2025.02.18
どうすれば得?「所得控除」意外と知らない活用法|たとえば共働き夫婦の医療費控除の申告はどちらがいい?
(写真:mapo/PIXTA)
今年も確定申告の時期を迎えました。今年の提出期限は2月17日から3月17日まで。
「ちょっと面倒で、後回しにしてしまっています……」
この時期になると、私のもとにも、こうした声が本当に多く届きます。
確定申告によって、昨年1年間の所得と所得税の申告、及び納税を行いますが、私たちが納めている所得税(や住民税)は、自分自身の1年間の所得に決まった税率をかけて算出されています。その際にポイントとなるのが「所得控除」です。
これは、自身や家族の状況に応じて、所得から一定の金額を差し引くことができる制度で、上手に利用することで、所得金額が少なくなり、結果として所得税(や住民税)を軽減することができるという「お得な制度」とも言えます。
この所得控除は、一般的に確定申告をする必要のない企業にお勤めの方ももちろん利用できます。お勤めの方は、既に年末調整の書類に記入して会社に提出したことと思います。
年末調整は、企業が行う手続きのことで、従業員一人ひとりについてその年に支払うべき所得税額を算出し、すでに給与から天引きしている源泉徴収税額をもとに年末に過不足分を調整するものです。
このため、従業員は所得税の控除に該当するものがあれば、書類に記入することで申告し、証明書もあわせて提出します。
よくある質問とは
「年末調整の書類って、何を書けばよいんでしたっけ?」
「iDeCoに加入している分の金額はどこに記入したらよいですか?」
こういった質問を多くいただきますが、これは「いったい何のために記入し、提出しているのか?」ということを考えてみると、意識がガラッと変わってきます。
なぜなら、前述の通り、申告することで、既に納めた税金の一部が還付される(戻ってくる)というとても大切で、お得な手続きだからです。
ですから「このお得な制度を活用しない手はない!」ということに気付けた人は、毎年とても賢く利用しているのが事実です。
“金融リテラシー”という、知らないと損をする(知っていると得をする)知識の一つですので、これを機に、よりうまく所得控除を活用するために今から何ができるのか?という視点で、あらためて実際に寄せられたご質問をもとに考えてみたいと思います。
意外と多い? 所得控除が使えるケース
確定申告をすると、さまざまな所得控除があることに気づきます。
医療費が一定額を超えた場合に適用される「医療費控除」や、ふるさと納税をした際に利用できる「寄附金控除」や、「生命保険料控除」など以下の所得控除があります。
なお、医療費控除や寄附金控除は年末調整では申告できないため、会社にお勤めであっても確定申告を行う必要があります。(ただし、ふるさと納税については「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入することで、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられるワンストップ特例制度もあります)。
質問①「医療費控除は医療費が10万円を超えないと使えないですよね?」
→医療費控除は、その年の1月1日から12月1日までの間に支払った医療費が10万円を超える場合、その超えた金額を総所得金額から差し引くことができる制度です。
「医療費に10万円も使わなかった」とか、「あと2万円足りなかった……残念(涙)」などといった声を本当によく耳にします。
しかし、医療費は夫婦や家族で合算して申告することが可能です。自分で使った医療費のほかに、配偶者や子どもたちのために使った医療費があれば合計額を医療費控除として利用することができます。
【ポイント①】
まず、課税所得額が200万円以下の人は、医療費が課税所得額の5%を超えれば、医療費控除を受けることができます。
夫婦共働き世帯の場合、家族の医療費を合算して申告する場合、夫婦どちらでも申告が可能です。たとえば、夫の年収が高くても、妻の課税所得額が200万円以下であれば、妻が申告することで、医療費が10万円以下でも医療費控除を受けることが可能になります。
では夫婦それぞれが200万円以上の課税所得がある場合は、どうすればよいでしょうか? この場合は、所得額の高いほうが申告することで、所得税率も高くなるため、その分、税金の還付額も多くなり、より効果的になる可能性が高いです。
(※ただし、医療費控除には上限があり、控除できる金額の上限は200万円であるため、上限まで医療費控除を受けたい場合、個別に医療費控除を受けたほうがよい場合があります)
えっ、これも医療費に含まれる?
