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2018.06.04

金銭感覚が違う共働き夫婦が陥る深刻な危機|「超どんぶり夫」VS「堅実貯蓄派の妻」


共働き夫婦はおカネの使い方が甘くなりがち。特に「金銭感覚が違う夫婦」は危ない(写真:A_Team/PIXTA)

共働き夫婦はおカネの使い方が甘くなりがち。特に「金銭感覚が違う夫婦」は危ない(写真:A_Team/PIXTA)

共働き家計はダブルで収入を得ているため金銭的な余裕が生まれやすいこともあり、住宅購入、教育費のおカネのかけ方に過剰になるケースがあります。夫婦とも同じような金銭感覚だと出費が多くなり、貯蓄ができなくなります。どちらか一方が「締まり屋」の場合は、結果的にバランスが取れてうまくいくケースも多いのですが、金銭感覚のズレが深刻な問題に発展してしまう場合もあります。皆さんもぜひ一緒に考えてみてください。

6500万円マンションを買いたい夫、妻は大反対!

今回のご相談者、大喜多里香さん(会社員・35歳、仮名)は、会社員の夫(35歳)と、長女5歳、長男3歳の4人家族です。現在、里香さんは時短勤務のため手取りが減っていて、手取り年収は夫婦で合計700万円、貯蓄額は850万円です。

半年ほど前から、ご主人が「マンションを購入したい」と言い出し、休みの日には物件を見に行き、最近、ようやく気に入った物件を見つけたそうです。しかし、当初の予算の4000万円から大きく上がり、物件価格は6500万円。ご主人は、「一生に一度の買い物なので後悔したくない、多少無理をしても気に入ったものを買うべきだ」と主張しているそうです。

 一方、里香さんは身の丈に合わない買い物だと大反対です。6000万円を借り入れるとして、35年固定金利1.275%で試算してもらった総返済額は約7440万円、毎月の返済額は約17万7000円にもなります。これまでの家賃12万円よりも5万7000円多くなります。マンションの管理費や修繕積立費を入れると、年間106万8000円も支出が増えることになります。
ご主人は、「その分、里香さんが働けば良い」という考えです。つまり、下の子どもが小学校に入学するまでの3年間だけ、赤字分は貯蓄を取り崩せば良いと考えているようです。里香さんは、そんな「どんぶり勘定」では、将来家計が破綻してしまうのではないか、35年間もローンを返済していけるのか、子どもたちの教育費のこと、老後のことを考えると、心配と同時に、ご主人に対して腹が立ってくると言います。
元々、ご主人は見栄っ張りで浪費傾向があり、これまでもしばしば「金銭感覚の違い」でけんかをすることもあったそうです。しかし、共に働いていることもあり、里香さんは、目をつむって我慢してきたそうですが、「今回ばかりは、譲れない。大借金を抱えて生きるのはごめんです!」ときっぱり。このままでは、夫婦間に亀裂が生じかねない様子です。

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この連載の一覧はコチラ

里香さんの心配はごもっともです。ご主人の「どんぶり勘定」について考えてみる、実に良い機会です。里香さんがこれまで感じている「夫婦の金銭感覚のズレ」について、しっかり考えていきましょう。建設的な話し合いをするためにも、まずは、人生設計の基本公式を使って、家計管理で最も大切な「必要貯蓄額」を出してみましょう。
人生設計の基本公式とは、ひとことでいえば老後(通常65歳)に「現役時代の何割の生活水準で暮らすか」(通常は7割)を決め、それまでに「手取り年収の何割を貯めるべきか」(=必要貯蓄率)を計算するものです。誰でも3分で計算できます。計算の仕方は、過去の記事「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」をご覧ください。初めての読者の方は、このままケーススタディを眺めつつ、読み進めてください。

