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2019.03.07

今年の「税制改正」がサラリーマンに厳しいワケ│税制面にも"働き方改革"の余波が


多様な働き方が認められている昨今ですが、サラリーマンにとってはさらに厳しい税制改正となりそうです(写真:よっしー/PIXTA)

多様な働き方が認められている昨今ですが、サラリーマンにとってはさらに厳しい税制改正となりそうです(写真:よっしー/PIXTA)

1000万人を超える規模になり(ランサーズ調べ)、多様な働き方の象徴としてますます増加するとみられるフリーランス。平成30年度税制改正では、フリーが恩恵を受ける一方、サラリーマンには厳しい改正となりました。『ゼロからスタート! 岩田美貴のFP1冊目の教科書』の著者でLEC東京リーガルマインド専任講師の岩田美貴氏が解説します。

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平成29年度税制改正で配偶者控除と配偶者特別控除が改正され、専業主婦がいわゆる「103万円の壁」といわれる「パート収入103万円」を超えても150万円を超えない限り38万円の控除が受けられるようになりました。

平成30年度税制改正では、引き続き個人所得が大きく改正され、「フリーで働く人に有利な税制」と言われています。どのように変わるのか、所得税を中心に見ていきましょう。

誰もが使える「基礎控除」の額が10万円アップ

個人の場合、一定以上の所得があると、所得税や住民税を支払わなくてはいけません。その際に、個人によって異なる担税力(=税金を負担する能力)の違いを考慮して、担税力の小さい人は負担を減らすことが定められています。具体的には、所得の額から「所得控除」といわれる額を差し引いて、所得税の対象となる金額を少なくすることで、税金を減額します。

例えば、平成29年度税制改正で改正された配偶者控除や配偶者特別控除は、妻が専業主婦だったり、パート勤務で収入が少ない場合、夫の所得税を減額する仕組みです。他にも、扶養家族がいる人に適用される「扶養控除」や、年間の医療費が多くかかってしまった場合に使える「医療費控除」などが、みなさんもよく聞く所得控除だと思います。

所得控除の適用を受けることで、家族が多くて生活費などの負担が大きい人や、病気などの治療費がかさんでしまった人などの所得税を減らすことができ、税負担の公平性を図っているのです。

所得控除は、人によって使える控除と使えない控除があります。例えば配偶者控除や配偶者特別控除は、そもそも配偶者がいなければ使えません。

ところが、所得控除の中にはその人の生活や家族の状況にかかわらず、誰でも使える控除があります。それが「基礎控除」です。

今のところ基礎控除の額は一律で38万円ですが、2020年から48万円に引き上げられます。つまり、その分、所得税の支払いが少なくなるということです(ただし、年間の合計所得が2400万円を超える人は、基礎控除の額が所得に応じて逓減してしまいます)。

基礎控除は誰でも使えるので、フリーランサーも対象になりますし、もちろんサラリーマンも対象になります。それではどうして、この改正が「フリーで働く人に有利な税制」といわれるのでしょうか。

これまで、「所得」という言葉を使ってきましたが、そもそも所得とは何でしょうか? 所得と似た言葉に「収入」という言葉がありますが、所得と収入はまったく違うものです。

ざっくり言うと、収入は「稼いだお金のすべて」、所得とは「収入から経費を引いた金額」です。

例えば、個人で文房具店を経営している場合、年間の売り上げが1000万円あっても、その全額に課税されたら仕入れもままならなくなってしまうかもしれません。そのため、仕入れ額や人件費などを経費として差し引いた「所得」を所得税などの税金の対象としているのです。

会社に所属せずフリーランスで仕事をしている場合、収入を「事業所得」として確定申告する人が多いでしょう。その場合でも、収入を得るために支出した金額を経費として事業所得の額を計算することができます。

給料やボーナスが給与収入となるサラリーマンの場合は、経費を計算するのが難しいため、収入の額に応じた一定の給与所得控除額を経費とみなして収入から差し引きます。

サラリーマンはどうなる?

このように、所得税を計算する際は、収入から経費を差し引いて所得を算出し、そこからさらに所得控除を差し引くことができます。先述したように今後は基礎控除が10万円増えますので、その分、支払う所得税の額が少なくなるということですが、税を徴収する側から見ると税収が減少してしまう結果になります。そこで、税収を減らさないためのカラクリがあるわけです。

サラリーマンは、給与所得を計算する際に、給与収入から給与所得控除額を差し引きますが、2020年の所得税から、この給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。つまり、サラリーマンの場合、基礎控除が10万円増えて、経費が10万円減るので、差し引きゼロで所得税の額は変わりません。

さらに2020年からは、給与収入が850万円を超えるとどんなに収入が増えても、給与所得控除額は一律195万円になります。つまり、収入が多いサラリーマンほど、税金が厳しくなる改正といえます。

一方、フリーランスの場合、事業所得として確定申告をする人が多いですが、青色申告の申請をしていれば、事業所得から最高65万円の青色申告特別控除を差し引くことができます。青色申告特別控除の額も2020年以降は65万円から55万円に減額されます。

e-Taxか電子帳簿保存で控除を受けられる

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それでは、フリーランスもプラスマイナスゼロで別に有利ではないのでは?と思うかもしれません。しかし、青色申告特別控除は、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことで、引き続き65万円の控除を受けることができます。

つまり、フリーランスの人は、一定の要件のもと、今までよりも10万円、課税の対象が減ることになるわけです。青色申告でない白色申告の人は、単純に課税の対象が10万円少なくなります。

ちなみに、老齢年金を受け取っている人は、年金の額から公的年金等特別控除を差し引くことができますが、基礎控除が10万円増える2020年からは、公的年金等特別控除が一律10万円少なくなりますので、サラリーマンと同様、支払う税金の額は変わりません。

このように、2020年からはフリーランスの人にとって税負担が少なくなる税制に変わります。今は、ひと昔前とは違って副業を認める会社も増えています。副業からの収入も、フリーランスの人と同様に事業所得として確定申告すれば、一定の要件のもと65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。

副業で収入も増やしたい方も恩恵を受けられる税制なので、サラリーマンの方も、思い切って働き方を変えるチャンスと捉えてみるのもよいのではないでしょうか。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

所得税の控除はなぜこうもフェアでないのか

今年はサラリーマンも確定申告をすべきワケ

確定申告で通る「経費」と通らない経費の大差

提供元:今年の「税制改正」がサラリーマンに厳しいワケ│東洋経済オンライン

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