2018.03.16
20代のうちに覚えたい「住宅ローン」基礎知識│金利や支払い方法の違いを知っていますか
マンション、戸建て…家を買うには「住宅ローン」がついてまわる。その基本事項とは? (写真:chombosan / PIXTA)
「最初は利息だけ払っているようなもんだよ」「部屋を借りるよりも買ったほうがトクかもね」「金利は固定にした? それとも変動?」「借り換えするには今がいちばんいいよね」……。上司や先輩が、このような「住宅ローン」談義を始めることがある。3月は転居の時期、新たな持ち家やマンションを手に入れる人も多い。同時に、住宅ローンも発生し、上記のような話題も、雑談のネタになることも多いだろう。
しかし、まだまだ住宅ローンに縁が薄い若手社員にとっては金利や支払い方法などの話題は、「難しい」と困惑していないだろうか? そこで今回は、若手社員のための住宅ローンの基本を7項目に分けて解説。住宅ローン談義についていけると同時に、将来の人生設計にも役立つはずだ。
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1.そもそもローンとは
「自動車ローン」「教育ローン」など、「住宅ローン」のほかにもさまざまなローンがある。そもそも「ローン」とはなんだろう。
「ローンとは『借り入れ』のこと。将来の収入を当て込んで、何らかに使うための資金を調達することです。カードローンのようにおカネの使い道が自由なものもありますが、通常は『資金使途』、つまり使いみちを決めて貸し出されます。貸す側にとって使いみちは非常に大切。友達が借金を申し込んできたケースを考えればわかりやすいでしょう」と話すのは、「生活マネー相談室」を運営するフィナンシャル・プランナーの八ツ井慶子氏だ。
リフォーム費用も住宅ローンで充当できるケースも
たとえば、同じ1万円の借金の申し込みでも、目的が生活設計に基づいた「生活に必要なおカネの借金」か、投機目的で返済する見込みが薄い「ギャンブル」では、貸し手の気持ちは大きく異なってくる。金融機関にとって、最も重要なのは貸したおカネが戻ってくるかどうか。そこで、住宅用、教育用、自動車用など、使途を明確にしたうえで、返済できそうな相手かどうか、いわゆる「信頼度」を審査して貸し出すわけだ。
「住宅ローンは、その名のとおり、住宅を購入するための資金を貸し出すというもの。戸建て住宅、マンションはもちろん、金融機関の中には住宅購入にまつわるリフォームの費用まで認めているところもあります」(八ツ井氏)
金融機関は、預金や金融市場から調達したおカネを、住宅ローンとして貸し出すが、その際の調達コスト(預金金利や金融市場への利払い)を上乗せして貸し出す。貸出金利と調達コスト(金利)の金利差が銀行の儲け(利ザヤ)となる。
ただし、儲け優先で、むやみに高い利子をつけるわけにはいかない。住宅ローンの借入額は、年収の何倍にもなる額で、大半の人は、返済に数十年もかかる。利子があまりに高ければ、負担が大きくなり、家を買う気持ちが薄れてしまう。自動車ローンなどに比べて、金利が低く設定されているのは、土地を担保にできることもあるが、家という大きな買い物への障壁を少しでも減らそうという配慮もある。
余談だが、日本では「持ち家」を推奨するために、住宅購入資金を低金利で融資する特殊法人の住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)が1950年に発足、住宅ローンのほとんどを引き受けていた。逆にいえば、民間の金融機関はリスクがとれず低金利で住宅ローンを手掛けるのは無理だといわれていた。
しかし、客に貸し出した住宅ローンを証券化して機関投資家に販売したり、顧客に返済不能の事態が起こったときに、代わりに返済してくれる保証会社が登場したり、ローン名義人が死亡した場合に死亡保険金で相殺する生命保険制度(団体信用生命保険)などが誕生したことで、リスクヘッジできるようになった。今では、「安定的な融資先」のひとつとして、民間の金融機関が、低利の住宅ローンを手掛けられるようになっている。住宅金融支援機構は、現在、長期固定ローンの「フラット35」などの融資を行っている。
複利は、利子が利子を生む
2.住宅ローンは「複利計算」
住宅ローンについては、いろいろとわからないことが多い。利子の計算方法「複利」についてもそのひとつだといえるだろう。
「利子には単利と複利がありますが、住宅ローンは複利。人類最大の発明ともいわれる『利息が利息を生む』という仕組みです」(八ツ井氏)
わかりやすいように、運用で考えてみよう。仮に100万円を運用したとすれば、年利が2%なら、1年後の利息は2万円となる。このとき、単利であれば、2年後は100万円×2%×2年で、利息は4万円。3年目は6万円、4年目は8万円……となる。
