2021.10.19
家欲しい人は絶対知るべき「住宅ローン」重大盲点|勝間和代が教えるお金の上手なコントロール法
経済評論家の勝間和代さんが実践するお金のコントロール方法を解説します(写真:K+K/PIXTA)
「お金をコントロールするのは、自分の力をコントロールするのと同じです。どんなにお金を稼ぐ力があっても、上手に使う力がなければ、たちまちうまくいかなくなります」。そう話すのは経済評論家の勝間和代さんです。「お金をコントロールする」とは単なる節約を意味しているのではなく、心が満たされて幸福度も上がるお金の使い方だといいます。それはどういうことなのか。新著『勝間式生き方の知見―お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』を上梓した勝間氏が解説します。
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明治の「おいしい牛乳」を好んで買う理由
お金を上手に賢く使うには、コストパフォーマンスを徹底的にチェックする習慣を持つことが基本です。これは、ケチになるというのとはちょっと違います。自分が価値を感じる商品やサービスに対してはどんどんお金を使い、逆に価値を感じないものについては安くても一切使わない習慣を意味します。価値を感じるものにだけ使うからこそ、受け取れる幸せの価値が上がるわけです。
例えば、私は明治の「おいしい牛乳」を好んで買っています。ほかのプライベートブランドの牛乳と比べると多少割高なのですが、味が合格点であること以上に、丸い広口キャップの注ぎ口が気に入っているからです。ユニバーサルデザイン仕様で幅広い年齢層に使いやすくなっているうえ、リキャップできるため注ぎ口に手が触れることなく衛生的、かつ、牛乳の風味を保ちやすくなっているそうです。
私も、ずっと衛生面や風味が落ちるのが気になっていたので、あのキャップの登場にはうれしさを覚えました。それが多少割高でも買う価値で、自分が快適だと思う世界観を実現するための手段として、お金を使っているのです。
衣類は、ユニクロでよく買います。それは素材や材料について細かく情報が開示されていることと、大手に成長するまでの過程にあった価格競争に勝ってきたため、コストパフォーマンスがいい商品群だからです。
自分を特別な存在として認めてもらいたいと考える人は、洋服や食事に対してもスペシャル感を求める傾向がありますが、本人の中身がスペシャルであれば、食事も洋服もスペシャルである必要はないと思っています。
スペシャル感を求める傾向は、経済学用語で「顕示的消費」といいます。いわば、見せびらかすための消費で、飛行機に乗るときは、ビジネスクラスやファーストクラスを使いたがります。
そうした顕示的消費とは一線を画して、コスパがいい商品やサービスを中心にした消費行動にすると、決めた予算内で楽しみを追求できるようになります。むやみやたらに、ハイクラスのものを求める感覚がなくなって、値段が高いものがいいもの、という思い込みも消えます。
ただただ安いものを探すのでも、ただただハイクラスのものを探すのでもなく、自分が支払うお金に対するパフォーマンスが見合うものだけに使えるようになるのです。
私はことあるごとに、広告を見ることに注意を促していますが、広告されている商品というのは広告をしなければ売れない商品であるうえ、広告費が上乗せされた形で販売価格が決められているため、コスパがいいとは限らないからです。
生命保険はコスパが悪く、住宅ローンは高リスク
コスパが悪い典型例といえば、終身生命保険です。もともと生命保険は、私たちが早死しない限り損をする仕組みになっているのでそれなりに高く、終身は貯蓄分も加わるためダブルでコストが高くなってしまいます。
例えば子どもを1人で育てていて、十分な資産がなければ保険をかける必要があると思いますが、子供がすでに成人したら必要ありません。ガン保険や医療保険もコスパが悪く、先進医療を受けない限りは、国が補償する保険制度で十分カバーできます。どうしても不安であれば、最小限の保険に入ればいいと思います。
住宅の購入も、一般個人には過大な債務となるため、私はあまり勧めていません。どうしても買いたい場合は、その住宅が市場で競争力があるのか、すなわち、賃貸に回したときにすんなり借り手がつくか、ということを判断基準にするといいでしょう。ただし、住宅ローンは非常にリスクの高い行為であることを自覚してください。
なぜ住宅ローンのリスクが高いかというと、買った住宅が値下がりをせず担保価値を保てることと、ローンを設計した時点の収入や返済計画が、その後数十年にわたって保てるとことを前提にしているからです。
かつて、住宅が値上がりし収入も右肩上がりの時代には、住宅の購入は悪い投資ではありませんでした。しかし、現在の日本は人口が減少していて、一等地を除いた住宅は値上がりする可能性が小さく、また、今後もコロナ禍のようなことが起きて収入が減る可能性があるため、非常にリスクが高いのです。
私たちは、昇給したりボーナスが上がったりして収入が増えても、それを資産形成に使わない限り、何に使ったかわからない結果になりがちです。つまり、お金のほとんどを無意識に使っているということです。証券会社や銀行の定期預金に入っているものはなかなか使いませんが、普通預金に入っているものはついつい引き出して使っています。お財布の中に入っているお金は、いつの間にか雲散霧消してしまいます。
私は、仕事で消費者金融の研究をしたことがあるのですが、消費者金融の特徴は、20万円という与信枠を顧客に与えた場合、ほとんどの顧客がその与信枠ギリギリまで使うようになることです。
もともと消費者金融に行く段階でお金に困っているわけで、借りに行くまでに相当支出の我慢をしています。そこでお金を借りられると、借金ではなく、まるで20万円の貯金があるような感覚でお金を使い尽くしてしまう、ということでした。その錯覚は、まさに私たちがお金を意識的に使えず、無意識に使っている証しでしょう。
客単価が数万円の寿司店に行かないワケ
以前、堀江貴文さんが「寿司職人は半年で十分に育成できる」といった発言をSNSでしたところ、大きく叩かれたことがありました。理由は、お寿司の付加価値が激減してしまうからです。
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おおむね、私は堀江さんの意見に賛同しています。少なくとも、私はお寿司を食べに行くとき、個人経営で客単価が数万円もするお店に自ら選んで行くことはありません。生産性が低すぎて、その生産性に、私が苦労して得たお金を費やす気になれないからです。
いっぽうで、職人さんが握った数万円もするお寿司を食べるのはこのうえない贅沢で、心を満たしてくれる、と考える人もいます。これも前述した顕示的消費の一種で、私の目には、無意識に刷り込まれたステイタスに対するあこがれに導かれた行動に見えてしまいます。
今現在、自分の収入と支出のバランスが取れていて、十分な資産もあるのであれば、あえて自身の消費行動を疑う必要はないでしょう。そうではなくて、いつもお金が足りなくなる、資産形成が思うように積みあがっていない、という場合は、自分の消費行動を振り返って、目標を妨げる顕示的消費をしていないかを確認してください。
できれば、お金を使うときには、このお金は自分の目標を達成するためにどのくらい貢献しているか、というフィルターを通すようにするのがお勧めです。貢献度が高い使い方は自己投資になりますが、そうでなければ単なる消費です。できるだけ、自己投資的な使い方を増やすようにしましょう。
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提供元:家欲しい人は絶対知るべき「住宅ローン」重大盲点|東洋経済オンライン