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2022.03.18

「被扶養者が社会保険に加入すると得」のカラクリ|収入減でも傷病手当金や年金額増などで利点大


社会保険に加入せず、年収130万円未満の「被扶養者」として働いている人は必見です(写真:mits/PIXTA)

社会保険に加入せず、年収130万円未満の「被扶養者」として働いている人は必見です(写真:mits/PIXTA)

いま、将来への不安から「お金の増やし方」の本が人気です。しかし、そのほとんどは「投資」を勧める本です。たしかに投資でうまくいけば、大金を手にできるかもしれませんが、なかにはリスクが怖くて一歩踏み出せない人もいます。

「お金を増やす方法は投資や倹約だけではありません」と語るのは、お金の知識を活かしてセミナーや記事執筆を手がける、社労士・FPであり、元保険販売員でもある佐藤敦規さんです。「給付金や年金といった便利な仕組みをフル活用することで、リスクをかぎりなく抑え、堅実にお金を増やしていけます」。本稿では佐藤敦規さんの著書『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』から、無理なく確実に得するためのヒントを3回にわたって紹介します(1回目の記事はこちら)。

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1回目の記事はこちら ※外部サイトに遷移します

パートやアルバイト、契約社員といった働き方をする人で、社会保険に加入せずに、「被扶養者」として働いている人は少なくありません。なぜなら、被扶養者で働いている人が社会保険に加入すると、毎月、厚生年金保険料や健康保険料が給料から引かれるようになるからです。つまり月々の手取りが減ってしまうのです。

一方で、「第3号被保険者」という立場でいれば、上記の社会保険料は支払わずに済みます。1円も払わずに、配偶者の健康保険証を使って病院で診てもらえるのです。こうした事実を考慮して、被扶養者でいるために、あえて月20時間以内、年収130万円未満に収まる働き方をしている人は少なくないのです。

社会保険の加入で厚生年金が受け取れる

しかし私は、たとえ収入が減っても、社会保険には加入するほうがよいと考えています。

社会保険に加入すると、厚生年金が受け取れるようになります。主に企業に勤める人が受け取る年金であるため、契約社員やアルバイトといった非正規雇用の人は対象外と思われがちですが、下記の条件を満たせば70歳まで加入できます。

◉週30時間(従業員数501人以上の会社は週20時間)以上の勤務
◉年収105万6000円(月収8万8000円)以上

この条件は、2022年10月からは週20時間以上、従業員数101人以上、2024年10月には同51人以上に拡大されます。2カ月以上勤務していて、先ほど挙げた時間数働いている人は、厚生年金に加入できるのです。

また、社会保険加入者しか享受できない以下のような優遇制度があります。

社会保険加入の最たるメリットが、傷病手当金です。万が一の事態によって働けなくなるなどした際、報酬日額の3分の2が最大で1年6カ月、支給される制度です。日額が6000円なら、4000円がもらえるのです。

1年以上、社会保険に加入していた記録があれば、退職後も受給できます(ただし退職時に傷病手当金をもらえる状態であったなどの条件があります)。この制度は国民健康保険にはないため、社会保険の加入者(加入者であった人)でないと受給資格がありません。

ケガなどで働けなくても収入が途絶えない

パートやアルバイトとはいえ、その収入は家計の大事な一部です。ケガや病気などにより万が一働けなくなった場合、被る影響は大きなものがあります。傷病手当金で収入の3分の2が補填されるのは、かなり安心できます。さらに、病気やケガをしたときにもらえる障害年金の判定基準が緩くなるというメリットもあります。

厚生年金の被保険者には、国民年金と同じ1級、2級に加え、3級と障害手当金という制度があります。国民年金における障害基礎年金2級の判定基準は「仕事ができない状態」であるのに対して、障害厚生年金における3級の判定基準は「労働に制限があるかどうか」で、2級よりも軽い症状で該当することもあります。

労働制限があるというのは、「1日のうち、短時間しか働けない状態」を指します。うつ病にかかってしまい今までと同じように働けなくなったとき、障害厚生年金の3級なら認定される可能性も出てきます。

また第3号被保険者の期間が大半の場合、65歳以降、もらえる年金は月額で10万円を大きく下回ります。

以前は、定年まで勤めた配偶者の年金や退職金などで余裕がある生活を送れたかもしれませんが、終身雇用の慣習がなくなった現在、転職やリストラなどで年金や退職金が減る恐れがあります。厚生年金によって老後のお金を1万円でも上乗せできたほうが安心でしょう。

加えて、厚生年金に加入している夫婦にはお得な制度があります。それは「加給年金」という制度です。

例えば、夫より年下の妻で、厚生年金の加入期間が20年未満、年収が850万円未満の要件を満たしている場合は、65歳からもらえる夫の年金に加給年金が加算されます。

支給金額は年間約39万円。届け出をすれば、夫が65歳になった時点から妻が65歳になる時点まで毎年、加給年金が夫の年金に加算されます。夫が年下で同様の要件を満たしている場合も同様です。

