2023.02.03
「年金の確定申告をする人」がやりがちな落とし穴|年金をもらっている親がいる人も要チェック!
申告の要・不要もしっかり確認したほうがよさそうです(写真:artswai/PIXTA)
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今年も確定申告の締め切りが迫ってきました。公的年金等の申告をされる方で気をつけたいのは、申告したほうがよいケースと、申告しなくてもよいケースがあることです。
また、複数の公的年金収入がある場合、医療費控除などを受けるために申告をすると、逆に納税になってしまうケースもあります。そのようなときには、どうすればよいのでしょう。
今回は『自分ですらすらできる確定申告の書き方 令和5年3月15日締切分』から、注意点についてご紹介します。
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損をしないために、ここをチェック!
ステップ1 まずは申告の要・不要を確認!
厚生年金や国民年金など(公的年金等)の収入がある方は、「雑所得(公的年金等)」を申告します。
ただし、次の(1)(2)の両方に該当する方は申告不要です。
【申告する必要がない人】
(1)公的年金等の収入が400万円以下(すべてが源泉徴収[税金を引かれる]の対象となるもの)
(2)公的年金等以外の収入による所得の合計が20万円以下
これらの年間収入の合計が75万円以下の場合に、所得が20万円以下となります。また、遺族年金と障害年金は、申告不要となっています。
ステップ2 申告しなくても、不利にならないかを確認!
上記に該当して申告の必要がない場合でも、申告したほうが有利なケースがあります。申告をしないことで不利にならないよう、下のフローチャートで確認しておきましょう。
たとえば、医療費控除、社会保険料控除(年金から天引きされていない分がある)、生命・地震保険料控除などの所得控除があるときは、申告をすると、税金が還付されるケースが多くなっています。
また、「扶養親族等申告書」がきていて提出していない方も、年金から天引きされる税金に扶養親族等の控除が反映されていないため、還付の可能性があります。
申告により課税所得が下がり、住民税の節税につながる
年金から税金が引かれていない場合は、当然、税金の還付を受けることはできませんが、申告をしない選択をするのは早計です。
というのは、申告により、課税所得(「所得-所得控除」で計算)が下がるので、住民税の節税につながるからです(市区町村への住民税の申告でも同様のことができる)。
住民税の税率は10%と高いうえに、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者の医療費の負担割合などは、課税所得によって下がるため、申告をしないと、不利になることがあります。
なお、複数の年金をもらっている場合は、医療費控除などを受けるために申告をすると、逆に納税になるケースもあります。その場合は、所得税の確定申告はとりやめて、住民税の申告(市区町村へ)をしましょう。
ステップ3 公的年金等の源泉徴収票を用意しよう
申告の際は、公的年金等の源泉徴収票が必要です。1月ごろに送られてきますので、大切にとっておいてください。申告書に金額などを書き込む際の資料として使います。なお、源泉徴収票の提出は不要です。
ステップ4 所得の計算方法を押さえておこう
公的年金等の所得は、下表のように、65歳以上の方(昭和33年1月1日以前の生まれ)と65歳未満の方(昭和33年1月2日以後の生まれ)で計算方法が異なります。所得を計算する際には、見る欄を間違えないように気をつけましょう。
また、上表にあるように、所得の計算方法は、公的年金等以外の合計所得によっても異なります。
公的年金等以外に収入があるときは、下図のように、公的年金等以外の所得を足して合計所得を計算し、その金額を申告書第一表の「その他」の「公的年金等以外の合計所得金額」に書き込みます。
年金のほかに給料がある人は所得金額調整控除に注意
ステップ5 給与所得がある人は、絶対に「コレ」を忘れずに!
給与・パート・アルバイト収入がある人は、所得金額調整控除に注意しましょう。給与所得から最高10万円(25万円のケースもあり)を引けるというもので、うっかり引き忘れると、不利になってしまいます。控除額の計算方法は、下図のとおりです。
ステップ6 源泉徴収票の数字を見て、申告書に書き込もう
申告の際は、源泉徴収票を見ながら年金の収入金額などを申告書に書きこんでいきます。
下表のように源泉徴収票の「支払金額」欄と「源泉徴収税額」欄を見て、申告書へ書きうつしましょう。
(上表の(1)と(3)からのびている緑と紫の罫線は、次のステップ7の申告書へと続きます)
ステップ7 所得を計算して書き込もう
複数の年金をもらっている方は、源泉徴収票を見て、下図のように、申告書第二表の「〇所得の内訳」欄に、それぞれの年金の内容を書き込みます。さらに、「収入金額」を合計して、その金額を、第一表の「収入金額等」に記入しましょう。
上の例は、支払金額270万円と21万円の2つの年金がありますので(ステップ6の源泉徴収票より)、第一表の「収入金額等」は、291万円(270万円+21万円)となります。
「収入金額等」を書き込んだら、その金額を見て所得を計算しましょう。
上の例は、65歳以上、合計所得が1000万円以下(年金以外に収入がない)ですから、ステップ4で紹介した計算表にあてはめて、所得は181万円(291万円−110万円)と計算できます。
なお、今年の申告から、今まで使われていた申告書Aが廃止され、申告書Bとほぼ同じ様式のものになりました。下図のように、所得の書き込み欄は増えましたが、書き込み方は従来と変わりません。
年金から税金が引かれているときは、申告書第一表の「その他」「雑所得・一時所得等の源泉徴収税額の合計額」欄にも記入が必要です(ステップ4の2つめの図表、申告書の書き込み例を参照)。記入をもらさないように注意しましょう。
社会保険料にも気をつけよう
年金による所得を申告するときの注意点は上記のとおりですが、申告の際によく迷うのが、配偶者の社会保険料の扱いです。
配偶者の社会保険料については、配偶者の年金収入から天引きされている(配偶者の源泉徴収票に記載がある)ときは、自分の社会保険料控除の対象には加えることができません。
配偶者の社会保険料を控除対象にできるのは、配偶者の社会保険料を自分が負担して、口座振替や現金納付で支払っているときだけです。注意しましょう。
実際に確定申告をするときのコツ
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今年の確定申告は2月16日(木曜日)から3月15日(水曜日)までです。還付申告の場合は、年明け早々から申告書を受け付けています。新型コロナの感染予防のため、税務署での提出は避け、郵送やインターネット申告(e-Tax)を検討してもよいでしょう。
申告方法などについてわからないことがあった場合は、電話で質問することもできるので、利用するとよいでしょう。最寄りの税務署に電話をして音声案内にしたがって、番号「1」を選ぶと、質問受付の係につながります。
確定申告の時期になると、税務署には、税理士の無料相談窓口が設置されます。また、「確定申告書作成コーナー」では、職員のアドバイスを受けながら、その場で申告書を作成・提出することも可能です。源泉徴収票など、申告書の作成に必要な書類を持参してください。
(構成:前窪明子)
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提供元:「年金の確定申告をする人」がやりがちな落とし穴|東洋経済オンライン