2020.12.22
ふるさと納税で「損する人」「トクする人」の差|絶対に押さえておきたい4つのポイント
ふるさと納税を利用するときの4つの注意すべき点を解説していきます(写真:artswai/PIXTA)
毎年恒例のふるさと納税の締め切りが12月末と迫ってきました。ただ、内容をよく知らずに慌てて活用すると大してトクにならなかったり、逆に損してしまうことも。
今年初めて活用する人にもわかるよう、昨年の記事から最新の状況に更新した、ふるさと納税で気をつけるべきポイントを『自分ですらすらできる確定申告の書き方 令和3年3月15日締切分』より解説します。
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サラリーマンや自営業者などの節税策として人気の「ふるさと納税」。自治体への支援ができ、さらに自己負担2000円で地方のおコメや肉、高価なフルーツ、カニなどの特産品が手に入ります。
やり方自体はシンプルで、「ふるさとチョイス」「さとふる」「楽天ふるさと納税」といった、さまざまなふるさと納税のサイトから通販商品を買うのと同じような感覚でできるようになっています。
「納税」という言葉がついていますが、要は地方自治体への寄附であり、「寄附金控除」という制度を活用することになります。例えば、ふるさと納税を1万円した場合には、自己負担分2000円を除いた8000円を、自分が支払うべき税金から引いてもらえるようになるのです。
一方で、多くの自治体は、ふるさと納税の返礼品を用意しています。つまり、①税金が引かれて、②さらに自己負担額2000円で特産品ももらえる、というのがふるさと納税が人気となった理由なのです。
また、返礼品目的だけではなく、ふるさと納税は、豪雨災害などの被害を受けた自治体に対しても行うことができます。各ふるさと納税サイトには、災害支援寄附の専用ページがありますので、利用するとよいでしょう。
ふるさと納税を利用するときに、注意したいこと
ただし、ふるさと納税の利用にあたっては4つの注意点があります。
注意点1――ふるさと納税をしてもメリットのないケースがある
注意点の1つ目は、ふるさと納税のメリットを受けるためには、当たり前のようですが、自分が支払う予定の税金がなければならないということです。自分の税金が「0」なら、ふるさと納税のメリット分を税金から引くことができません。ふるさと納税の恩恵は、自分が支払う税金の範囲内になることに注意しましょう。
注意点2――寄附しすぎると自己負担額がどんどん増えていくこともある
注意点の2つ目は、ふるさと納税が一定額を超えると、自己負担額が2000円では済まなくなることです。例えば、年収が300万円の独身・共働き世帯の方は、2万8000円を超えて寄附をすると、自己負担額がどんどん増えていきます。
この一定額は、家族構成や自分の所得によって異なります。気になる方は、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」や各ふるさと納税サイトなどで、控除の上限額を確認しておきましょう。
注意点3――ワンストップ特例の申請か確定申告が必要になる
注意点の3つ目は、ふるさと納税をしただけでは、節税のメリットは得られないということです。「ワンストップ特例」の申請をするか、確定申告をする必要があります。
ワンストップ特例は、ふるさと納税をした自治体に対して「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出すれば、確定申告をしなくてすむようになるという制度です。この手続きをすることで、寄附した翌年に始まる住民税から自己負担分2000円を除いた金額が減額され、会社勤めの方であれば、毎月、給料から引かれる住民税が低くなります。
実際は寄附をした際に、自治体から申請書と返信用封筒が送ってもらえるなど、申請書の提出方法はシンプルな場合がほとんどです。確定申告をする手間を考えれば、ぜひ利用したい制度といえます。
ワンストップ特例を利用するには?
ただし、ワンストップ特例を利用できるのは次の(1)~(3)の条件を満たした人に限られます。
条件(1) 確定申告をする必要がない
ワンストップ特例は、会社勤めの方(給与所得者)または年金所得者で、確定申告をする必要のない方が対象です。したがって、例えば確定申告をして医療費控除や住宅ローン控除などを受ける方、事業を営んでいる方(事業所得者)などはこの特例を利用することはできません。
条件(2) 納税先は5自治体以内
ワンストップ特例は、5自治体以内にふるさと納税をした場合に認められます。5自治体を超えてふるさと納税を行った場合には、確定申告が必要になりますのでご注意ください。なお、同じ自治体に2回寄附した場合でも1自治体としてカウントされます。
条件(3) 期限内にワンストップ特例申請書の提出が必要
ワンストップ特例を受けるためには、自治体への申請が必要です。2020年分の申請書は各自治体宛てに2021年1月10日必着になっていますので、忘れずに送っておきましょう。万が一、間に合わなかったときは、確定申告を行えば大丈夫です。
注意点4――ワンストップ特例は確定申告をすると無効になる
注意点の4つ目は、ワンストップ特例を申請していても、確定申告をすると、その申請が無効になってしまうことです。確定申告をするときは、必ずふるさと納税の内容を含めるようにしましょう。そうしておかないと、2000円どころか節税メリットをまったく得られない結果になってしまいます。
ふるさと納税の仕組み
最後に、ふるさと納税の仕組みをより押さえておきたい人のために、仕組みを簡単に説明しておきましょう。最初に説明したように、ふるさと納税では、1万円を寄附した場合には、自己負担分2000円を引いた8000円を、自分が支払うべき税金から引いてもらえるようになります。
所得税では、確定申告をすると、下図の算式で、「寄附金控除額」が計算されます。
ふるさと納税の場合は、これに加えて、住民税で、下記の算式で控除額が計算されます。この金額が支払う予定の住民税から、引かれることになります。
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ふるさと納税の控除額=下記(1)と(2)の合計額
(1)基本分 (寄附金[総所得金額等の30%が限度]-2000円)×10%
(2)特例分 (寄附金-2000円)×(90%-その人の所得税の税率[限界税率])※個人住民税所得割額の2割が限度
所得税と住民税の計算式を見ると、寄附金額から2000円を引いているのがおわかりいただけると思います。これが、いわゆる自己負担額にあたるものです。
ふるさと納税は、賢く使えば自治体へ貢献でき、かつ節税メリットの大きい制度です。ですが慣れない税金計算などがありますので、本記事で気をつけるべきポイントを押さえたうえで、ふるさと納税サイトを活用しながら検討するとよいでしょう。
(構成:前窪明子)
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提供元:ふるさと納税で「損する人」「トクする人」の差|東洋経済オンライン