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2017.02.27

認知症になったら?|患者の家族が知っておきたいこと


2027年には患者数が700万人以上になるとも言われている認知症。認知症の初期症状は、加齢による機能低下と見分けにくく、判断が難しいものです。あらかじめ認知症について知識を深め、早めに対処することが大切です。今回は、認知症の症状や、患者への接し方、予防法についてまとめました。

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目次
-認知症とは?
-認知症? と思ったら
-認知症患者のケア方法
-認知症の予防

認知症とは?

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認知症は、記憶や脳の認知機能(判断・計算・理解・学習・思考・言語など)が、日常生活や社会生活に支障が出るほど低下した状態をいいます。

さまざまな病気が原因で起こる症状で、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などに分類されます。

認知症患者の6割程度は、少しずつ症状が進行していくアルツハイマー型認知症です。また、高齢者、女性がかかりやすいという特徴があります。

認知症の症状

認知症の症状には、認知機能障害、行動異常・精神異常が挙げられます。具体的な症状をみていきましょう。

物忘れ

身の回りで起こったことが覚えられず、数分〜数カ月前のことが思い出せなくなります。認知症の初期症状で、進行とともに近い記憶から失われていくのが特徴です。

失語・失認・失行

言葉がうまく使えない(失語)、目、耳、鼻など感覚器には異常がないのに、対象を正しく認識できない(失認)、運動機能に障害がないのに、うまく動作ができない(失行)といった症状です。

実行機能障害

計画的に物事を進め、段取りをする能力が低下します。

幻想・妄想

その場に存在しないものが見えたり聞こえたりする幻視や幻聴、自分でなくしたものを「誰かに盗まれた」と思い込むなどの妄想が起こります。

認知症の原因

認知症は、病気が原因で脳の細胞が死んでしまったり、脳の働きが悪化したりすることで出る症状です。認知症を引き起こす病気には、以下のものが挙げられます。

アルツハイマー型認知症

脳の神経細胞が死んで減り、記憶をつかさどる「海馬」の働きが低下して脳全体が萎縮する病気。物忘れから始まり、道に迷ったり徘徊(はいかい)を繰り返したりし、さらに症状が進むと日常生活に支障をきたすようになります。

レビー小体型認知症

ものを考えるとき、中枢的な役割を担う脳の大脳皮質や、脳幹(呼吸や血液の循環をつかさどる神経核)に、「レビー小体」という特殊なたんぱく質が蓄積されることにより、神経細胞が破壊され、認知機能が低下する病気です。初期症状として「幻視」や現実の状態を正確に把握できない「誤認妄想」が起こります。

前頭側頭型認知症

脳の中でも、物を考えるなど脳の中枢的な役割を持った「前頭葉」と、言葉の理解や記憶、さらに聴覚や嗅覚もつかさどっている「側頭葉」が萎縮して起こります。アルツハイマー型認知症のような物忘れの症状は出ないものの、「同じ言葉や行動を繰り返す」、「夜中に冷蔵庫のものを食べあさるなど異常な食行動」、「万引きなど社会的なルールを無視する」、「なかなか言葉が出てこない」といった、常識的でない行動が目立ちます。

改善方法

前述した3つの疾患に対しては、主に症状の改善と症状の進行を遅延させる対処をします。薬物療法や、脳の機能低下をおさえるためのリハビリテーションなどです。

薬物療法

「ドネペジル塩酸塩」などの抗認知症薬を使います。吐き気や下痢、食欲低下などの副作用が出ることもあるため、少量から開始し、医師が患者の様子を見ながら服用をコントロールします。

リハビリテーション

薬物療法は食欲低下などの副作用が出ることがあるため、非薬物療法も多くとり入れられています。具体的には、認知機能を高める以下のようなリハビリテーションを行います。

<認知症患者のためのリハビリテーション>
-書き取り・計算・音読など
-好きな音楽を聴く、楽器を演奏する、歌うなどの「音楽療法」
-絵を描く、詩歌をつくる、ダンスをするなど自分を表現する「芸術療法」
-過去の記憶を思い出す「回想法」