これに対して、複利は、利息が元本に組み込まれることが特徴だ。1年目の利息は単利と同じ2万円だが、2年目になると利息を足した102万円に2%の利息がつく。つまり(100万円+2万円)×2%で2万400円の利息、3年目は(102万円+2万400円)×2%で2万808円といった具合に元本が増えていき、それに応じた利息が得られる。逆に借り入れの場合は、元本を返していかなければ、利息が複利で増えていくことになり、利子を含めた返済額は大きくなっていく。
3.固定金利と変動金利の違い
「住宅ローンで多くの人が頭を悩ませる問題のひとつは、『固定金利』にすべきか、『変動金利』にすべきかでしょう」(八ツ井氏)というように、「固定か、変動か」についてもよく議論になる。
固定金利は借り入れ期間中(あるいは所定の一定期間中)、適用される「金利」が変わらないことが特徴だ。たとえば全期間適用の固定金利1%でローンを組めば、仮に激しいインフレが起こって、金利が3%に上がっても5%に上がっても、住宅ローンに適用される金利は1%のままだ。一方、変動金利は、銀行が企業向け短期融資の際に使う金利、短期プライムレートをベースに決められている。
単純に、金利水準を比較すれば、「固定金利」のほうが「変動金利」よりも高い。だからといって「変動金利」のほうがベターとは限らない。大きく異なるのは将来の金利上昇リスクだ。金融機関は、将来の金利上昇リスクを取って固定にしている。だから、変動金利よりも高く設定されるわけだ。
実際は、住宅ローンのような長期の固定金利ローンの場合、償還期間が長い債券市場の金利をベースに利回りが設定されている。なかでも、取引量・発行量、ともに圧倒的に多い「新発10年物国債」の利回りが基準になっている。
マイナス金利政策で住宅ローンは空前の低金利
日銀では「マイナス金利政策」など、大規模な金融緩和を実施している。現在、短期金利はマイナス、長期金利の基準となる新発10年物国債についても年利0.05%と、ほぼ0近辺で推移している。そのため、変動金利も固定金利も大きな差がない状況。まだまだ変動金利を選択する人が多数派だが、将来の金利上昇に備え、固定金利を選択する人が増えている。
固定金利の場合は、「全期間固定金利型」と「固定金利期間選択型」がある。全期間固定金利は、借り入れをしている期間中はずっと同じ金利が適用されるが、固定金利期間選択型は、選択した期間のみ固定金利となり、それ以降は原則変動金利が適用される(その時点の金利で固定金利を選択することも可能)。固定金利選択型は固定金利期間が2~10年程度(期間が20年以上のものもある)と比較的短く、金利も全期間固定金利型よりも金利は低く設定されている。また、固定金利期間が短いほうが金利も低い。
変動金利の場合、4月と10月に年2回金利の見直しがあるのが一般的。市場の金利(短期金利)が低くなれば、それに連動して低くなる。金利が下がっていく局面では、適用金利が変わる変動金利が有利だ。しかし、金利が高くなっていく局面であれば、連動して利払いも増えていく。結果的にローン開始当初の固定金利よりも金利負担が上回ってしまうケースも起こりうる。
もっとも、急激な金利上昇に合わせて返済額を引き上げれば、払えなくなる人が続出するかもしれない。そこで激変緩和措置として、月の返済額は5年間変わらないという「5年ルール」と、5年後に返済額を改定する際に前回の支払額から25%以上は引き上げないという「125%ルール」が設けられている。ただ、金利が上がっていれば、利子の額も増えていくので、トータルの支払額は増えることになる。
固定か変動かを決められない場合は、固定と変動を組み合わせる返済方法(ミックス返済)を選べる金融機関もある。
4.優遇金利の意味
金利を考えるうえで、もうひとつ外せないのが優遇金利の存在だ。ローンの金利には、まず、市場金利に利益を加えた「基準金利」がある。金融機関によっては「店頭金利」「店頭表示金利」などと呼ぶところもある。
基準金利は「定価」や「希望小売価格」といったものと考えればいい。小売店では定価から割引して販売されるように、住宅ローンの世界にもそれが存在する。割引にあたる存在が、ローンでは「優遇金利」となる。金融機関が優遇金利を適用したい相手は、貸し倒れがなさそうな人、あるいは自社のサービスをたくさん利用してくれる人などだ。
優遇金利の適用を受けられる代表的な条件は、「頭金を一定額以上いれている」「給与振込口座を、ローンを組む金融機関の口座にする」「ローンを組む金融機関の口座を公共料金や保険料や税金などの引き落としの口座にする」「ホームバンキング、ネットバンキングの利用者」などが代表例だ。また、金融機関と同じグループ企業の社員、提携ローン(金融機関と不動産会社など特定の企業同士が組んだローン)、特定の日までに申し込めば優遇金利が適用されるキャンペーン金利などもある。
基準金利から優遇金利を引いた金利が”適用金利”
