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2021.08.27

「感染・ワクチン副反応」労災認定はどんなとき?|コロナ禍の今、押さえたい「労災」のポイント


働く人が新型コロナウイルスに感染した場合、業務上の感染と認められれば労災を使うことになります。労災と健康保険の補償の違いなどについてご紹介します(写真:umaruchan4678/PIXTA)

働く人が新型コロナウイルスに感染した場合、業務上の感染と認められれば労災を使うことになります。労災と健康保険の補償の違いなどについてご紹介します(写真:umaruchan4678/PIXTA)

コロナ禍は収束を見せるどころか、変異株が猛威を振るい、深刻な状況が続いています。

働く人が新型コロナウイルスに感染した場合、業務上の感染であれば労災保険(労災)を使い、業務外の感染であれば私傷病として健康保険または国民健康保険で治療を受けることになります。

労災と健康保険・国民健康保険では補償内容の手厚さが大きく異なりますので、労災の可能性がある場合は、積極的に労災の申請をしたいものです。

労災と健康保険の補償内容の違い

労災と健康保険の補償内容にどのような差があるのでしょうか。まず、治療費についてです。労災の場合、本人負担はゼロで、健康保険・国民健康保険の場合は3割負担となるのが原則です。ですが、新型コロナウイルスに関する医療費については、全額公費負担となるため、労災でも私傷病扱いでも、本人負担はゼロで変わりありません。

しかし、所得補償については労災のほうが手厚くなっています。

「業務外」で労務不能となった場合、正社員など社会保険に加入している労働者が健康保険から所得補償として支払われる傷病手当金は、賃金のおよそ67%となります。また、支払われる期間は、病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降から最大で1年6カ月、仕事に就けなかった日に対して支給されます。なお、労働者の判断で年次有給休暇を取得した場合は、当該取得日について傷病手当金は支払われません。

アルバイトなどの短時間労働者が加入する国民健康保険には、私傷病における所得補償の制度自体が存在しません。ただ、アルバイトなどの非正規の雇用形態であっても、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上であれば社会保険の加入資格があり、業務外で新型コロナウイルスに感染した場合、傷病手当金を受給することができます。

本来であれば社会保険の加入することができるアルバイトの方が、違法に未加入状態となっている場合には、所得補償無しでの休業を強いられてしまうおそれがありますので、自分に社会保険の加入資格がある場合は、事業主に加入を求めたいものです。

これに対し、業務上で労務不能となった場合には、正社員・アルバイトにかかわらず、労災から所得補償として支払われる休業補償給付は、賃金のおよそ80%(保険給付60%+特別支給金20%)となります。そして、支払われる期間も無期限です(就労が可能となった場合に支給終了)。

また、新型コロナウイルスの後遺症で万一障害が残ったり、介護が必要になったりした場合にも、労災扱いであれば障害補償給付や介護補償給付が受けられます。不幸にも本人が死亡した場合には遺族補償給付が受けられます。

健康保険には、障害補償給付、介護補償給付、遺族補償給付のような制度は存在しません。

確かに、私傷病扱いであっても、公的年金制度の枠組みから、障害年金や遺族年金を受給できる場合があります。しかし、障害年金を受給できる障害の範囲や程度、遺族年金を受給できる遺族の範囲については、労災よりも限定的です。

労災扱いの場合は、金額の調整は発生するものの、労災からの障害補償給付や遺族補償給付と、公的年金からの障害年金・遺族年金は併給が可能となっており、条件によっては2重の補償を受けることが可能です。

後遺症や、死亡時のことを考えても、労災扱いとなるほうが、圧倒的に手厚い補償が用意されていることは明白です。

コロナ感染が労災になる可能性があるケース

それでは具体的に、どのようなケースにおいて新型コロナウイルス感染等が労災扱いになる可能性があるのでしょうか。以下、列挙してみます。

(1)業務上の感染

業務上の感染については、厚生労働省の通達(令和2年4月 28 日 基補発 0428 第1号)で以下のように労災認定基準が示されています。

ア 医療従事者等:
業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの:
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの:
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。

このように、認定の基準は医療従事者などとそれ以外の職種では異なるものの、厚労省は、どのような職種においても、新型コロナウイルスへの感染が労災扱いになる可能性があることを認めています。

例えば、飲食店、オフィス、工場等でクラスターが発生した場合、感染した従業員は労災として認定される可能性が高いということです。

厚労省が公開している事例においても、保育園でクラスターが発生して保育士が感染、建設現場で作業員間の感染が疑われる、バスの運転士が日々数十人の乗客を乗せて運行業務に就いていた事例などで、労災が認められています。

(2)通勤での感染

労災は、業務上の傷病に加え、通勤に起因して発生した傷病についても、保険給付の対象になることを認めています。

通勤途中に転んで骨折したなどであれば通勤災害であることは明白なのですが、通勤の満員電車が原因で新型コロナウイルスへ感染したという場合、通勤災害として労災の適用を受けることはできるのでしょうか。