認知症? と思ったら

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加齢による物忘れと認知症の大きな違いは、「本人に物忘れの自覚があるかどうか」です。加齢によるものであれば、「何を買おうとしたか忘れてしまった」と認識するため、「次は忘れないようにメモをしておこう」などと自分で対処します。しかし、認知症の場合は、自分が物忘れをしたこと自体を忘れてしまっているため、本人は対処できません。

認知症は一見、加齢による物忘れとの区別がつきにくいため、発見が遅れてしまうことが少なくありません。初期段階で見つけ、適切な対処ができるようにしましょう。

認知症の見分け方

認知症かどうかを判断する方法に、以下のようなチェックリストがあります。次の11項目のうち3項目以上にあてはまれば、認知症である可能性が高くなります。

<認知症チェックリスト>

□同じことを何回も話したり、尋ねたりする

□出来事の前後関係がわからなくなった

□服装など身の回りに無頓着になった

□水道栓やドアを閉め忘れたり、後かたづけがきちんとできなくなった

□同時に2つの作業を行うと、1つを忘れる

□薬を管理してきちんと内服することができなくなった

□以前はてきぱきできた家事や作業に手間取るようになった

□計画を立てられなくなった

□複雑な話を理解できない

□興味が薄れ、意欲がなくなり、趣味活動などを止めてしまった

□前よりも怒りっぽくなったり、疑い深くなった

出典:『楽になる認知症ケアのコツ 本人も家族もそろって笑顔に』山口晴保、田中志子編・大誠会認知症サポートチーム著(技術評論社)

認知症になっている本人が回答すると、チェックを入れるのは2〜3項目程度です。対して、本人の家族は6〜7項目にチェックを入れることが多いと言われています。例えば本人がチェックを2個入れており、家族は9個、といったように数に差が出る場合、本人が自覚していない認知症患者である可能性が高いので、家族が医療機関に相談しましょう。

こんなときは医療機関へ

認知症の進行の度合いによっては、本人や周囲の人が危険にさらされる場合があります。以下を医療機関にかかる目安にしてください。

激しいBPSD(行動・心理症状)がある

患者が、周囲の人との関係がよくないために不安・孤独を感じたり、環境が悪く「痛い」「かゆい」などの身体的なストレスを感じていたりすることで、「BPSD」と呼ばれるパニック状態に陥ることがあります。症状は、暴言を吐いたり、暴力をふるったりするなどです。

ろう便など、排泄(はいせつ)における失行がひどい

ろう便とは、自分の排泄物をつかんだり、壁になすりつけたりしてしまう行為です。これが起こった場合、認知症の症状がかなり進行しているといえます。患者の多くは、症状の進行につれ一人でトイレに行けなくなり、ろう便を行います。便意や排便による不快感を伝えられず、我慢できなくなった結果として起ります。

ケアする側が心身ともに疲れきっている

上記の激しい症状などで、ケアをする側が疲れきっている場合、患者に対する関わり方を専門医に相談し、場合によっては患者への投薬や入院を検討することも必要です。

医療機関のかかり方

医療機関での診断の流れや、受診の際のポイントは以下のとおりです。

何科へ行く?

早期診断・早期治療のため、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。そこから、認知症専門外来の紹介を受けることができます。かかりつけ医がいない、または専門的な診療が必要な場合には、日本認知症学会や日本老年精神医学会が認定している認知症専門医を受診しましょう。

本人が受診を嫌がったら?

