2022.11.15
面倒でもやって!年末調整と確定申告、両方した方が得する6ケース
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目次
・年末調整と確定申告の違い
・年末調整と確定申告の両方が必要な人とは
・年末調整と確定申告の両方が必要な6つのケース
・年末調整と確定申告の両方をした方がお得な6つのケース
・年末調整と確定申告、両方行う際の注意点
・まとめ
・年末調整や確定申告についてのQ&A
監修・ライター
fpフェアリンク株式会社 代表取締役 白浜 仁子 ファイナンシャル・プランナーCFP®
会社に勤めている人は、そろそろ年末調整の時期を迎えます。中には、副業をしている人や給与以外に収入を得る機会があったという人もいるでしょう。そこで今回は、会社員が年末調整だけでなく確定申告をしなければならないケースや、あえて確定申告をすることでお得になるケースをみていきましょう。
年末調整と確定申告の違い
1年間(1月~12月)に収入がある人は、翌年2月16日~3月15日の間に申し出て所得税を納める必要があり、これを確定申告といいます。ただし、会社勤めの方の場合は会社が1年間の所得税の見込み額を計算し、毎月の給与から少しずつ天引きしてくれるため、自分で確定申告をする必要はありません。
しかしこの天引きされた所得税は、あくまで大まかに計算したもののため、1年の終わりに正しく計算し直す必要があります。その手続きが年末調整です。年末調整は、職場から配布された「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの書類に、年末時点での配偶者の所得や扶養の状況、生命保険の加入状況などを記して提出します。
なお、今始める人が増えているiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)も年末調整で控除(小規模企業共済等掛金控除)の手続きができます。企業によりますが年末調整の書類は11月中旬くらいに取りまとめ、12月の給与時に過不足を調整するところが多いようです。
このように、確定申告も年末調整も収入をもとに納税するという目的は同じですが、確定申告は自分で計算して税務署に納税するのに対し、年末調整は職場が代わりに税務署へ手続きをしてくれるという違いがあります。確定申告を行うのは、自営業の方や、フリーランスなどの事業所得、アパート経営をして不動産所得がある方が中心ということになります。
年末調整と確定申告の両方が必要な人とは
このように会社員は、通常、確定申告をする必要はありませんが、年末調整をした会社員でも確定申告をしなければならないケースがあります。また、確定申告をする義務はなくても、あえて申告することによって税金が還付されてお得になるというケースもあります。以下で主なものを見ていきましょう。
年末調整と確定申告の両方が必要な6つのケース
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原則、給与以外で収入がある人は、税務署に申告しなければなりません。しかし、少しの副収入ならわざわざ申告しなくて良いとも定められています。その少しの副収入というのは「所得20万円以下」です。つまり、所得が20万円を超えると申告義務があるわけですが、間違いやすいのは、収入ではなく「所得」である点です。所得は、「収入-経費」で計算されます。では、年末調整をしても確定申告をしなければならないケースを具体的に見ていきます。
1.講演など単発の収入を得た人
例えば、ある専門分野に詳しい方が、時々講演依頼を受けているという場合です。報酬として1年間に22万円受け取ったとします。この場合の所得は、準備のための書籍の購入や、配布資料の印刷など掛かった経費があれば差し引いて求めます。このように継続的に反復して行われていない所得は「雑所得」といい、これが20万円を超えた場合は確定申告が必要になるというわけです。
講演の出演料以外にも、コラムなどの執筆料や、インターネットで品物を販売した際の売り上げ、ブログなどに広告を貼り、そこから収入を得るアフィリエイトなど、雇用契約を結ばないものなら基本的に雑所得となります。(雇用契約を結んだ場合は給与所得)
副業を認める会社が増えていますが、上記のように、片手間で収入を得ているのではなく、事業的規模で所得を得る状況の場合は「事業所得」となり確定申告が必要です。また、アパート経営で賃料収入を得ると「不動産所得」となり、こちらも申告しなければなりません。ただしこれらの所得が20万円以下の場合、申告義務はありません。(青色申告の場合は、所得に関わらず申告が必須)
2.個人事業主として収入がある人
3.給与を2カ所以上でもらっている人
副業先と雇用契約を結ぶ場合は給与として報酬を受け取ります。給与を2カ所以上で受け取る場合、主となる給与以外の給与収入が合計20万円を超えると申告が必要です。いくつか掛け持ちでアルバイトをしている場合が該当します。ただ、通常は、源泉徴収されているため、反対に申告することで還付を受けられる場合もあります。
4.生命保険の満期金や解約返戻金を受け取った人
生命保険の満期金や、途中で解約をして受け取った解約返戻金は一般に一時所得となります。一時所得は、他の所得と少し違い「収入-経費-50万円」と計算します。つまり、満期や解約で受け取った金額から支払った保険料と50万円を差し引き、その結果所得が20万円を超えると、確定申告をしなければならないというわけです。
5.建物や土地などの不動産を売却した人
建物や土地のような不動産を売却した時の所得を譲渡所得といいます。勤め先で年末調整が終わっていても、不動産を売却して利益を得た場合は確定申告が必要です。なお、譲渡所得から控除を差し引くと儲けがなかったことにできる特例がありますが、その場合もその旨を届ける必要があるため確定申告をします。
6.年末調整に訂正がある人
勤め先で行った年末調整が誤っているときは、確定申告で申告し直します。例えば、生命保険料控除の申告を誤って過剰にしていたなど、納める納税額が実際より少なくなっている場合は特に注意が必要です。
