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2023.01.18

「介護のお金」は、いったいどれくらいかかるのか?|期間は5年超、「500万円近くかかる」は本当?


「介護費用」はいったい、いくらかかるのだろうか。全体像を知れば、少しは安心できるかもしれない(写真:HBS/PIXTA)

「介護費用」はいったい、いくらかかるのだろうか。全体像を知れば、少しは安心できるかもしれない(写真:HBS/PIXTA)

介護について気になることの1つが、費用です。調査によると、介護にかかる費用は500万円近いともいわれています。実際のところはどうなのか、抑える方法はないのか、誰が負担するのかなど、介護費用のポイントを解説します。

かかる費用は平均で月8.3万円、期間5年1カ月

介護について考える際には、費用についても知っておく必要があります。まず気になるのは「どれくらいの費用がかかるか」です。

生命保険文化センターが過去3年間に介護を経験した人に調査したところによると、介護にかかる初期費用は、住宅の改修や介護ベッドの準備などで平均74万円でした。月々の費用は、平均で8万3000円です。介護した期間の平均は5年1カ月で、4年を超えて介護した人も約5割です。初期費用に、この5年1カ月分の毎月費用の平均を加えると、約580万円と計算されます。

ただし、在宅介護か、施設介護かなどによっても費用は異なります。在宅介護では月額の平均が4万8000円。一方で、施設介護では費用が大きく上がり、平均12万2000円。介護付き有料老人ホームを利用する場合、利用料金や介護費用の自己負担分などを合わせて月額20万~40万円程度かかるのが一般的です。

要介護認定を受けて公的介護保険のサービスを利用する場合は、費用の一部を利用者が負担します。自己負担の割合は利用者の収入によって異なります。例えば単身世帯では収入が公的年金だけなら年収280万円未満、夫婦世帯では同年収346万円未満の場合、自己負担は1割です。事業収入や不動産収入があるなど、収入が多い場合は2割または3割負担となります。

「どこで介護するか」「要介護度はどのくらいで、どのような介護をするか」「介護期間はどれくらいか」、さらに「どの程度の収入があるか」などで費用は大きく異なる、ということを理解しておきましょう。

介護費用に加えて念頭においておきたいのは、医療費についてです。
 一般的に入院日数は短期化していますが、やはり高齢になると入院日数は長くなりがちで、医療費も多くかかることがあります。医療費が気になりますが、「高額療養費」という制度により、1カ月に負担する額には上限が設けられています。

年収約370万円までなら負担上限は月5万7600円

上限額は年収によって異なります。年収156万~約370万円(課税所得145万円未満等)の人では5万7600円です。どんなに医療費がかかっても、1カ月の負担は5万7600円まで、というわけです。

また1年に3回以上、高額療養費が適用されると、4回目からは「多数回該当」となり、自己負担額はさらに低くなります。年収が前述のケースでは4万4400円です。

とはいえ、高額療養費の対象となるのは健康保険が適用される費用に関してです。入院時の食事代や差額ベッド代、保険適用外の治療費や先進医療の費用などは別途、自己負担となります。

高額療養費は、窓口でいったん請求された額を支払う必要があり、2~3カ月先に超過分が戻る仕組みですが、「限度額適用認定証」を交付してもらい、それを医療機関に提示しておけば、上限額までの支払いで済みます。限度額認定証は保険の運営主体(国民健康保険や後期高齢者医療制度では自治体)に申請します。

また70歳以上75歳未満の人で、課税所得区分が一定以下の「一般」の人は、健康保険証と高齢受給者証を窓口に提出しておけば自己負担の限度額までの支払いで済みます(限度額適用認定証の提出は必要なし)。

一方、介護保険にも、「高額介護サービス費」という制度があります。介護サービスを利用すると利用者には原則1~3割の自己負担が生じますが、1カ月の自己負担額の合計が一定の額を超えると、超えた分が払い戻される、というものです。初回は市区町村の窓口に申請する必要があるものの、2回目以降は自動的に計算され、払い戻しされます。

例えば世帯の全員が住民税非課税の場合は世帯で2万4600円、住民税課税~年収約770万円(課税所得380万円)未満では4万4400円です。

このように医療費は高額療養費、介護費用には高額介護サービス費という制度により、上限が設けられているわけです。ただし、老人ホームなどの入居一時金や施設の居住費、食費、生活費などは高額介護サービス費の対象外です。

医療費と介護費の上限は年間56万円

さらに「高額医療・高額介護合算療養費」という制度もあります。これは、医療費と介護費を1年単位で合算し、負担が重くなっている場合に払い戻しが受けられる、というものです。

同じ世帯に医療と介護を受ける人がいる場合、毎年8月1日~翌7月31日までの1年間の自己負担の合計が所得に応じた限度額を超えた場合、です。例えば年収156万~約370万円未満の70歳以上の人の場合、1年間の限度額は56万円です。

つまり、医療費と介護費は合計56万円が上限、というわけです。ただし、医療保険の対象外のもの、また公的介護保険サービスの限度額を超えて利用した場合や、別のサービスを利用した際の料金などは別に負担することになります。

介護や医療の自己負担額の上限を決める所得区分などの要件は、年々厳しくなる傾向にあります。特別養護老人ホームなどに入所した場合の食事代や、部屋代を補助する制度についても、本人の預貯金が1000万円超ある場合、夫婦で2000万円超ある場合では、年間所得が低くても対象外となっています。

そうした中で知っておきたいのは、「世帯分離」という手法です。

例えば、Aさんは父親が亡くなったあと実家に戻って母と同居することにしました。会社員であるAさんが世帯主になり、専業主婦である母親を扶養対象にする予定です。しかし、その場合はAさんが母親の介護保険料を支払うことになり、保険料の負担が重くなると考えられます。そこで検討したいのが世帯分離なのです。

世帯分離とは、介護のため親子が同居していたとしても、親世代と子世代は生計を別にして暮らし、住民票の世帯を分ける、ということです。自治体の窓口でその旨を伝え、住民票の異動届を出すことで手続きできます。受理されたら、健康保険や介護保険の保険証を再発行してもらいます。

1つの世帯に属する全員が住民税の負担がない「住民税非課税世帯」では、介護保険料や実際に介護保険サービスを利用する場合の自己負担が軽減されます。上記の場合、Aさんの母親には収入がないため、世帯分離をすれば住民税非課税世帯となることから、介護保険料は年間5万円ほど安くなりました。

親の介護費用は親が負担するのが原則

実際に介護保険サービスを利用する場合の負担についても見ていきましょう。

Aさんの母親が要介護になり、特別養護老人ホームのショートステイを利用すると仮定します。所得の低い世帯の人には、特養などでの食事代や部屋代などを補助する制度があり、世帯分離によって、1日の食事代は1380円から390円に、居住費は1970円から820円に軽減されます。2週間の滞在では、約4万7000円から約1万7000円になり、約3万円も抑えられます。

ただし、親が75歳未満の場合、世帯分離をすると親が1人で国民健康保険に加入する必要があり、負担が増すケースもあります。社会保険料を計算したうえで、世帯分離をしたほうがいいかを検討したいところです。

親の医療費や介護費用は、親が負担するのが原則です。なぜなら、子が負担すると、子自身のライフプランに影響が生じかねないからです。

もし、現状の生活で親への仕送りなどができたとしても、今後、自分の子の教育費が増えてくることで負担が重くなったり、自身の老後金の準備に支障をきたしたりする可能性があります。「親の資金の範囲でできることをする」、を原則にしましょう。

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提供元:「介護のお金」は、いったいどれくらいかかるのか?|東洋経済オンライン

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