認知症患者は自分が病気にかかっているという認識がないため、「病院に行こう」と言っても、受け入れてくれない場合があります。その時は、「どうしても心配なので、私のために、念のため一緒に病院にいってくれませんか」と言ってみましょう。

認知症患者のケア方法

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家族が認知症と診断されたら、どのようにケアするのがよいでしょうか。自宅での日常生活を介助する際に注意すべきポイントは以下のとおりです。

日常生活におけるケア方法

認知症の特徴の一つが、「一人で日常生活を送ることが困難である」こと。それまでは一人で当たり前にできていたことも、第三者の助けが必要になります。しかし、日常生活を送るうえで欠かせない食事や入浴といった行為を、周りに介助されることを嫌がる場合もあります。患者がこちらの意図を理解しやすいように気を配り、「してあげる」のではなく、「一緒に目的を達成する」というスタンスで行いましょう。

排泄

排泄時のケアは、本人がどこまでを自分ひとりで行えるかによって対応を変えます。
<排泄時の対処法>

・衣服の上げ下ろしができない・便器の使い方がわからない場合
プライバシーに配慮しながらさりげなく行いましょう。本人が使い慣れていない便器の場合は、その都度使い方を教えます。できるだけ使い慣れた環境を整えましょう。

・トイレの場所がわからない場合
部屋をできるだけトイレに近い場所にし、トイレまでの道筋にわかりやすく目印をつけます。

・尿意・便意を伝えることができなくなっている場合
様子をよく観察して、不快感を読み取りましょう。そわそわしていたり、不機嫌になったりいるときが、尿意・便意を感じているサインです。

入浴

認知症の患者は、人前で服を脱ぐことに対する抵抗を感じたり、面倒だと感じたりして、入浴を嫌がることがあります。その際は、次のようなことを意識して声かけをしましょう。

<入浴への誘い方>
・「温泉に行きましょう」など、入浴をよいイメージにする声をかける
・「一番風呂はいかがですか?」など、本人が入りたくなるような言葉をかける
・「薬を塗りたい/体重を測りたいので、服を脱いでいただけますか?」など、服を脱ぐ必要性を伝える
・「お風呂あがりにコーヒー牛乳を飲みませんか?」など、入浴後の楽しみを提案する

浴室は滑りやすく、転倒などの事故が多発します。介助中に目を離さず、入浴環境を工夫するのもポイントです。

<危険を避けるための入浴環境の例>
-着替え時の転倒防止のために、脱衣所に椅子を設置する
-滑らないように、浴室マットや手すりを設置する
-浴室に入浴用の椅子を設置する
-浴槽が深い場合は、浴槽内に椅子を設置する

食事

認知症だと、食べたことを忘れてしまい食べ過ぎてしまう場合と、食欲がわかず食べなくなってしまう場合があります。

<食べ過ぎてしまう場合の対処法>
・食事のあとは食器をしばらく下げず、本人が食べたことを認識させる
・食べ終わった後にしっかり水分をとり、満腹であることを実感させる
・薬が原因の場合は服用する量を減らす

<食べない場合の対処法>
・加齢による唾液の減少で食べにくくなっている場合
唾液腺のマッサージや、スルメを噛かむトレーニングなどを行う
・飲み込む力が弱くなっている場合
材料を細かく切る、味噌汁の具と汁を分けて盛り付けるなどの工夫をする
・食べ物を認識できない場合
目の前で食べて見せたり、食べ物の色や形が分かりやすい食器に変えたりする

服薬

認知症の患者は高齢者であることが多く、他の病気の薬も服用する場合があり、多くの薬を飲むのを嫌がる人もいます。

<きちんと服薬してもらうための工夫>
-薬は種類が別でも一回分ずつに分け、ひと包みにする
-錠剤が大きく飲みにくい場合は、分割する
-苦さで飲みにくい場合は、ピーナッツバターやジャム、チョコレートなど、甘みが強く粘り気のあるものに練り込む
-市販の服薬用ゼリーなどを使う
-薬を飲み込むまで見届ける

薬を食事に混ぜると、食事自体をいやがる可能性があるので避けましょう。なかなか飲まない場合は、服薬の介助をする人を変えると、すんなり飲むこともあります。

また、医師や薬剤師に、どうしても飲まない場合の対処方法を事前に聞いておきましょう。

患者と家族のコミュニケーション

認知症によって記憶力や判断力に障害があっても、一人の人間であり、立派な大人です。プライドを傷つけたり、否定したりするような接し方は患者にとって大きなストレスになり、その後の介助を受けてくれなくなるなどのトラブルにつながることもあります。

