2021.08.13
お金や人脈以上に大きな「複業」の本当のメリット|学歴や年収よりも「幸福度」を左右する要素とは
「副業(複業)」には、収入が増えることよりも重要なメリットがあります(写真:recep-bg/iStock)
「副業(複業)」というと、真っ先に“収入を増やす”のが目的だと思う人も多いかもしれません。しかし、数々の複業を経験してきた江端 浩人氏いわく、複業の最大のメリットは、「自己決定によって幸福度を高められること」だそう。
そんな江端氏の近著『【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方』より、複業のメリットや会社に縛られない「スラッシャー」についてお伝えします。
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複業によって幸福度が高くなる
「働き方改革」の一環として複業(副業)や兼業が促進されている背景を受け、副業にチャレンジしたいと考える人も増えています。
あなたは、なぜ複業をしたいのですか?という問いに対しては、さまざまな理由が挙げられるでしょう。
・自分や家族のために、もっとお金を稼ぎたい
・活躍できる場がほしい
・社会貢献したい
・同じ目標や夢を持つ仲間を見つけたい
どれも素晴らしいと思います。
でも、気付きませんか?
これって、すべて「自己決定」に基づいて考えている、と。
本業だと、どうしてもイヤなことをしなければならないシーンがあります。面倒で手間のかかる業務、ムカつく上司・部下・クライアント……「仕事だからしょうがないか」と諦めている人も多いのではないでしょうか。
でも、複業は自己決定がベースにあります。やるかやらないか、どんな仕事を選ぶかはあなた次第。やりたくないなら断ればいいし、無理ならNoと言えばいい。そもそもが「やりたいこと」や「できること」が基準になっているので、ストレスは本業ほどかかりません。
実は、複業の最大のメリットは「自己決定によって幸福度を高めること」だと私は考えています。
神戸大学社会システムイノベーションセンターの調査によると、「自己決定、つまり自分で決めることができる人は幸福度が高い」そうです。
そして驚くべきことに、「学歴が高い」ことや「年収が高い」ことよりも、「自己決定」は幸福度を上げる効果があるのです。
お金、やりがい、社会貢献、仲間……これらは複業におけるサブ・メリットでしかありません。メインのメリットは、「自己決定できること」です。
なぜ、複業をするのか? 答えは、「幸せになれるから」。
それが、数々の複業を経験している私の結論です。
肩書きを「増やしていく」時代
これまでは、一つの仕事を一生かけて極めるのが美徳とされていました。
しかし、日本でも「スラッシャー(SLASHER)」という言葉が少しずつ使われるようになっています。聞いたことありますか?
スラッシャーとは、肩書きをスラッシュ(「/」)で併記して活躍する人たちのこと。以下のようなイメージです。
▶エンジニア/コンサルタント/ライター
▶会計士/講演家/ブロガー
▶貧乏サラリーマン/動画編集者/Excelスペシャリスト
▶経理/秘書/カメラマン
それぞれの肩書きが関連している人もいれば、まったく別業界の人もいます。
また、プロレベルの人もいれば、趣味レベルの人もいます。
ここで大事なのは、「まず名乗ること」。「自分はこういう人なんです」と名乗れば、世間話で盛り上がったり、何か相談されたりするかもしれません。それが結果として、仕事につながる可能性も十分あります。
肩書きは一つである必要はありません。むしろ、肩書きを増やしていくのがこれからの時代です。スラッシャーとして生きる選択をする人はこれから増えていくでしょう。
最近は「FIRE(Financial Independence[経済的自立]、Retire Early[早期退職])」という言葉が話題になっています。
「もう働きたくない」「少しでも早く会社を辞めたい」と考えている人もいるでしょう。私も会社員時代、同じように思ったことがあるので、その気持ちもわからないわけではありません。
でも、セミリタイアがはやる背景には将来不安もあると思いますが、一方で「やりがいがない」「楽しくない」という気持ちが大きいのではないでしょうか。
