2023.03.21
切実!「チャットGPT」と節約について問答してみた|人間を超える「節約ネタ」を示すことができるか
果たしてAIは、人間を超える節約ネタを示すことができるのでしょうか(写真:asaya/PIXTA)
質問を入力すれば、丁寧な日本語でスラスラ答えてくれる「チャットGPT」。大量のテキストデータを学習することで、つたない質問であってもこちらの言いたいことを即時に理解し、それに応じた回答をしてくれる人工知能(AI)のチャットボットだ。
「関西弁の『知らんけど』を使って文章を作って」と頼んだら、それにも快く応じてくれた。「あなたの質問の意味がわかりません」なんて冷たく返されることもない。
今やワイドショーにも取り上げられる注目のテクノロジーだが、あまりに有能なので、そのうち多くの仕事がこのチャットGPTに奪われるのでは……との声も聞こえてくる。
確かに時事ネタには強いし(使用しているデータは主に2021年までのもの)、読ませる文章力もある。よく読むと間違いや事実誤認はあるものの、そこを指摘すれば再学習してどんどん精度を上げていくとのこと。
なんでも答えてくれるなら、いわゆる専門家の地位だって危ういだろう。筆者も、節約に関する専門家として活動しているが、その役割もチャット先生に奪われてしまうのだろうか。その疑念のもと、節約についてのアドバイスを求めてみた。果たしてAIは、人間を超える節約ネタをひねり出せるのだろうか。
まずは食費の減らし方を聞いた
多くの家計を悩ませているのが食品と光熱費の値上げだ。筆者もこれまでずいぶん節約アドバイスをしてきたが、一個人を超えた膨大な知識をお持ちのチャット先生に聞けばウルトラC的なアイデアが出てくるかもしれない。そこで「食費を節約する方法を教えて」とシンプルに聞いてみた。
少し間をおいて、帰ってきたのは「食料品のリストを作成し、計画的に買い物をする」「安価な食品を選ぶ。旬の野菜や果物がおすすめ」「賞味期限の短い食品を購入して食べきる」「外食を減らし、自炊する」「残り物をリメイクするなどして食品ロスを減らす」「卸売市場で購入」「PB商品を選ぶ」の7項目だった。
正論だが、どこかで聞いた話ばかりで面白くない。もう少し突っ込んで聞いてみた。「一人暮らしだと自炊より外食のほうが安いこともあるのでは?」。すると「手作りは食材の調達に手間や時間がかかるかもしれないが、大量に調達するとコストパフォーマンスが高くなる。調理器具や調味料、ガス代などの費用も必要になるが、一度にまとめて購入することで、長期的には外食よりも安く済むことが多い」と返された。
しつこく「スーパーで買う食品の多くが値上げされている現状でも、やはり手作りのほうが安いといえるのか?」と聞いたところ、「外食の場合、料理の価格にプラスして、サービス料や消費税がかかる。また、交通費や駐車場代も必要になる。これに対し、自炊は食材費と調理に必要なエネルギー費用がかかるだけで、それ以外の費用は発生しない」「外食店には店舗維持費用、人件費、電気やガス代、水道光熱費などのランニングコストがかかる(ので、その分がコストに乗っているはず)」だから、自炊のほうが安いという。
では、スーパーで惣菜を買うのはどうかと聞いたところ、「自炊より安く済む場合もあるが、健康面や栄養バランス、大量に作って保存する際のコスパなど、総合的にはやっぱり自炊」と譲らなかった。ここまで言うのだから、きっとチャット先生は毎日おかずを手作りしているに違いない。
気になる電気代節約はどうか
続いて、高騰する電気代節約についてもご教示を仰いだ。
「白熱電球に比べて長寿命で省エネ効果が高いLED電球に交換」「電気製品を使わないときはコンセントを抜く」「節水型のシャワーヘッドを使う」「エアコンや暖房の温度を適切に設定する」「太陽光発電システムを導入し自家消費する」と、これまた普通だ。
何度か質問を変えて聞いたが、エアコンの運転効率を上げるために必ず言われる「フィルターをこまめに掃除せよ」という指示は一度も出てこなかった。まだフィルター掃除に対する啓発活動が足りないのだろう。加えて太陽光発電や省エネ家電をかなり推しており、チャット先生は地球環境への配慮も怠らない。
とはいえ、これでは「さすがは先生! これは気づきませんでした」と膝を叩くような驚きはない。やり方を変え、節約に関する悩み相談をしてみることにした。
「配偶者が家計の節約や貯蓄に協力的でない場合、どうすれば協力してもらえるか?」
