2018.07.19
災害時におカネは一体いくらもらえるのか|災害弔慰金なら最大500万円が支給される
災害時におカネはいくら支給されるのか。地震に備えて自分の家に耐震補強をする際などには自治体から助成金がもらえる(写真:Issei Kato/ロイター)
大阪府北部地震や西日本豪雨など、自然災害で被害に遭われた方やそのご家族に、心よりお見舞い申し上げます。災害では「体」に被害が生じるケース、自宅や家財などの「モノ」に被害が及ぶケースがあります。私も社会保険労務士やFP(ファイナンシャルプランナー)として、実際に避難所で被災者の方の相談に応じた経験がありますが、今回はその経験も踏まえ、災害に役に立つ公的な支援制度についてご紹介します。被災された方にはもちろん、ご親族やお知り合いが被災されたという方にも、ぜひ教えて差し上げてください。
「死亡」や「重い障害」には弔慰金や見舞金が支給
ここでは自然災害に関する公的な支援制度をご紹介します。
自然災害によって家族を亡くされた場合には、「災害弔慰金」が支給されます。支給額は市区町村などが決定しますが、生計を担っている人が死亡した場合は上限500万円、そのほかの人の死亡では上限250万円です。支給を受けられるのは配偶者や子、父母、孫、祖父母のいずれかで、死亡した人と同居または生計を同じくしていた場合は兄弟姉妹も対象となります。
最近は災害そのもので死亡する以外に、被災によるショックや避難生活によるストレスなど、2次的な要因で死亡する災害関連死も問題となっています。2016年4月の熊本地震では、地震で亡くなった人(直接死)が50人、関連死が200人に上っています。災害弔慰金は災害関連死と認められた場合にも支給されますので、知っておいてください。
災害で身体や精神にかなり重い障害を負った場合には、「災害障害見舞金」が支給されます。たとえば両上肢を肘関節以上で失った、両目を失明したなど、一定の条件に該当すると、生計を担っている人では250万円、それ以外の人では125万円を上限に支給されます。
災害で世帯主がケガをしたり、住宅や家財が大きな被害を受けたりして、手持ちの資金だけでは当面の生活に困るケースもあるでしょう。生活を立て直すための資金として「災害援護資金」を借りることも可能です。
住居全壊で250万円、土石流などでの滅失なら350万円
世帯主が1カ月以上の負傷の場合は150万円。世帯主が1カ月以上のケガを負ったうえ住居が全壊なら350万円、半壊では270万円、家財の3分の1以上の損害では250万円です。
世帯主に負傷がない場合は、住居全壊で250万円、半壊で170万円、家財の3分の1以上の損害で150万円です。土石流や津波で流されたなど、住居全体の滅失・流失では350万円となります。
いずれも所得制限があり、1人世帯では220万円、2人世帯では430万円、3人世帯620万円、4人世帯730万円などを超えないことが条件です(前年の所得)。ただし、住居が滅失した場合は世帯にかかわらず前年の所得が1270万円以下なら利用できます。返済期間は10年で、当初3年間は据置期間として返済が猶予され、その間、利子もかかりません。返済猶予期間が当初5年間になるケースもありますし、東日本大震災では返済期間が最大15年になるなど、変更されることもあります。
また、災害援護資金の対象にならない人でも、低所得世帯、障害者のいる世帯、要介護者がいる世帯を対象に生活福祉資金貸付制度によって貸し付けが行われることもあります。市区町村や地域の社会福祉協議会に相談してみましょう。
一方、「被災者生活再建支援制度」を使って支給を受けることもできます。この制度は住宅が全壊したり、敷地に被害があってやむなく解体したり、危険があって居住できない状態が長期間続いている場合、また大規模な補修が必要(大規模半壊)な場合に支給を受けることができるというものです。
全壊や解体、長期避難では「基礎支援金」として100万円、大規模半壊では50万円です。別途、住宅を再建する人には「加算支援金」が支払われ、建設・購入する場合は200万円、補修では100万円、賃借では50万円です。自宅が全壊して建て直す、という場合は、基礎支援金100万円と加算支援金200万円で、計300万円となります。
この被災者生活再建支援制度を受けるためには、自治体から「罹災証明書」を交付してもらう必要があります。被災した人が市区町村に申請すると、自治体の調査員が現場を調査したうえで発行してくれます。損害の割合は50%以上では「全壊」、40%以上50%未満では「大規模半壊」、20%以上40%未満では「半壊」となります。
大阪府北部地震では、一部の自治体で、被災者が被害状況を撮影したスマホ写真などを参考に罹災証明書を発行する「自己判定方式」が採られました。罹災証明書は、支援金を受けるためでなく、義援金を受け取ったり、税や保険料、公共料金なども減免や支払い猶予を受けたりするためにも必要になることがあり、迅速に交付されれば、スムーズに支援を受けられます。火災保険や地震保険など、損害保険の保険金を請求する場合にも役立ちますので、被害状況をスマートフォンなどで撮影しておくように心掛けてください。
ここまで自然災害が起きた際に支給されるおカネや借りることができるおカネについて説明してきましたが、あらかじめ損害に備え、建物の被害を最小限に抑える努力をすることも大切です。
特に1981年5月31日以前に旧耐震基準で着工された住宅については耐震性が不安視されており、必要に応じて耐震補強を行う必要があるでしょう。もし、ご自身の自宅がこれに該当しなくても、ご実家などの着工時期を確認してみてください。
実は、全国の自治体では、耐震診断の費用や耐震補強のための設計費用、工事費用の助成などを行っています。助成の内容や金額は自治体によって異なりますが、東京都世田谷区の例では、補強設計費用として30万円、耐震改修工事費として100万円を上限に助成しています。自治体に相談、申し込みをし、自治体が指定する業者に依頼することが条件になっているのが普通なので、勝手に診断を受けたり、工事をしたりせず、まずは自治体に問い合わせましょう。
ブロック塀の撤去費用を助成する自治体も
さらに1981年5月までに着工した住宅に耐震改修工事をすると、所得税が軽減される「住宅耐震改修特別控除」という制度もあります。
一定の耐震基準を満たす耐震改修を行えば、標準的な工事費用の10%(最高25万円)が所得税から控除されます(自治体から改修費用の助成を受けた場合はその額を引く)。このような制度が設けられているのは、耐震性を高めることが重要であるからにほかなりません。
また、ブロック塀などの撤去について助成を行っている自治体もあります。たとえば東京都小平市では、道路に面した高さ1メートル以上のブロック塀、石塀、レンガ塀などを撤去したり、撤去後に新たに塀を築造したりする場合について助成金を交付する制度を設けています。
撤去に対する助成額は、撤去費用の9割または撤去する塀の規模などに応じた額(いずれか少ないほうの額。上限12万円)となっています。大阪府北部地震では、ブロック塀の倒壊による悲しい事故がありました。あのような悲劇は二度と起きてほしくありません。
何か利用できる制度はないか、自治体からの情報や正しい口コミ情報などに注目しましょう。日頃から、社会保障や公的支援について知っておくことが大切です。
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提供元:災害時におカネは一体いくらもらえるのか|東洋経済オンライン