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2020.08.13

「最安値でトクする」があまりに難しくなった訳| リセールも普及してますます複雑に


私たちが「最安値を変えない」のはなぜなのでしょうか(写真:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

私たちが「最安値を変えない」のはなぜなのでしょうか(写真:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「金」が史上最高値を更新したという。コロナ不安の中、金価格は上昇を続け、「去年買っておけば」と悔しがっている個人投資家も多いのではないか。

しかし、不思議に金は価格が上がれば欲しくなる。安値更新中のときよりもだ。本来は安いタイミングに買うのがベストチョイスのはずだが、人間の感情はなかなか複雑で、特に”高級品”の買い方は、普段使う日常品とは異なる。それは、価格と価値が一致しているととらえてしまうからだ。

以前、「サイゼリヤ『1円値上げ』が与える想定外の衝撃」という記事の中で、「ブランド品や不動産などの場合、一見同じグレードに見えるなら、安いものより高いほうがなぜか安心する」「買おうと思っているマンションのうち、最安を選ぶのにはやや勇気がいる。基準となる価格より、ちょっと高い方が安心するから不思議な心理だ」と書いたところ、これには同意しかねるという反応を頂戴した。購入するなら安いほうがいいに決まっている、理屈が合わないと感じられたのだと思う。

「サイゼリヤ『1円値上げ』が与える想定外の衝撃」 ※外部サイトに遷移します

その理由は端折ったため、説明不足だったと反省した。どんなものであれ、払うお金が少ないにこしたことはない。しかし、一部のものに関してはなぜ、高いほうを選びたくなるのか。その消費者心理について、改めて取り上げてみよう。

松・竹・梅で、最安の「梅」が選べないのはなぜか

行動経済学でおなじみの「松竹梅の法則」はご存じだろう。定食屋に入ったところ、梅980円、竹1200円のセットがあった。普段なら安い梅を選ぶ人が、そこにもう一段上の松1500円定食が並んでいると、つい真ん中の竹1200円にしてしまうという消費者心理をいう。価格が異なる選択肢が3つあると、最安を選ぶのはケチな気がしてできず、ちょうどいい落としどころとして真ん中にする。それが、普段払っている食事代よりも高い金額であったとしてもだ。

これは「極端の回避性」と言われ、最安・最高のどちらかに位置するものを選んだ結果ソンをしたらどうしよう、と思い、避けようとする行動だ。最高のものは、その金額を出すほど本当に価値があるか測りかねるし、最安のほうは実はかなりしょぼいかもしれない。人はとにかく、ソンすることが嫌で仕方ない。そのため、まあ無難だろうと思われる真ん中をとるわけだ。

高額かつ、不動産や高級品など資産価値を有するものの場合、よりこの心理は強くなるだろう。つけられた価格は物件自体の価値を裏付けており、安いということは価値が低いとみなされるからだ。

特に新築マンションの場合、最も安い値段のものを選ぶのは、「最も価値が低いものを購入する」ことであるとも感じられ、なかなか踏み切れない。

マンションの売り出しチラシで「価格は6770万円~」とあればこれが最低価格だろうが、このいちばん安い物件を買おうと考える人は少ないのではないか。また、「最多価格帯」という表記もあるが、これがまさに「真ん中の金額です」と言われているようで、その真ん中ゾーンのうちちょっとだけ上だといいなと思う。

不動産なんて買い物は多くの人にとって一生に一度だ。大根やモヤシを買うなら失敗してもいいが、数千万の買い物をするにはそうもいかない。せっかくローンを組む以上は、「買える限りで、価値が高いもの=安いものよりは(少しでも価値のある)高いもの」を選ぼうとする。「安さは正義だ」と言いたいが、すべてがそうとは言い切れない。

商品によっては、一定以上の高額で買ってもらうための「新・松竹梅の法則」という手法もありそうだ。勘のいい方ならおわかりだろう。価格が価値とイコールと思っている購入者に対し、高いほうの値段が適価だと納得させるために、かなり安く値付けされた“おとり”をあえて作る手法だ。

その場合、おとりである「梅」ランクのものは、価格が安いだけでなく機能やグレードをかなり見劣りするようにしておく。すると、その上の「竹」の値段がそこそこ高いとしても、消費者は「それだけの価値がある」と納得しやすい。安いものはそれなり、いいものを買うにはこのくらいの金額を払うべきだよね、と感じてしまう。

万人が価格を絶対的にジャッジできる能力を備えているわけではなく、判断には“基準”が必要だ。いや、基準がなければ「高い」「安い」「妥当」の判断すらおぼつかない。こう考えれば、“適正価格”とはたぶんに錯覚だといえよう。

高級品に掘り出し物なし?