これは家計相談でよく出てくる質問だ。チャット先生曰く、「協力してほしいならまずは話し合うことが大事。なぜ協力的でないのか、どういったことに不満を持っているのか、どのようなことなら改善できるのかを共有すること」が大事とおっしゃる。なるほど、とにかく説得ではなく、なぜ節約に協力したくないのか相手の心情に歩み寄ることが大事という。
さらに、「節約や貯蓄の目的を明確にする」「節約や貯蓄が楽しいものになるように工夫することも大切。家族で節約レシピを考えたり、節約したお金を家族で共有するなど、楽しい工夫をして取り組むことで、配偶者も協力的になる可能性がある」と続く。
これは全く同感で、我慢ばかりで楽しくないと節約は続かない、と筆者もよく申し上げている。だんだんチャット先生と気が合ってきた。
そして最後に「相手が何らかの理由で協力的になれない場合は、強引に頼み込んだり、強制することは避けるべき。時間をかけてお互いに理解し合うことが大切です」という思いやりのある言葉で締めくくられた。
「お菓子代を節約したい」お悩みへの回答は
これもよく聞く悩みだが、なかなか減らせない子どものおやつ代についても聞いてみた。
「節約をしたいのに、子どもが余計なお菓子を買いたがるので、いい対策を教えて」と聞いたところ、「子どもが余計なお菓子を買いたがることはよくあることですね」という一言がまず返ってきた。AIにも質問者に寄り添おうとする姿勢があるのだ。
続く回答は、「お菓子は○○円まで、お菓子は1個までといったように子どもとルールを決める」「お小遣い制度を導入し、自分のお金でお菓子を買うという責任を持たせる」「子どもが自分でお菓子を作る。作ることでお菓子の量や種類をコントロールできる」「買わずに済むよう、おやつを定期的に用意する(家に用意しておくという意味らしい)」となった。
加えて、ムダなお菓子を子どもが買ってしまったとしても、叱らずに冷静に話し合いましょうというアドバイスも。子どものお菓子代に悩む母親のヒントになるだろうか。
一問一答のほかに、「総論はわかるが、うちはこういう状況で困っている」とさらに具体的な材料を与えれば、もっと別の答えをくれるはず。節約ネタの提供はいまいちだが、相談相手としてはまあまあ役立ちそうだ。
「節約物語」づくりを頼んでみたら
最後に、物語も書けるといわれるチャットGPTにこう頼んだ。
「電気代を節約しようとしてケンカになった家族が仲直りできた話を考えて。どうやって仲直りできたかをポイントに」。すると、こんなストーリーが提案された(原文のままでは味気ないので補足入り)。
【電気代がどんどん高くなっています。ある家族は節約のために、夜になると家族全員で電気を消すことに決めました。それぞれの部屋の電気を消してリビングに集まり、照明の明るさもちょっと暗めにしたのです。
最初は家族みんなが協力的で団らんの時間も増え、いいことずくめに思えました。ところがある日のこと、母親が「こんなに暗いと気が滅入るわ」と電気をつけようとしました。しかし、父親が「せっかく頑張っているんだ、ムダ遣いするな」と反対し、口論になってしまいました。
口論は徐々にエスカレート、しまいには家族全員が不満をぶつけあう事態に。このまま大げんかで終わるかと思われましたが、互いの思いを出し合ったことで次第に落ち着きを取り戻し、話し合って解決しようという気持ちになれたのです。
これからは誰かに我慢を強いるのではなく、皆で電気の使用方法を見直し、必要な場所にだけ電気をつけることにしました。また、LEDなどエコな電球に変えることで、明るさを変えずに電気代の節約にも成功。この経験で家族はお互いの意見を尊重し、コミュニケーションを大切にすることを学び、家族の絆がより深まりました。(めでたし、めでたし)】
いかがだろう。節約は家族で話し合って取り組むことが大事という点、そこは大いに同意する。もし、チャット先生がネット空間にある膨大なテキストをベースに学習しているのだとしたら、それらを読むうちに、多くのトラブルはコミュニケーション不足が原因であると痛感したのかもしれない。
節約ネタの提案はまだまだ甘いが、本質はつかんでいるようだ。さらに節約スキルを磨いたチャット先生と、また問答をしてみたい。
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提供元:切実!「チャットGPT」と節約について問答してみた|東洋経済オンライン