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2017.08.15

「よい無料」「悪い無料」を見極める6つの視点│「無料」につられがちな人を待ち受けるワナ


「よい無料」と「悪い無料」の違いを考えます(写真:Graphs / PIXTA)

「よい無料」と「悪い無料」の違いを考えます(写真:Graphs / PIXTA)

私たちは自分のおカネが目減りすることを恐れている。そのため、タダで物やサービスが手に入ると聞くと、つい試してみたくなる。

2009年に日本でも出版されベストセラーになった『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(クリス・アンダーソン著)では、さまざまな無料のスタイルと、それが生み出す経済モデルについて述べられているが、つまるところ、無料は“最大の集客装置”ということだ。

どうしてわれわれはこんなに“無料”が好きなのか。この本の中でも引用されている行動経済学者、ダン・アリエリーの弁によると「値段ゼロは単なる価格ではない。ゼロは感情のホットボタン、つまり引き金であり、不合理な興奮の源」(著書『予想通りに不合理』より)だという。

その理由は、「たいていの商取引にはよい面と悪い面があるが、何かが無料!になると、私たちは悪い面を忘れ去り、無料!であることに感動して、提供されているものを実際よりずっと価値があるものと思ってしまう」「それは人間が失うことを本質的に恐れるからではないかと思う。無料!のほんとうの魅力は、怖れと結びついている。無料!のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない(なにしろ無料なのだ)」(同書より)。

簡単に言えば、「おカネを払わない以上、損はしないはずだ」と考える心理だ。しかし、『フリー』なる本が話題になったことが示すように、おカネを払わないどころか、「無料」の先には広大な市場が手を広げて私たちを待ち構えているのが現実だ。

筆者はなるべく賢明な消費者でありたい。そこで、この無料経済のトラップに引っ掛からないための、「よい無料・悪い無料」の違いを考えてみた。

悪い無料の多くは、一見親切で飛びつきたくなる

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筆者は、よい無料、それはうっかりおカネを使ってしまう落とし穴がない、もしくはその可能性が相当低い無料だと考える。まずはその逆、引っ掛かってはいけない悪い無料について、3つにまとめてみた。

1 入り口無料

2 動機無料

3 条件つき無料

最初の「入り口無料」は、無料体験、無料相談、無料セミナーなどで人を呼び込むものや、当月無料、初年度無料として、入り口の敷居を下げ参加を促すパターンだ。

前者は企業が行うかぎりは、必ず無料としたコスト回収の仕組みができていると考えよう。ウォーターサーバーやコーヒーマシンの無料体験は一度その便利さを体験すると引き続き使いたくなるだろうし、老後資金の貯め方と称する無料相談やセミナーには個人年金保険などの提案がつきものだ。当月や初年度無料の場合は、一度契約を結び、会費の支払いなどが習慣化すると解約が面倒になり、そのまま払い続けることになりがちなため注意。

次の「動機無料」は最も身近な、“おとり”としての無料だ。お店のニューオープンにつき来店者に無料プレゼント、または、お1人様につきドーナツ1個差し上げますなど、それを動機にして人を集めるものだ。お店や施設に出向き、その無料でもらえるものだけをもらって帰るのがしにくいため、追加でなんらかのおカネを払うことになる。

しかし、もし強い気持ちであなたがタダでもらえる物だけを受け取れるなら、それは不要な出費を伴わないので、「よい無料」になりうる。ちなみに筆者は猛暑日の午後に、オープンしたてのカフェの前でアイスクリーム1個をサービスしますというチラシを受け取ったが、やはりそこまでの強い意志は持てなかった。

3つ目の「条件つき無料」は、無料と書いてあっても条件がくっついているものを言う。たとえばショッピングセンターの駐車場で、「買い物したレシート2000円以上で2時間無料」だったり、カードの年会費がかかるところ年1万円以上の購入があれば無料、などだ。送料無料になるまでネットで買い物し続けるのもここに入る。無料にするためにせっせと買い物をするのはコスパが合わないのでは、と立ち止まることが必要だろう。

「よい無料」の3つ

それではよい無料、つまり直接的に金銭を取られる可能性が高くない無料とは何だろうか。以下の3つに大別してみた。

1 公的無料

2 報酬的無料

3 広報的無料 

最も引っ掛けがない無料は、「公的無料」だ。公的なサービスの一環で行われ、そこで儲ける必要がないため、安心できる。

たとえば自治体が地域緑化のため花の苗を配る、緑のカーテン栽培に向いたツル性植物を配る、などだ。苗をもらったあとに用土や鉢や肥料買うことになるかもしれないが、その販促の目的ではない。また、家の耐震診断を無料で行ってくれるという自治体もある。緑化や省エネ化、街の耐震化は公の目的にかなうため、自治体はそれに予算をつけ助成金や補助金を出してくれるのだ。この点、住民サービスの一環の無料は安心して受け取っていい。

