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2018.07.09

「発達障害の子」に悩む親が知りたい超基本|「ぐずる」「こだわる」「怠ける」も症状のひとつ


その困りごとを発達障害の特性として受け止めても、子どもの個性として受け止めてもいい(写真:szefei/iStock)

その困りごとを発達障害の特性として受け止めても、子どもの個性として受け止めてもいい(写真:szefei/iStock)

じっとしていられない、片づけが苦手で忘れ物やなくし物が多い、ちょっとしたことで激しい癇癪を起こす、話がかみ合わない……。これらはすべて、発達障害を抱える子どもに見られる症状(特性)。「もしかして、うちの子も……?」と思った方もいるかもしれません。小さな頃は困りごとが多いからこそ、子どもが起こすことが「発達障害によるものなのか、そうではないのか」を見極めるのは難しいでしょう。

発達支援15年以上の経験を持つ臨床発達心理士にして、『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』の著者である吉野加容子氏が、発達障害の分類、特徴、診断基準など「発達障害の基本」を解説します。

発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室 ※外部サイトに遷移します

発達障害とは、脳のある部分が未発達だったり、働きがうまくいかないことで起こるさまざまな状態のことを指します。原因は遺伝子の染色体異常や幼少期の脳の疾患などが挙げられますが、理由ははっきりわからないことのほうが多いのです。

また、症状の度合いも軽度から重度までさまざま。代表的な発達障害は、(1)自閉症スペクトラム障害、(2)注意欠陥多動性障害、(3)学習障害の3つです。発達障害は右肩上がりに増えていますが、特に多いと感じるのが「グレーゾーン」の子どもたち。症状が軽いために病院などで診断がつかない子をこう呼びます。「なんとなく育てにくいだけ」だと思っていても、実は発達障害のグレーゾーンだったというケースも少なくありません。

発達障害の代表的な3つの種類

代表的な発達障害の種類と特徴は下記のとおり。

(1)自閉症スペクトラム障害(ASD)

・一方的に話すなど、会話が成り立ちにくい
・空気が読めず、相手の気持ちや意図を汲み取れない
・数字、路線図などパターン化されたものを暗記するのが好き
・強いこだわりがあって、融通がきかない 
・音や光への感覚が過敏もしくは鈍感

(2)注意欠陥多動性障害(ADHD)

・落ち着きがなく、いつも動き回っている
・ちょっとしたことで、激しい癇癪を起こす 
・なくし物や忘れ物が多い
・集中したり、注意して行動することが苦手
・突然走り出すなど、考えなしに衝動的な行動を取る

(3)学習障害(LD)

・「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの学習、習得ができない
・何度教えても苦手領域だけは勉強が進みにくい
・運動が苦手で、人の動きをまねたりすることができない

3種類に分けて紹介しましたが、この中の1つだけに悩んでいる子どもは少なく、それぞれの症状を少しずつ持ち合わせているケースがほとんどです。そのため、発達障害の症状は子どもによって本当にさまざまだといえます。

あなたの子どもが育てづらい理由

発達障害というと病院で診断される重い症状だけを想像するかもしれませんが、実は「ちょっと育てにくい子」の中にも発達障害の特性を持っている子たちがいます。そのような子たちは「じっとできない」などの発達障害特有の症状はあるものの、社会に適応できないほどではないため、病院などではっきりとした診断がつきません。このような子どもたちは「発達障害のグレーゾーン」と呼ばれます。

これまで私が受けてきた相談から考えると、診断がつく発達障害の子よりも、グレーゾーンの子のほうが多いように感じます。あくまで経験による推測値ですが、グレーゾーンの子は、1クラスに10%ぐらいの割合でいるのではないでしょうか。

グレーゾーンの子どもたちは、日常生活を送るのに問題ない知能を持っていますが、行動に特性があるため、学校生活や集団の中で苦労することが多々あります。さらに、グレーゾーンは重度の発達障害に比べると、症状が軽いために「怠けている子」「親のしつけがなってない子」などの誤解も受けやすいのです。周囲から症状が見えにくいからこそ大変なのが、グレーゾーンだといえるでしょう。

