2019.12.20
子どもの読解力を育む最強の2大育児ツール| 東大に4人の子を合格させた「最初の教育」
絵本の読み聞かせは、読解力だけでなく人格形成にも影響します(写真:プラナ/PIXTA)
国際学習到達度調査(PISA)で日本の高校生の読解力が8位から15位に大きく低下したことが話題になった(12月3日)。読解力は社会で生きていくために不可欠な力であり、子どもにとっては受験対策としても必要不可欠な力だ。わが子に読解力をつけさせたいと願う親は多い。
4人の子どもを東大に合格させ、『頭のいい子に育てる 3歳までに絶対やるべき幼児教育』(東洋経済新報社)を上梓した佐藤亮子氏が、我が子に実践した、読解力を伸ばすための教育メソッドを紹介する。
頭のいい子に育てる 3歳までに絶対やるべき幼児教育 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
社会で生きていくために不可欠な読解力
私は小学生のとき、「アメリカに奴隷制度があった時代、奴隷に字を教えなかった理由」を知りました。その理由とは、要するに、奴隷に字を教えると本を読むようになり、世の中のことを深く考えられる能力がついてしまうから、というものです。
『頭のいい子に育てる 3歳までに絶対やるべき幼児教育』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
そうなると、奴隷制度の矛盾を理解して奴隷という自分の立場がおかしいことに気づき、ご主人様に反抗することになる。その反抗を防ぐために、あえて文字を教えなかったということでした。
現代の日本では、文字を全然知らないということはまずありませんが、大人でも長い説明書や契約書などを「ごちゃごちゃ書いてあって面倒くさい」と感じて、しっかりと読まずに印鑑を押してしまう人も少なくありません。
相手はそれが狙いですから、面倒だと思わずに長い文章を読んで理解する読解力が、社会で生きていくうえでは必要です。
読解力は、社会に出る前の子どもたちにとってももちろん重要です。学業という点では当然、国語の成績に直結します。国語は母国語なので、何もしなくても点数が取れると勘違いしている人もいますが、「国語が苦手。点が取れない」という子どもは少なくありません。国語は、0点を取るおそれはないけれど、いい点数も取れないというのがよくある悩みです。
さらに見落とされがちなのは、読解力は全教科の基礎であるということです。どの教科も日本語で質問されますから、問題文を素早く読み取ることが必須となります。となると、十分な読解力が身に付いていなければ、他の教科もなかなか伸びないということです。
新試験制度で読解力の重要性が高くなる
2020年以降、子どもたちはさらに読解力が求められることになります。大学の入試改革です。私の子どもたちが4人全員、東京大学理科Ⅲ類(東大理Ⅲ)に合格したため、思いがけないご縁をいただいて、日本全国で講演させていただいている毎日ですが、最近、講演会では必ず、これからの大学入試改革についてのご質問を受けています。
センター試験にかわって、大学入学共通テストになるのですが、この新テストではこれまで以上に読解力が求められます。例えば国語の文章題は長くなりますので、素早く読んで正確に内容を把握することが求められます。長い文章を読みながらその内容をすぐに頭の中でイメージ化して、それについて自分の意見をまとめる必要があるのです。
試験制度が変更されるということもあり、どうすれば子どもに読解力をつけさせることができるのか、悩まれている保護者の方も多いです。
読解力の厄介なところは、その力が一朝一夕で身に付かないということです。小さい頃からの読書習慣の積み重ねが不可欠で、高校生に今から読解力を身に付けさせようとしてしても手遅れです。
小学生からでも、低学年ならまだしも、高学年はやや厳しいでしょう。幼少時に読書習慣がない子が、その年齢になってから素直に親の言うことを聞いて本を読んでくれるようになるかどうかは疑問です。
ある程度親の思いどおりの子育てができる3歳までの幼児教育が、将来、読解力で困らない子どもにするための勝負の分かれ目だと私は考えています。
では具体的に、どんな幼児教育をすべきでしょうか。なにも特別なことは必要ありません。私が実践し、誰でも同じように実践できる2つの方法をお教えしましょう。
それは、絵本と童謡です。私はこの2つが幼児教育の最強ツールだと思っています。
絵本と童謡のすばらしい点は、0歳児からできる幼児教育だということです。0歳児は話したり書いたりすることはできませんが、見たり聞いたりすることはできます。
そして、赤ちゃんはお母さんの声を聞くことが大好きなので、この時期にたくさん言葉のシャワーを浴びせると、どんどん子どもたちの中に言葉の貯金がたまっていくのです。そしてこの貯金が、将来の読書週間や読解力に結び付くと思うのです。
もちろん、どんな言葉でもいいというわけではありません。正しく、美しい日本語を浴びせてあげる必要があります。そしてそのために一番効果的でお手軽なツールが絵本と童謡なのです。
豊かな感情や日本人としての土台も育まれる
童謡は本当に正しい日本語を基礎に作られているので、大人でもその言葉の流れに感動します。最近は、言葉のアクセントを無視した歌も多いだけに、童謡の歌詞に使われている日本語はわかりやすく聞き取りやすいので、とても美しく、耳に響きます。メロディーがあるため、耳に残りやすく、子どもの心を打つのです。
絵本は、作家が子どもを大切に思って創作し、人間を含む生きとし生けるものに対する考え方が平易な日本語で書かれています。なんと言ってもすばらしい絵がありますから、絵だけを見ても十分楽しめるのです。赤ちゃんの頃からでも字のない「赤ちゃん絵本」を眺めて楽しむこともできるので、生まれたときから本と親しむことができるのです。
絵本や童謡の効用は読解力だけではありません。さまざまな風景に出会うことで感情的にも豊かになり、また「ブタさんとキツネさんがケンカをしました」といった物語を読むことで、善悪や人としてあるべき行動規範にも触れることになります。
その子の人格形成に大きな影響を与えるこれらの原始的な感情や価値観は、なかなか後付けできません。小学生になってから善悪を教えようとしてもお説教っぽくなってしまいますね。幼少期に絵本や童謡に親しませることで、自然とそれらを吸収させることができるのです。
「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、3歳までに絵本と童謡に多く触れさせれば触れさせるほど、子どもの感情も、価値観も、読解力も、豊かなものになります。ぜひ皆さんも、実践してみてください。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:子どもの読解力を育む最強の2大育児ツール|東洋経済オンライン