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2018.09.03

「配偶者控除」改正、注意すべき落とし穴とは?|妻の収入にかかわらず控除がなくなる人も


昨年までと同じように配偶者控除を受けられると思っていたら、痛い目に遭うかもしれません(写真:アオサン / PIXTA)

昨年までと同じように配偶者控除を受けられると思っていたら、痛い目に遭うかもしれません(写真:アオサン / PIXTA)

2017年度税制改正により、配偶者控除および配偶者特別控除の見直しが行われ、2018年1月から配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額などが大きく改正されました。それまで夫は妻を税法上の扶養とするために、パート等で妻が働く場合でも年収103万円を超えないようにしていた世帯が多く、いわゆる「103万円の壁」がありました。それが今回の改正で「150万円」まで引き上げられたのです。

しかし、単純に「妻が年間47万円分多く働いても扶養に入れられる」という理解は間違いです。今後も配偶者控除を受けるには、注意が必要です。

なお、本稿における「年収」とは、「給与所得だけの場合の給与所得者の給与等の収入金額」(いわゆるサラリーマンの額面)を指すものとします。

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これまでの制度のおさらい

パートタイマーなどで、妻または夫が働くとき(本稿でわかりやすく説明するために、パートで働く人を「妻」とし、その配偶者を「夫」として表記します)、昨年までは年収103万円以下であれば、夫は配偶者控除として一律38万円の所得控除を受けることができました。これは、夫の所得税を低くできる効果があります。夫がいくら稼いでいようが関係なく、妻の収入さえうまくコントロールできれば、配偶者控除が受けられたのです。

そして、妻の年収が103万円を超えると、夫は配偶者特別控除を受けることができ、妻の年収が141万円になるまで段階的に減少する仕組みになっていました。

それが、2018年1月1日以降、次のように変わりました。ポイントは4つです。

1.夫の年収が1220万円を超える場合は、配偶者控除が受けられなくなった

2.配偶者控除の控除額が一律38万円ではなくなった

3.妻の年収が201万5999円になるまで配偶者特別控除が受けられるようになった

4.配偶者特別控除の控除額が夫の合計年間所得によって変わった

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夫の年収が1120万円以下の場合、妻の年収が150万円以下であれば、これまでどおり38万円の控除を受けられます。この点が「150万円までなら扶養枠で働ける」と注目されるようになりました。

さらに、妻の年収が150万円を超えても、201万5999円までなら、妻の年収額に応じて、3万円から36万円の控除を夫が受けられるようになりました。

一方、夫の年収が1120万円を超える場合、注意が必要です。

夫の年収が「1120万円超1170万円以下」では、妻の年収が150万円以下の場合、控除額は一律26万円になりました。また、妻の年収が150万円超201万5999円以下の場合、妻の年収額に応じて、2万円から24万円の控除を夫が受けられるようになりました。

同様に、「1170万円超1220万円以下」では、妻の年収が150万円以下の場合、控除額は一律13万円になりました。また、妻の年収が150万円超201万5999円以下の場合、妻の年収額に応じて、1万円から12万円の控除が受けられるようになりました。

そして、制度改正による負の影響が最も大きいのが、年収1220万円超の人たちです。妻の年収にかかわらず、控除を受けることができなくなりました。つまり、高額所得者への増税となっているのです。これは、意外と盲点になっているのではないでしょうか。

夫の年収が1220万円を超えることが年初から明らかな家庭でも、昨年と同様に「103万円の壁」を意識して妻の勤務時間を調整しているケースは多いのではないかと思われます。妻が専業主婦であればなおさら、今までの感覚で税法上扶養できるものと思ってしまうのではないでしょうか。

では、実際にいくら手取りが減るのでしょうか。影響は夫と妻の年収によって異なるため一概には言えませんが、年収1220万円超で課税所得が900万円超のAさんの例を考えてみましょう。Aさんの妻が年収103万円以下だった場合、Aさんは今年から配偶者控除が受けられなくなります。

そのため、Aさんの課税所得は38万円増加し、Aさんの所得税率は33%なので「38万円×0.33=12万5400円」所得税が増えることになります。月額にすると、1万円ほど手取りが減る計算になります。

社会保険の「130万円の壁」にも注意を

一方、夫の年収が1120万円以下であれば、妻は年収150万円まで働いても、配偶者特別控除38万円はこれまでどおりに受けられるなら、いっそ150万円まで目いっぱい妻に働いてもらい世帯年収を上げていこう、という考え方もあるかもしれません。

ただ、このとき注意したいのが、社会保険です。社会保険には106万円、130万円の壁と言われているものがあります。以下の条件に該当する場合が、いわゆる106万円の壁と言われるもので、短時間で働く場合も妻自身が被保険者として社会保険に加入しなければなりません。そうなると、今まで発生しなかった健康保険料や厚生年金保険料が発生し、かえって手取りが低くなってしまうこともありえます。

(1)週の所定労働時間が20時間以上ある
(2)雇用見込が1年以上ある
(3)賃金月額が8万8000円以上ある
(4)学生でない
(5)被保険者数が常時501人以上の企業に勤めている

(注:500人以下の事業所であっても、上記(1)~(4)を満たし、労使の合意に基づき申出をすれば、短時間労働者として社会保険に加入することもできます。強制ではありません)

上記の要件に該当しない場合であっても、妻の年間収入が130万円以上になると、妻自身が社会保険に加入することになります。

そのため、以上の条件に該当しない範囲で働き方を抑制する動きも見受けられます。あるいは、手取りが増えるように年収150万円まで働くか、もっと突き抜けてフルタイムで働こうという考え方もあるでしょう。

妻が働く職場によって、社会保険の考え方も変わってくる点に留意したいところです。

会社で支給される手当に影響が出ることも

会社によっては、妻がいる社員に「家族手当」や「扶養手当」などを支給している場合があります。このとき、妻の収入範囲を要件にしている企業が多く、健康保険の扶養基準や税法上の扶養を基準としている場合が多いといえます。税金の扶養は昨年までであれば、本人(社員)の収入は関係なく、「控除対象配偶者」として妻の年収が103万円あるかどうかで判断していました。ところが、今年から「源泉控除対象配偶者」となり、本人の年収が1120万円以下で、妻の年収が150万円以下のみが該当することとなったため、今までと同じようにはいきません。

会社によって、どこまでを扶養手当の支給範囲としているかは異なります。この点は、就業規則や賃金規程など、社内のワークルールを改めて確認してください。

税金と社会保険とでは、扶養の範囲が違いますし、会社独自に支給している手当の考え方も異なります。こうした改正点を踏まえたうえで、家族にとってベストな働き方を考えていただければと思います。

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配偶者控除「103万円の壁」が崩れる巨大衝撃

「パート妻」は年収150万円稼ぐほうが幸せだ

試算!「配偶者控除」改正で家計はこう変わる

提供元:「配偶者控除」改正、注意すべき落とし穴とは?|東洋経済オンライン

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