次に「報酬的無料」。アンケートに答えた方に記念品を差し上げます、というパターンだ。懸賞やサンプルへの応募もこれに入れてもいいかもしれない。自分の属性情報を先方に渡すことになるため、別の対価を払っているともいえるが、直接的に金銭を払うことにはつながりにくい。

最後に「広報的無料」だ。これは、企業や団体が自社の技術や製品をアピールするため、宣伝費をかけ無料にしているパターン。新製品のサンプルを配ったり、PRイベントに招待するなどがそれにあたる。ショールームや工場見学を無料で公開するという例もある。特に飲食系の工場見学は根強い人気を博し、ビールメーカーの工場見学では出来たてを試飲できるため何度も通う常連さんもいるという。

この「広報的無料」はもっとうまく使いこなしてもいいかもしれない。せっかくの夏休み時期なので、予約不要で利用できる東京の「無料スポット」も紹介しておこう。

「広報的無料」を使い倒す

公的な施設でいえば、「ポリスミュージアム(警察博物館)」(中央区京橋)。2017年4月にリニューアルオープンしたという同館をのぞいてみたが、平日にもかかわらず子ども連れや外国人でにぎわっていた。6階まである館内は、「警視庁の活動について紹介する、見て、学び、体験できる博物館」だそうだが、交番や指紋採取の疑似体験、110番疑似体験などのほか、子どもは警察官の制服(サイズ100、120、140)を借りて白バイなどに乗って記念撮影ができる。体験型コンテンツが充実していて、筆者も家の防犯チェックコーナーにチャレンジしたが、点数制で結果が出るので親子でやってみると楽しく学べるのではないだろうか。

警察とくれば次は消防だが、新宿区四谷三丁目には「消防博物館」(東京消防庁 消防防災資料センター)がある。こちらも江戸の火消しから始まる消防の歴史を学べるほか、大正から平成までに活躍した消防自動車8台を展示してある。警察も消防も子どもが興味を持つ分野でもあるので、宿題の絵日記や自由研究のネタ探しに役立つのではないかと感じた。

また、全面無料ではないが、東京都立動物園である上野動物園は都内在住・在学の中学生は無料なので、小・中学生を持つ東京都在住の家族なら大人分だけでOK。さらに、老人週間(9月15~21日)期間中は60歳以上の方と、その付添者(1名)は無料になるため、小・中学生の孫が祖父母と遊びに行く場合、条件に合致すれば全員無料も不可能ではない。

先ほどの工場見学のほか、レジャーや学びに使える無料の企業施設もある。アミューズメント色が強いのは東京お台場にあるトヨタの体験型ショールーム「メガウェブ」だ。単なる車の展示だけではなく、人気ゲーム「グランツーリスモ6(GT6)」を体感できるモーター・スポーツ・シミュレーターや、人の動きを感じて動く次世代型パーソナルモビリティ「Winglet」の試乗などのプログラムが無料で楽しめる。もちろん、トヨタ車の試乗ができる専用コースも人気で、高級車クラウンマジェスタにも乗れる(試乗体験には300円かかる)。

もし、話題のAIやIoTといった先端技術に興味があるなら、「TEPIA先端技術館」(港区北青山)をのぞくのもいい。さまざまな分野の先端技術を集め、間近で体感できる展示施設で、協力企業が提供する最新技術を見たりコミュニケーション型ロボットとのふれあい体験ができる。先の「ポリスミュージアム」は小学校低学年の親子で行って楽しめる施設だが、こちらは中学生以上のほうがいいかもしれない。「高齢化社会」「地域間格差」を先端技術でどう解決するかといった硬派な展示も見応えがある(展示内容は変更になる可能性あり)。

東京の話ばかりで恐縮だが、無料ついでに協賛企業の無料巡回バスも便利だ。アクアシティお台場やビーナスフォートなどを巡回する「東京ベイシャトル」、八重洲から日本橋、京橋などを回る「メトロリンク日本橋」、大手町から日比谷・有楽町を巡回する「丸の内シャトル」がそれで、レジャーやビジネスの足に活用したい。こうした無料は、安心して利用していいだろう。

冒頭に書いたクリス・アンダーソンの『フリー』では、無料を支える多くの有料の仕組みが語られる。われわれが全面的にそれに抗うのはもはや難しいだろう。よい悪いももちろんだが、自身でその良しあしを見極めたうえで、納得できる無料を選択したいものだ。

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松崎 のり子 :消費経済ジャーナリスト

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提供元:「よい無料」「悪い無料」を見極める6つの視点│東洋経済オンライン

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