2023.07.27
月収16万、1000万貯めた32歳「節約家の職業観」|収入を上げるより、"現状維持"で生活したい
あまり多くない手取りで資産を築くには、さまざまな工夫が必要。もちたまさんが心がけていることは何でしょうか(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
月収10万円(後に16万円にアップ)で1人暮らしをしながら、8年間で1000万円の資産形成に成功した、もちたまさん(32歳。資産は副業収入や投資による含み益を含む)。YouTubeチャンネル「もちたま【元月収10万円女子】」で家計簿や資産運用について発信している。
前回の記事では、もちたまさんが節約を始めたきっかけや、月10万円の生活費で暮らしていく秘訣を教えてもらった。
今回も節約系YouTuberのくらま(「倹者の流儀」)が、もちたまさんにインタビュー。節約をする中で、過去のお金の使い方で後悔したもの、そして逆に買ってよかったものについて紹介する。さらに、節約家としての職業観や恋愛観、人生観についても掘り下げて聞いていきたい。
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(前回記事:月収16万、1000万貯めた彼女の「リアルな生活費」) ※外部サイトに遷移します
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「買わなくていいもの」「絶対買うべきもの」
・洋服
前回の記事でも、もちたまさんが大学時代のアルバイト代のほとんどを洋服につぎ込んでいた話を紹介したが、この出費に関しては後から振り返っても一番後悔しているそうだ。
「大学生の入学祝いでおばあちゃんが10万円くれました。そのお金も全部服に使ってしまい、バカだったな、申し訳なかったなと反省しています。買った服をたくさん着たり楽しんだりできていたらまだよかったのですが、結局あまり着なくて箪笥の肥やしになってしまいました」
その後、節約貯金生活に取り組む中で「きちんと試着する」「この服を着て人に会えるか」と基本的なところをよく考えるようにし、洋服に対する向き合い方を変えることで、浪費はなくなっていった。
「この服、本当に着る?」と自分に問いかける。断捨離する際も同様だ(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
・テレビ
無駄だったと後悔しているというよりは、処分してよかったと感じているものがテレビだという。
「今はYouTubeなど面白いコンテンツがたくさんあります。ニュースを見るためにテレビを持っていましたが、今はスマホアプリで情報が入ってくるし、私にとってはもう必要ないと判断して処分しました」
テレビをリサイクルショップに売り、その明細を“テレビを持っていない証明”としてNHKに送り解約。NHK受信料がかからなくなったうえに、部屋もすっきりしてより広く感じられるようになった。
「デメリットは、職場の世間話についていけなかったり、最近の芸人さんがわからなくなったり。それくらいですね」
・ロボット掃除機
「基本的に、自分にとって必要かそうでないかを見極めるのが大切だと思います」
本当に欲しいものや必要なものには出費してもいいと考えている。中でも、もちたまさんが買ってよかったのはロボット掃除機だ。
「家は木造アパートで壁が薄いので、掃除機をかける時間帯に気を使います。仕事が終わって家に帰ってくるのは夜10時くらいで、そうするともう使えません。でも床が汚れていたら掃除機をかけたいし、思うように掃除ができないというプチストレスがありました。そこで、仕事に出ている日中にルンバに掃除をしてもらおうと思って買いました」
購入費用は3万円くらい(定価5万円くらいのものを割引で購入。楽天ポイント8000円分の還元もあり)。高級家電とはいえ、時間の節約となり、ストレスもなくなり、部屋もきれいになる、一石二鳥どころか一石三鳥くらいの効果があったそうだ。
1人暮らしで部屋がそれほど広くなくても、便利すぎると話すもちたまさん(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
・乾燥機付きの洗濯機
「まだ購入できていないのですが、生活が快適になるので絶対に欲しいと思っているのが、乾燥機付き洗濯機です。女性の1人暮らしだと防犯上、外に洗濯物が干せません。年中部屋干ししていて、乾燥にも時間がかかります。いずれ欲しいですね」
もちたまさんが現在使用している洗濯機の場合、洗濯に3段階の工程があるという。洗う、洗い終わったら乾いたバスタオルと一緒に脱水して水分を飛ばす、干すといった手順だ。手間と時間がかるため、乾燥機があれば毎日の暮らしがずっと楽になりそうである。
家事の時短や省力化に重きをおく、もちたまさん。台所の水切りラックも買ってよかったものと話す(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
節約家の「職業観」と「恋愛観」
もちたまさんの節約・貯金生活では、ハンドメイド販売やブログ、YouTubeといった副業にチャレンジして収入を増やす努力をコツコツと続けてきた。では、ほかに収入を増やす手段として、「転職して収入を上げる」「正社員になって福利厚生の条件のいいところに勤める」などの選択肢を考えたことはあるのだろうか?
