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2021.06.28

パート年収「130万/106万円の壁」重要な最新事情|ワクチン接種業務は対象外、2022年改定控える


扶養に入ってパートで働いている方々に少なからずの影響があるかもしれません(写真:zon/PIXTA)

扶養に入ってパートで働いている方々に少なからずの影響があるかもしれません(写真:zon/PIXTA)

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現役世代への接種も徐々に始まり、全国で進むコロナワクチン接種。不足する医療従事者の人手確保策として6月初めに設けられたのが、おもにパートをする主婦の扶養制度の特例です。社会保険の扶養に入れる要件である年収「130万円の壁」において、ワクチン接種業務で得る収入は年収に算入しないこととするものです。一時的とはいえ前代未聞ともいえるこの特別措置は、“130万円ありき”でパートをしていた人にとって、収入やキャリアへの考えを大きく変えるきっかけになると予感させます。

ワクチン接種業務の収入は年収130万円の壁の対象外

社会保険(年金・健康保険)の扶養は、会社員や公務員の人(多くのケースでは夫)の配偶者(おもに妻)が年収130万円未満の場合に、夫の勤務先の社会保険に「被扶養者」として加入できるものです。被扶養者になると、保険料の負担なく、夫の勤務先から健康保険の保険証が発行され、公的年金も65歳以降に受け取ることができます。年収が130万円以上になると被扶養者になれないため、「130万円の壁」といわれています。

今回設けられた特例は、扶養に入っている人が医療職として新型コロナワクチンの接種業務に従事した場合に、その分の収入を扶養認定の年収には含まないとするものです。仮にワクチン接種業務をしたことによって年収が130万円以上になっても、扶養から外れないということです。

扶養に入っている中で、ワクチン接種業務に従事する方々の社会保険料負担の増加を敬遠したいという心理抵抗を下げる措置が採られています(写真:Kiyoshi Ota/Bloomberg)

扶養に入っている中で、ワクチン接種業務に従事する方々の社会保険料負担の増加を敬遠したいという心理抵抗を下げる措置が採られています(写真:Kiyoshi Ota/Bloomberg)

対象になるのは医師、歯科医師、看護師、薬剤師などの資格があり、ワクチン接種会場や医療機関でワクチンの注射や予診、調整業務を行った際の収入です。期間限定の措置で、今年の4月から2022年2月までのワクチン接種業務に対する収入のみ、扶養認定の際に年収にカウントしなくてよいことになりました。

特別措置が設けられた背景には、ワクチン接種の従事者が大量に必要な状況下で、働きたくても130万円の壁がネックになって働けない医療職が多数いると見込まれたことがあります。かつて看護師などとして働いていたものの現在は専業主婦をしている人や、年収を抑えてパートをしている人が、扶養から外れるのを気にせずにワクチン接種会場で働けるようにすることで、少しでも人手を確保できるようにするのが狙いのようです。

実は今回の特例より前から、社会保険の扶養の認定要件となる年収の扱いには“コロナ対応”がありました。コロナ関連の繁忙が原因での年収増加は、一時的なものとして扶養認定には影響させないこととされているのです。

こちらは医療従事者に限ったものではなく、業種にかかわらずすべての被扶養者が対象です。社会保険の扶養の認定は年1回、扶養する側(多くは夫)の勤務先が、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等をもとに行います。これらの資料をもとに今後1年間の収入の見込みを判断します。

つまりもともと、年収が130万円以上になった時点ですぐに扶養から外れるわけではありません。また、見込額の算定や判断基準は扶養する側(夫)の勤務先によるため一概にはいえませんが、認定時期の直近3カ月の月収を1年分に換算した金額を重視されることが多いようです。このため、コロナ禍での一時的な残業やシフト増でパート収入が急増すると、扶養から外れるのを心配する人が出てきます。

しかしそのような場合にも、昇給して時給が上がった、雇用契約上で恒久的に勤務時間を増やしたようなケースでなければ、年収の見込みが130万円以上になっても扶養認定は取り消されないのが基本です。また、一時的な事情で結果的に年収が130万円以上になっても、その年度の初めにさかのぼって扶養認定を取り消されることはありません。

そもそも扶養の認定は毎年行われる

こうした取り扱いはコロナ以前からの原則ですが、コロナの影響が広がった昨年来、国が扶養認定を行う各企業に改めて周知しています。

そもそも扶養の認定は毎年行われるので、仮に残業や繁忙期で年収が増えて扶養から外れてしまっても、次の年に再び扶養に入れる余地はあります。年収が高くなった理由が明らかに一時的な原因だったことや、次の年の収入は130万円以下になる見込みがあるなどを証明できればいいのです。

