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2019.04.01

夫婦で「保活」に挑んだ男性が得た意外な気づき|育休をとったコピーライターの奮闘記


夫婦で一緒に保活に取り組むメリットとは?(写真:Ushico/PIXTA)

夫婦で一緒に保活に取り組むメリットとは?(写真:Ushico/PIXTA)

厚生労働省の発表では、全国の「待機児童」は、1万9895人(2018年4月1日時点)。前年比では4年ぶりに減少傾向になったが、いまだ2万人近い。そして、今年もまた「保活」の命運が分かれる季節だが、保活の負担もイニシアチブも、母親(妻)に偏重しがちな現実がある。

一方で、保活を二人三脚で行う家庭も徐々に見られるようになった。東京で広告会社、電通に勤務しながら、第一子(娘)の誕生を機に6カ月の育休を取った魚返洋平氏は、著書『男コピーライター、育休をとる。』の中で、同じく育休中の妻と共に体験した保活の一部始終(2017~2018年)をつづっている。今回は、とある激戦区でのケースを男性の視点から語ってもらおう。

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「認可保育園至上主義」からの解放

僕の住んでいる地方自治体(区)は、全国でも屈指の待機児童数である。認可保育園(以下、認可)の申込書に「第30希望」まで記入できる、と知ったときは驚愕したものだ。どこまで熾烈な戦いが始まるんだ?

せっかく半年間の育休を取っていたこともあり、夫婦二人で保活を頑張ってみることにした。目指すゴールは、わが子が0歳の4月に入園させること。妻もそのタイミングで復職する予定だった。

本来、保活なんて不要であるに越したことはないのだが、共働きである以上、レースへの不参加を決め込むわけにもいかないのがつらいところ。ただ、そんな保活も二人三脚で行うことで、家族にとってポジティブなチャンスになりうる。これは体験してみて感じたことだ。

重要な気づきがもう1つ。“認可保育園至上主義”に陥る必要はないということだ。僕は当初、認可に比べて認可外保育園(以下、認可外)は、保育料が高く、かつ保育の質もリスキーなのではないか? といった先入観を持っていた。だが、必ずしもそうとは限らないのだと知ることになる。以下、わが家がたどった道筋を紹介したい。

認可の入園選考は、世帯ごとの点数(指数)によって機械的に行われる。フルタイムの共働きである以外に加点要素のないわが家が、この激戦区で認可に入ることは超困難に思われた。とはいえ、圏内の保育園(以下、園)はすべて見ておかなければ悔いが残る。

というわけで園をリストアップしようとしたのだが、ここで最初の壁にぶつかった。

認可と認可外の両方を網羅した資料が、公式には存在しないのである(近いものはあるが完璧とは言えない)。区の資料では認可がコンプリートされているものの、認可外の情報は、そこまで責任を持てませんと言わんばかりに不十分だ。

結局、自分の地域の全園一覧を自作することになる。認可外については、地域情報アプリ、区の“子育てコーディネーター”からの情報、「○○(町名)」「保育」で検索、など、あの手この手で情報を集め、Excelの表に整理していった(もっと効率的な手がなかったのかと、今となっては思うが、われわれは基本的に不器用なのだ)。妻と子が寝ている時間を使い、2晩ほどで表は完成した。

「小さな遊び」で心に余裕をつくる

自宅から東西南北の隣町までを射程に入れると、58園。そこから徒歩25分以内に絞り込むと、20の園が残った。これらに電話をかけ、見学のアポを取っていく。結果的に週4~5日×5週間で見学を行うスケジュールになった。と書くと大変そうだが、会社での仕事を思えば、それほどでもない作業である。

子を抱っこし、妻と一緒に毎日見学する。これはこれで、なかなか楽しくもある日々だった。まず園がバラエティー豊かで面白い。ほかの見学者、園のスタッフなどの「社会」を見られるのも刺激になる(0歳児と過ごす育休は、外界と接する機会を失いがちだから)。

