2020.03.24
まだ間に合う!会社員が確定申告で「得」する策 |何が控除されるか知ることが節税対策の一歩
年末調整では扱ってもらえない控除項目があるので、会社員でも確定申告でお金が返ってくる場合があります(freeangle/PIXTA)
税金といえば、「たくさん取られている」「できれば払いたくない」と思っている人は多いでしょう。国や自治体は集めた税金で道路を整備したり、国民や住民にさまざまなサービスを提供したりしていますから、私たちには法律で決められた税金を納める義務があります。しかし、余分に支払うことは避けたいものです。
金融教育の専門家である西村隆男氏は「サラリーマンでも、税金で損しないためには確定申告すべき」といいます。今回は同氏の著書、『経済的自由への道は、世界のお金の授業が教えてくれる―人生の選択肢が広がるパーソナルファイナンスの教科書―』から一部を抜粋・再構成して、サラリーマンが税金と賢く付き合うためのヒントをお伝えします。今年の確定申告の期限は4月16日に延びています。
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控除項目を知ることが節税の第一歩
会社などの法人の場合、将来発生する法人税に対してあらかじめ計画したり合法的な節税対策をしたりするタクスプランニングは一般的です。個人のマネーに関しても、税金についてしっかり調べて賢く計画すれば、損を回避できます。
個人が納める税金には、所得税や消費税、住民税などがありますが、節税効果が高いのは所得税です。「所得あるところに税あり」と言われるほど、収入があればその収入に必ず所得税が待ち受けています。それは勤務先からもらう給与所得に限りません。預金の利子は、たとえわずかでも「利子所得」として課税されます。配当金は「配当所得」、株式を売却すれば「譲渡所得」、原稿料は「雑所得」で、やはり課税対象です。
ちなみに所得税は、課税対象額(この場合は所得)が多い人ほど税率が高くなる「累進課税」の仕組みを採用しています。稼げば稼ぐほど多くの所得税を取られるということです。日本の所得税は、最も低い税率である5%から最も高い税率である45%まで7段階になっています。累進課税は、「富裕層もそうでない人も税率が一律では不平等ではないか」という近代国家の考え方に基づいて富の再分配を図るものです。
所得には必ず税金がかかりますが、「控除」という法令上の仕組みによって税金の額を減らすことができます。控除とは「差し引く」という意味です。所得から控除を引いた金額が、税金のかかる所得(課税所得)になります。つまり、控除を増やせば節税できるということです。控除できるものは複数あります。
例えば、社会保険料や地震保険料、生命保険料、雑損控除、医療費控除、配偶者控除などです。確定した税額から控除される配当控除などもあります。何が控除されるのかを知ることは、節税対策の第一歩といえます。
確定申告でお金が返ってくる?
会社員のみなさんの中には、自分が所得税や住民税をどれくらい支払っているか気にしていないという人もいるかもしれません。日本のサラリーマンは意識するかどうかにかかわらず、厳格な源泉徴収制度によってしっかり納税できてしまうので、気にしなくても生きていけるのです。
けれども、源泉徴収制度で天引きされた所得税額は多すぎる(つまり税金を払いすぎている)可能性があります。控除できるものを見つけて、すでに支払った税額から減額修正すれば、税金が返ってくるかもしれません。
給与の支払者である会社が、あらかじめ一定の税率で給与から税金を天引きすることを、「源泉徴収」といいます。会社に勤めているみなさんが年1回もらう源泉徴収票は、会社がその従業員にどれくらいの給与を支払い、税金をどれくらい納めたのかを証明する書類です。
年末調整のときに、その年に支払った生命保険料や地震保険料、家族構成の状況など(つまり控除される項目)を会社に届け出て、あらかじめ天引きされていた税額よりも本来支払うべき税額が少なくなった場合には、差分を取り戻すことができます。
自営業者やフリーランスの人は、源泉徴収ではなく申告によって納税する申告納税制度をとっています。自分にその年どれだけ所得があったのか、納めるべき税額はいくらかを自ら計算して、「確定申告」するのです。
収入を得るためにかかった費用は必要経費として収入から差し引き、課税対象となる所得から納税額を計算して、確定申告後に納めます。自己申告ですから、日々の記帳や必要経費であることを証明する領収書などが必要です。手間のかかるこの一連の作業を税理士に委ねている自営業者も多くいます。
控除を申告できるのは、年末調整のときか確定申告のときです。「サラリーマンは年末調整で控除を申告できるから、確定申告はしなくていい」と思っているかもしれませんが、実は確定申告したほうがいい場合もあります。年末調整では扱ってもらえない控除項目があるからです。
例えば、医療費控除です。医療費控除は、治療費や入院費用、薬代などの医療費を家族で年間10万円以上支払っていれば、10万円を超えた分(その年の総所得金額が200万円未満の人は、医療費の実費から総所得金額の5%を引いた金額)が控除されるものです。この控除は、年末調整では申告することができず、確定申告する必要があります。
家族が購入したOTC医薬品(ドラッグストアで購入できる指定された医薬品)の合計額が1万2000円以上の場合に、1万2000円を超えた分が控除されるセルフメディケーション税制も同様です。ちなみに、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらかしか利用できません。
また最近では、「特定支出控除」といって、業務で使用するスーツの購入費用や業務に活かすための資格取得費、業務に関係する書籍の購入費などがサラリーマンの必要経費として認められています。一定の基準を超えてそれらを自腹で負担した場合、確定申告すれば税金が戻ってくる仕組みです。
特定支出控除は、6種類あります。「通勤費」「転居費」「研修費」「資格取得費」、単身赴任者の「帰宅旅費」、そしてスーツなどの衣類や本、接待などの交際費を含む「勤務必要経費」です。仕事に関係する「通勤費」や「転居費」などは会社から支給されることが多いでしょうが、その場合は控除対象とはなりません。
また、控除されるのは、その年の給与所得控除額の2分の1を超えた分です。これから資格を取ってスキルアップしたいと考えていて、その費用が高額な人は活用するといいでしょう。
確定申告は意外と簡単にできる
確定申告を簡単に済ませるには、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが便利です。控除項目を入力して申告書を作成すると還付される金額が自動計算されるので、還付金額の確認にも使えます。申告書の作成は意外と簡単なので、一度試してみてもいいでしょう。
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確定申告書の作成を始める前には、会社から受け取った源泉徴収票と控除を受けたいものの金額がわかる書類を用意しておきましょう。
医療費控除を受ける場合は、あらかじめ医療機関でもらったレシートなどを取っておきます。税務署に提出する必要はありませんが、合計額を計算するために必要です。医療費には治療費や薬代、入院費用のほか、タクシーで通院したときの交通費なども含まれるので、忘れないようにしてください。
サラリーマンの追加経費である特定支出控除を受ける場合は、会社に証明書を発行してもらう必要があります。国税庁のウェブサイトから証明書をダウンロードして必要事項を記入し、会社に署名と捺印をもらって、確定申告のときに提出することになります。医療費控除や特定支出控除をはじめ、何が控除されるのかを知り、うまく節税して税金と賢く付き合っていきましょう。
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