく日々を過ごしていたりと、しつこく心をさいなんでくるタイプの精神的な苦痛です。

慢性的なストレスは私たちの心を痛めつけ、あなたの若さを少しずつ削っていきます。

悪影響が最も大きいのは「金銭的なストレス」

ルーヴァン・カトリック大学などが10年をかけて200人の男女を撮影した研究では、日常的なストレスのレベルが高い人は見た目も老けている傾向があり、なかでも悪影響が大きかったのは「金銭的なストレス」でした。ローンの支払いや安月給に悩む人ほど、実年齢よりも老けた印象を与えやすかったのです。

ストレスが老化をもたらすメカニズムは複雑ですが、最も大きいのはホルモンバランスの変化です。

メンタルの悪化はコルチゾールというホルモンの量を増やし、これが引き金となって脳から神経ペプチドの一種である「サブスタンスP」を吐き出します。この物質は体内に炎症を起こす働きがあり、とろ火で煮込むかのように肌や臓器をじわじわと攻撃。やがて全身の機能が低下を始め、高血糖、肥満、アレルギーなどのリスク増加につながります。

若々しい見た目を維持するためにも、悪性のストレスには気を配らねばなりません。

では、「若返るストレス」とはどんなものでしょう?

それは、あなたにとって役に立つ目標に向かってエネルギーを注いでいるときに味わう精神的な不快感のことです。マラソンの完走、ダイエット、長生き、起業など、本人が「これは大事だ」と心から思えるなら、目標の種類はなんでも構いません。このタイプのストレスは、あなたの脳にほどよい刺激を与え、前回紹介した心身の若返りシステムである「ホルミシス」効果を発動させてくれます。

というと、「楽しむだけではダメなのか?」と思う人もいるでしょう。せっかく好きな目標に向かってエネルギーを注ぐのだから、ひたすら楽しみつつゴールに向かいたいと感じる人は少なくないはずです。

しかし、残念ながらこの考え方では根本的に達成できません。人間の脳のシステムは、本気でゴールに向かう者に不快感を与えるようにデザインされているからです。

前回の記事はこちら ※外部サイトに遷移します

一流プレイヤーへの調査からわかったこと

心理学者のアンダース・エリクソンは、スポーツや音楽の世界で成果をあげた一流プレイヤーに調査を行い、こう結論づけました。

「物事を上達させるためには快適な場所から出なければならない。いくら得意な曲を演奏しても練習にはならないし、すでに習熟したテクニックでプログラムを書いてもスキルは改善しない。上達のためには最大限の努力が必要であり、それゆえにひどい不愉快さをもたらす」

人類の心と体は、できるだけエネルギーを節約するように進化してきました。いったん生存に必要なスキルが身に付いたら、あとはその状態を維持したほうがカロリーを使わずに済み、それだけ生き延びる確率も上がるからです。新たなスキルの獲得は、周囲の状況が変わったときにあらためて考えればいいことでした。

そのため人間の脳には、新たな目標に向かう際に、必ず苦痛をもたらすようなメカニズムが備わりました。「このままでいたほうがいいよ」と心身にメッセージを送り、現状維持をうながすシステムです。

要するに、真の上達はつねに「苦痛」とワンセット。新たに数学の公式を学ぶとき、未知の演奏テクニックを練習するとき、起業のアイデアを絞り出すときなどに、なんの不快さも感じないようであれば、それは脳が現状維持の方向に向かっているサインと判断できます。

心身の若さと精神的な苦痛の相関は、スーパーエイジャー研究でも明らかです。スーパーエイジャーとは、若い人と同じレベルの脳と肉体を持ち続ける高齢者のことで、80代にもかかわらず中高年よりも脳が大きかったり、90代になっても見た目が実年齢より20歳は若かったりと、驚くような事例が過去にいくつも報告されています。

