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2022.03.02

パートの人に影響大!「社会保険」適用拡大のカベ|今年10月から変更、年間20万手取り減の場合も


パートなど短時間労働の人、必見です(写真:つむぎ / PIXTA)

パートなど短時間労働の人、必見です(写真:つむぎ / PIXTA)

意外とご存じない方も多いようなのですが、今年10月からパートなどの短時間労働者に対して、社会保険が適用拡大されます。今まで、扶養の範囲を超えないように、年間の収入を調整しながら働いていた方や副業などで勤務時間が短く社会保険に加入していなかった方、さらにはそういったご家族を扶養されている方は特に注意が必要です。

社会保険は、加入要件に該当すれば本人の意思にかかわらず強制的に加入しなければなりません。そのため、早い段階から加入要件を押さえたうえで、必要に応じて、雇用契約を変更するなどの対応も必要となってきます。

そこで、今回は今年10月から短時間労働者に適用拡大される社会保険について、今のうちに押さえておきたいポイントを4つにしぼってお話します。

1、 対象となる会社を押さえよう

今年の社会保険の適用拡大ですが、対象となる会社は従業員100名超の会社です。すでに従業員が500名超の会社は2017年10月から適用となっており、今回、適用される規模が500名超から100名超に下がるわけです。

なお、2024年10月には、さらに従業員50名超の会社に適用拡大されることになっています。

ここでポイントなのは、この従業員100名の考え方です。まず、従業員のカウントは、法人つまり会社単位で考えることになるので、支店や営業所といった事業所単位で考えるわけではありません。

次に、従業員の定義ですが、この従業員はあくまでも、社会保険に加入している、いわゆる被保険者をカウントします。非常に紛らわしいのですが、単純に従業員数でカウントするわけではないのです。

例えば従業員数400名の会社で、そのうち正社員が50名、パートが350名で、パートの全員が社会保険に加入していないとします。この場合、社会保険に加入している従業員は正社員50名だけになるので、今回の100名の基準には該当せず、適用拡大の対象とならないわけです。

2、具体的な社会保険の加入基準とは

では、社会保険加入基準について、話を進めます。加入基準は4つあり、具体的には、(1)週所定労働時間が20時間以上であること、(2)月額賃金が8万8千円以上であること、(3)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること、()学生でないことです。

(1)「週所定労働時間が20時間以上であること」とは、会社と締結した雇用契約書等に記載されている週所定労働時間(あらかじめ契約で定められた1週間で勤務しなければならない時間)が20時間以上かどうかということです。たとえば、たまたま残業したので、20時間を超えてしまったような場合は対象とならないわけです(ただし、労働契約上は週20時間未満であっても、実態として恒常的に20時間以上働いている場合は加入となるので注意が必要です)。

(2) 「月額賃金が8万8千円以上であること」とは、基本給など毎月支給される決まった給与だけを計算して月額8万8千円以上かということです。つまり、残業代やボーナスなど、あらかじめ決まっていない給与等は含みません。つまり、結果で判断するわけではなく、契約上の金額で判断するのです。

また、通勤手当や皆勤手当、家族手当も除外して計算します。よく、メディアなどで年収106万円の壁と言われていますが、あれは月額8万8千円を年換算しただけで、あくまでも税金のように年収から判断されるわけではないので、ご注意ください。

ところで、8万8千円という基準ですが、最近は最低賃金が毎年上昇しており、東京だと現在の最低賃金が1041円(2021年)になるので、たとえ労働時間が週20時間ちょうどであっても、1041円×20時間×約4.3週=89526円となり、8万8千円を超えることになります。最低賃金が高い東京、神奈川県1040円(2021年)ではこの月額賃金の基準で除外されることは実質ないことになります。

(3) 「雇用期間が2カ月を超えて見込まれる」とは、2カ月で雇用契約が終了することと明らかでない場合がこれに該当します。つまり、雇用契約が2カ月だったとしても「契約更新する場合がある」等と記載され、実際に今まで更新されている方がいるケースは2カ月を超えて見込まれると判断されることになります。そのため、2カ月間だけきっちり限定の短期バイトのようなケースでない限り、2カ月の見込みがあると判断されることになります。