また昭和41(1966)年4月1日以前に生まれた妻は、65歳になると加給年金の支給が停止する代わりに、「振替加算」がプラスして払われるようになります。金額は生年月日により変わり、昭和36(1961)年4月2日~昭和41年4月1日生まれの人は、年間で約1万5000円程度です。

「加給年金」は忘れずに申請しよう

「加給年金」は忘れずに申請しよう

これらの制度については、「ねんきん定期便」にも載っていないため支給漏れも多いようです。厚生労働省は2017年、事務処理のミスなどで、公的年金の支給漏れが見つかったと発表。年金加入者の配偶者が65歳になると年金額に上乗せされる「振替加算」が、約10万人に対し総額約598億円が未払いだったと公表しています。

年金はできる限り「未納」しないこと

年金は請求しないともらえません。日本年金機構のホームページで制度について紹介されていますが、正直、わかりづらいです。お近くの年金事務所や、社会保険労務士などの専門家に相談し、忘れずに申請しましょう。

年金は納めた月数によってもらえる金額が変わります。未納の月数が増えれば、その分、金額は減ってしまいます。そのため、できるだけ未納は避けましょう。習慣とは恐ろしいもので、いったんやめてしまうと再開するにはエネルギーを要します。

年金の未納が続くと老齢年金の額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金がもらえなくなる恐れもあります。なぜなら、対象期間のうち保険料を納めた月が3分の2以上、初診日の属する月の前々月に保険料未納期間がないことなどの要件を満たさないと、支給されないからです。

冷たい制度だなと思う人もいるかもしれませんが、保険は国民みんながお金を出しあって維持する制度なのでしかたがありません。なお民間の保険では、未納期間が2カ月続くと契約失効してしまいます。

もし保険料の支払いが厳しくなってきたときは、国民年金であれば、支払いを免除してもらえる制度があります。これは収入の減少や失業などにより、国民年金の保険料を納めるのが経済的に困難になった場合に利用できます。

免除制度には保険料全額免除、4分の3の免除、半額の免除、4分の1の免除、納付猶予(50歳未満の人のみ)の5種類があり、いずれも申請が必要です。

免除認定の審査は、本人、配偶者、世帯主の3者(納付猶予になる対象は本人・配偶者のみ)の申請年度の前年所得を基準に行われます。市区町村の年金窓口やお近くの年金事務所で相談してみましょう。

前払いすると2年で約1万5000円お得

反対に、可能であれば保険料は前倒しで払ってしまいましょう。なぜなら先に納めることで得できるからです。国民年金には前納制度といって、将来の社会保険料をまとめて払える制度があるのです。1年度分を前納すると年間3540円、2年度分の前納なら2年分で1万4590円の割引となります。お金に余裕がある時期に払うのも手です。

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一般的な企業の定年は60歳ですが、人生100年時代、多くの人は60歳以降も働き続け、収入を得る必要に迫られるでしょう。

その場合、定年以降は契約社員やアルバイトの形態で雇用される会社が多いと思います。契約社員、パート、派遣社員など、非正規雇用の場合は社会保険に加入できないと思っている人もいますが、先ほどお伝えしたようにそれは誤りです。

また、これまでは「特別支給の老齢厚生年金」といって、60歳から年金を支給されていた人は、月収が28万円を超えると年金が減額されてしまいましたが、2022年4月からはこの減額制度の適用額が47万円にアップします。収入をセーブしようと考えずに働けるようになり、定年を迎えた人たちにとって、厚生年金はよりお得な仕組みとなりつつあるのです。

最近では、「年金なんてあてにならない」「少子高齢化によって制度を維持するのが難しい」「年金をもらう世代を支える現役世代が減るので、制度自体が破綻するだろう」といった意見が、ネットや書籍などでいくつも見られます。

ですが、年金を負担しているのは国民だけではありません。年金は「賦課方式」といって、現役の世代が納めている保険料を原資にしています。納める人が減り、もらう人が増えるのですから、収支的に苦しくなるのは自明ですが、国も給付費の1/2を負担しています。したがって現役世代が減ったからといって即、制度が破綻するとは考えにくいのです。

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また、国はお金を補助しているだけでなく、預かったお金を投資によって運用しています。年金積立金管理運用独立行政法人(略称はGPIF:Government Pension Investment Fund)が管理しており、2021年度3月の時点で約95兆円の利益を出しています。そのため、年金制度がなくなる可能性は極めて低いと考えています。

収入を得て、保険料を払う。これは立派な社会参加です。できる範囲で働き続け、納税することで、年金がもらえるだけでなく、社会の一員としての自信も高まり、充実した定年後を過ごせることでしょう。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

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提供元:「被扶養者が社会保険に加入すると得」のカラクリ|東洋経済オンライン

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