認知症の患者も、認知症でない人と同じように、よりよい暮らしを求めています。本人にとってほっとする時間や場所を整え、生きがいを提案し、その人のアイデンティティや大切にしている人・ものを尊重し、寄り添うことが大切です。

幼児扱いをしない

認知症は、発症した段階で小学校3〜4年生程度の知能になり、進行するにつれ、どんどん赤ちゃん程度に近づいていくという特徴があります。しかし、認知機能は子ども程度でも、心は立派な大人のままです。幼児語で話しかけるなど、子ども扱いするのは避けましょう。

うまくいったら褒める

食事や服薬など、できなかったことがスムーズにいったら、30秒以内に褒めてあげましょう。うまくいったという結果よりも、努力した過程を褒めるのがポイントです。リハビリへのやる気がアップしたり、介助する人を信頼したり、自己肯定感による抑うつの改善効果も見込めます。

妄想・幻覚も否定しない

患者の妄想によって介助者が悪者にされると、介助者が感情的になり、強く患者を否定してしまいがちです。しかし、信頼関係を悪化させないためには、介助者が冷静さを保つことが大切です。妄想の背景にある不安感や孤独感を、和らげてあげる努力をしましょう。
また、幻覚を否定すると患者の混乱を招きます。できるだけ話を合わせて恐怖感を取り除いたり、注意を逸らしたりするような対応が必要です。

認知症の予防

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糖尿病、高血圧などの生活習慣病が原因で、脳の血管に障害がおこり、アルツハイマー病の発症リスクが上がるといわれています。そのため、肥満予防、運動不足解消など生活習慣病にかからないようにすることが、アルツハイマー病の予防につながります。具体的な予防法は以下のとおりです。

日常生活における進行の予防法

運動習慣

運動によって脳の血流がよくなるため、アルツハイマー病の予防に効果的です。
歩きながら計算をする、しりとりしながら体操をするなど、運動しながら脳をはたらかせるのもよいでしょう。

食習慣

バランスのとれた食事が一番。青魚に豊富に含まれるDHAやEPAには、脳の機能を保つ働きがあり、認知症予防に役立ちます。

認知症と睡眠の深い関係

近年、認知症と睡眠の深い関わりが指摘されています。睡眠を改善すると、認知症を引き起こす原因になるタンパク質「アミロイドβ」が減り、認知症予防につながります。睡眠に問題があると感じている人は、改善していきましょう。

睡眠障害と認知症発症リスク

睡眠障害を抱えている、または睡眠の質が悪い高齢者の場合、5年後の認知症発症リスクが、睡眠に問題ない人の1.57倍高くなると言われています。「アミロイドβ」は、日中に増え、夜になると少なくなるのが特徴です。徹夜をしたり、睡眠の質が低い生活をしたりすると、アミロイドβは、夜間も日中と同じように分泌され、神経細胞を壊す原因になります。

睡眠改善から始める認知症予防法

-早起きし、太陽の光を浴びましょう
-日中は適度な運動をしましょう
-寝る1時間前にはテレビや蛍光灯などを消しましょう

高齢化が進むいま、誰もが発症する可能性のある認知症。早めに予防を始めるほか、認知症の方へのケア方法も知っておきましょう。

監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)

<参照>
『認知症ケアガイドブック』公益社団法人 日本看護協会(照林社)
『楽になる認知症ケアのコツ 本人も家族もそろって笑顔に』山口晴保、田中志子編・大誠会認知症サポートチーム著(技術評論社)

厚生労働省
知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「認知症とは」

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

認知症フォーラム

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

photo:Getty Images
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提供元:認知症になったら?|患者の家族が知っておきたいこと|Fuminners

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