資産価値があるものを買う際、高いほうを選びたくなるというのは、いつかそれを売却したときに、多くのキャッシュを手にしたいという面もあるだろう。理屈で言えば、価値は同じで価格が安い掘り出し物を見つければ、それだけ売却益が出るはずだ。だが、なかなかそういう決断も難しい。

例えば、相場よりも安い不動産を見つけたとして、思い浮かぶのは「なんでこんなに安いのか。どこかに瑕疵があるのでは」だろう。相場より安いと不安になることはあっても、「やった、激安物件を見つけた、即買い決定!」という気にはなりにくい。

高級ブランド品などもそうだ。筆者は定点観測的にブランド質屋を覗くのだが、貴金属でも時計でも、同じシリーズやグレードのもので必ず価格差がある。この差について店員に聞くと、こまごまとその理由を教えてくれる。販売者ではない素人には気づかない違いがあり、それはそのあとのリセール価格にも響いてくる。だったら、高いほうを買った方が安心だと思ってしまう。

一般消費者が参加するネットオークションならどうか。趣味のものを売買している利用者に聞いたところ、最初は安い値段で始まったとしても、不思議と妥当な落札価格に落ち着くそうだ。今はネットで簡単に価格が調べられるのもあり、出品者も入札者もそれをよく承知している。「ネットで掘り出し物が見つかった」というのも、今後はより難しくなっていきそうだ。

「よい安さとは、理由が納得できる安さである」とは、ある流通の専門家に聞いた言葉だ。相場に比べてなぜ安いのか?と売り手に質問して、その理由が腑に落ちるなら買ってもいい。さらに言えば、それが資産価値を大きく損なわない要因だとすれば、それは”掘り出し物”と言えるのだろう。

日常品でも高いものをあえて買う人たちの理屈

コロナ禍で収入が減ったという声は多く、世の中は節約モードだ。しかし、高級品や不動産でもない日常利用する品物でも、あえて高く買う人々がいる。

フリマアプリ「メルカリ」が今年6月に出したレポートによると、「フリマアプリ出品経験者は、新品ジーンズの購入を検討する際、フリマアプリで高く・早く売れる商品ならば、安価な新品より高価な新品を選好する傾向」「フリマアプリ出品経験者は、新品タブレット端末の購入を検討する際、フリマアプリで高く売れる商品ならば、安価な新品より高価な新品を選好する傾向」があるという。

例えば、ジーンズの場合。新品の販売価格5000円と1万円の商品があったとすると、単純に節約を考えれば安い5000円を選ぶだろう。しかし、フリマアプリ利用者の場合、5000円のジーンズがその後1500円で売却ができ、1万円のジーンズは5000円で売却が可能だと想定できれば、より高額な1万円のほうを買う。前者は払った金額の30%(1500円)を取り戻したことになるが、後者なら価格の半額にあたる5000円を手にできる。フリマアプリ内の売れ筋や、売却までの日数が早いかということもポイントだ。

同様に、新品で1万円と3万円のタブレット端末があった場合、その後4000円で売却できる前者より、1万8000円で売れる後者を購入する。売却前提で物を買うとするなら、より高い=価値や人気が高いものを買うほうが、手にできる売上金も多くなり節約面でもクレバーな選択といえるわけだ。

節約のためには1円でも安いものを買うべしという常識は、もはや令和では通用しないのか。安く買って一時の出費を抑えることより、高いけれど売れるものを選んでうまくリセールするほうが、これからの勝ち組になるのだろうか。

「所有から使用へ」の移行は、コロナで加速度を増した。家具や家電はライフスタイルに合わせて時限的に借りてもよく、所有するなら一定以上の価値がある高額品を買う。それも一つの家計防衛スタイルといっていいだろう。

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提供元:「最安値でトクする」があまりに難しくなった訳|東洋経済オンライン

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