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2024.03.26

65歳未満でも受給できる「障害年金」を利用して|がん治療の経済的な不安と負担を軽減


障害年金をもらいながら働くことで、負担を減らすことが可能になります(写真:ジロ/PIXTA)

障害年金をもらいながら働くことで、負担を減らすことが可能になります(写真:ジロ/PIXTA)

日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人。5人に1人ががんで亡くなる「国民病」と言われながら、その社会保障についてはほとんど知られていません。がんと診断されて1年6カ月が経過し、諸条件をクリアすれば65歳未満でも年金が受給できます。この「障害年金」について、抗がん剤治療のパイオニアで、腫瘍内科医の勝俣範之氏が解説。『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』から一部抜粋・再構成してお届けします。

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副作用などで生活や仕事が制限されるなら障害年金を

治療費を副作用の1つとする見方もあるくらい、最近のがん治療はお金がかかるのも事実です。そんな中、がんの治療を続けながら働くことは困難と考える人が53.5%に上るという世論調査の結果が2023年10月、内閣府から発表されました。

実際に、がんになると約4割が仕事を辞めています。中には職場に理解がないために解雇された人もいますが、自ら退職することはお勧めしません。

治療と仕事を両立させて、がんで通院しながら仕事を続けている人は約45万人。確実に増えてきています。

がんのための平均入院日数は、手術の場合でも2週間程度です。

公的な支援制度なども上手に利用すれば、仕事と治療の両立もできるようになってきています。

特に、ぜひ知っていただきたいのが「障害年金」です。

がんの専門医でもご存じない方がまだまだ多い制度ですが、がんの病状の進行や治療などによって、心身に障害が出たり、日常生活や仕事が制限を受けたりするような状況になったら、受給が可能です。

そもそも、年金制度は働いて収入を得ることが難しくなったときの所得保障です。だから高齢者だけのものではありません。がんによる機能障害や、全身の衰弱、抗がん剤の副作用などで生活や仕事が制限される場合には所得保障として年金を受給することができます。

初診日から1年6カ月経過していたらぜひ確認を

しかも、障害年金は老齢年金や遺族年金と並ぶ公的な年金制度のひとつで、初診日から1年6カ月以上経過し、直近1年間に年金保険料の未納がないなどの納付要件を満たせば、65歳未満の現役世代でも受給することができます。

しかし、残念なことに、がんの患者さんでこの障害年金を受給している方の割合は、ほかの病気に比べてとても少ないのが現状です。

その理由は、障害年金についての理解が進んでいないことと、そもそも申請しないと受給できないこと、さらに申請がそれなりに複雑だということなどがあげられます。

職場や家庭の支援や配慮を受けて仕事や家事が続けられている場合でも

障害年金は初診時に加入していた年金保険によって、「障害基礎年金」(国民年金)、「障害厚生年金」(厚生年金)に分かれます。

障害の程度によって、障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級、2級、3級の障害等級があり(級数が少ないほうが障害が重い)、それによって受給できる金額が変わってきます。この障害等級は、身体障害者手帳の等級とは異なり、別途定められるものです。

例えば、副作用で手指がしびれてこれまでの仕事が続けられなくなった場合や、咽頭がんによって声が出ない、骨肉腫による人口関節、直腸がんによる人工肛門など局所的ながんの障害も対象です。

職場や家庭の支援や配慮を受けて仕事や家事が続けられている場合も該当します。

毎日の出社は難しいが、会社の配慮で在宅ワークに切り替えてもらったとか、出勤時は、折々に休憩室で休ませてもらって業務を続けているなどのほか、家事では、洗濯物が重くて持ち上げられないので、家族に干してもらっている、買い物は、外出が負担なうえ、荷物が重くて必ず家族が随行するなどのケースも、該当する可能性が高いです。

制度の仕組みはいわゆる2階建てになっていて、厚生年金に加入している方は、障害の等級が2級以上なら障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金も受給できます。障害基礎年金には子の加算があり、障害厚生年金には配偶者の加給年金もあります。

最大5年分を遡って受給できる可能性もある

受給目安額は、障害基礎年金の障害等級が1級で、子供が2人いる場合で、毎月12万円ほど。障害厚生年金の方はさらに上乗せがあるので、治療費や生活費の不安がかなり和らぐことになります。

また、すべてとは限りませんが、最大5年分を遡って受給できる可能性もあります。

請求は、保険料納付などの要件を満たしていれば、医師の診断書、病歴・就労状況等申立書など、必要書類をそろえて年金事務所や年金相談センターなどに提出します。

ご自身が受給の対象か否かは、まずは医師にたずねたり、がん相談支援センターやソーシャルワーカー、市町村町役場の国民年金の窓口、近くの年金事務所や年金相談センターで相談に応じてくれます。

さきほど、初診から1年6カ月経過後が条件と言いましたが、喉頭全摘手術などの場合は、それを待たなくてもすぐに請求ができます。

ただ、審査は書類審査だけですが、審査の結果に3~4カ月かかり、その後の手続きに50日間かかります。しかも、がんの場合は、認定審査で「就労もできているのだから障害の程度が軽いのではないか」と見られがちで、年金事務所によっては厳しい対応を受けることもあるようです。

社会保険労務士に相談するのがベター

請求したからといって必ずしも認められるとは限らず、手続きのやり直しや再審請求もできるとはいえ、できれば最初から、障害年金に詳しい社会保険労務士に依頼して請求したほうが無難かもしれません。都道府県ごとに社会保険労務士会があり、全国社会保険労務士会連合会のホームページも開設されています。

また、本当に徐々にではありますが、最近ではがん診療連携拠点病院などに、保険や年金に詳しい社会保険労務士さんやファイナンシャルプランナーなども配置されています。

がん診療連携拠点病院が中心になって、地域の患者会の方々との相談会などを開催するほか、民間でもNPO団体などの支援活動が広がっています。

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がんサバイバーの先輩に体験を聞くことで、治療と仕事の両立についての悩みの解消になったり、希望がわいてきたりもします。働き続けるヒントも得られるかもしれません。

そうしたところに相談して、アドバイスを受けるのも1つの方法だと思います。

障害年金をもらいながら働くことで、体調が思わしくないときには無理して働き続けなくてもすみます。さらに、正社員からパートタイムへ変更するなど、働き方そのものを見直すこともできます。

がんと共存しながら生きていくために、障害年金をはじめ、さまざまな公的支援制度をどうか活用していただきたいと思います。

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提供元:65歳未満でも受給できる「障害年金」を利用して|東洋経済オンライン

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