2021.10.13
栄養士指南!結局、「健康的にやせる」コツは2つだ|理論上正しくても心身が疲れる方法はよくない
食事制限してストレスを感じてしまっては元も子もありません(写真:takeuchi masato/PIXTA)
栄養士として企業での研修なども行っている笠井奈津子氏のもとには、多くのビジネスパーソンからダイエットについての相談が寄せられます。世の中にはさまざまなダイエット法があふれていますが、笠井氏は「時間マネジメント」と「ストレスマネジメント」についてアドバイスするそうです。新著『何もしない習慣』を上梓した笠井氏が、ダイエットの秘訣についてお届けします。
前回:疲れ抜けず悩む人に急増「主食抜きすぎ」の大問題
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疲れ抜けず悩む人に急増「主食抜きすぎ」の大問題 ※外部サイトに遷移します
普遍的な健康のルールだけに沿う
私の職業柄、もったいない時間の使い方をしているように感じるのがダイエットです。ダイエットには中毒性があり、ダイエット自体が生活の一部になることで日常的に時間と気力を割いている人もたくさんいます。
多少体に悪くても、間違っていてもなんでもいいから、「とにかく体重を落としたい!」というときもあるでしょう。でも、もし正しいダイエットがあるとすれば、それは時間が多少かかっても健康を損なわない方法だと考えます。
私たちには一人ひとり異なるライフスタイルがあり、年齢によって代謝の働きなども変化するため、今の時点で有効でも、それが5年後も自分に有効だとは限りません。それを思うと、ダイエット本を1冊読んで、「これがいい!」と信じ込んで行うダイエットに、普遍的な正しさは存在しないのではないかと見ています。
すべての人が結果を出せるダイエット法はないと考えたほうがよく、一人ひとりが自分のプランを立てるしかないのです。でも、それは言葉でいうほど簡単なことではありません。
ではどうすればいいのか? それは一般的なダイエットのセオリーではなく、「食べすぎない」「夜遅くに食べない」という普遍的な健康のルールだけに沿うことです。そのようにすれば、体を無理なくしっかり休めることができ、人間にとって自然なダイエットができるはずです。
理論上は正しくても、あなたの心や体を疲れさせるようなダイエットはあなたにとっては間違ったダイエットです。ダイエットというものは、「これ以上は太らないように気をつけよう」と、自分なりの目安を設けるくらいがちょうどいいのです。
「〇キロ減!」といった目標を設定すると、その目標に達成するまでは自分を肯定的に評価できず、それがストレスになって、暴飲暴食につながってしまう場合も多々あります。
むしろ食欲に勝とうと思わずに、食欲と仲良く共生する習慣がとても大切です。私自身かつてはダイエットに苦しみましたし、やせないことにストレスを感じている人はたくさんいます。だからこそ、「ストレスになるほどダイエットを頑張らなくていい」と、多くの方にお伝えしたいと思っています。
もちろん、適度な糖質制限などによって、増えすぎた体重が落ちること自体は素晴らしいことです。ただ、体を動かすことがしんどくなったり、些細なことでイライラしたり、仕事に集中できなかったりするならば、はたしてそこまでしてやせることがいいことなのか疑問に感じます。
ダイエットに時間とエネルギーを費やすことで、いざというときにエネルギーが出ない「動けない体」になれば、むしろ人生をよくするチャンスを逃してしまうでしょう。多くのビジネスパーソンのダイエット相談をしていて感じるのは、自分の体を「点」でとらえる危うさです。
やせたい→食事制限→栄養不足→疲れが抜けない→ストレスでリバウンド→やせたい
このように、自分の体や生活全体を俯瞰せずに、「点」としての情報や知識でとらえていると、うまくいかないどころかますます体調を崩してしまいます。そんな負のループから抜け出すためには、ダイエットで最も必要なのは「時間の使い方」だと心得ましょう。
ダイエットに失敗するのは「時間の使い方」が原因
「ダイエット指導」と聞くと、食事の内容や食べ方を指導されると思う人がほとんどでしょう。でも、実際はタイムマネジメントからスタートすることばかりです。
なぜなら、体重が増えた理由が「残業が多くて夜ごはんが寝る直前になる」「平日は忙しくて買い物に行く時間がないから適当に済ませてしまう」「昼休みはなかなか抜けられないからカップラーメンになる」という理由だったりするのに、「栄養バランスよく」という話からはじめても、「それができたら苦労しない!」となってしまうからです。
