2022.03.30
ナジャ「お金で幸せ買えないけど、不幸は防げる」|生きるのが楽になる、ナジャ流「6割の生き方」
テンションが高くなくても、ストレスフリーに楽しく生きていくには(写真:中田浩資/lingua franca)
ドラァグクイーン界のトップスターであり、タレントのナジャ・グランディーバさん。情報番組のコメンテーターからラジオのパーソナリティまで、幅広く活躍しています。ほぼ毎日レギュラー番組に出ていて多忙なナジャさんですが、「ストレス? ないねん」。
ドラァグクイーンとして、ゲイとして生きるナジャさんのストレスフリーな物事の捉え方を、同氏による書籍『毎日ザレゴト~人と比べて生きるには人生短すぎるのよ』より一部抜粋して紹介します。
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だいたい60%で生きてる
私たちゲイって、いつもテンション高いって思ってませんか。確かにそういう子もいっぱいいるし、みんなよくしゃべるし、しかもオネエ言葉でしゃべってゲラゲラ笑ってるから目立つんだと思うわ。そういうのを見て「テンション高い」ってひとくくりにされると思うんやけど、実際はちょっと違うかも。
おとなしい子もいれば、テンションの高い子だっているし、テンション高い子だってしゃべらないときもある。それとおんなじで、ゲイにもいろんなタイプがいるのよ。
テンションが高くて、にぎやかで面白いっていうステレオタイプで見られることが多いんやけど、私はその逆。「ゲイ=テンションが高い」「公務員=真面目」みたいに、職業などのイメージで相手を決めつけないほうがいいと思うわ。いろんな人がいるわけだから。
私なんて「テンション高いときってあるの?」って聞かれるぐらい、テンションが低い。気持ちの振り幅がすごく小さいのかも。めっちゃテンションが高いこともなければ、どーんってものすごく落ち込むこともない。だいたいいつものんびりっていうか、60%ぐらいで生きてる。でも、テンションが高くなくても、ちゃんといろんなことを楽しめてるわ。
いつも100%やったらしんどいやん。テレビではハイテンションな芸人さんだって、プライベートではおとなしかったり、無口だったりするやん。みんなそんなもんなんやと思うわ。
私の場合は、80%でも続く自信ないわ。だから、60%でいかせてもらいます。60%でも、他愛もないことで笑って楽しく生きていけたらじゅうぶんやから。つまらなそうに見えるかもしれないけど、私はそれで満足。
ロケしてたりすると、たまにIKKOさんに間違えられることがある。「ファンです! 握手してください」「サインください」って言われんねん。「まぼろし~!」って言いたくなるわ(笑)。
それに、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブと比較されることもよくあるんやけど、私自身はなんとも思わない。間違えられても、比較されても、全然気にならない。
マツコって引き出しの数がすごいし、知識も豊富でトークもうまい。私なんて引き出しの数は少ないし、中も空っぽ。でも、そんなもんなんやろうなぁと思ってる。だから、売れっ子のマツコを見て、「なんで私はできないんだろう」なんて不安になったことは一度もない。だって、どう考えてもマツコには敵わないから。知識の幅でも、身体の幅でも(笑)。
マツコにはマツコのいいところ、ミッツにはミッツのいいところ、私には私のいいところがあるって思っているから、それでいいねん。もし、私にマツコとおんなじ血が流れてて、外見も考え方もおんなじやったとするやん。それだったら、自分の努力が足りないのかなって思うかもしれないけど。
私のキャラも、マツコのキャラも、生まれ持ったもんやと思うねん。自分にはおんなじようにできないなぁって思うんじゃなくて、「私ならこれができるかも」っていう考え方をしたほうがいいんじゃない?
