2017.10.12
3段階ある「子どもが勉強しない」への対処法│原因を「ステージ」で分けると見えてくる
ゲームより圧倒的につまらない(と、本人が思っている)勉強に対して、どのようにして本気にさせていけばいいのでしょうか?(写真:マハロ / PIXTA)
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中学1年生の息子のことでご相談させていただきます。小学校1年から塾に週2回通い、勉強を頑張ってきましたが、あるのは塾に行っているという安心感だけです。今ではまったくテストの成績が伸びず、これからどのようにしてゆくべきかと悩んでいます。テスト前には私が言わないと……いや言ってもなかなか勉強に取り組めず集中できないようです。先日の期末テストも本人は結構できたと話していたのにもかかわらずまったくでした。ひそかに本人も落ち込んでおりました。何ができない原因なのでしょうか。
(仮名:中田さん)
「うちの子、勉強しないんですけど」
「うちの子、勉強しないんですけど、どうしたらいいでしょうか」。この質問は、筆者がこれまで受けてきた質問でいちばん多いものです。
もちろん、相談される内容の背景はそれぞれ皆さん異なっていますが、相談の趣旨は結局、すべて「うちの子、勉強しないんですけど」なのです。
この問題は、いったいどのようにして解決したらいいでしょうか。実際、勉強が嫌いな子は非常に多いです。すべての子どもとはいわないまでも、かなりの数に上ります。
親の世代でも、勉強ができたという人はいても、勉強が好きという人は多くはないのではないでしょうか。なぜ、こんなにも、勉強は嫌われてしまうのでしょうか。かくいう筆者も、20歳まで勉強が好きとは思えず、やらなければならないからやっていたにすぎません。勉強の面白さがわかったのは、子どもたちに勉強を指導するようになってからですから。
この嫌われものの勉強をいかにして、好きになるかというテーマは別の機会に述べるとして、現状の中田さんのお子さんが直面している、テストで点数をしっかりと取れるようになるための対策についてお話ししましょう。
まず初めに断っておかなければならないことは、「勉強ができるようになるためにはどうするかという問いに一言では答えられない」ということです。「一口に勉強できるようになる方法は?」といっても、百人百様です。背景が皆違うのですから。数ある方法の中で、自分にジャストミートする方法に出合うのは難しいものです。しかし、このような細かい方法に焦点を置かずに、勉強ができない原因をステージ(段階)という形で分けてみると意外とシンプルになっていることがわかります。
【勉強ができない子の第1ステージ】
勉強をそもそもできるようになりたいとは思っていない
→ 勉強自体に、価値を置いておらず、勉強は邪魔な存在として考えているケース
【勉強ができない子の第2ステージ】
勉強できるようになりたいと言っているが大して勉強していない
→ できるようになりたいと口では言っているが、そこまでやっていない。つまり「本気」になっていないケース
【勉強ができない子の第3ステージ】
勉強できるようになりたいと思って勉強しているが、伸びない
→ 勉強方法を知らないか、方法を間違えているケース
このように勉強ができない3つのステージというものがあります。そして、対応方法はそれぞれ異なります。ですから単純に塾へ行かせれば勉強ができるようになるわけではありません。
もちろん、たまたま相性のいい先生に出会い、カチッとスイッチが入ったということもあるかもしれませんが、そのような幸運を待っていても仕方ありません。それよりも具体的に、段階に応じた対応を取る必要があります。
3段階のステージと対処法がある
【第1ステージの子への対応方法】
いちばん対応が難しいのが、第1段階にいるケースです。根が浅ければいいですが、根が深いとかなり時間がかかります。多くの場合、過去に勉強で嫌な目に遭ったか、勉強できないことをインプットされた経験があるのがこのケースです。
この場合の代表的なアプローチは2つあります。1つは「できる学年の内容までさかのぼり、『できる感』を作り上げる直接的方法」であり、もう1つは「勉強以外の領域で自信をつけさせる間接的方法」です。つまり「目の前の勉強以外のことで自己肯定感を引き上げる」ことから入ります。この積み上げがなければ、勉強への意欲は出てきません。
【第2ステージの子への対応方法】
そして判断が難しいのが、この第2ステージです。子どもが口では「できるようになりたい」と言っても実際、行動が伴わない、口先だけという場合。このゾーンの子は非常にたくさんいます。5段階成績で言えば、オール3のボリュームゾーンの子がこのケースに当てはまることが多いです。
さらに、精神的に幼い子の場合は、勉強以外のことにすぐに興味が引かれてしまい、メリハリもつかず、勉強の時間はほとんどなくなります。往々にして、勉強については「つまらないもの」という程度にしか考えておらず、やらなければならないという認識はあるものの、勉強する意味をあまり感じていません。
このステージでは、後述する「本気にさせる手段」を取りますが、どうしても本気になれなければ、第1ステージの方法で対応します。本気になれば、次の第3ステージの対応を取ります。
【第3ステージの子への対応方法】
第3ステージにいる子もさまざまで、オール3後半からオール4のゾーンの「そこそこできる子」の2つがあります。このそこそこできる子は勉強方法を教えてあげると、さらにできるようになります。このステージの子は勉強をある程度してはいます。ですからある程度点数は取れますが、ある程度で終わってしまいます。
前回記事(「考える力がない子」を変える3つの問いかけ)でもご紹介しましたが、「勉強しなさい」「覚えなさい」と言われても、その方法を教えてもらったことはありませんね。勉強内容を教えても、学び方を教えないというのでは、できないのも無理はありません。一部の方法を知っている子のみが得点するのも納得できます。塾へ行けば、成績が上がると思うかもしれませんが、最終的に成績が上がる子は自分なりの勉強方法のスタイルを確立している子です。やはり勉強方法を知っている子は圧倒的に強いのです。
前回記事(「考える力がない子」を変える3つの問いかけ) ※外部サイトに遷移します
さて、中田さんのお子さんは、質問内容からすると、第2ステージのケースだと想像しました。そのお話を具体的にしましょう。
このステージの子に対しては、いかに本気にさせるかということがテーマになります。ゲームより圧倒的につまらない勉強に対して、どのようにして本気にさせていけばいいのでしょうか。
「多少はやっている」子を本気にさせる仕掛けとは
第2ステージの子は本気で勉強ができるようになりたいと思ってはいないものの、多少はやっています。ですから、まったく勉強しないわけではありません。親から言われて、多少はやります。しかし自主的にやっているわけではないので、大して点数が取れません。そこには、子どもを本気にさせる仕掛けが必要になります。仕掛けはいくつかあるのですが、ここでは1つ紹介しましょう。
【仕掛け】 現状の学力を「見える化」させて、その中でいちばん上がりそうな科目に焦点を当てる
中学校では、科目がたくさんあり、すべての科目の成績を一気に上げようとすると、第2ステージの子どもはやる気を失う可能性があります。そこで、1つに集中させます。できれば主要5教科のどれかがいいでしょうね。実技科目でもいいのですが、「親が求める勉強ができる」は主要5教科を指している場合が多いので、そのいずれかの科目で、「相対的」にできる教科を1つ取り上げ、その科目に全力投球させるのです。
1つの科目であれば、やってみようとなる可能性も高まりますし、また成果も出やすいのです。たとえ勉強方法を詳しく知らなくても、量である程度こなせば、今よりは点数が確実に上がります。すると、できる感覚が醸成され、多少のタイムラグはありますが、そのほかの教科に波及する可能性が高いのです。このような方法で一度試してみてください。きっと目に見える効果があると思います。
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提供元:3段階ある「子どもが勉強しない」への対処法│東洋経済オンライン