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2018.07.12

意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か|池上彰が教える、″大人のための″教養教室


おカネの成り立ちを知っていますか(写真:gaffera/iStock)

おカネの成り立ちを知っていますか(写真:gaffera/iStock)

インターネットやテレビ、新聞などで見る「経済」や「政治」のニュース。私たちは、それら数多くの情報を見聞きしながら、自分を取り巻く世の中の“今”や“それまで”を知り、思いをめぐらすことになる。しかし、知り得た情報の“根っこ”にある「基礎となる知識」を見つめたとき、それを“知っているようで知らない”人は、実はけっして少なくないはずだ。

この記事では、キャッシュレス時代が普及するにつれ、その原点についての知識がおろそかになりつつある「おカネの成り立ち」に着目。新刊『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』を出版したジャーナリスト・池上彰氏に、私たちがおカネに向き合ううえでの「教養」として知っておくべき“そもそも”の部分に的を絞り、わかりやすいイラスト図解を使いながら解説してもらった。

『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』 ※外部サイトに遷移します

それは「物々交換」から始まった

ジャーナリストの池上彰氏(画像提供:KADOKAWA、撮影:星智徳)

ジャーナリストの池上彰氏(画像提供:KADOKAWA、撮影:星智徳)

大昔の日本では、人々は狩猟をしたり、木の実を集めたり、魚介類を獲ったりして生活していました。そして、やがて稲作が大陸から伝わったことで、米作りも始まりました。

たとえば、あなたが海辺に住んでいて、魚や貝を獲って生活していると考えてみてください。獲った魚を家族で食べているうちに、たまには獣や鳥の肉を食べたくなったり、野菜や果物もほしくなったりするはずです。また、衣(い)、つまり着るものもほしくなるでしょうが、それには動物の毛皮のような材料も必要になります。

しかし、魚以外のものを手に入れるには、あなたのところに余分に確保されている魚や貝を、ほかの人が持っている肉や毛皮と交換する必要が出てきます。これが「物々交換」です。

物々交換が成立するためには、あなたがほしい肉を持っている人が「魚をほしがっている」という「偶然」も必要です。つまり、「大昔は物々交換をしていた」といっても、実はそう単純にはいかなかったのです。とりわけ、魚や肉はすぐに腐ってしまうので、早く交換しなければ価値がなくなってしまいます。

そこで、魚や肉を、とりあえず稲と交換しておこうという動きが出てきます。稲は長持ちしますし、食物として誰しもがほしがるものです。とりあえず稲に換えておけば、やがてほしいものが出てきたときに簡単に交換できるだろう、と考えたわけです。

こうして、日本では「稲」が物々交換の「仲立ち」を果たすようになりました。

(イラスト:ケン・サイトー)

(イラスト:ケン・サイトー)

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日本から遠く、ヨーロッパや北アフリカの地では、米ではなく「塩」がその役割を果たしていました。「給料」のことを英語で「salary(サラリー)」といいますが、これはラテン語で塩を意味する「サラリウム」から来ています。なかでもローマ人は、働く人々に塩を賃金として支払っていたのです。

なお、稲がいくら長持ちするといっても限界はあります。1年も経たつと味が落ちてしまいますし、湿気でカビがはえることもあります。こうして、稲や塩に代わって、物々交換の仲立ちをする「新たなもの」が求められるようになります。その結果、金(きん)や銀といった貴金属が使われるようになったのです。

これが「おカネ」の発生です。

おカネに「金(きん)」が選ばれた理由

貴金属は小さくて腐りません。持ち運びが簡単ですし、保存しておいても品質は変わりません。つまり価値が安定していますから、誰が売買の支払いとして使っても、安心して受け取ることができます。こうして、物々交換の社会は「貨幣経済」の社会へと発展することになりました。

この貴金属には、主に「金(きん)」や「銀」が使われました。そもそも金は光り輝いていて美しいので、価値あるものとして古くから人気がありましたし、大量に採れないので、とても貴重で価値も安定していました。そのうえ、青銅などに比べて軽く、持ち運びも便利でした。また、熱を加えればすぐに溶け、加工もしやすかったのです。

しかし、金(きん)や銀も長いあいだ使っていると、不便なことが起きてきます。物々交換で使われる食物などと違って腐ることがなく、まさに価値が“貯蔵”できるのですが、大量になると、とにかく重くて持ち運びが困難になってしまいます。

そこで、「これを持っていれば金と引き換えます」という約束を書いた紙(約束手形)を取引に代用するようになりました。これが「紙幣」の始まりで、約束手形を発行していた業者の中には、後に銀行へと発展していく者もいました。

(イラスト:ケン・サイトー)

(イラスト:ケン・サイトー)

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当初のおカネには、「このお札を持って来れば、いつでも同じ価値の金(きん)と交換します」と書いてありました。「いつでも交換できる紙幣」という意味で、これを「兌換(だかん)紙幣」と呼びます。そして、このしくみを「金本位(きんほんい)制」といいます。

日本初の兌換紙幣が登場したのは1885年のこと。以後日本国民は「これで、いつでも必要なときに金(きん)に換えられる」と信じ、紙幣を使うようになっていったのです(ただし、日本の兌換紙幣第1号は、銀貨と引き換える「兌換銀券」だった)。

こうして、銀行が持っている金(きん)の量をもとに紙幣が発行されました。ところが、やがてこれにも不都合が生じてきます。経済が発展するとともに、紙幣が大量に必要になってきますが、日本銀行(日銀)が持っている金の量にはさすがに限りがあります。そのため、世の中に必要なだけの紙幣を発行できなくなるのです。

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兌換紙幣から不換紙幣へ

そこで日銀は、1942年から、日銀が持っている金(きん)の量に関係なく紙幣を発行するようになりました。紙幣を日銀に持ってきても、もう金とは交換しなくなったのです。つまり、兌換紙幣が「不換(ふかん)紙幣」になったわけです。

でも人々は、それ以後も変わりなく紙幣を使っています。これを「おカネ」だと信じ、国家を信用しているからです。

お札がいったん不換紙幣になると、日銀は、持っている金(きん)の量に関係なく、発行するお札の量を自由にコントロールできるようになります。これを「管理通貨制度」と呼びます。おカネの量を自由にコントロールできるといっても、紙幣を勝手に大量に印刷すれば、インフレ(物価が上がっていく状況)になってしまいます。かといって、紙幣が少なければ、今度は逆にデフレ(物価が下がっていく状況)に。おカネの量のコントロールは、とても難しいのです。

【「おカネ」のまとめ】

誰もが「おカネ」と信じているからこそ、そもそも「おカネ」は「おカネ」として通用します。でもこれ、よく考えると不思議なものです。

<覚えておきたいポイント>
●おカネの原点は物々交換
●「仲立ち」としておカネが誕生
●国家への信用がおカネの価値の裏づけとなる

以上、この記事では、“知っているようで知らない”「おカネの成り立ち」について簡単に解説しましたが、「おカネ」というものが私たちの生活、そして人生に深くかかわっている以上、その“おおよそ”をざっくりとでも知っておかなければなりません。

大人として、そして社会人としてはずかしくない最低限の「教養」。誰かに聞かれたとき、あなたはちゃんと説明できるでしょうか。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

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提供元:意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か|東洋経済オンライン

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