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2022.07.07

どうなる通勤手当…「地方移住派」が知るべき知識|出社を求めない会社が増えるなか考えたい4つ


働く場所と時間にとらわれない働き方で、交通費の上限も撤廃する方向にシフトする会社もあります(写真:すとらいぷ/PIXTA)

働く場所と時間にとらわれない働き方で、交通費の上限も撤廃する方向にシフトする会社もあります(写真:すとらいぷ/PIXTA)

コロナ禍でのマスク生活も早2年。感染拡大を防止するため、働く場所と時間にとらわれない働き方が世の中に急速に広がりました。

こうした中で今起きているのが、会社側の対応の二極化です。従来のように出社を前提とする働き方に戻す会社がある一方、居住地や通勤手段の制限をなくし、交通費の上限も撤廃する方向にシフトする会社もあります。

後者においては、地元に帰る社員もいれば、都心を離れて地方都市に移住する社員もいるようです。そこで今回は、地方移住を検討する際に、あらかじめ押さえておきたい通勤手当の取り扱いについて解説します。

1.通勤手当のルールは各社ごとにまちまち

完全にフルリモート(在宅勤務)であれば交通費は問題になりませんが、例えば、週1回や月1回程度、定期的に出社する前提で地方移住を検討している方は、最初に自社の交通費の取り扱いを押さえておく必要があります。

まず、会社から当たり前に支給されている通勤手当ですが、そもそも労働基準法では何も規定されていません。つまり、通勤手当は、労働基準法上、会社に支払いが義務付けられているものではなく、支給するかどうかはあくまでも会社の裁量なのです。

とはいえ、どこの会社も通勤手当を当然のように支給する中、もし支給しなければむしろ目立ってしまいそうです。優秀な人材を採用できないなどもありえそうで、多くの会社で支給しているのが現状です。

通勤手当の支給基準は、会社のルールブックである就業規則に具体的に定められていることが大半です。会社によっては、会社が認めた通勤経路に限定する場合もあれば、労働者の希望する経路を認めている場合もありますし、1カ月や3カ月などの定期代を全額支給する場合もあれば、支給金額に上限を設けている会社もあり、会社ごとによって制度は異なります。

コロナ禍によって出社を前提としなくなった会社では、通勤手当を定期代ではなく、実費に切り替えて支給している会社も多くなっています。

こうした実態を踏まえ、地方移住するものの定期的に出社をする人は、まずは自社の通勤手当の取り扱いについて、就業規則などでチェックしてください。

2.実費支給でも原則社会保険の対象に

一般的に就業規則では「通勤手当は通勤に要する費用として支給する」と定められていますが、地方移住などで出社の頻度が少ない人には実費形式で支給しているケースが通常です。

もちろん会社により、1日の上限の有無や、特急や新幹線等の利用の可否など内容は異なります。ただ、ここで気を付けておきたいのは、社会保険における通勤手当の取り扱いです。

通勤手当も社会保険料や給付の基礎となる「標準報酬月額」(なお、「標準報酬月額」の詳細は過去記事『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』をご覧ください)の計算に含まれることになるのですが、業務交通費などとして通勤手当が実費で支給される場合でも、原則は社会保険の対象になってしまうということです。

つまり、地方移住し、ほとんどフルリモートになっている場合でも、まれに出社する必要があり、もともと出社を予定していた日に出社し、実費で支給された業務交通費も社会保険の対象となってしまうわけです。

『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』 ※外部サイトに遷移します

ただし、在宅勤務を予定していた日に会社から呼び出しがあり、急遽出社をしたようなケースは、その交通費を実費弁償として扱うことができ、社会保険の対象外にできることになっています。つまり、地方移住し出社の頻度は少ないものの、会社から支給される交通費が高くなれば、社会保険の基礎である標準報酬月額に影響が出てくるということです。

3.4~6月の交通費で毎月の手取りが変わる?

前述のとおり、たとえ業務交通費として実費で交通費が支給されるようになっても、もともとその日が出社を予定していた日であれば、交通費も社会保険の対象となってしまいます。そのため、交通費の金額が極端に高い、あるいは極端に低くなれば、社会保険料、給付のベースとなる標準報酬月額にも影響が出てくるわけです。

たとえば、あなたの月給が基本給等で28万円、通勤手当が毎月2万円支給されており、標準報酬月額が30万円だったとしましょう。地方移住し、週1回出勤し4、5、6月ともに各月7万円の交通費が実費で支給された場合は、標準報酬月額の等級が28万円から4等級上がり36万円となります。

健康保険料(協会けんぽ東京支部R4年度)は1万7658円-1万3734円=▲3924円、厚生年金保険料が3万2940円-2万5620円=▲7320円となるので、結果的に毎月の手取りが1万1244円減ってしまうことになります。

ちなみに、標準報酬月額は通常毎年1回、4月から6月に支払われる給与で計算され、10月分から翌年9月まで同じ標準報酬月額が適用されます。つまり、基本給など毎月固定で支払われる給与に変更がない限り、例え交通費が7月以降に少なくなっても原則見直されるわけではないのでご注意ください。

したがって、4月から6月の間に業務繁忙で出勤が続き、交通費が高額になってしまうと、原則1年間は社会保険料が高額になってしまうことになるので、4月から6月の出社はコントロールしておきたいところです。

4.標準報酬月額が上がることの損得

ところで、標準報酬月額が上がれば、保険料は高くなりますが、当然その分、給付金としてもらえる金額は多くなります。将来の年金はもちろんですが、健康保険の傷病手当金や出産手当金も多くもらえることになります。

傷病手当金は仕事以外の理由で怪我や病気となり、会社を休んで給与が支給されない期間に対して給付される所得保障です。意外と知らない方も多いので押さえておいたほうがいいでしょう。

傷病手当金の金額は、「1日につき標準報酬日額の3分の2」になっています。この「標準報酬日額」とは、傷病手当金の支給を開始した日以前12カ月間の標準報酬月額の平均額を30で割って計算します。ざっくりですが、標準報酬月額が1年ずっと30万であれば、1日について約6666円をもらうことができ、1年6カ月分受給することができるわけです(協会けんぽ)。

出産手当金は、女性が産前産後期間にお休みをし、給与が支給されない期間に対して、原則98日分支給されます。金額は傷病手当金と同じ計算方法です。

社会保険の給付金を多くもらうには

このように社会保険の給付金は、標準報酬月額をベースに計算されるので、標準報酬月額が高くなれば、その分給付金も多くもらえるわけですが、反対に損してしまうものとして高額療養費があります。高額療養費は、1カ月に負担した医療費が一定額以上となった場合に還付してくれる制度です。この一定額の基準が標準報酬月額によって4段階に分かれており、標準報酬月額が高くなるほど還付される額が少なくなってしまいます。

高額療養費については、事前に手続きを行い「限度額認定証」を発行してもらえば、病院での窓口負担を直接抑えることができます。大きな金額を用意し、一旦病院に支払う必要がなくなるので、手術などあらかじめ医療費が高額になることがわかっていれば是非活用することをおすすめします。

このように、地方移住してたまに通勤するという場合、さまざまな影響が出てきます。会社によってルールもまちまちであり、社会保険にも影響するので、後で後悔しないように自社の就業規則を事前に調べておくことが大切です。

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提供元:どうなる通勤手当…「地方移住派」が知るべき知識|東洋経済オンライン

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