これまでできなかったことを「できる」ようにするためには、生活全般の調整が欠かせないのです。
あまたある情報を前にして、「するかしないか」「いいか悪いか」「自分にできるかどうか」を考えるのではなく、ダイエットの真理である「食べすぎない」「夜遅くに食べない」ために、自分の時間の使い方(行動)を見直していくのが、最もいいアプローチになります。
また、ダイエットに失敗するのは、職場の雰囲気や、「○○すべき」という見えないルールに縛られて、「自分に合った時間の使い方」ができていないことも原因だと私は見ています。
他人軸に合わせて時間を使っていると、自分にとってベストなリズムがわからなくなってしまいます。そのために食事時間がずれ込んでいき、睡眠時間も不足して、体がどんどん疲れていくわけです。しかもそうなると、「ひとりでゆっくりと考える時間」もなかなかつくれないので、つい間違った情報(自分に合わない情報)に飛びついてしまい、疲れた体にさらに追い打ちをかけるダイエットをしてしまう悪循環に陥ります。
ダイエットで大切になるのは、(1)夜遅くに食べないための「時間マネジメント」と、(2)リバウンドを繰り返さないための「ストレスマネジメント」です。
まず(1)夜遅くに食べないための「時間マネジメント」の取り組み方としては、「食べる時間をスライドする」だけでいいと私は考えています。夜にしっかり体を休められるように、夕食の時間を前倒しするのです。15分、30分といった単位でも構いません。とにかく結果を変えるには、日々あたりまえになっている習慣から変える必要があります。
夕食は20時までに終わらせることをおすすめします。とはいっても、夕方にすべきことが集中していて難しい人も多いでしょう。
そこで活用できるのが、「1日のおもな行動」をまとめてみることです。それをあらためて眺めてみると、次に挙げた例のようにどうにか工夫できそうなところはありませんか。
・お風呂と食事の時間を入れ替える
・週末は時間があるのでつくり置きを多めにする
・夕方の間食をやめてその時間に夕食をとる
・子どものお風呂を夫にお願いすると家族全員早く食べられる
・早く夕食を食べられた日と同じルーティンで仕事をしてみる
不健康な行動が増えるのが「夜」が持つ魔力
20時までに夕食を終わらせることをおすすめしたのは、睡眠の質を上げるためと、睡眠不足による食欲増加を防ぐためです。また、遅い時間になるとどうしても手軽な加工食品が多くなり、そもそもヘルシーな食事を選択できない場合も多々あります。しかも、夜にたっぷり食べてしまうと、朝は当然お腹が空いていないので食べられなくなり、1日のはじまりのエネルギーを摂ることもできません。
そんなときは、「夜何時くらいまでに食べれば、同じものを食べても翌朝スッキリ起きられるか」という自分のエビデンスをためて、自分の目安となる時間・内容を「トリセツ」に加えることができれば理想的です。そうすれば、遅い時間に食べることになった日でも、変に罪悪感を覚えることなく、食事の時間を「充電」の時間に充てられます。
「深夜にラーメンやスナック菓子を食べる」という話、「眠れなくてつい寝酒に手を出してしまう」という話は、少なからず耳にします。仮に同じストレスを抱えていたとしても、朝には絶対しないような不健康な行動が増えるのが「夜」という時間が持つ魔力です。そんな夜の時間が長くなるほど、ゲームをし続けたり、テレビを観続けたり、深酒をしたりするなど、体に負担をかける時間も長くなります。
もう答えが見えてきた人もいるかもしれませんが、ダイエットにもよく、心と体を休ませるいちばん手っ取り早い方法は、「さっさと寝てしまう」ことです。早めに食べて、お腹が空いたと思う前に早めに寝るスタイルへと持っていく――。夕食の時間をスライドし、その分寝る時間も早くするのが、とても楽なダイエット法であり、健康法です。
朝型、夜型といった異なる睡眠リズムはありますが、夕食の時間をずらすだけで、以前とまったく同じ料理を食べていたとしても、体重が増えなくなるのを感じるでしょう。食事のリズムが整っていくにともない、体がどんどん楽になっていきます。
時間の次に考えたいのは、(2)リバウンドを繰り返さないための「ストレスマネジメント」です。これまでダイエットのために、妥協してメニューを変えたことはありませんか?