くらま(写真右)がもちたまさんに節約の流儀をインタビューします!(東洋経済オンライン編集部撮影)
「現在は契約社員だった図書館司書の仕事を退職してしまったので、転職活動をしていますが、正社員は考えていないです。正社員で働いている人たちや動画の視聴者さんからも『早く転職したほうがいい』と言われます。でも正直なところ、私は現状の生活で満足しているのでモチベーションがなくて……。このままでいいかなと」
現状に満足しており、貯金もできている。確かに何かを変える必要はなさそうだ。でも一方で、周りの目が気になることはないのだろうか? 私も以前は人からどう見られるかを気にしていて、就職活動では有名企業ばかりを狙っていたことがある。
「私の周りには“いい会社”に入ってバリバリ働いている同級生も多いので、たまに会って仕事の話になると肩身が狭く感じられます。やはり月収はなかなか言えないですね。正直、劣等感との折り合いはまだついていません。かといって現状に満足していないわけではないので、正社員の仕事を見つけようという気持ちはあまりないですね。副業(YouTube)収入がなくなるなど、必要に迫られない限り、現状維持でいいかなと」
人はどうしても周りと比べてしまう生き物だ。でも比べてしまいながらも、そこで無理をせず自分に合った生き方を選ぶのも、すごく大切なことだと、もちたまさんの話を聞いていて感じた。人生に責任を持つのは自分だからこそ、周りに流されずに自分で決めていくしかない。
節約・貯金生活をしていると、恋愛とのバランスをどう取っていくのかも気になるところだ。私自身、一時期は借金返済のために人付き合いを断っていたし、お金に対する価値観が合う相手でないと恋愛は難しいかもしれないと思う。もちたまさんはどうだろうか?
「私は人よりも恋愛に興味が薄くて、積極的に恋愛したい、彼氏欲しいとあまり思っていません。周りが恋バナをしていても聞き役みたいな感じで……」
そんなもちたまさんも、一時期は婚活を意識したこともあったという。
「その頃の私は、このままでは人生やばいな、と危機感を持っていて。今思えばすごく身勝手な考えですが、経済力のある人と結婚し、専業主婦になって養ってもらったほうがいいのでは、と考えていました。
でもある日、そんなふうに考えながら道を歩いていたら、道端で大喧嘩している夫婦を見かけました。大声でお互い怒鳴り合っていたのですが、旦那さんが『誰のおかげで飯が食えていると思っているんだ』と言い放ち、奥さんが黙ってしまったんです。
これは極端な例かもしれませんが、経済的に自立していないと、立場が弱くなり、理不尽な状況でも言い返せなくなってしまう。私の30年後の姿になるかもしれない……と思い、自立しなくちゃいけないと心に決めました」
経済的に自立することで、精神的にも自立できるのだろう。そして、貯金ができれば安心感を得られると同時に自信にもつながる。
食費は削りすぎず、家計簿の記入も厳密にやりすぎない(小銭は切り捨てする)ことで「苦しくない節約」を実践している(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
貯蓄と自己投資のバランスについて
もちたまさんは現在32歳で、資産額は1000万円。「老後2000万円問題」が取り沙汰されているが、早くから節約貯金の習慣ができていれば後から慌てることは少なそうだ。
「月収は10万円台ですが、資産があることで不安が減りました。20代からこういう生活を経験しておいてよかったと思います。早くから将来に備えることができました」
働いてお金を稼いでいくうえで、貯蓄と同時に仕事やスキルへの自己投資も大事である。特に「20代は貯蓄よりも自己投資に使うべきで、それが将来の収入につながる」という考え方もあるが、もちたまさんはこれをどう考えているのだろう?
とある月の支出。上の写真が固定費で下が変動費。緑色部分が支出合計と貯蓄額だ(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
「ある程度、自己投資に使うのはいいと思います。でもたくさん使ってしまうのは不安ですね。YouTubeでも『お金は使うもんだ、貯めて何になるの?』とコメントをいただくことがあるのですが、私はただ貯めているというよりは、“将来の安心を買っている”感覚があります。将来に不安があったので節約・貯金で備えることにしました。逆に言えば、不安がないなら、節約・貯金はそこまで必要ではないのかもしれません」
一方で、ある程度安心できる資産額に達したので、これからはお金の使い道をもっと考えていきたいと、もちたまさんは言う。
「明確な夢があるわけではないんですけど、人生の中で一度はしてみたいこと、海外旅行、ペットを飼う、大型バイクを買うなど、お金を使う豊かさも検討していきたいですね」
節約生活を送りつつも、たまには賢く“爆買い”するのが楽しい。写真はドン・キホーテで購入したもの(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
節約とは「自分の大切なものを見極める術」
もちたまさんの話を伺ってきて、節約・貯金を通して得られた“安心感”は非常に重要なポイントだと感じた。
「働き始めた頃は、自分はお先真っ暗だと思っていました。でも、年収が低くても、貯金ができたことで、負い目が消えて自信につながりました。とりあえず、自分は月10万円あれば生きられるとわかり、不安がなくなりました」
最近、図書館での契約社員の仕事を退職。失業保険をもらいながら、1年くらいかけて新しい仕事を探していくという(写真:「もちたま【元月収10万円女子】」より)
もちたまさんの節約貯金生活の話を聞いて感じたのは、得た収入の中でやりくりする努力や習慣化の重要性だ。年収が高くなくても、上がらなくても、最低限のお金で自分が心地よく生きていける道を見つけられれば、生活は安定する。逆に、年収が高くても、それと同じだけお金を使っていれば貯金はできない。
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「私にとって節約とは、本当に好きなものや大切なものを見極めるための術です。節約を始めたことで、自分がお金をかけたいものや、自分にとって無駄なものがはっきりしました。節約は、そういう自分の大切なものを見つめ直すきっかけになるのかなと思います」
最後に、お金を貯めたい人に向けてメッセージをもらった。
「節約はつらいものではないので、楽しんで取り組んでほしいと思います。固定費をしっかり削ったら、あとは何もしなくても貯まっていくはず。もしもまだ格安スマホにしていない人がいたら、まずはそこを見直してほしいですね」
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提供元:月収16万、1000万貯めた32歳「節約家の職業観」|東洋経済オンライン