年末調整と確定申告の両方をした方がお得な6つのケース
【画像出典元】「Natee Meepian/Shutterstock.com」
1.医療費を多く負担した人
医療費が年間10万円(または、総所得金額等の5%)以上かかった場合は、医療費控除が受けられ、納めるべき税金が少なくなります。医療費控除は年末調整ではできないため必ず確定申告で手続きし還付を受けましょう。
2.1年以内に住宅ローンを借りてマイホームを購入した人
住宅ローンを借りてマイホームを購入した方は、要件を満たすと、10年(または13年間)年末のローン残高×1%(または0.7%)の税金が免除されます。これを税額控除といいます。この住宅ローン控除は、2年目から年末調整で手続きできますが、初年度のみ確定申告が必要なため、忘れないようにしましょう。
3.ふるさと納税で寄付をした自治体が5件を超えている人
ふるさと納税をするとき、給与所得者の大半が確定申告不要のワンストップ特例制度を利用していると思います。この特例制度は、寄付できる自治体が5件までという制限があります。そのため5件以上の自治体に寄付した場合は、確定申告で手続きすることになります。
4.ふるさと納税以外の寄付がある人
ふるさと納税以外で国や地方公共団体、公益社団法人などに一定の寄付をした場合は、確定申告をしなければ控除を受けることができません。寄付金(特別)控除といいます。そもそもふるさと納税はこの寄付金控除の対象ですが、ワンストップ特例制度というふるさと納税を利用しやすくするための特別な仕組み作りがされています。
5.被災して損害が生じた人
火災や地震、台風、大雨などで災害に見舞われ住宅や家財が一定の損害を受けた場合は、災害減免法により税額控除が受けられます。また、災害減免法とどちらかの選択になりますが、災害や盗難、横領によって資産が大きな損害を受けた時に利用できる雑損控除という所得控除もあります。
6.事業所得や不動産所得が赤字の人
事業所得や不動産所得が赤字となった場合は、確定申告によってこれらの赤字を給与所得と相殺するという損益通算ができるため、職場で源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。
年末調整と確定申告、両方行う際の注意点
【画像出典元】「stock.adobe.com/Lemonsoup14」
では、もし年末調整を終えた会社員が確定申告もする場合は何に注意したらよいでしょうか。まずは、源泉徴収票の準備です。
会社のイントラで各自が確認することも多いため、忘れないようプリントアウトをしておきましょう。源泉徴収票には、給与の支給額や社会保険料、生命保険料やiDeCoの掛け金、そして配偶者控除や扶養控除などの年末調整をした内容がすべて詰まっています。
これをもとに、追加で申告したい書類を準備して確定申告を行います。なお、ふるさと納税で寄付した自治体が5件以内であればワンストップ特例制度を利用できるとお伝えしましたが、確定申告をする場合、ワンストップ特例制度を利用している人でもふるさと納税分を確定申告しなければなりません。ご注意ください。
また、副業をしている場合は、収入の程度によって事業所得だったり、雑所得だったりしますが、いずれにしても、支払先の会社名や受け取った報酬を分かるようにしておくこと、そして、その収入を得るために掛かった経費の管理や領収書はきちんと保管して失くさないようにしておきましょう。
まとめ
ここまで、給与所得者の年末調整と確定申告についてみてきました。以下まとめます。
・確定申告は自分で税務署に申告するもの
・年末調整は、給与天引きされている所得税を正しく計算し、職場が代わりに税務署に納税するための手続き
・主とする給与所得以外の所得が20万円超ある場合は、年末調整をしていても確定申告が必要
・医療費控除や寄付金控除、1年目の住宅ローン控除など、確定申告でしか手続きできないものもある
・確定申告では、職場からもらう源泉徴収票が必要
税務は複雑なため、個別の状況によって有利不利が変わる場合があります。また、確定申告で所得税の申告をする必要がなくても、住民税の申告は別途しなければなりません。不明点は、税務署や市区町村の役所の担当窓口、または税理士に確認しましょう。
年末調整や確定申告についてのQ&A
Q.会社員です。大学生の娘の国民年金保険料を支払いました。節税になるようですが手続きはどうしたら良いですか。
A.国民年金は、社会保険料控除の対象になります。年末調整で手続きするのが簡単ですが、確定申告で手続きすることもできます。
Q.週4日パートで働いています。それとは別にアルバイトを週2日しているのですが、扶養控除等申告書は2カ所に提出しますか?
A.年末調整は、主とする勤務先で行うため扶養控除等申告書はパート先に提出します。
監修・ライター:fpフェアリンク株式会社 代表取締役 白浜 仁子
資格
ファイナンシャル・プランナーCFP®
経歴
2018年10月~ fpフェアリンク株式会社 代表取締役
2017年11月~ 西日本新聞社マネー情報紙「Oh! Yen!オーエン」 専属ファイナンシャルプランナー
2016年4月 FPオフィス フェアリンク開設
2014年4月~2018年3月 日本FP協会福岡支部 副支部長
2010年4月~2014年3月 日本FP協会福岡支部 幹事
2008年7月 内山FP総合事務所株式会社 専務取締役
1990年4月 地元の銀行に入行
専門分野
資産運用、住宅ローン、生命保険、相続、家計管理などライフプラン全般について多方面からサポートできるのが強み。
主婦として、母として、起業家としての経験を生かし専門知識とともにアドバイスを行う。
相談業務以外には、講演、企業研修、執筆などにも従事する。
記事提供:ウェブマガジン「mymo」
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提供元:面倒でもやって!年末調整と確定申告、両方した方が得する6ケース|mymo