めんどうなことからは逃げてもいいと思うわ
仕事場とかでたまに機嫌が悪そうな人、おるやん。水商売やってるときにもよくお客さんにいたんだけど、そういう人って「あー、めんどくさいなぁ」って思うねん。かといって「なんか機嫌悪いんですか?」って聞いたりなんかしたら、きっともっと機嫌悪くなるやろうから、私はそういう人とはある程度距離を置くようにしてる。
機嫌が悪い人に「なんかあったんですか?」って聞いたりしたら、もう最悪。聞いた私にネガティブな話を全部吐き出してくるから、こっちがしんどくなってしまう。機嫌が悪いお客さんを接客せなあかんときでも、スタッフに「なんで機嫌悪いか聞いてきて。それであとで教えて」って頼んでたわ(笑) 。
気を遣いすぎる人って、自らそういうめんどうなところに首を突っ込んでると思うの。気になるのはわかるんやけど、機嫌が悪い人なんて放っておいたらええねん。
めんどくさいお客さんって結構いるんやけど、そういうテーブルにつくとめっちゃしんどくなるから、ほかの子に「あのテーブルについてくれへん?」ってお願いしてたわ。でも、そのうち店の子もテーブルから離れてしまって、お客さんも退屈して「帰ります」ってなるんやけど、そういうときにすかさず「ごめんね、ゆっくり話できなくて」ってすごいいい人ぶるねん、私(笑)。今まで放っておいたくせに。
そうすると、お客さんって不思議なもんで機嫌がよくなる。かまってほしいんやろうなぁ。気分のアップダウンが激しい人ほど、ちょっとしたひと言で機嫌がよくなると思うのよね。
あるお金持ちに言われた言葉
歳をとるごとに、お金って大切やと思うようになってきたわ。私にも、人並みに老後の不安とかがあるわけ。結婚もしてないし、子どももいないから、自分の面倒は自分で見るしかないからね。
だから貯めてるよ、お金。別に定期預金をしてるわけじゃないけど、毎月仕事したぶんだけ振り込まれるやろ。それで必要なぶんだけ使って、残ったぶんが貯まっていく感じ。当たり前やけど(笑)。まあ、特にケチでもないけど、浪費家でもない。
水商売をしていたときは、いろんなジャンルのお金持ちと知り合いになったわ。その中のひとりに言われたことがあるのよ。「お金で幸せは買えないけど、不幸は防げる」って。妙に納得したわ、この言葉。確かにお金で幸せは買われへん。どんなにいい服着ても、いいもの食べても、幸せなのはその瞬間だけやからね。
だからといって、お金がないとそれはそれで困ったことやねん。歳をとって、稼げないようになって身体が弱っても、誰もそばにいてくれる人がいなかったら寂しいやん。でもお金があれば、老人ホームに入ったり、ホームヘルパーさんを呼んだりできるかもしれないし。そういう生活が幸せかどうかはわからないけど、少なくとも不幸ではないと思うのよ。
お金を見せびらかして偉そうに上からものを言う人は好きじゃないけど、生きていくうえで、お金がないと何もできないのも事実。「お金で幸せは買えないけど、不幸は防げる」って教えてくれたお客さんも、きっといろんな思いや経験をしてきたんやと思うなぁ。だから、言葉に説得力があるのよね。
水商売をしてたときにはいろんなお金持ちに会ったけど、この言葉は特に印象的やったわ。だから不幸にならないためにも、私はお金を貯めようと頑張ってます。
「自分らしい」でええやん
たとえば、化粧をしたり、髪が長かったりするのが「女らしい」とか、筋肉質だったり、ひげを生やしたりするのが「男らしい」とかって思われがちだけど、これからは「男らしい」「女らしい」って言葉も廃れていくんちゃうかな。
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「らしさ」を男とか女とか、2つの性別だけで区別せんでもいいと思うわ。
だって、筋トレやってマッチョでひげがあるのも個性やし、シュッとしとって清潔感のあるイケメンも個性。別にそれでいいと思うんよ。女の子もおんなじで、ロングヘアも個性だし、ショートカットも個性。めっちゃ気が利くのも個性、料理ができるのも個性。
その人の個性が「らしさ」でええんとちゃうかな。
夏木マリさんって、とても素敵だと思うのよ。周りの目を気にせず、自分が好きなスタイルをしている夏木さんなんやけど、それって「女らしい」という性差を越えて、「Going My Way」って感じやろ。そうやって、みんな「好き」をやったらええと思うの。私もそうだけど、好きで女装をやってるし、それが私らしいと思うねん。
私は私でそれを他人に押しつけるわけでもないし、みんな好きにやればいいと思うんよ。 だから、私は「Going ナジャ Way」です。そこには「男らしい」「女らしい」とか「ゲイらしい」なんてなくて、「ナジャらしい」ってことでいいんじゃないかなって思ってる。
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提供元:ナジャ「お金で幸せ買えないけど、不幸は防げる」|東洋経済オンライン