2020.02.06
「ゲーム三昧の子」が勉強に向かう"魔法の言葉"「勉強=つまらない」はこうして変える
ゲームにはまって勉強をしたがらない子どもを、勉強に向かわせる方法とは(写真:しげぱぱ/PIXTA)
小6の息子がいます。毎日ゲームばかりしていてとても困っています。ゲーム時間のルールを作って、それを守らせてみても、結局のところ勉強はあまりしません。宿題はそこそこやっている状況です。とくに算数は楽しくないのでやりたくないと言っています。
今後、中学生になるにあたって、ある程度勉強する子になってもらいたいと思っているのですが、どのように対応していったらよろしいでしょうか。
(仮名:斉藤さん)
ゲームをやるのは「子ども側」の問題か
子どもがゲームにハマり、勉強をしなくなっていった……という相談を全国からたくさんいただきます。男の子で小学生高学年、中学生の場合は、大半がこのご相談といっても過言でありません。
親は、ゲームを持たせた段階で、このような状態になることを覚悟しなくてはなりません。いったん持ってしまったら、ない状態は考えられなくなり、高度に進化し続けるゲームにますますハマっていくのは必然なのです。
しかし、はたしてゲームをやること自体が問題かというと、そうではありません。実際、ゲームを毎日やり続けている子でも勉強ができる子はいますし、さらに言えば、問題視しているのは「親側」だけであり、「子ども側」は問題どころか、テンションが上がり心が満たされており、ハッピーなのです。
問題なのは、親がこのように考えることなのです。
「このままの状態では、勉強をしない子になり、進学も危うくなり、将来も心配である」
ということは、親側の問題を解決させるためには、子どもが勉強にさえ向かえばいいわけです。しかし、ゲームにハマっている子からゲームを取り除くことはできません。1日60分などと限定したところでまったく効果がないことは、よく知られています。
また、物理的にゲームを取り除くことができても、友達の家でやっていたり、親の目を盗んでやるなど、今度は見えないところでやっていたりします。そうなるともはや子どもは、親を敵視するようになることもあります。
これはどう考えても不健全です。そこで、今回、本質的な対応策についてお話しします。
まずは次のことを知ってください。それは「勉強ができる子は『勉強=ゲーム』と思っている」ということです。
勉強をしている姿は、はたから見ると皆同じ様子に見えます。声に出して問題を解くわけでもありませんし、自分は今どのような気持ちで解いているかなど、内面でどのようなことが起こっているかはいっさい外見からはわかりません。
しかし、一部の子は、頭の中で「ゲーム化して遊んでいる」のです。筆者がこれまで3500人以上の小中高生を直接指導してきた実績からいえば、いわゆる勉強ができる子の多くは、そのように「遊び化」していました。
多くの子どもは、ゲームという遊びが好きなのです。ただし、目の前のつまらなく見える勉強を、自らゲーム化できる子とできない子に分かれているというだけの話です。
筆者は経験上、ゲーム化できる子の割合は5%以下と考えています。ということは残りの95%以上の子は、勉強は見た目のまま、つまらないものとして処理し、拒絶するか、やったとしても嫌々ながらやるだけになります。
勉強をゲーム化する方法
では勉強を拒絶する95%の子どもたちは、どうすればいいでしょうか。それは、周囲の大人が「勉強はゲームである」ことを教えてあげればいいのです。
親は勉強=善、ゲーム=悪と分けて考えがちですが、そのせいでいつまでも問題が解決しない可能性があります。しかし、勉強が嫌いでゲームが好きな子は、やり方によっては勉強に大きくハマる場合があるのです。
では、方法についてお伝えしましょう。まずは親が次のような考え方を持ってください。
【考え方】
1. 勉強そのものはゲームである
2. 先生はゲームのクリエーターであり、マスター(攻略テクニックを教えてくれる指導者)である
勉強がゲームであるとわかれば、勝つために努力をすることでしょう。難問をクリアしてバージョンを上げるゲームであれば、クリアするためのテクニックを知りたがります。
ところが、このようなことを親が思っていても、子どもにどうアプローチをしていったらいいかわかりません。そこで、次のようなアプローチを提案します。
それは、「勉強に関して使用する用語を変えていく」という方法です。
勉強を教える先生という立場であれば、ほかにも方法はたくさんあるのですが、親の場合は、次の「5つの用語」を使ってみることに限定するといいでしょう。
1. 例題や知識は「アイテム」(アイテムを手に入れてゲームを攻略する)
算数や理科といった科目には、基本問題というのがあります。それをただの問題としてみていると「つまらない」ものです。そこで、基本問題という言葉を「アイテム」に変えてしまいます。ゲームを攻略するために、アイテムを手に入れる必要があるのです。
基本問題がわかると、その派生的問題が解けるようになっています。また知識習得もアイテムの一種であり、それがないとテストというゲームを攻略できません。
2. 応用問題ではなく、「アップデート版」の攻略
基本問題、応用問題という言葉は、勉強で使う特有の言葉です。このような言葉の響きを多くの子どもたちはネガティブな言葉として捉えてしまうことでしょう。簡単な問題、難しい問題という意味と捉えると、どちらもポジティブには聞こえません。
基礎問題はベーシック版、応用問題はアップデート版と言葉を変えます。アップデートするかしないかは、子どもの判断です。しかし、多くの子どもたちは手強い応用問題はやりたくないが、アップデートはしてみたい、という感情を持ちます。そのことを知っておくといいでしょう。
ゲーム好きな子に勉強させる「攻略法」でもある
3. 解説ではなく、「攻略法」
答え合わせをしたときに解説を見ますが、積極的にこれを読もうとする一部の子どもを除いて、大半の子どもたちは、見たくもありません。しかし、この解説が「攻略法」であったとしたらどうでしょうか。積極的に解説を読む子の目には、これは「攻略法」として映っています。ですから、「解説を見てごらん」と言うのではなく「攻略法を見てごらん」と言ってみるのです。
4. 勉強計画ではなく、「ゲームプラン」
勉強をするうえで、勉強の計画というものが必要です。多くの子どもたちは計画を立てなさいと言われると、いやいや書くか、書かないかのいずれかになります。そもそも計画の立て方を教えてもらっていないという根本問題もありますが、いずれにせよ、計画を立てることは面倒であると考えます。
しかし、この「勉強計画」という言葉を「ゲームプラン」と言い換えます。ゲームを攻略するにはゲームプランが必要で、プランなしに最短でゴールには到達はしません。「勉強計画を立てよう」ではなく「ゲームプランを立てよう」と言ってみます。
5. 解答終了は「ゲームオーバー」
時間を計って問題を解くとき、時間になると解答終了となります。多くの子どもは「やっと終わった」と感じ、もう1回やろうとは思いません。しかし、ゲームが終了し、ゲームオーバーとなり、得点が表示されると、悔しくてもう1回やるというようになります。
そこで「解答終了」ではなく、「ゲームオーバー」と言ってみます。もちろんやっていることは勉強なので、もう1回やりたいとは思わないかもしれませんが、少なくとも無機質用語である「解答終了」というよりは、「ゲームオーバー」という言葉の響きのほうが、またチャレンジするという感覚を引き出す可能性が高まります。
ゲームが好きな子は、このような用語にとくに敏感です。使用される用語が変わっていけば、勉強に対する見方も変わることがあります。これまで筆者が授業という形で行ってきたときに使ったアプローチですが、ぜひご家庭でも試してみてください。何かしらの反応があると思います。
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提供元:「ゲーム三昧の子」が勉強に向かう「魔法の言葉」 |東洋経済オンライン