ノースイースタン大学のリサ・フェルドマン・バレットがスーパーエイジャーの脳とライフスタイルを調べた研究では、彼らの脳は大脳皮質だけでなく前帯状皮質や島皮質も発達していることがわかりました。

これらのエリアは脳内で情報のやり取りを行うメインターミナルとして働くのですが、面白いことに活動量が増すごとに「疲労」「挫折感」「イライラ」といったネガティブな気分を発生させる特徴があります。すなわち多くのスーパーエイジャーは、日常的になんらかの難しい活動に打ち込み、不愉快さを味わいつつ脳を成長させていたわけです。

彼らが体験する「不快」の内容はさまざまで、ある者は新たなスポーツを始め、またある者は80歳から語学学習に手をつけ、なかには90歳でキリマンジャロの登頂を目指す者も存在しました。

このデータをふまえて、バレットは、スーパーエイジャーのように若い心身を保つには「定期的に痛みを味わうしかない」と断言しています。

正しいストレス解消法で「回復」を

メンタルに快いストレスを与えた後は、上手な休憩によって「回復」させるフェーズが大切です。

ですが、アメリカ心理学会(APA)は、公式声明のなかで「現代人は間違ったストレス解消法を使っていることが多い」との見解を発表しています。多くの人はストレス解消のために不健康な手段を選び、正しく休めていないというのです。

ソファで寝転ぶ、お菓子を食べる、タバコを吸う……。

どれも一般的な休憩法ですが、アメリカ心理学会は、これらの行動を推奨していません。

完全に無意味だとは言わないものの、休憩法としては限定的な効果しか得られないからです。

産業組織心理学者のキャリー・クーパーは、ストレス対策に最も必要なのは「コントロール感」だと言います。「私にはいま明確な目標があり、これを達成するには何をすべきかわかっている」と心から思える状態のことです。

もしあなたが上司に怒られたとしても、「自分が予算の確認を怠ったのが原因だ」といったように明確な理由がわかれば、さほどストレスはたまりません。次からは予算確認を忘れなければいいだけだからです。

しかし、このとき上司に怒られた理由がわからなければどうでしょう? 「なんで急に怒られたんだ?」や「上司に嫌われているのか?」などの疑念にとらわれ、いつまでもストレスは消えないはずです。

だらだらテレビを見て休んでいたら、そのあいだは楽しかったはずなのに寝床に入ったら虚しさに襲われた。買い物で好きな商品を購入して気分が上がったが、すぐ元に戻ってしまった。

そんな経験は誰にでもあるでしょう。テレビや買い物は気楽で楽しい行為ですが、そこには他人から与えられたものを消費する受け身の姿勢しかないため、前向きな気持ちが生まれにくくなります。そのぶんだけ、休憩としての効果も低くなってしまうのです。

コントロール感を得やすい休憩法とは?

コントロール感を得やすい休憩法には、次のようなものがあります

・新たなスキルの学習:外国語の学習や楽器の練習など未体験の技術を学ぶ

・友人との交流:親しい仲間と日常の問題やストレスについて語り合う

・他者への親切:ボランティアやコミュニティ活動、友人へのアドバイスなど

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知らない知識や技術を学び、友人と意見を交わし、他人のために心を配る。いずれの行為も積極性が強く、おかげで私たちのコントロール感は上がります。結果としてポジティブな感情が高まり、ストレスから回復しやすくなるのです。

言い換えれば、本当に効果的な休憩は、すべて「攻め」の姿勢を持っています。「やることがないからテレビを見よう」「暇だから買い物に行こう」といった受け身の行動ではなく「明日は昼から楽器の練習」や「友人に悩みを相談する」のように明確な意図を持って休憩をデザインしていく攻めの姿勢が、あなたの脳にポジティブな刺激を与えるのです。

ぜひ、「快いストレス」と「積極的な休憩」を組み合わせ、健康と若返りを実現させましょう。

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提供元:「老ける」ストレスと「若返る」ストレスの差とは|東洋経済オンライン

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