この点、通勤電車で感染したことを客観的に証明することは非常に困難です。

例えば、「単身世帯者で、通勤以外では満員電車を利用せず、密になる場所へも行かず、休日も自宅で過ごしていた」というような状況証拠がある場合には、通勤災害と認定されてもいいのではないかと筆者は考えます。しかし、実際には因果関係を示すのはかなり難しいでしょう。

まだ事例の蓄積が無く、労災に該当するか否かの判断権限を持つ労働基準監督署が実際にどのような判断を示すかは未知数ですが、通勤に関連して新型コロナウイルスに感染した可能性がある場合にも、労災の申請を行うことができるということは覚えておいていただきたいと思います。

ただし、通勤途中で寄り道をする場合、生活必需品の買い出しなどであれば問題無いのですが、長時間の買い物をしたり、飲食店に立ち寄る(生活に必要なテイクアウトや定食を食べることなどは可)ことなどをした場合は、通勤経路を逸脱したとして、労災認定を受けられなくなってしまいますので、この点はご注意ください。

ワクチンの副反応は原則労災の対象外

(3)ワクチン接種により健康被害があった場合

現時点の厚労省の見解では、ワクチン接種により健康被害があった場合、たとえ職域接種や事業主の勧奨により接種したとしても、原則として労災の対象外としています。

ワクチン接種については、通常、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められず、これを受けることによって健康被害が生じたとしても、労災保険給付の対象とはなりません。

(厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5 労災補償 問10)

ただし、医療従事者や高齢者施設従事者などがワクチン接種により健康被害を生じた場合は、労災扱いとなります。

医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のために必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。なお、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても、同様の取扱いとなります。

(厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5 労災補償 問10)

それでは、医療従事者や高齢者施設の従事者でなければ、ワクチン接種の副反応で労災扱いになる可能性は無いのでしょうか?

この点、事業主が従業員へ事実上強制的にワクチン接種を求めた場合は、労災に該当する可能性があると考えます。例えば、ワクチン接種をしなければ、解雇、左遷、減給するなどと伝えたり、執拗に接種を求める面談を繰り返されたりして、労働者本人の意に反して、やむなくワクチン接種をしたようなケースです。

(4)コロハラ・ワクハラによる精神疾患

1~3とは少し性質が変わりますが、コロナ禍で新しいハラスメントも問題視されています。新型コロナウイルスに感染したことに対して、執拗に責任を追及したり、感染者が職場復帰後に不当な扱いを受けるというコロナハラスメント(コロハラ)が増加しています。

また、ワクチンの接種は個人の判断に委ねられているものの、未接種者に接種を強要したり、不当な扱いをしたりするワクチンハラスメント(ワクハラ)も社会問題になりつつあります。

職場でこのようなハラスメントを受けた結果、労働者が精神疾患を発症したというような場合においては、セクハラやパワハラに起因する精神疾患と同様、労災の認定を受けることができる可能性があります。

労災と認められなかった場合はどうする?

では、労災はどのように審査され、認められなかった場合はどのように対処したらいいのでしょうか。まず、労災の各種給付を受けるための申請書類は、事業所を管轄する労働基準監督署に書類を提出し、審査を受けます。

円滑に労災の認定を受けるためには、申請書類において、新型コロナウイルスへの感染が業務や通勤に起因する可能性が高いことを、できるだけ具体的に説明してください。

また、上述した厚労省が公開している労災認定事例においても、多くの事例において「私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったこと」が労災認定されたポイントの1つになっていますので、安全に気をつけて日常生活を送っていたこともしっかりと説明をすることが重要です。

そして、もし、所轄労基署から労災の認定を受けられなかったとしても、法的に「労災でない」と決まったわけではありませんので、諦めないでください。労災の認定が受けられなかった場合には、審査請求・再審査請求という制度があります。

所轄労働基準監督署が労災認定を却下し、その判断に納得がいかない場合は、労働保険審査官に審査請求を求めることができます。そして、労働保険審査官の判断によっても労災の認定が得られなかった場合は、労働保険審査会に再審査請求を行うことができます。審査請求・再審査請求によっても労災認定が得られなかった場合は、裁判に訴えることが可能です。

労働基準監督署から労災の認定を受けられなかったとしても、このような救済措置があることを覚えておいてください。

しかし、審査請求・再審査請求や裁判を行うためには、長い時間と弁護士報酬などの費用も発生します。目下、新型コロナウイルスへの感染やそのリスクに苦しみながら働く人々に、このような時間的・金銭的負担を課すことは、酷ではないかと思います。

雇用調整助成金の支給要件が緩和されたり、申請書類が簡素化されたのと同様、非常時であることを鑑み、迅速に労災認定を受けられるような行政運用が望まれていると思います。

コロナ禍の中、多くの人々が生活や社会を維持するために働いています。

働く人や事業主は、万が一の時には補償の受け漏れがないよう、十分な法的知識持ってほしいと思います。そして、行政に対しても、「このような場合には労災補償が受けられる」という事例をもっと積極的にPRしたり、労災認定の基準を広げるなど、国民に寄り添った対応を期待したいところです。

記事画像

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提供元:「感染・ワクチン副反応」労災認定はどんなとき?|東洋経済オンライン

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