2020.10.07
気になる胸の張り!正常な張りと病気の張りの違いとは?
“胸の張り”が気になった経験はありませんか? 痛みに悩んだり、何か悪い病気だったらどうしようと不安になることもありますよね。今回は「正常な胸の張り」と「ちょっと心配な胸の張り」の違いについてご紹介します。
監修:医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック院長 清水なほみ先生
胸の張りの原因(1)生理・妊娠・出産などのタイミングで起きる胸の張り
胸の張りには大きく2つの原因があります。1つは生理・妊娠・出産などのタイミングで起きるもので、医学的に心配のない「正常な胸の張り」です。もう1つは、何かの病気があって起きる「注意が必要な胸の張り」です。まず、正常な胸の張りから説明します。
● 生理前の胸の張り
女性にとって最も身近な“胸の張り”といえば、生理前の胸の張りでしょう。毎月生理が近づいてくると胸が張って硬くなり、チクチクとした痛みや腫れたような痛み、違和感などを抱く人がいます。こうした症状は女性ホルモンの働きによるものです。 女性ホルモンには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類があります。そのうち胸の張りに関係するのは黄体ホルモン。黄体ホルモンは“妊娠のホルモン”ともいわれます。排卵後に子宮を妊娠しやすい状態にしたり、基礎体温を上げたり、乳腺の発達を促進したりといった働きをします。
このとき胸に張りや痛みを感じるのです。黄体ホルモンの放出が終わると生理が始まり、同時に胸の張りも和らぎます。
● 妊娠期の胸の張り
妊娠すると分娩直前まで黄体ホルモンが多量に分泌され続けます。卵胞ホルモンも分娩前まで増え続けますが、妊娠前半は黄体ホルモンが優位になるので、胸の張りや痛みを感じる人が多いようです。個人差があって、ほとんど張りや痛みを感じない人もいます。
胸が張りすぎて乳首が痛かったり、皮膚の張りが強すぎてかゆみを伴うこともあります。ふだんはあまり気にならないのに、急に胸の張りが強く感じられる場合、妊娠の可能性も考えたほうがよいでしょう。
生理前の胸の張りは生理予定日の1週間~10日前くらいから現れます。胸の張りが強く、生理が遅れたり2週間以上症状が続く場合は妊娠反応を調べることをおすすめします。
● 成長期の胸の張り
第二次成長期の女子は、女性ホルモンの分泌が増えて少しずつ身体が大人の女性に近づいていきます。胸が大きくなるタイミングで胸の張りや痛みを感じることが多いでしょう。これは成長に伴う胸の張りなので心配いりません。
胸の張りの原因(2)病気で起きる胸の張り
次に、気をつけたほうがいい胸の張りについてご紹介します。
● 乳腺症
胸が張る病気でポピュラーなのは「乳腺症」です。乳腺症は正常とは違った変化が乳腺に見られるものをいいます。
乳腺症の代表的な症状は、
・胸全体が張ったように硬くなる
・鈍い痛み
・乳頭から透明な分泌液が出る(血が混じることもある)
原因はホルモン分泌の乱れ、特に卵胞ホルモンの過剰分泌だと考えられています。30~40代の女性に多く、月経周期が不規則な女性や出産未経験の女性がなりやすい傾向があります。 原則的に治療の必要はありませんが、他の病気と見分けるため医師に診察してもらうといいでしょう。
● 乳腺線維腺腫
胸にできる良性の腫瘍です。10~30代半ばの女性に多く見られます。原因ははっきり分かっていません。
・胸が張った感じ
・胸の片方に、丸くて硬いしこりが1個ある
・しこりには痛みがない、指で押すとコリコリ動く
しこりが小さい場合は治療しないことがほとんどです。自然に消えることも少なくありません。経過観察をして、しこりが大きくなってくるようだと手術で切除します。手術そのものは通院で済む簡単なものです。がん化する確率はごく稀だといわれています。
● 乳腺炎
乳腺とその周辺に炎症が起きるもの。主に授乳中の女性がなる病気で、原因は乳汁のうっ滞や乳頭からの細菌感染です。
授乳時の痛み(授乳をやめると乳汁がたまって、痛みが強くなる)
胸の発赤や発熱
乳頭から膿がでることがある
治療は、単なるうっ滞の場合はマッサージをしたりこまめな授乳を行って、乳腺のつまりをとります。熱を持っていたり膿がたまっている場合は抗生物質を使います。乳汁が溜まっているときは、胸のマッサージや吸引を行います。それでも症状が改善しない場合は、切開して乳腺の詰まりを取り除くこともあります。
● 高プロラクチン血症
