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2024.10.03

「106万円の壁」と「130万円の壁」はどちらを優先?|パートタイマーが社会保険料の天引きを避けるポイント


(写真:Sasaki106/PIXTA)

(写真:Sasaki106/PIXTA)

10月から、パートやアルバイトなどで働く人の社会保険加入の対象が広がりました。これまでは101人以上の企業が対象でしたが、今回の改正により、従業員数51人以上の企業で働き、かつ労働時間や賃金などの要件も満たす人は、パートやアルバイトでも自分の勤務先で健康保険と厚生年金(合わせて社会保険)に加入することになります。

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もし、社会保険に加入したくないという場合、今回改正された従業員数要件については、勤務先を変えない限り個人ではコントロールしにくいものです。しかし労働時間や賃金は、勤務先との相談などである程度抑えることができるでしょう。

パートやアルバイトをしている人には、こうして社会保険への加入を避けるケースもありますが、想定外の残業で労働時間が週20時間を超えてしまった場合や、年収が106万円を超えてしまった場合にはどうなるのでしょうか。

社保加入の要件に残業代は含まない

収入に関わる加入要件は、「1カ月の所定内賃金が8.8万円以上」とされています。所定内賃金というと、通常は毎月決まって支給される基本給のほか各種手当も含まれますが、社会保険の加入要件においては一部の手当を含まずに判断します。

除外されるのは時間外労働手当、休日・深夜手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当などです。つまり残業代は含まれませんので、もし残業によって1カ月の収入が8.8万円を超える月が生じても、それだけを理由にすぐに社会保険に加入しなければならないわけではありません。

また、賞与、業績給、慶弔見舞金も対象外です。所定内賃金の月額が8.8万円の場合、年収換算すると約106万円になります(「年収106万円の壁」とも呼ばれます)。

しかし、勤務先の業績が好調でボーナスを受け取ったり、冠婚葬祭が発生して祝い金や弔慰金を受け取ったりした結果、年収が106万円を超えても、そのために社会保険への加入が必要になることはありません。

残業時間を含まずに週20時間以上で対象に

労働時間にも「週の所定労働時間が20時間以上」という要件がありますが、こちらにも残業時間は含まれません。臨時的に労働時間が20時間以上になってしまっても、すぐに社会保険の加入対象となるわけではありません。

ただし、実労働時間が2カ月連続で週20時間以上となり、その後も引き続き週20時間以上見込まれる場合には、3カ月目からは社会保険に加入することになっています。一時的な残業であれば問題ありませんが、恒常的に労働時間が長くなりそうなときには注意が必要です。

社会保険の加入を避けたいという人の中には、夫が会社員や公務員で、妻がその扶養に入ってパート・アルバイトをしているようなケースもよくあります。

ここで注意したいのが、社会保険の加入要件と、扶養に入れるかどうかの要件は違うことです。

社会保険の加入要件は収入面でいうと年収106万円相当が基準になります。一方、扶養に入れる家族(扶養家族)の収入要件は年収130万円までとされています(「年収130万円の壁」とも呼ばれます)。

会社員や公務員の配偶者は、配偶者自身の年収が130万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。扶養に入っていると、自身で保険料を負担することなく健康保険に加入でき、老後には国民年金部分の老齢基礎年金を受け取れます。

ですから扶養に入りながらパートをする人は稼ぎすぎて扶養から外れることがないよう、「年収130万円の壁」を気にするケースがあります。

しかし、扶養家族のパート・アルバイト先の従業員数が51人以上で、労働時間などの要件にも該当すれば、「130万円の壁」よりも「106万円の壁」が優先されます。たとえ年収が130万円未満でも、パート・アルバイト先で社会保険に加入し、扶養からは抜けなければなりません。

なお「106万円の壁」と「130万円の壁」では、収入要件の判定に含まれる収入の範囲が異なることも要注意です。

社会保険の加入要件で基準となる収入は、前述のように所定内賃金で、残業代や通勤手当、ボーナスなどは含まれません。

一方、扶養家族の認定では継続的に得られる収入が幅広く含まれます。詳細な判断基準は企業や個別のケースによって異なりますが、給与のほかボーナス、通勤手当、不動産賃貸収入、年金、株式の配当や預貯金の利子、雇用保険の失業給付や育児休業給付金、出産手当金なども収入としてカウントされ、年収130万円未満であるかを判定するのが一般的です(退職一時金、出産一時金、遺産相続、不動産の売却益など、継続性のない収入は含まれないことが多いようです)。

収入の判定方法も違う

また、収入の判定方法も異なります。社会保険加入は、パート・アルバイト先が雇用契約書などから所定労働時間や所定内賃金を確認し、要件に該当する従業員に加入を呼びかけることが多いようです。

これに対して、扶養家族になるには配偶者の勤務先の認定を受けるために、自分で収入額を証明する必要があります。扶養に入るための認定では今後1年間の見込み年収を申告しますが、その根拠資料として、過去の給与明細や課税証明書などを添付するのが一般的です。

また、繁忙期の残業などで一時的な収入増があった場合には、パート・アルバイト先にそのことがわかる証明書を発行してもらえば、約2年間(扶養認定が年1回の場合)まで扶養から外れない措置もあります。(106万円の壁を理由にパート・アルバイト先で社会保険加入する場合を除き、)年収130万円以上になってしまったら、その時点で必ず扶養から外れてしまうわけではありません。

どうしても扶養内で働きたい場合には、社会保険の加入要件と合わせて扶養認定の要件もしっかり確認しておくことが大切です。

社会保険に加入すると、年収106万円の場合、健康保険料と厚生年金保険料で月に約1万3000円が天引きされます。年間で約16万円、手取り収入が減ることになりますので、決して軽い負担とはいえません。

手取りが減らないようにする支援策もある

そこで活用できるのが、2023年から始まった国の「年収の壁・支援強化パッケージ」という支援策です。106万円の壁を超えて社会保険に加入した人については、手当の支給や社会保険料の負担を実質的にゼロにするしくみが設けられています。

たとえば、パート・アルバイト先の企業が社会保険に加入した従業員に手当を支給して収入アップに取り組んだ場合には、国から企業に対して従業員1人あたり3年間で最大50万円の助成金が支給されます。

社会保険に加入すれば、将来に受け取る老齢年金が増える、傷病手当金や出産手当金の対象になるなど、中長期的なメリットもあります。

それでも、短期的な手取り収入の減少は、これまでパート・アルバイトで働く人にとって社会保険加入の大きな阻害要因になっていました。支援策を活用することで、手取りを維持しながら社会保険に加入し、健康保険や年金の保障を手厚くすることも可能です。

ただ、これは国が企業を補助するもので、個人が直接国から受け取れるものではありません。制度を活用するには、企業に手続きをしてもらう必要があります。社会保険の加入で手取り収入が減る心配がある場合には、パート・アルバイト先が制度を導入しているか確認してみるといいでしょう。

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