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2022.12.02

「繊細さん」にも役立つチャッターのテクニック|問題と距離を置くことで自分らしく生きられる


生まれつき敏感な「繊細さん」(HSP=Highly Sensitive Person)のなかには、チャッター(頭の中のひとりごと)に邪魔されて、「本当は自分はどうしたいのか」が見えなくなる人もいるようです(写真:nonpii/PIXTA)

生まれつき敏感な「繊細さん」(HSP=Highly Sensitive Person)のなかには、チャッター(頭の中のひとりごと)に邪魔されて、「本当は自分はどうしたいのか」が見えなくなる人もいるようです(写真:nonpii/PIXTA)

「明日のプレゼンはうまくいくだろうか」「昨日はあんなことを言ってしまった」など、私たちは日々、頭の中で話をしている。
このような「頭の中のひとりごと」はしばしば暴走し、あなたの脳を支配し、さまざまな問題を引き起こしてしまう。
一方、この「頭の中のひとりごと」(チャッター)をコントロールすることができれば、あなたは本来持っている能力を最大限に発揮できるという。
賢い人ほど陥りがちな「考えすぎ」を抜け出す方法とは何か? 今回、11月に日本語版が刊行された、40カ国以上で刊行の世界的ベストセラー、『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』について、『「繊細さん」の本』の著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀氏に話を聞いた。前編と後編の2回に分けてお届けする。

『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「繊細さん」は自分を後回しにしがち

私は主に「繊細さん」と呼ばれる、とても敏感な人たちをカウンセリングしています。繊細さんは、深く考え、他の人が気づかない小さなことにもよく気づく人たちです。

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『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

仕事でも人間関係でも、チャッター(頭の中のひとりごと)に邪魔されて、「自分はどうしたいのか」が見えなくなり、ご相談にいらっしゃる場合があります。

私はカウンセリングで、「のびのびと生きるには、自分の本音を大事にしよう」とお伝えしています。

繊細さんは、相手の感情や社会の「こうすべき」という声を敏感に感じ取るため、つい自分が後回しになりやすい。

本音を大事にすることで、より自分に合う仕事や人間関係、生き方を見つけやすくなるからです。

カウンセリングでは、どれがチャッターで、どれが自分の本音なのかを見分けていきますが、その中で、『Chatter(チャッター)』に書かれているメソッドを取り入れています。

特に、第4章「他人の視点を手に入れる」で紹介されている、「自分を3人称で呼ぶ」というテクニックは、効果を実感しています。「私は」ではなく、「○○は」と、自分の名前を呼ぶことで、チャッターに巻き込まれず自分を客観視できるというテクニックです。

「自分はダメだ」という思いと距離をもつ

カウンセリングでは、周りから「すごくがんばってるね」と言われるのに、自分ではそうは思えず、ますますがんばり続けて疲れてしまうというご相談があります。

人手が少ない中で業務を回しているなど、客観的にみれば十分にがんばっているのですが、同僚のことは「すごい」「がんばってる」と思えても、自分自身のがんばりはカウントされないんですね。

「自分はまだできていない」「他の人はもっとやっている」といったチャッターに巻き込まれて、「自分はダメだ」という結論に戻ってしまうのです。そんなときに、「私は」ではなく自分を名前で呼ぶことで、はっと我に返ったように、自分の仕事ぶりを認められることがあります。

このメソッドは私自身もよく使っています。子育てとカウンセリング、本の執筆をしていますが、子育てだけで気力を使い切ってしまい、「今日も原稿を進められなかった」と落ち込むことがよくあります。

そんな時、自分のことを「友紀ちゃんは」と、あえて「ちゃん」付けで呼びながら1日を振り返ります。すると、「なにもできなかった」という思いと距離ができて、今日はメールも出したし、カウンセリングをしたし、ご飯も作ったな、と素直に思い出せます。意外とがんばっていたなと思えるのです。

「ちゃん」付けで呼ぶのには、理由があります。

なにかができないと思っている時、大人の自分が実際にできていないのではなく、子どもの頃に体験したなんらかの「できない」という感覚がよみがえり、その感覚にすっかり巻き込まれていることがあるのです。

ですから、幼い頃の自分に呼びかけるように、「ちゃん」付けにするほうが心に響きます。

自分自身に呼びかけ、「よくやってるね」と認めていく。これはカウンセリング行っている、幼い時に傷ついた心を癒やしていくということにもつながります。

「問題からズームアウトする」という手法

第3章「問題からズームアウトする」という手法も、実際に使っています。

例えば、子育て中の方から、お子さんに対して、つい強い口調で怒ってしまうというご相談をいただくことがあります。

自分がどんなときに怒ってしまうのか、落ち着いて振り返ることで解決の糸口がみつかるのですが、相談者さんは強い罪悪感を持っていますから、その時のことを詳しく話そうとすると、興奮状態になったり、葛藤が強すぎて、うまく自分の内面をみられなくなるんですね。