とはいえ、主婦としてパートをしている人にとって、扶養に入れるかどうかは切実な問題でもあります。

年収130万円以上になり扶養から外れると、自分でパート先の社会保険に加入し、年金保険料と健康保険料が天引きされます。その額は年収130万円の場合で年間約20万円になり、手取りは110万円近くまで下がってしまいます。このコストを払っても、扶養内のとき以上の手取りを得るには、おおむね年収155万円以上を目指さねばなりません(諸条件により個人差があります)。

社会保険に入れば、老後の年金は厚生年金部分が上乗せされ、健康保険も傷病手当金や出産手当金の対象になるなど受けられる保障が広がります。長生きすれば生涯収支も黒字になります。しかし、それ以前に目先の収入を増やすのがパートに出る目的ならば、「だったら年収129万円に抑えておこう」と思っても無理はありません。

実際、厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査(2019年)」によると、パートをしている既婚女性の92%が「主に配偶者の収入で暮らして」おり、パートをする理由のトップが「家計の足しにするため」と回答しています。また、就業量を調整しているパート女性の半数以上(54%)は「年収が130万円を超えると扶養から外れるから働かない」とも回答しています。

家計の収入を増やし、かつできる限りコストをかけない、パートの最大公約数的な働き方が「社会保険の扶養内」なのだとしたら、ワクチン業務に限定されるとはいえ130万円以上働ける特例は、パートの人にも、その家計に大変ポジティブな公式破りといえます。

来年10月には扶養から外れる範囲が広がる

しかしこの公式は、近い将来に崩れていく可能性があります。今回のコロナ関連の特例とは別の動きとして、社会保険の制度は2022年以降に改定を控えています。勤務先で社会保険に加入するパート労働者の対象が広がるのです。

現在、パートの人が自身の勤務先の社会保険に加入するのは、以下に該当する場合です。収入要件が年収換算で106万円にあたることから「106万円の壁」ともいわれています。

(1)勤務先の従業員が、常時501人以上※

(2)所定労働時間が、週20時間以上

(3)月額賃金が、88000円以上(年収106万円以上に相当)

(4)勤務期間の見込みが、継続1年以上

(5)学生ではない

※500人以下の企業も労使合意に基づき適用が可能。国・地方公共団体は適用対象

前項の条件のうち、(1)勤務先と(4)勤務期間の適用範囲が広がります。2022年10月には勤務先の従業員数は100人超へ、雇用期間の見込みは2カ月超に変わります。さらに、2024年10月には従業員数50人超の企業まで拡大される予定です。これまではおもに大企業や大規模チェーン店で働いているパートの人が対象でしたが、中小企業や中規模な病院などで働く人も対象になるのです。

要件に該当すると、パート先の企業で社会保険に加入することになり、たとえ年収130万円未満であっても夫の扶養には入れなくなります。つまり年収が106万円から130万円の人は、ほかの要件にも該当すれば来年10月以降は自分のパート先で社会保険に加入せざるをえず、年金と健康保険の保険料がパート代から天引きされることになるわけです。

なお、コロナによる130万円の壁の特例は来年2月までの限定措置で、106万円の壁が来年10月に拡大するときにはすでに終了している予定です。制度としても別のものです。仮に今年、ワクチン接種業務に就いて一時的に年収が増えても、それが直接の原因で106万円の壁に該当してしまうわけではありません。

長期的に見れば扶養内で働けるパートの選択肢は狭まる

ただ、目下は特例によって扶養内で稼ぎやすい状況にあるものの、長期的に見れば扶養内で働けるパートの選択肢が少なくなっていくのは確実です。将来は「扶養内」にこだわり続けるのが難しくなっていくことは、いまから意識しておくのが賢明でしょう。

折しも、今回の特例を機に130万円の壁を超えて仕事量を増やすことは、年収の枠にとらわれずに働く経験にもなります。これまで「130万円の壁ありき」だった前提がなくなった状態で働く余地ができたとき、家計管理の手段も考え方も、大きく変わるはずです。働き方やキャリア形成についても、新たな選択肢や視点が生まれてくるかもしれません。

130万円の壁が一時的にも崩されたことには、そんな意義もあるのではないでしょうか。

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提供元:パート年収「130万/106万円の壁」重要な最新事情|東洋経済オンライン

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