グレーゾーンでは、特性が少し「変わったかたち」で出ることもあります。たとえば、私のもとに相談に来ていた注意欠陥多動性障害と自閉症スペクトラム障害の特性を少しずつ併せ持つグレーゾーンの男の子の場合。

この子の症状の1つに、ファミリーレストランなどの外食で、一緒にいる人同士の注文が同じになることに「強い嫌悪感」を示すというものがありました。つまり、お母さん、お父さん、その男の子、弟の4人でファミリーレストランに行ったときに、お母さんと弟の注文するものが同じになると、途端に機嫌が悪くなって怒りだし、弟をたたいたり、メニューを変えるまでぐずるということがよくあったのです。

これは、一見、自分勝手なワガママのようにしか見えませんが、立派なグレーゾーンの特性。自閉症スペクトラム障害の「独特のこだわり(この場合はメニューが一緒ではいけないという独自ルール)」と、注意欠陥多動性障害の「衝動性」が合わさって急に怒り出すという行動が現れたと考えられます。

グレーゾーンでは、発達障害の代表的な特性が薄まるだけでなく、このように、特性が少しかたちを変えて出てくることもあるのです。なんでもかんでも発達障害だと考え、必要以上に過敏になることはありませんが、子育ての中で「何かおかしいな」と思うことがあれば、発達障害という可能性も考えていいでしょう。

近年、発達障害の診断基準が変わったこともあり、医療現場において、発達障害の考え方に変化がありました。

以前は、「多動があったら発達障害と診断する」など、特性にひも付けて発達障害の診断や症状の重さの区別がされていましたが、ここ数年は「どれくらい日常生活で困っているか」「どれくらい社会生活に適応できていないのか」という点に、重きを置いて診断が下されるようになったのです。“社会生活に適応できていない部分があって、日常生活で困っているなら、その場合は診断をつけましょう”そういう流れになっています。

診断基準の話からもわかるように、「発達障害とグレーゾーンの境界線」、また、「グレーゾーンと定型発達(健常者)の境界線」はあいまいです。だからこそ、子どもと向き合う両親や周りの人が「育てにくい」と感じることがあったら、問題を先送りにせず、困りごとを減らすように動くのが大切。

多少乱暴な言い方になりますが、その困りごとを発達障害の特性として受け止めても、子どもの個性として受け止めてもいいのです。そして、困りごとを解消するために使える手段があるのなら、できるだけ積極的に使ってください。特に公的な支援は一定の年齢までしか用意されていないことが多いので、受けられる内に受けたほうがいいとも思います。

「診断がついていないから」といって何もしないのではなく、今、子どものことで困っていることがあるのであれば、どんなことに手を焼いているか、不安に感じているか、その感覚を大事にし、それを解決していくことに力を注ぎましょう。

発達障害が完治することはない

発達障害はウイルスによる風邪や病気とは違い、もともとの脳の特性による部分が大きいため、基本的には完治しません。

しかし、程度に差はあるものの、ヒトの赤ちゃんはみな、脳が未完成な状態で生まれ、「目に入るもの」「聞こえてくるもの」「周りにあるもの」など、自分の中に入ってくる情報を栄養にして、少しずつ脳を成長させていきます。

発達障害の子の場合は、脳の中に発達しにくいところがありますが、脳の成長が環境によりどんどん促されていくことには変わりありません。だからこそ、両親が子どもへの接し方を変えたり、子どものために環境を変えることで、それらの刺激をもとに、子どもの脳を育てることはできます。

子どもの発達を促すのに、最も効果的なのは「親子のコミュニケーション」を充実させることです。発達障害は完治しませんが、脳科学の視点からいえば、発達障害の子も接し方次第で十分に伸びる可能性があります。そのためにも何か気になることや不安があれば、できるだけ早めに対応をしてほしいと、切に思っています。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

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提供元:「発達障害の子」に悩む親が知りたい超基本|東洋経済オンライン

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