そんな時、お子さんに怒っている場面を思い出していただき、3人称のテクニックと組み合わせて、「○○ちゃん(さん)は、その場面でどんな様子ですか? どうして怒ったんでしょうか。『私は』ではなく『○○ちゃんは』という呼び名で振り返ってみてください」と質問するのです。

すると、問題からズームアウトできます。罪悪感や怒りといった強い感情から距離を置くことができ、「あんなに怒ってしまったのは、私が大事にしている価値観に反することが起きたからだ」というように、落ち着いてその出来事について話せるようになります。

チャッターは、心理的な葛藤として表れます。

例えば、「土日に休んでいるのに、気が休まらない。もっと有意義に過ごさなくてはと思ってしまう」「会社を辞めたいのに辞められない」などの相反する気持ちがそうですね。

「休みたい」「辞めたい」というのが自分の本心だけれど、「これくらいで休んではいけない」「会社を辞めてはいけない」「有意義な日々を過ごさなければならない」といったチャッターが、モヤモヤと頭に浮かんでくるのです。

先程お伝えしたように、私のカウンセリングでは、その声がチャッターなのか、本心なのかを区別していきますが、この時、チャッターを消そうとするのではなく、大事にします。チャッターは意味もなく浮かんでいるわけではなく、役割があるからです。チャッターがなぜ出てきたのか、その真意を読み解く必要があるのです。

「休みたいのに休めない」という相談者さんの場合、「これ以上、仕事を引き受けるのは無理だ」と思っているのに、上司に頼まれると、まるでふらふらと吸い寄せられるように引き受けてしまう、といった状況があります。上司に「がんばります」と意気込みをみせたりもする。

この場合、「休みたい」という本音とは裏腹に、「がんばらなければならない」というチャッターが出てきています。では、なぜそんなチャッターが生まれたのか。そこには、「ダメな奴だと思われたら居場所がなくなる」といった恐怖があります。

現実には休みがとれるし、仕事を断っても大丈夫な職場であっても、その怖さがあるために、「休む」「断る」という選択肢がとれなくなるのです。

その怖さは、幼少期の経験が原因となっていることがあります。ですから、カウンセリングでは、子どもの頃の自分を癒やしていくということを行います。

「生きづらさ」と育ってきた環境の関係

チャッターが起きやすいかどうかは、その人の気質よりも、育った環境の影響が大きいと私は考えています。

たとえ「繊細さん」であっても、「あなたはあなたでいいのよ」「大丈夫だよ」と、安心感のある環境で育つと、生きづらさは感じにくい。

反対に、「なんでそんなに神経質なの」「なんでそのぐらいのことで気にするの」など言われ、のびのびと振る舞えない環境で育つと、自分の感覚がおかしいのだという認識になってしまいます。

自分の繊細さは良くないもので、隠さなければならない。そう思って、感じないふり、タフなふりをして生きてきた、というお話を何人もの繊細さんから伺ってきました。

本音を大事にしようとお伝えしていますが、本音とはそもそも、体の感覚や感性に根ざしたものです。「これが好き」「キライ」「合う」「合わない」というのは、客観的な数値ではなく、主観的な感覚によるものです。

ですから、感性にフタをしてしまうと、「自分がなにが好きで、キライか」を判断するよりどころがなくなり、本音がわからなくなるんですね。
私が感じたことは、私にとって本当のことなんだ。私が「休みたい」と思ったら、はたからみてどうかは関係なく、休みたいんだ。そうやって自分の感覚を受け止めることが、のびのびと元気に生きる第一歩なのだと思います。

「自分らしい人生」を邪魔するもの

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「嫌だと言ってはいけない」「我慢しなさい」「周りにちゃんと合わせなさい」といった「~ねばならない」を頻繁に耳にするうちに、いつのまにか自分でもそう思うようになり、それがチャッターになっていきます。

「休日が有意義に過ごせていない気がして、休めない」というのも、思い返せば私たちは、子どもの頃から「夏休みは有意義に使いましょう」と学校で教えられているんですね。

つまり、社会もチャッターを作っているわけです。社会規範は大事だと思いますが、自分らしく生きるうえでの枷になっている部分もあるのです。

(後編に続く)
(構成:泉美木蘭)

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提供元:「繊細さん」にも役立つチャッターのテクニック|東洋経済オンライン

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