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2017.08.17

「ロボットが資産運用」、貯金感覚で広がるか│簡単な質問への回答で1万円から運用可能に


ロボアドバイザーは顧客に合ったポートフォリオを自動で組んでくれる(写真:お金のデザイン)

ロボアドバイザーは顧客に合ったポートフォリオを自動で組んでくれる(写真:お金のデザイン)

プログラムが自動で資産運用をしてくれる「ロボアドバイザー」のビジネスが盛り上がっている。「ロボアド元年」ともいわれた2016年から1年あまりで、早くも業界の勢力図が大きく動きつつある。

矢継ぎ早に新戦略を打ち出しているのが、2014年に国内で初めてロボアド事業を始めたベンチャー、「お金のデザイン」だ。6月8日にSBI証券、住信SBI銀行と業務提携。7月26日からは、これら2社経由で自社のロボアドサービス「THEO(テオ)」の利用者募集を始めた。

ロボアド市場は日本でも急拡大中

ロボアドとは、アルゴリズムに基づいて、顧客に適した資産配分(ポートフォリオ)を自動で提案してくれるサービス(アドバイス型)や、さらに提案したポートフォリオに沿って自動で資産運用をしてくれるサービス(投資一任運用型)のことを指す。国内ではこれまでに複数の企業が、アドバイス型で13種類、投資一任運用型で8種類のサービスを展開している。

人件費などの固定費の負担が少ないため、対面型の資産運用アドバイザーよりも安い料金で同様のサービスが受けられるのが特長だ。米国では、投資経験の少ない資産形成層が運用を始める入り口として広く利用されており、将来的に世界の資産運用の1割がロボアド経由になるとの予測もある。

テオは投資一任運用型にあたり、運用資産の1%相当額を年間の報酬として支払えば、世界の約6000種類のETF(上場投資信託)から最適な組み合わせを提案し、自動で運用してくれる。顧客からの預かり資産の総額は足元で約100億円。約200億円のウェルスナビ、約160億円の楽天証券(サービス名「楽ラップ」)に次ぐ、ロボアドの国内3番手だ。

8月24日にはサービスを全面的に刷新。サービス開始時に投じる最低金額を従来の10万円から1万円に引き下げるとともに、リスク許容度などを判定する事前の質問項目を投資初心者にもわかりやすいものへと変更する予定だ。

テオの全面刷新の狙いは、「始めやすく、続けやすい仕組みを作ること」(お金のデザインの北澤直COO)。まず先述の通り、初期投資の金額を引き下げた。

また、開始前の質問項目に関して、以前は元本の安全性や資産が値下がりした際の対応に関する考え方など、初心者には判断が難しいものが多かった。それを今回、現在の年齢や年収、金融資産額などを尋ねるだけの、シンプルな質問に変更。「貯金の預け替え」というイメージを持ってもらい、利用者層の裾野拡大を目指す。

テオは最大手ネット証券・銀行とタッグ

お金のデザインはネット金融大手のSBIグループとタッグを組んだ(記者撮影)

お金のデザインはネット金融大手のSBIグループとタッグを組んだ(記者撮影)

サービスの刷新以上に事業へのインパクトを与えそうなのが、SBIグループとの提携だ。SBI証券の預かり資産額は6月末で11.4兆円と、ネット証券で断トツの1位。住信SBI銀行の預金残高も約4兆円(2016年度)と、こちらもネット銀行の中ではトップだ。国内のオンライン金融市場で圧倒的な両社と提携することで、潜在顧客と接触する機会が一層増やせるという算段だ。

実際、預かり資産額で国内のロボアド首位のウェルスナビも、その3分の2がSBIグループ経由となっている。同社は今年初めにSBI証券と住信SBI銀行経由の利用者募集を始めたことで、裾野の広がりに拍車がかかった。

「テオの募集開始以来、ウェルスナビの申し込みは減っていない。ただテオはウェルスナビの2〜3倍の勢いで伸びている」(住信SBI銀行の円山法昭社長)。テオにもウェルスナビと同様、あるいはそれ以上の追い風が吹いているようだ。

2016年以降、野村証券や大和証券といった大手証券会社などの新規参入が目立った国内のロボアド市場。今回お金のデザインが打ち出した新戦略によって、投資金額の引き下げで競争が激しくなりそうだ。

ウェルスナビは当初、少額だと十分な投資パフォーマンスが出せないとして最低開始金額を100万円に設定していた。だがテオに先立つこと1カ月、今年7月に30万円に引き下げている。

投資金額とパフォーマンスは背中合わせの関係だ。ハードルを下げようとして開始金額を下げると、運用パフォーマンスが犠牲になる。あるいは、パフォーマンスを引き上げるために、追加の費用を投じて取引などのシステムを増強する必要がある。事業者に残された選択肢はシステムの増強以外にない。

「ロボアドは総合格闘技だ」。あるロボアド業者首脳はそう語る。投資のアルゴリズムだけでなく、証券取引や税金処理のシステム、送金や決済の体制整備、アプリの開発、セキュリティ、ブランド戦略など、一般的な金融サービスやアプリの開発よりも幅広い分野に力を割く必要があるからだ。

顧客は大事な資産を預けるので、通常のアプリなどに比べてサービス内容を見定める視線が厳しい。「使ってみて、全部の要素が整っていると実感できないと、利用者はお金を入れてくれない」(同)。

優秀なエンジニア確保が喫緊の課題

ウェルスナビのポートフォリオ表示画面(写真:ウェルスナビ)

ウェルスナビのポートフォリオ表示画面(写真:ウェルスナビ)

上記のような要素の品質を高めようとすると、それぞれの分野で優秀なエンジニアが必要になる。ウェルスナビ、楽ラップ、テオのトップ3は、人材採用がサービス品質向上につながり、さらに優秀な人材が集まるという好循環を作り出せている。

一方、勝ち組と負け組は早くも鮮明に分かれてきている。そのほかのロボアド業者は預かり資産が数十億円どまりで、「ロボアドに必要な要素がどこか欠けている状態だ」と、前出のロボアド業者首脳は明かす。

ウェルスナビはクレジットカードや電子マネーで買い物をする際、一定金額を自動で積み立て、ロボアドでの資産運用に振り向ける「マメタス」というサービスを5月に始めた。狙いは「資産運用に対するハードルを下げ、自社のサービスを“インフラ”として利用者の生活に欠かせないものにしていくこと」(柴山和久CEO)。ただ、投資金額は一段と少額化するので運用の難易度はさらに高まる。

この“インフラ”という言葉は、お金のデザインの中村仁CEOも重視する。「金融商品は模倣性が強く、すぐに陳腐化する。だから、銀行口座と直結させるなど、インフラになることが重要。現預金として持つのではなく、ロボアドで運用しようというマインドに変われば、競争に勝てる」。

約1800兆円の個人金融資産のうち、過半が現預金になっている日本。長年叫ばれてきた「貯蓄から投資へ」の流れを現実のものとできるか。ロボアド業者が目指すインフラ化の動きが、カギを握りそうだ。

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猪澤 顕明 :東洋経済 記者

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