わが家の場合、パンや洋菓子に目がない妻の主導で、見学する園の付近のパン屋やパティスリーに寄って毎回おいしいものを買うことがパターンになった。ささやかだが、こういう「小さな遊び」があるかないか、それも夫婦2人で共にできるかどうかで、心の余裕はだいぶ変わってくる。

もちろん、見学を終えるたびに感想を交換して、イメージを共有していく。受験や就職活動と違うのは、こうして二人で言語化できる点だ。

すべての見学を終えたら、あとは申し込み手続きだ。

認可は結局、第6希望までしか記入しなかった。毎日の送り迎え(通勤・退勤の一部に組み込まれる)を想像し、徒歩15分以内に絞るべきだと判断したのだ。認可外は、3園に申し込んだ。細かい呼称で言えば、2つの「認証保育所」(認可外の中で一定のお墨付きを得ている園)と1つの「保育室」(小規模な園)だ。

認可外の申し込みについて、今でも気になっていることが2つある。

1つは、申込書に「手紙」を添えてこちらの思いを伝えるという非公式のテクニック。これが功を奏する場合があると保活セミナーで聞いたのだ。僕も、認証保育所の1つに手紙を書いてみた。あれこれ考えて推敲した。が、この園はあっさり落選。手紙だけが落選理由ではなかろうが、逆に「効果のあった手紙」がどんなものなのかは興味のあるところだ。

もう1つ。認可外の申込書には多くの場合、「単願」か「併願」かを明記する欄がある。だが、正直に「併願」と申告すると瞬時に落選するという噂だった。必ず「単願」と書くべし、と。これには良心の呵責があって葛藤した。ただでさえシビアな保活で、こんな細部に悩まなければならないとは。そもそも噂がどの程度確かなのか、いまだに疑問に思ってもいる。わが家はどう折り合いをつけたのか? ここに書ききれないので、詳細は著書で読んでいただきたい。

認可はすべて落選したが…

認可は、予想どおりすべて落選だった。認可外の第1志望をどこにするかで揺らいだが、最終的には2つの「認証保育所」よりも、「保育室」のほうに心が傾いた。

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決め手となった要素は3つある。1つは、ここに子どもを(タイムリミットの3歳まで)預けた知人が2人いて、彼らが口をそろえて「認可に転園したあとも、この園のほうが保育士も給食もよかったという話になる」と語っていたこと。にもかかわらず、認可(のわが家の保育料)と比べて安いこと。最後に、家や駅から近いこと。こうなると、ここに勝る園はないと思えてくる。

そして結果を言えば、幸運にもこの「保育室」から内定をもらえたのだった。

入園式を翌週に控えた3月末、区から突然の電話があった。認可の第1希望だった園に急遽1名分の空きが出たからどうですか? という。こんなタイミングでなんたる皮肉だろう。一瞬心が揺れたが、辞退した。認可こそがベストだという先入観から、僕たちはいまや自由になっていたのだ。

振り返ると保活は、夫婦の目線と情報量と温度感をそろえる機会であり、子と一緒にいろんな場所へ出かける機会でもあった。つまりは家族がより強固になるチャンスだ。

半年間の育休で痛感したことだが、育児それ自体には明確なゴールが存在しないし、夫婦でともに闘っているつもりでも、いったい何と闘っているのかよくわからなくなる。そんな日々のなかにあって、少なくとも保活だけはゴールや目標をクリアにできるものだ。絶対的な正解などないのだろうが、それでも「ここに預けるなら後悔しない」という気持ちを分かち合えるのは心強いではないか。

入園から1年。毎日送り迎えをしながら、この園でよかったと心から思う。同時に、「よかったと思うものを、妻と一緒に選べてよかった」とも感じるのだ。育休がそれを可能にした。長期の育休取得が難しい環境にいる男性でも、例えば「3週間だけ育休を取って妻と一緒に保活を行う」などの選択があっていいと思っている。

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提供元:夫婦で「保活」に挑んだ男性が得た意外な気づき|東洋経済オンライン

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