基準金利から優遇金利を引いた金利を適用金利という。ローンで支払うのは適用金利による利息だ。たとえば、基準金利が年利2.8%で、優遇金利が年利マイナス1.8%ならば、適用金利は、2.8-1.8=1.0で、年利1.0%ということになる。
「ただ、優遇金利に飛びつくのは禁物。たとえば、グループ会社だから特別の優遇金利が適用されると思いきや、他の条件の人と適用金利は変わらないといったケースもあるようです。また、他の金融機関と比較すると、そもそも金利が高いということもあるので、広く比較することが必要です」(八ツ井氏)
また、優遇ローンには「当初型」という、最初の数年だけは優遇幅が大きく、それ以降は優遇幅が小さくなるものと、借入期間中、固定金利だろうが、変動金利だろうがずっとその優遇金利が適用される「全期間型」のものがある。今は給料が少なくても将来収入増が見込めそうなら、最初は支払い負担が少ない「当初型」を選択するのも手だろう。いずれにしても自分のライフスタイルや適用条件をチェックして、最も有利な優遇金利を受けられる組み合わせを考えたい。
ただ、返済が滞ったり、優遇金利を受けた時の条件と変わったりした場合には、優遇金利が取り消されることもあるので注意しておきたい。
5.元利均等払いと元金均等払いの違い
もうひとつローンの返済方法で、引っ掛かるワードは「元利均等払い」か「元金均等払い」という選択肢だ。
「元利均等払いの元利とは、元金(借りたおカネ)と利息を均等に返済していく返済方法のことです」(八ツ井氏)
たとえば、3000万円を35年、2%の固定金利で借りたとしよう。金利が全期間固定で、かつ元利均等返済なら、返済額は毎月9万9379円と返済期間中は一定なので返済計画が立てやすい。しかし、借り入れ当初の中身をみると、9万9379円のうち、元金は4万9379円。半分以上の5万円が利息となる。前述したように利子は複利なので、元金が減れば利息の占める割合も減っていくのだが、最初のうちは利子の支払い分が多くなるので、なかなか元金が減らない。
それに対して元金均等返済は、その名のとおり、元金を均等に返していく返済方法だ。3000万円を元利均等と同様の条件で借りた場合、毎月元金は7万1429円ずつ返済することになる。それに利息が1回目は元利均等と同額の5万円、2回目は4万9881円と加わるので、当初の返済額は12万円以上になる。
「元金均等返済は元金が早く減るので、まったく同じ条件で借り入れた場合に総支払額を比較すると、元利均等返済よりも約120万円安くなります。ただし最初のうちの支払い額は高くなるのがネック。それだけの返済力があれば、元利均等返済を選びつつ、繰り上げ返済で借入期間を短縮するのも一案です」(八ツ井氏)
元金均等返済が利用できない金融機関もある
なお、変動金利で元金均等返済を行う場合、5年ルールや125%ルールは適用されない(利払い額がそのまま上がっていく)。さらに、元金均等返済が利用できない金融機関もあるので事前に確認しておいたほうがいいだろう。
6.繰り上げ返済とは
余裕資金が生じた場合は、数カ月分を余分に返済する「繰り上げ返済」という手もある。繰り上げ返済の場合は、すべて元本の返済に充てられるため、将来の利払いを減らす節約効果がある。なお繰り上げ返済には、支払い期間を短縮する「期間短縮型」か、月々の支払いを軽減する「返済額軽減型」の2つから選ぶことができる。
ただ、繰り上げ返済には、一定額以上などの制限が設定されていたり、手数料が発生したりする場合もある。最近は、Web経由の手続きであれば、手数料不要のケースが多くなっている。いずれにせよ、条件について確認しておいたほうがいい。
7.借り入れ先を変更する「借り換え」
最後に、「借り換え」を紹介しよう。借り換えとは、借入先の金融機関を変えること。たとえば金利が高いとき固定金利でローンを組んだが、その後、金利が低くなり、金利が低い別の金融機関のローンに借り換えするといった具合だ(同じ金融機関内での借り換えは基本的にできない)。金融機関によって、適用金利も異なるため、より利息が低い金融機関を探して、借り換えをする人も少なくない。ただ、借り換えには、手数料や登記費用などの諸経費が発生するため、利払いが低くなっても、総額では負担が多くなることもある。借り換えの前にはそうした諸経費を含めて、どちらがトクになるか計算したほうがいいだろう。
住宅ローンは金融機関によって、金利も異なるし、優遇金利や手数料などの諸経費も異なってくる。逆にいえば、ちょっとした工夫や選択の仕方の違いでトクをしたり、損をしたりする。話が複雑だからこそ、ローン談義に花が咲くわけだ。まだ住宅ローンには縁遠い若手社員も、先輩たちの話に積極的に耳を傾けてみるのはどうだろうか。ちょっとした将来のシミュレーションを楽しめるかもしれない。
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提供元:20代のうちに覚えたい「住宅ローン」基礎知識│東洋経済オンライン