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2024.08.06

「末期がん闘病」2年してわかった病院選びのコツ|こんなにもある「都心で闘病」のメリットとは


都心の大病院の窓からは、シティホテル顔負けの景色が広がります(筆者撮影)

都心の大病院の窓からは、シティホテル顔負けの景色が広がります(筆者撮影)

ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。

先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記。大好評の連載第16回(前編)です。

東京都港区、高層ビルの狭間にひっそりたたずむ古くて小さなマンションの1部屋、12畳1ルームにミドルシニアの夫婦2人が、猫と預かり犬と一緒に暮らしています。と言いますと、「わざわざ物価の高い都会で暮らすメリットなんてない」というご意見を多々いただきます。

若い頃は人気のブランドショップや、おしゃれなカフェを巡って「都会ってキラキラしていて最高!」ってなるかもしれません。でも年齢を重ねると物欲は減退、おしゃれへの興味は薄れ、外食は「遠くのおしゃれカフェより近所のファミレスでいいや」と思う人も多い気がします。

それでも東京都心部でセカンドライフを送ることを決めたのは、夫がステージ4のスキルス胃がんで闘病しているから。今回のエッセイでは、都心で闘病するメリットと、「すぐ入院する夫」に聞いた入院のQOLを上げつつコストを下げるコツについてつづります。

がんでも機嫌よく暮らす

夫は2022年の春に2度にわたる手術で胃を全摘出し、秋には余命半年を宣告され、ロスタイムに突入してからすでに1年以上が経過しました。入退院を繰り返しながらも、機嫌よく前向きに暮らしています。

【画像13枚】「荷物が軽くなる」「主治医と合わなくても」…。景色よし、居心地もよし!大都会での入院はこんな感じ ※外部サイトに遷移します

腹膜や肝臓への転移があるため、もう手術での治療はできないと言われており、抗がん剤で治療しています。抗がん剤は使っているうちに耐性がついてだんだん効かなくなっていくため、がんが進行するたびに次の薬へと変更されます。

週に数日ながら、発病後も1年ほどテレワークで仕事を続けました(現在は退職済み)(筆者撮影)

週に数日ながら、発病後も1年ほどテレワークで仕事を続けました(現在は退職済み)(筆者撮影)

現在の薬は3つめ。免疫力が極端に下がるため、人ごみなどに行くとすぐに病気をもらってしまいます。5月に感染症からの肺炎で半月ほど入院したこともあり、現在は電車や週末の繁華街などの混雑する場所は避けて暮らしています。

抗がん剤の副作用もあり、週の半分ほどは昼間も寝ています。犬と猫が添い寝します(足の甲のむくみがすごい)(筆者撮影)

抗がん剤の副作用もあり、週の半分ほどは昼間も寝ています。犬と猫が添い寝します(足の甲のむくみがすごい)(筆者撮影)

なんだか悲壮感漂う暮らしをしているような文章になりましたが、実際はけっこう機嫌よく暮らしています。この2年半の間に「あれ? まあまあ生命の危機って感じじゃない?」という瞬間もあったものの、夫は喉元過ぎれば熱さ忘れるタイプのようで、すぐにケロっとしています。

夫と同じ症状に苦しんでいる人のSNS投稿を読んで聞かせると、共感することなく「かわいそうね」と他人事のように言うので、

「いやいや、あなたも先週同じ症状で苦しんでいたよ」

と指摘すると、

「あ〜本当だね。そうだった。すっかり忘れてた」

と、テヘヘと笑うのです。関西人としては「なんでやねん!」とツッコミたくなるのですが、そんな夫の明るさ、前向きさは、私の心を軽くしてくれているのも間違いありません。

家が近ければ入院の負担と荷物は軽くなる

そんなふうに、機嫌よく暮らしてはいる夫なのですが、病人は病人。原因不明の下血や感染症による高熱など、原因はさまざまながらほぼ2〜3カ月おきのペースで入院しています。入院時に持って行く荷物はかなり少なく、リュック1つだけのことも。

入院用バッグは軽い素材のリュックを愛用中。愛用のキャップは11ぴきのねこ(筆者撮影)

入院用バッグは軽い素材のリュックを愛用中。愛用のキャップは11ぴきのねこ(筆者撮影)

身軽な夫とは対照的に、入院フロアで大きなキャリーケースの上にさらに大きなバッグを乗せた大荷物の方もよく見かけます。

入院してしまえば自分で取りに帰ることができないため「もしかしたら爪切りが必要かもしれない」「上着は2種類あるほうが便利かもしれない」などと考えだすと、増えてしまうのは仕方がないのかもしれません。

入院ルックで病院に向かい、診察を待つ夫(筆者撮影)

入院ルックで病院に向かい、診察を待つ夫(筆者撮影)

夫の荷物が少ない理由は入院慣れしているというのもありますが、家が近いというのがでかい。病院まで自転車で15分ほどの距離に家があるため、持参する着替えは1セットだけ。

「ズボン汚しちゃって替えがないよ〜」とLINEをもらえれば、面会時間中なら早ければ30分ほどでスウェットパンツを届けられるのです。

家が近いと面会の往復にかかるタイムロスが少ないため、入院している本人はもちろんのこと、家族の心理的ハードルも下がります。闘病が長くなればなるほど距離的なメリットの重要性をかみしめています。

選択肢の多さが都心の魅力

夫のかかりつけ病院はベッド数が500床以上の大病院です。医療設備の整った環境で、優秀な医師にかかれるというのが最大のメリットではあるのですが、病院が大きいと複数の医師がいるため、主治医とソリが合わない場合は交代してもらうことも可能です。

どんなにいい医者でも人間として好きになれない人はいます。嫌いな人間に自分の未来を託したり、命を預けるというのは相当なストレスなので、交代してもらえる人がいるというのは重要です。

設備の整った500床以上の大病院で治療を受けています(筆者撮影)

設備の整った500床以上の大病院で治療を受けています(筆者撮影)

そういう点では近隣に、医療体制が充実している大病院が複数あるのも、都会住みの魅力です。それは、「何か気に入らないことがあったら別の病院にいけばいいや」という逃げ場があるから。

「治療方針が気に入らないけど、他に病院がないから医者に従うしかない……」というような我慢をする必要がないことは、心理的な余裕をもたらしてくれます。

健康な時は考えたこともありませんでしたが、夫ががんになってから、都会がいかに医療的に恵まれた環境であるかということをしみじみ実感しています。

後編では、入院費用の節約まで楽しむ、入院の達人となった夫に聞いた「前向きに過ごすための、入院のコツ」についてお伝えします。

後編 ※外部サイトに遷移します

【その他の画像も】「荷物が軽くなる」「主治医と合わなくても」…。景色よし、居心地もよし!大都会での入院はこんな感じ ※外部サイトに遷移します

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提供元:「末期がん闘病」2年してわかった病院選びのコツ|東洋経済オンライン

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