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2022.12.08

メンタル不調な人の「病院選び」間違いのない鉄則|まずは近い所から、口コミや評判はアテにならない


最優先すべきことを解説します(写真:photobyphotoboy/PIXTA)

最優先すべきことを解説します(写真:photobyphotoboy/PIXTA)

精神科を受診する患者数が年々増え続けるなか、家族のメンタル不調をケアする立場に置かれる人も増えてきているはずです。産業医として1万人以上を診察してきた精神科医の井上智介氏の著書『どうする? 家族のメンタル不調』より、家族がメンタル不調に陥ったとき、病院選びで優先すべきポイントを解説します。

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家からいちばん通いやすい病院を

精神科の病院を探しはじめたとき、戸惑うかもしれません。精神科、心療内科、メンタルクリニックなどがあって、「何がどう違うの?」となるからです。

結論から言うと、ほとんど変わりはありません。学問としては精神科と心療内科は異なるのですが、名称レベルであればほぼ同じと考えていただいて大丈夫です。病院名をどうつけるかは原則自由なので、井上精神科でも、井上心療内科でもいいし、井上こころのクリニックでもOKなのです。

一般的には、心の症状が強く出ている場合は精神科、身体症状のほうが強い場合は心療内科、と分けられていますが、実際は、精神科と名乗ってしまうと身構える患者さんも多いので、心療内科としている病院が多い印象があります。

そもそも日本には、心療内科医より精神科医のほうが圧倒的に多いため、どこの病院を選んでも、基本的にそこにいるのは精神科医だと思えばいいでしょう。ですから、どちらのクリニックを選ばれても、受けられる治療に大きな違いはありません。

精神科の病院を選ぶときの重要なポイントは「近さ」です。

とくに、精神科に抵抗のある患者さんや、精神疾患を受け入れがたい患者さんなら、最初は家からいちばん通いやすい病院を選ぶようおすすめします。家から近い病院でもいいし、電車やバスなどを使って行きやすいところでもいいでしょう。

近所の人の目が気になるという人もいるかもしれませんが、患者さんがつらいとき、すぐ病院にかかれることが何より重要です。

名医がいるからといって隣の県まではるばる通うことが、治療に最善とは限りません。どんなにしんどくても通わなければならないのが精神科です。極めて気分が落ち込んでいるようなときに、何時間もかけて病院に行く気になるでしょうか。

また、病院に行きたくないと思っている人なら、すでに病院に対する心の距離がかなり開いてしまっています。病院そのものが遠方となれば、より通院がおっくうになることでしょう。

つらいときにも通える距離感が大事です。

医師は会ってみないとわからない

今はネット社会ですから、病院を探すときに口コミ情報を見比べて探そうとする人もいるでしょう。でも、口コミ情報では確かなことはわかりません。その医師と相性のいい患者さんもいれば、悪い患者さんもいます。とくに精神科は相性が大切ですから、行ってみて、話をしてみなければわからないことがたくさんあります。

まずは、アクセスの良さを基準に選ぶこと。そして、3、4か月くらい通ってみて、医師との相性を確かめたうえで、どうしても合わないのであれば別の病院へ変わることを検討してもいいでしょう。

つまり、最初にかかる病院を選ぶときは、必要以上に慎重にならなくていいのです。どこであっても、治療方針が大きく変わることはありません。どの疾患にどのような治療を行うかはガイドラインが決まっているので、北海道から沖縄まで基本的に同じ治療が受けられる体制が整っています。

ただ、先にも言ったように相性があって、医師の同じふるまい、同じ言葉遣いであっても、「頼りがいがある」と受け取る患者さんもいれば、「えらそうで嫌だ」と感じる患者さんもいます。どうしても気に入らなくて、それが原因で病院に行きたくないというのであれば、転院を検討するのも1つの方法です。

その際、医師に何を求めているのかは、はっきりさせておくのがいいでしょう。どんな先生がいいのか曖昧だと、どこへ行っても気に入らない点が目に入って、必要以上に転院を繰り返してしまいます。家族もそのたびに振り回されて大変です。どこまで患者さんの要望を聞き入れるのか、家族も一緒に考えて対応する必要があります。

「まあ何でも患者さんの好きにやらせなさいよ」と言う医師がいないとも限らず、患者さんがそれを望んでいた場合、迷惑を被るのはサポートするご家族です。共倒れしてしまっては本末転倒ですから、気をつける必要があります。

実は、精神科医の仕事とカウンセラーの仕事を混同している人は少なくないようで、私たち医師も戸惑うことがあります。

基本的に精神疾患の治療をする専門家が精神科医であり、薬物療法や精神療法などを行います。診察にかかるのは、長くても10分、通常は5、6分です。

一方、カウンセラーは、カウンセリングや心理テストを行います。臨床心理士や公認心理師などが、1回につき30分〜1時間、長い時間をかけて患者さんの話を聞いてくれます。時と場合によりますが、あえて具体的に何かをするよう指示したりはせず、話をよく聞いてくれて悩みの原因を探ったり、考え方を整理する手助けをしたりしてくれることがあります。医師とは違い、薬物などを使った治療行為は行いません。

このように、両者には明確な違いがあるのです。しかし、世間は精神科医に対して、時間をかけて患者さんから話を聞き、悩みを取り除いてくれる、いわゆるカウンセラーのような役割を期待するようです。

まずはカウンセラーを探しを優先したほうがいい場合も

実際、患者さんが「たった10分で終わってしまったじゃないか!」と怒ったり、口コミサイトに同様のことを書かれたりするのですが、それは誤解です。

もし、患者さんの転院したい理由が「診察時間が短い。話を聞いてくれない」であったとしても、どこの病院にかかろうと状況はあまり変わらないのです。そもそも主治医を変えれば、投薬治療を含めてすべて見直し、またイチから今の病状に至った経緯などを伝え直すことになり、それなりにエネルギーのいることです。

じっくり話を聞いてほしいなら、医師を変えるより、いいカウンセラーを探したほうが、患者さんの求めるものが早く得られます。

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カウンセリングの費用は保険適用外でお金もかかりますが、頼れる先が主治医とカウンセラーの2人になるという点は、患者さんにもプラスになるでしょう。

大きい病院であれば、カウンセラーが在籍していることもあります。いなくても、精神保健福祉士がいれば、紹介してもらえる可能性があります。精神保健福祉士とは、精神疾患を抱える人たちが安心して生活できるよう支援してくれる専門家。自立支援医療制度や障害者手帳など、精神疾患のある人が利用できる制度について紹介してくれたり、申請の手助けをしてくれたりします。

ただ、小規模なクリニックにはいないことも多く、こうした専門家のサポートが受けられるという点は大きい病院のメリットです。入院環境が整っている病院には、基本的に精神保健福祉士が在籍していることが多いので、病院選びの1つの指針にしてもいいかもしれません。

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提供元:メンタル不調な人の「病院選び」間違いのない鉄則|東洋経済オンライン

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