出産していないのにプロラクチン(乳汁を出すホルモン)が分泌され、母乳が出る病気です。特定の薬(※精神や神経症状に効果を持つ薬の一部、降圧剤の一部、胃腸薬の一部)を常用している人や、脳の下垂体に腫瘍がある人に見られます。
出産していないのに母乳が出る 月経不順や無月経 常用している薬が原因の場合は、薬を変えたり量を調整したりします。下垂体腫瘍が原因の場合は、手術で切除したり薬でプロラクチン値を抑えます。
● 乳がん
胸の張り以外に次のような症状がある場合は、乳がんの可能性もあるので、すみやかに医師の診察を受けましょう。乳腺外科、乳腺科が専門です。
・硬くてゴツゴツしたしこりがある
・左右の胸の大きさが違ってきた
・胸にへこみや引きつれがある
・乳頭から血の混じった分泌液が出る
・乳頭や乳輪にただれがある
・乳首が陥没してきた
・皮ふの毛穴が部分的に目立ってきた
・わきの下に腫れやしこりを感じる
乳がんになりやすい人には一定の特徴があるといわれています。以下の項目に該当する人はとくに気をつけて、セルフチェックを積極的に行いましょう。
ただし該当する人はあくまでも発がん率が高いというだけで、必ずしも乳がんになるわけではありません。逆に1つも該当しないからといって、乳がんにならないわけではありませんのでご注意ください。
・12歳以前に初経を迎えた
・出産や授乳の経験がない
・動物性脂肪やたんぱく質の多い食事を日常的にしている
・血縁者(母親、姉妹、おば)に乳がんにかかった人がいる
・乳腺の病気にかかったことがある
・良性のしこりがくり返しできる
胸が張って痛いときの対処法
では最後に、生理前に胸が張って痛いときの対処法を紹介します。
ホルモンバランスが乱れると、胸の張りや痛みも増しやすくなります。一番の対策は規則正しい生活を心がけることです。夜更かしや暴飲暴食、極端なダイエットなどは心身への負担になります。
体の冷えも良くありません。食事はなるべく温かいものを摂りましょう。ストレッチやマッサージ、運動、入浴などで血流をよくするのも効果的です。生理前は体調がデリケートですし、胸がゆれると痛いので、ヨガやウォーキングなどあまり激しくない運動がおすすめです。
また、ストレスが強いとホルモンバランスが乱れやすいのでリラックスを心がけるのも有効です。精神を鎮めるラベンダーや、緊張を和らげるイランイラン、精神的ダメージを解消してくれるカモミールなどのアロマも試してみてください。
食事では脂肪やたんぱく質の多い肉類、乳製品は乳腺を刺激するので控えめに。カフェインも血管を刺激してしまうので、摂りすぎないほうがいいでしょう。逆に野菜や果物、海藻類に含まれるビタミンやミネラルは、ホルモンバランスを整えてくれます。中でも、ビタミンB6やカルシウム、マグネシウムは特に良いといわれています。次の食品がおすすめです。
・カツオ、サケなどの魚類
・ゴマ、アーモンドなどのナッツ類
・ひじき、わかめなどの海藻類
・バナナ
・玄米
・大豆製品
どうしても胸の痛みが強いときは、ノンワイヤーのブラジャーやワンサイズ大きな下着をつけると刺激が減ります。カップが深めで、肌に触れる内側の生地が柔らかく、胸全体を包み込むデザインのものがオススメ。
自分でケアしても良くならないときは、医療機関に相談をしましょう。ピルや漢方薬などで症状が改善することがあります。
例えば低用量ピルを服用すると、その間の排卵がストップします。黄体ホルモンの分泌が抑えられるので胸の張りや痛みなどが起こりにくくなります。ピルは病院でしか処方してもらえません。 また、漢方薬で症状を和らげることもできます。漢方薬は薬局でも売っていますが、種類が多く、それぞれの体質や体調によって合う・合わないがあります。自己判断で飲むのではなく、医師または薬剤師に相談しましょう。
【監修】清水なほみ先生 NAHOMI SHIMIZU
医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック院長
日本産科婦人科学会専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
全ての女性が「自分らしい輝きを取り戻す」場として、横浜に婦人科クリニックを開業。婦人科医としての診療のみにとどまらず、漢方やキネシオロジーなどの代替医療も総合的に活用しながら診療にあたる。また、トランスフォーメーショナルコーチ®のテクニックをフルに活用し、ブログでの情報発信やワークショップ、診療内のカウンセリング等で「本来の自分の姿に戻ることで健康を取り戻す」医療を展開している。
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