「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」 ※外部サイトに遷移します

手取り年収の25%を貯蓄していける家計か

大喜多里香さん(35歳・会社員 時短勤務中)、夫(35歳・会社員)の家計

家計の今後の平均手取り年収(Y)850万円
(現在の手取り年収ではなく、残りの現役時代の年数も考え、これからもらえそうなご夫婦の手取り年収の合算額を考えて記入します)
老後生活比率(x)0.7倍(老後、現役時代の何割程度の生活水準で暮らしたいかを設定します)
年金額(P)255万円(手取り年収の3割として計算)
現在資産額(A)-650万円(現在の貯金額は850万円ですが、頭金と諸経費で500万円を使い、2人のお子さんの教育費として500万円ずつ合計1000万円として計算)
老後年数(b)30年(65歳から95歳まで生きると想定した年数)
現役年数(a)30年(65歳まで働くことを予定しているので30年)

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計算してみたところ、大喜多家の必要貯蓄率は約25%です。平均して、手取り年収に対し、25%を貯蓄していく必要があります。今後年収は上がっていきますが、現在の家計の手取り年収700万円で考えると、毎月、約14万6000円の貯蓄が必要ということになります。つまり、手取り年収の25%を貯蓄していける家計でなければ、お子さんの教育費を捻出して、老後に、今の7割程度の生活費で暮らすことが難しくなるということです。

現在の手取り収入から、貯蓄をしながら先の住宅ローン額約17万7000円を返済していくとすると、生活費は約26万円です(マンションの管理修繕費は含まず)。現在は、家賃と貯蓄額5万円を支払った後の生活費は41万円だということなので、なかなか厳しい生活になることが予想されます。
ご主人が主張するような「3年間だけ貯蓄を取り崩せば良い」というのはいかにも甘い考えであり、里香さんが「どんぶり勘定」と怒るのも無理はありません。端的に言って、この貯蓄率が守れないようなローンの組み方はすべきではありません。「せっかく見つけたお気に入りの物件」ですが、考え直されることをお勧めします。

夫婦の金銭感覚のズレは「致命傷」になりかねない

里香さんが感じている「夫婦の金銭感覚のズレ」は、相当に大きな問題であることを、ぜひ認識してください。「ズレを感じているままで、夫婦が一緒に生活をしていく」というのはどうでしょうか。
消費というのは、生活のあらゆることにかかわります。そこに納得がいかないという思いをずっと抱き続けるのは、お互い厳しいことだと思います。やはり、この際、きちんと話し合いをすべきでしょう。
小さなお子さんがいらっしゃると、毎日が慌ただしく過ぎていきます。しかし、今、話し合っておかなければ、先々、取り返しのつかないことになる危険性があります。里香さんは、思い切ってご主人にこう伝えました。「家計で大切なのは、毎年必要な貯蓄ができることであり、たとえ住宅ローンを組んでも、妻が時短勤務になっても、子どもの教育費を支払っても、必要貯蓄率が守れる家計を作りたい」「子どもが小学校に上がるまでの3年間は貯蓄から赤字を補填するという考え方はおかしいと思う」。
一方、ご主人は、「一生に一度の夢のマイホームだ。妥協はしたくない」という持論をなかなか曲げなかったそうです。しかし「なんのために家を買うのか。先行き不安な気持ちで家を持っても、ちっとも幸せではない」という里香さんの言葉で、考え直す気持ちになったそうです。合わせて、「今は、マンション価格はかなり割高である」という専門家の意見も伝え、いったん住宅購入は保留にしたそうです。里香さんが時短勤務を終え、収入が安定し、かつ、子どもの進路の見通しがある程度立ってから改めて「夢のマイホーム」の購入を考えることにしたということで、「あっぱれ、里香さん」です。
貯蓄は、長い期間をかけてこつこつ積み上げていくものです。収入に応じて必要貯蓄率と必要貯蓄額を算出し、決まった金額を適切なおカネの置き場所で貯めながら、増やしていきましょう。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

30代夫婦は65歳までいくら貯めればいいのか

共働き「ブラックボックス家計」が危険な理由

共働き夫婦はマンション購入で失敗しやすい

提供元:金銭感覚が違う共働き夫婦が陥る深刻な危機|「超どんぶり夫」vs.「堅実貯蓄派の妻」|

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