【ポイント②】
見逃している可能性のある医療費があるかもしれません。
医療費の中には、病院に行く際の交通費や、ドラッグストアなどで購入した薬代も対象に含まれます。
また、 子どもの眼鏡を購入した費用や、歯列矯正なども、医師による治療を目的とした医療費であれば医療費控除の対象になります。
(※ただし、予防や美容を目的としたものは医療費控除の対象外です。対象となる医療費については、国税庁のホームページに詳しく記載されていますので気になる医療費は確認してみてください)
質問②「家計から資産運用に回す金額が限られている場合、iDeCo(イデコ)に加入するなら、夫婦どちらか課税所得の高いほうが掛金を拠出したほうがよいのでしょうか?」
→iDeCoは、公的年金の上乗せを目的とした私的年金制度で、掛金の全額が「小規模企業共済等控除」の対象になる制度です。
質問のように、夫婦どちらか一方のみが加入する場合には、所得控除のことを考えるなら、もちろん課税所得の高いほうが掛金を拠出することで、所得税率も高くなるため、その分、税金が還付される金額も多くなります。
ただ、本来ならiDeCoは自分で掛金を拠出し、自分で運用し、老後にその成果を自分自身の年金として受け取る制度です。受け取る際にも税控除があるため、余裕があれば夫婦それぞれ加入し、それぞれが所得控除を申告することで税金の還付を受けるほうがよりお得になる制度といえます。
個人年金保険料控除を受けられる条件とは?
質問③「個人年金保険に加入しているのですが、所得控除の対象になりますか?」
→はい、「個人年金保険料控除」(生命保険料控除の一つ)の対象になります。ただし、控除額に上限があることや、個人年金保険料税制適格特約を付加していることが条件となりますので、注意が必要です。
個人年金保険は、iDeCoのように国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せして自分自身の年金を自分で準備する私的年金で、その年に支払った個人年金保険料の金額に応じて所得控除が受けられるため、老後の資産形成としてお得な選択肢の一つです。
「個人年金保険料控除」は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」と並んで、生命保険料控除の一つですが、控除を受けるためには、個人年金保険に加入し、個人年金保険料税制適格特約を付加していることが条件となります。
個人年金保険料税制適格特約をつけるには、保険料の払込期間が10年以上あることなど、決められた要件を全て満たす必要がありますので、加入する際に担当者に確認することが大切です。
また、控除額はその年に支払った保険料の額に応じて増減し、年間8万円を超える保険料を支払った場合に、控除額の上限である最大4万円が適用されます。
つまり、個人年金保険料控除を上限まで使いたい場合は、個人年金保険の年間保険料を8万円(月々の保険料で約6667円)以上にすることが条件になります。
質問④「ふるさと納税の申し込み期限はいつまでですか?」
→「今年こそ、ふるさと納税をしようと思いつつ、確定申告の時期が来てしまいました……」といった声を、毎年のように耳にします。
ふるさと納税に申し込み期限というものはありませんので、いつでも始めようと思った時に申し込むのがよい、その時こそがタイミングと言えます。
申告するタイミングに注意
ただし、所得控除を受ける場合、他の控除と同様に、毎年1月1日から12月31日までの利用分が対象となりますので、2024年12月31日を過ぎた場合は今回(2024年分)の確定申告ではなく、2025年分の確定申告で「寄附金控除」として申告することで、所得税の還付が受けられます。
なお、12月31日までに入金が完了していることが要件となりますので、2024年の年末にぎりぎり申込みをしただけで、入金は年明け(2025年)にしたという場合は、2025年分のふるさと納税(2026年に確定申告する)として扱われますので、注意が必要です。
この他にも住宅ローン控除などさまざまな控除がありますが、ふるさと納税(寄附金控除)や、iDeCo(小規模企業共済等控除)、個人年金保険(生命保険料控除)などの所得控除は誰もが利用でき、既に納めた所得税が戻ってくるお得な制度です。
この確定申告の機会にあらためて見直し、まだ始められていない場合は、今年の所得控除からスタートしてみてはいかがでしょうか?
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提供元:どうすれば得?「所得控除」意外と知らない活用法|東洋経済オンライン