2021.04.22
人によって差が出る「卵巣力」の素朴な疑問
自分の体をきちんと知ろう!をテーマにした、増田美加(女性医療ジャーナリスト)さんによる連載「カラダ戦略術」。今回は卵巣力の老いを食い止める方法や卵巣年齢の測り方などについてご紹介します。
卵子の数はみな同じなのでしょうか?
卵子の数は、生まれたときはみんなほぼ同じ数です。しかし、その後、減っていくスピードには差がでます。お母さんのおなかの中にいる胎児のときに、すでに卵巣に600万〜700万個の原始卵胞(卵子の元になる細胞)があります。けれども徐々に消失していき、生まれたときには100万〜200万個になっています。ここまではだれもがほぼ同じ数です。
その後、原始卵胞は新たにつくられることはありません。男性の精子は、新しく作り続けられますが、女性の卵子は時間とともに減り続け、20代~30代では推定20万~30万個になります。卵子は、ひと月に1個ずつ減っていくわけではありません。もっと大量に減っていきます。
この卵子が減るスピードには個人差があって、本人の生活環境や病気などによって変わる可能性が大きいのです。
排卵は、左右にひとつずつ卵巣から、毎月ほぼ交替に排卵します。左右の卵巣に数多くある原始卵胞は、ひとつずつ順番に成長し、成熟卵胞になります。排卵は、最も早く成熟した卵胞から卵子が飛び出します。今月、右の卵巣だとすると、来月は左が早く成長している可能性が高いのです。
ただし、手術で片方の卵巣を取ると、ひとつの卵巣から毎月排卵するようになります。人間の体ってすごいですね!
卵巣の老化を食い止める方法はあるのでしょうか?
卵巣老化を食い止める医学的に確実な方法はありませんが、卵巣は体の奥にあっていつも温かい状況にあります。ですから、卵巣を冷やさないことは大切です。一方、男性の精巣が体の外にあるのは、温めすぎるとよくないからなのです。
卵巣が冷えると、抹消の血液循環が悪くなり、代謝が落ちます。女性ホルモンがスムーズに血流にのって、行き渡る環境ではなくなってしまいます。また、抗酸化としてビタミンC、Eを摂るのも、卵巣のアンチエイジングにもなるといわれています。
低用量ピルは、卵巣の機能を回復するために使われることがあります。低用量ピルは排卵を止めるので、卵巣をおやすみさせることができて、子宮内膜症や卵巣がんを予防する作用があります。そういう意味で、卵巣を保護して、卵巣の老化防止に役立つと考えてもいいと思います。
「初潮が早いと、閉経も早いのでは?」と考える人もいますが、初潮年齢と閉経年齢の相関はありません。日本の初潮年齢は平均12歳です。この100年で2~3歳早くなっています。けれども、閉経はずっと変わらず平均50.5歳です。
初潮と閉経の相関はなく、閉経年齢の予測は正確にできません。母親の閉経年齢は参考になりますが、生理不順などの女性は、早く閉経してしまう傾向にあります。
女性ホルモンの分泌を減らすのは肥満!?
肥満だと、卵巣をコントロールするホルモンのひとつに異常をきたすことがあります。そうなると、排卵が抑制されて排卵障害を起こすこともあります。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのバランスを崩すことになってしまいます。肥満の人は妊娠しづらいというデータも。
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは、卵巣による生理と排卵の周期に従って日々変動しています。女性ホルモンの値は採血で測れますが、生理周期のどの時期に測るかで、その値は大きく異なります。女性ホルモンの値は、多ければいいわけではありません。バランスよく変動していることが大事なのです。ちなみにエストロゲン(E2)の値がおよそ30pg/mℓ未満になると、閉経状態となります。
卵巣年齢を測る方法があるってホント?
AMH(抗ミュラー管ホルモン)というホルモンの一種を採血で測る検査があります。不妊治療時によく行われる検査です。AMHは、卵巣の中にある卵胞から分泌されるホルモンで、卵胞数が少なくなってくるとAMHの値が低くなります。
つまり、AMH値が高いと卵胞がまだたくさんある状態。値が低いと卵胞が少なくなってきている状態です。いわゆる卵巣年齢(今後、排卵できる期間が長いか短いか)を知ることができ、卵胞の数があとどのくらい残っているかの目安になります。このAMHは、25歳をピークにあとは減少の一途をたどります。
ですから生理があれば 妊娠できるというものではありません。きちんと排卵していなければ、妊娠はできないわけです。生理があるからといって、必ず排卵しているとは限らないのです。
排卵しているかの目安は、基礎体温をつけていればわかります。卵巣できちんと卵が育っているかは、婦人科の経腟超音波検査で、卵巣を見ることでも判断できます。
image via shutterstock
増田美加(ますだ・みか)さん
女性医療ジャーナリスト。2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。
記事提供:ウェブメディア「MYLOHAS」
ヘルスコンシャスな女性たちにむけて、「カラダ・食・マインドを整える」記事を厳選してお届けします。
提供元:人によって差が出る「卵巣力」の素朴な疑問|MYLOHAS(マイロハス)