(4) 「学生でないこと」とは、文字通り学生は対象外ということですが、例外的に夜間学生や卒業前に就職し、卒業後もそのままその会社で働く学生等は対象となるので注意が必要です。

このように、社会保険加入基準は4つありますが、従業員側の都合で調整できるのは現実的には(1)「週所定労働時間が20時間以上であること」しかありません。配偶者等の扶養に加入していて、どうしても社会保険に加入したくない方は、早めに会社に相談し、週所定労働時間を20時間未満に調整してもらうなどの対応が必要です。

3、加入は損か得か

(1)保険料について 

加入基準がわかったところで、次はいちばん気になるお金の話です。まず、当然社会保険に加入となれば、保険料がかかるわけですが、ご自身が現在国民年金第1号被保険者なのか国民年金第3号被保険者(配偶者の扶養に入っている方)であるのかによって影響がだいぶ異なってきます。

例えば現在、第1号被保険者として、国民年金保険料(令和3年度月額1万6610円)を負担し、また国民健康保険の被保険者として健康保険料・介護保険料を負担している方が、月収12万程度あって、今回の改正により社会保険の加入することになり、標準報酬月額が11万8000円で加入となったケースです(なお、「標準報酬月額」の詳細は過去記事『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』をご覧ください)。

『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』 ※外部サイトに遷移します

まず、厚生年金保険料は月額1万797円(令和3年度)になるため、従前負担していた国民年金保険料より安くなり、なんと年間で6万9756円、年金分の保険料負担が減ることになります。これは、厚生年金保険料を会社が折半してくれているため、加入した方がかえって特になるということです。

ちなみに、国民健康保険料は、市区町村によって算出式が異なるため一概に比較することができません。ただ、今回の月収のケースだと、加入後の健康保険・介護保険・厚生年金の本人負担分の合計が1万7665円になるのに対して、従前負担していた金額は、国民年金保険料だけでも1万6610円(差額1055円)なので、現在負担している国民健康保険料を加えれば間違いなく加入後の合計負担額1万7665円を超えているはずです。つまり、国民年金第1号被保険者のケースは、社会保険に加入することによって、逆に社会保険料の負担が少なくなることがあるということです。

一方、配偶者の扶養に加入している国民年金第3号被保険者のケースだと、現在は健康保険料および国民年金保険料の負担がありません。それが、上記の通り、月収12万程度で加入となった場合は、健康保険料(介護含む)と厚生年金保険料を合わせて月額1万7665円(令和3年度)の負担が発生することになるため、年間だと21万1980円手取りが少なくなってしまうわけです。

(2)給付について

厚生年金に加入することになれば将来もらえる年金はもちろん、障害を負ったときの年金、万が一亡くなってしまったときに遺族に支払われる年金はその分多くもらえます。また、健康保険に加入すれば、国民健康保険や健康保険の被扶養者であったときにはもらえなかった傷病手当金(私傷病で働けない間におよそ月収の3分の2が給付される)や出産手当金(産前産後休業期間中におよそ月収の3分の2が給付される)の給付を受給することができるなど、加入前と比べ手厚い給付を受給できるようになります。

4、ダブルワークやフリーランスの人はどうなる

ところで、最近ダブルワークやフリーランスと言われる働き方が増えていますので、それぞれの社会保険の取り扱いについても少し触れたいと思います。

まず、ダブルワークの場合ですが、社会保険の加入基準は、あくまでもそれぞれの会社ごとに判断していきます。つまり、週20時間等の基準を見る際は、両社の所定労働時間等を通算して判断することはないのです。

例えば、A社15時間、B社10時間で通算25時間であったとしても、通算して加入とはならないわけです。逆に、A社20時間、B社20時間の場合でその他の基準をそれぞれ満たす場合は、両方で社会保険加入となり、保険料は按分計算されることになります。次にフリーランスの場合ですが、フリーランスはあくまでも個人事業主になるため、社会保険に加入することはできません。

なかなか給与も増えない中、手取りが減ることは大きな話だと思います。ご自身の状況に応じて早めに対応しておきましょう。

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提供元:パートの人に影響大!「社会保険」適用拡大のカベ|東洋経済オンライン

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