2019.05.10
将来不安の30代がするべき「たった3分の計算」| 30代の会社員は「退職金制度」を知らなすぎる
30代の子育て夫婦は「今すぐにはお金に困っていないけど不安」という人たちが多い。30年先の暮らしを「見える化」してみよう(写真:U-taka / PIXTA)
子育てをしている30代夫婦の方々から家計の相談をお受けしていると、内容は大きく2つに分かれます。1つは「今、お金に困っていて、これから不安です」というご相談。もう1つは、意外にも「今はお金に困ってないんですけど、将来が不安です」というものです。
すでに今困っている場合は、支出の削減や収入増加のための対策を実行するしかありません。一方で、今は困っていないけれど不安を抱えているという場合は、「だからこそ、何をしたらいいかわからない」状態が続いてしまいます。今回は、この「今は困っていないが不安」を解決するために、特に子育て中の30代がやっておくべきことを考えてみます。
30代の会社員は「退職金制度」をしっかり調べるべき
厚生労働省の「平成30年 就労条件総合調査」によると、退職金給付(一時金・年金)制度がある企業は全体の80.5%です。従業員数30~90人の企業でも77.6%が導入しており、1000人以上の企業では92%を超えています。つまり、会社に正社員や契約社員等として働いている10人のうち、一定の条件を満たせば8人ほどは仕事を辞めた後、退職金をもらう権利があるということです。
ところが、筆者の経験上、30代の会社員10人と家計について面談すると、勤め先の退職金制度についてきちんと知っている方は2、3人程度です。30代の現在地から見れば「定年退職はまだかなり先」のことですし、転職を検討中の人などは退職金をあまり当てにしていないかもしれません。
とはいえ、老後のお金を考えるに当たっては、まだまだ退職金は大きな役割を果たしています。自分で30年先までに1000万円をつくろうと思ったら、ひと月当たり3万円近いお金を積み上げる必要がありますから、退職金があるとないとでは大違いです。
企業年金の状況もこの10年で大きく様変わりしています。2009年時点と比較すると、厚生年金基金の加入者が8割以上減り、一方で企業型確定拠出年金(DC)の加入者は約2倍に増えました。DCは、自己責任で運用するものです。仮に月3万円の拠出(掛け金)として、金利がほぼゼロの定期預金で25年積み立てると約900万円。3%で投資運用できれば約1,300万円と、長い期間に大きな差がつきます。ですから退職金の有無・形態については、期間が長いからこそ早く知っておきたいものです。
「簡易計算法」で老後の年金額をざっくりと把握
年金制度も30代にとっては実感しにくいものです。自分たちが受け取る頃にはどうなっているかわからない、と思考の外に置いている人が少なくありません。
退職金と同じく、年金制度についても30代の早い時期から知っておいて損はありません。まずは「ねんきん定期便」をチェックすることから始めましょう。50歳未満の方のねんきん定期便には、ご自身の「これまで」が書いてあります。これまでの加入月数、年金の未納や猶予の期間がないか、厚生年金はどのくらいの期間をかけてきているか確認しましょう。30代の場合は加入期間がまだ短いので、記載されている年金額に「こんな少ないのか」と感じることが多いです。「これって1カ月分ですよね」という人もいますが、違います。1年間で受給できる額面の金額が載っています。
老後に受け取る年金額は30代から先の働き方によっても変わりますが、これからどのように増えていくか、年金の「簡易計算法」を知っておくと便利です。ここで説明しましょう。
国民年金から受け取る基礎年金は「満額」が決まっています。20歳から60歳までの40年で、未納や免除がなければ満額は約80万円です。つまり「1年加入期間が延びるにつき2万円増えていく」と考えられるので、この先増える基礎年金の金額の目安は、
「今から60歳までの年数」×「2万円」
となります。厚生年金については「報酬比例」なので、こちらは年数でなく「収入」に応じて年金額が増えていきます。簡易計算式は、こうなります。
「平均年収」×「0.55%」×「60歳までの年数」
平均年収が想像できない場合は今の年収で考えれば十分です。基礎年金と厚生年金のそれぞれで計算し、合算してみてください。今後、どれだけ年金額が増えるか、ざっくりと把握できます。そうすることで、これからまだ長い就労の期間の過ごし方を考えるきっかけとなるはずです。
計算は必ず退職金と年金を先に、心配な教育費は後で
退職金と年金についてきちんと知っておくだけでも、「今は困っていないけれど不安」という状態は少し解消されるのではないでしょうか。では、こんどは30代夫婦の相談でいちばん多く聞かれる心配--子どもの教育費について考えてみましょう。
教育費を考えるうえで大事なことは、「退職金と年金について考えた後に検討する」ということです。おおよその生涯収入を予測し、老後の生活費を見通した後、ようやく教育費をいくら「かけられるか」を考えることができます。30代の子育て世帯の場合、まだ子どもが小さいことが多いです。保育園児や小学校低学年の子どもを育てている時期に、大学までの進路を予測しろと言われても、イメージできないかもしれません。そうなると、どうしても「自分たちが親にしてもらった教育・進路」をベースに考えてしまいます。
しかし今の30代が学校に通っていた頃に比べると、教育費の値上がり率はとどまるところを知りません。物価や給与水準が上がらない期間にも、大学などの授業料は上がり続けるという異常な状態となっています。
大学費用だけ見ても、国立大学で約450万円、私立文系約650万円、私立理系になると約800万円(在学中にかかる学校納入金以外も含んだおおよその金額)と大きなお金がかかります。子どもが生まれると、真っ先にこれらの大きなお金を想定するために、30代子育て世帯では教育費に貯蓄の比重が偏っているケースを多く見かけます。晩婚・晩産などで、子どもの教育が終わってから老後費用を貯める期間が短い場合はなおさら、教育費偏重になっていないか気をつける必要があるでしょう。
「人生100年」と言われる昨今ですが、寿命の伸び率ほどには就労期間が伸びていません。老後が長くなっている割に、働ける期間は今も限られているということです。だからこそ「就労収入」を「人生に必要な資金」に割り当てるときは、時系列ではなく、仕事をしなくなくなってから必要になるお金に割り当ててから、逆算で計算する必要があります。そうすることで教育費や現在の生活費に使えるお金が見えてきます。「お金に困っていないけど何となく不安」を解消するには、将来を見越したうえで、今使えるお金をハッキリとさせ、支出を身の丈に合わせていくことが大事なのです。
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提供元:将来不安の30代がするべき「たった3分の計算」|東洋経済オンライン