「本当はアイスを添えたアップルパイが食べたかったけれど、ゼリーにした」
「ふつうのミルクチョコが好きなのに、糖質オフの苦いチョコを選んでいる」
「がっつり定食が食べたい気分だったけれど、カロリーを考えて蕎麦にした」
「カップラーメンが食べたかったのに、カップスープで我慢した」
もしこのように、ダイエットありきの選択が頻繁にあり、かつダイエットとリバウンドを繰り返している場合には、選択の基準を自分が「本当に食べたいもの」へと変えていくことが大切です。少量でも本当に食べたいものを食べている人ほど、日常的にストレスにさらされることが少なくなります。食生活が乱れるきっかけはストレスですから、ダイエットのやり方そのものにストレスが生じないようにしなければなりません。
リバウンドをしたくないなら、ダイエット中と、ダイエットをしていないときとのギャップをできるだけ小さくする必要があります。逆に、このギャップが大きければ大きいほど、リバウンドを繰り返してしまいます。
実際のところ、「食べてはいけない!」と思っているから、つい食べたくなることってありませんか。逆にケーキバイキングに連れていかれて、「いくらでも好き放題食べていいよ」といわれると、無制限には食べられないものです。
少量でも楽しみを優先する
多くの場合、時間と分量にさえ気をつければ、極端に太りやすい食べ物はそう多くありません。自分が本当に食べたいものを日常のなかに上手に取り入れていくと、むしろダイエットはうまくいきやすくなります。ここでのポイントは、「少量でも楽しみを優先する」こと。どうせ食べるのだったら、なるべく罪悪感がない状態で好きなものを食べてほしい。
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いざ自分の欲求を解放して食べ始めると、案外「こんなに食べなくていいかも」と感じる瞬間もあるはずなので、自分の心に丁寧に耳を傾けながら、そんなときは数口で終えてもいいでしょう。
「適量がわからない」というときは、「健康的」だと自分で思える量を目安にしてください。そもそも体重が増えたのは、「太ろう」と頑張って食べたからではありませんよね?
そうではなく、食生活が乱れたり、何かを食べすぎたりするような不健康な習慣が続いた結果です。無理に「やせよう」と頑張らなくても、健康的な習慣に戻すだけで体重の減少はあとからちゃんとついてきます。
もし、豚骨ラーメンやパフェのようなあきらかに高カロリーなものを食べたいのなら、夜ではなく昼などに時間をスライドさせればいいのです。欲求に従うのは「自分を否定しない」ことです。食べものと健全な関係を築きましょう。食べたいものを食べながら、ほどほどにバランスよく食べるのが、体重を増やさない王道です。
「やせるために何を食べればいいのだろう?」という抑圧感がある問いかけから、「何を食べたら幸せを感じられるだろう?」と、心を解放していける思考に変えていけば、心もお腹も満たされていきます。
「好きに食べていたら太りませんか?」と不安に思う人もいるでしょう。もちろんそれが毎日ならいけませんが、そうでなければ、時間や量に気を配りながら、心を満たすことも大切です。同時に、甘いものやジャンクなものを食べたくなる頻度が多いのなら、ストレスの原因は日ごろの我慢によるものではなさそうです。ワークを振り返りながら、それらを無性に食べたくなるときのきっかけを探してみてください。
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提供元:栄養士指南!結局、「健康的にやせる」コツは2つだ|東洋経済オンライン