スラッシュで複数の肩書きを持つことで、収入が増えるだけでなく、自分のやりたいことを実現するためのライフワークも生まれます。ぜひ、複業にチャレンジして、「食べるためだけに働いている(ライスワーク)」という状況を脱却しましょう。
ただ肩書が多ければいい、というわけではありません。これらの肩書同士が生み出す相乗効果についても考えておきましょう。
複業をする場合には「自分の強みを生かす」ことが必要ですが、単体では目立ちません。例えば、休日にカメラマンの仕事をしようと考えても、技術では本業のカメラマンに負けてしまいます。仮に腕を磨いて、プロのカメラマンに近づいたとしても、技術での争いになり、差別化は難しいでしょう。
では、どうすればいいか。
自分の経験を掛け合わせて強みにするのです。
例えば、保育士が休日に子どもの記念写真を撮るカメラマンの複業をしたらどうでしょうか。保育士は子どもの世話をするプロです。そんな人に子どもに写真を依頼したら、良い表情を撮影してもらえそうです。「保育士×カメラマン」の掛け算で差別化ができるのです。
あるいは、プロのカメラマンが使う一眼レフではなく、スマホのアプリやフィルターを使って、「インスタ映え」する写真を撮ることもできるでしょう。
掛け合わせる経験は、振り幅が大きいほど効果的です。タレントのダニエル・カールさんは「アメリカ人なのに山形弁」というギャップで人気を集めています。山形の良さを取材しようと考えたとき、地元の人に聞くのは普通ですが、ダニエル・カールさんに取材すれば、外国人だからこそ気づく山形の良さも教えてくれそうです。これも振り幅です。
あなたが売り込む場合も「○○なのに、◇◇できます」というアピールができると、貴重な存在になれます。
もし掛け合わせるものが見つからないなら、未経験の領域でボランティアをして経験を積む方法もあります。複業として収入を得るには、その分野である程度の実績やスキルが必要ですが、ボランティアなら未経験でも受け入れられる可能性が高いです。
最後に、複業を成功させるために大切なことは、“「たまご型」ではなく「もも型」になる”ことだと私は考えます。
「たまご型」「もも型」、この2つは人間のタイプを表しています。
「たまご型」は外側の殻が硬い、つまり新しいことを受け入れるまでのハードルが高い人です。ただし、一度中に入ってしまえば認めてくれることもあります。
「もも型」は、しっかりとした芯を持ちながらも、人の意見を受け入れる柔軟性を持っています。
複業を成功させるには、しっかりとした芯を持ちながらもさまざまな人と交わっていく「もも型」の人になる必要があるのです。
「とてもフレンドリーで、すぐに受け入れてくれるけれど、核心の部分は絶対に曲げない人」をイメージしてください。
新しいことに挑戦する際には、芯を持ちつつ、あいまいさを受け入れることも必要です。
というのも、自分をどんな方向に進化させればいいかは、はっきりとした正解はないからです。「先が見えないから」と変化に対して恐れを持っていると、動けなく(成長できなく)なってしまいます。正解を知りたがる人も少なくありませんが、新しいことを始めるのに正解などないのです。
現代は「VUCA」の時代
最近、ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語としてVUCA(ブーカ)が注目されています。VUCAは4つの言葉の頭文字をとったものです(下図)。
この中にもAmbiguity(アンビギュイティ=あいまいさ)が含まれています。
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つまり、「どうすれば問題を解決できるのか」「この方法で本当に解決できるのか」といった絶対的な解決方法が見つからない状態の中でチャレンジしていかなくてはならない、ということ。
あいまいさを受け入れて、仲良くなることが複業するうえでは大切なのです。
以上のように、複業は、収入も幸せもアップさせることができる可能性を秘めた素晴らしい手段です。ぜひみなさんもチャレンジしてみてください。
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提供元:お金や人脈以上に大きな「複業」の本当のメリット|東洋経済オンライン