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2017.10.10

「はやく」と叱らず子を動かす「魔法のカード」│「次にやるべきこと」が一目瞭然になる


子どもたちに「やるべきこと」をやらせるには?(写真 : kou / PIXTA)

子どもたちに「やるべきこと」をやらせるには?(写真 : kou / PIXTA)

「やるべきこと、やったの?」「どんどんやらなきゃダメでしょ」「やることやってから遊びなさい!」

今日もまたこのような言葉があちこちの家庭で発せられています。本当に、子どもたちに「やるべきこと」をやらせるにはどうしたらいいのでしょうか?

口で叱っているだけでは効果がありません。なぜなら、そもそも子どもとは「やるべきことをやらない生き物」であり、それが子どもの定義と言っていいくらいだからです。ですから、大切なのは大人の知恵を絞って合理的な工夫をすることです。そこで、今回は「やることカード」を紹介します。

写真のおかげでやることが明確に

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千葉県のSさんは、息子のK君が幼稚園から帰宅したらすぐに4つのことをさせたいと考えていました。1.うがい、2.手洗い、3.幼稚園帽子をフックに掛ける、4.おはしセットを流しに持っていく、の4つです。でも、いくら言ってもやってくれません。それで、ガミガミ叱っていたのですが、あるとき私が書いたものを読んで、カード式という方法をやってみることにしました。

まず、息子が4つの行動を実行している姿を写真に撮って、それをはがき大にプリントアウトしました。そして、その4枚の写真をやるべき順番にA3の大きさのホワイトボードに貼って玄関に置きました。

そして、「帰ってきたらこの4枚の『やることカード』(写真)を見て、この順番でやってね。やったら裏返して貼ってね」と言いました。裏返すとSさん自作の「にっこり花丸ピース」というキャラクターの絵が見られます。

写真のおかげでやることが明確になりましたし、やる順番もはっきりしました。しかも、やっているのは自分ですから、「やれないはずはない」という気にもなります。たったこれだけの工夫で、ガミガミ叱らなくてもやれるようになりました。なお、キャラクターの絵ははがきより少し小さい付箋紙に描いて、写真の裏に貼ってあります。毎日同じ絵では子どもが飽きてしまいますので、違う絵がベストですが、毎日、4枚とも描きかえるのは面倒です。なので、4枚のうち1枚ずつ描きかえるそうですが、1分もかからないそうです。

私は教師として長年子どもたちに接してきましたが、その経験で言えるのは、子どもに何らかの行動をやらせたいと思ったら「やることの見える化」がとても大切だということです。というのも、そもそも子どもというものは、「やるべきこと」つまり「大人に『やれ』と言われていること」より、もっとはるかに楽しい「自分がやりたいこと」を優先するのが当たり前だからです。それが子どもというものであり、逆に後者を抑圧して前者を優先する子のほうが心配なくらいです。

つまり、「自分はこれをやりたい」という主体性やガッツが少ないのではないか? 親や先生の気持ちを忖度(そんたく)しすぎて、自分の人生が展開できなくなるのではないか? こういう心配があるのです。

時間帯の行動をそれぞれ見える化

あと2つ、実践例を紹介します。Mさんの家ではA3のホワイトボードを3つ用意して、朝、帰宅後、夜の3つの時間帯の行動をそれぞれ見える化しています。

朝のやることカードは「洗顔・手洗い」「うがいしてから水を飲む」「食べたら歯みがき」「うんち」「着がえ」「忘れ物チェック」の6枚です。写真ではなく、マグネットシートに文字で書いてあります。そして、ホワイトボードの真ん中にビニールテープを縦に1本貼ってあります。ホワイトボードの左側に6枚のやることカードを貼り、やったら右側に移します。やってないのは左側に残りますので、次にやるべきことが一目瞭然です。次の日は、やることカードを右側から左側に移します。

帰宅後のやることカードは「プリントを出す」「宿題の準備」「宿題」「明日の仕度」「フルートの練習」「○○○○(通信教材)」の6枚で、夜のやることカードは「片づけ」「予定帳を見せる」「本読みカードをランドセルに入れる」「明日の服を用意」「目覚まし時計をオンにする」の5枚です。

次は東京都のWさんです。Wさんには小学2年生のY太郎君という男の子がいます。Wさんのやり方はとてもシンプルです。

1.90cm×60cmのホワイトボードを縦に置き、真ん中にビニールテープを貼り、左と右に分ける
2.やることカードは横書きで、帰宅後から寝るまでにやるべきことを書く
3.やることカードをやる順番でホワイトボードの左側に貼る
4.やったらカードを右に移す
5.次の日は右から左に移す

やることカードの内容は次のようなものです。「うがい・手洗い」「靴下を洗濯機に入れる」「ランドセルの中身を箱に出す」「お便りをママの席に置く」「給食袋を出す」「宿題の準備をする」「宿題」「片づけ」「明日の準備」「予定帳をママに渡す」「食べたら歯を磨く」「お風呂」「胡蝶蘭に水やり」「明日の服を出す」「うがいとくちすすぎ」です。

やる順番に貼るので、いちばん上は「うがい・手洗い」でいちばん下が「うがい・くちすすぎ」です。つまり、寝る前にもうがいをして寝るわけです。最近、口腔ケアの重要さが指摘されているので、子どものうちからこういう習慣をつけるのはとてもいいことですね。1日が終わって寝るときは、カードがすべて右側に移っています。ですから、先のMさんと同じく次の日は右から左に移すようになります。

Wさんは、Y太郎君が幼稚園のころはそれほどではなかったのですが、小学校に入学したころからガミガミ叱ることが増えました。でも、このカードでそれが減ったそうです。

以下はWさんの話です。「やるべきことをやってくれないと、つい厳しく叱っていました。本当は叱りたくないんですけど……。それで、ある日、親野先生が書かれたものをネットニュースで見て、ハッとしました。毎日ガミガミ叱っていると、子どもは自分が愛されていないのではないかと思い始める、と書かれていました。

実はそれについて心当たりがあって、最近子どもが妙によそよそしいというか、前のように素直に甘えてこなくなったように思っていました。そして、『ママ、ぼくのこと好き?』とか聞いてくることがたびたびあったのです。Y太郎にそう言われてハッとしました。『これは何とかしなくちゃ』と思って、先生のブログを読みまくったら、『叱らなくても済む工夫が大事』とか『カード式でやることを見える化』とかが出ていて、『これだ』と思い立ちました」。

見える化の効果は大きい

やることカードを実践したうえで、Wさんは次のように言っています。「やることカードがあると、やるべきことがはっきりわかってとてもいいです。まだやってないカードが残っていると、Y太郎もどうしても目についてすっきりしないみたいで、ぶつぶつ言いながらやり始めます。そういうときは、めちゃ褒めしてます」。

それを聞いて、私は「やはり、見える化の効果は大きいですね。見える化していないと、やらなくても平気でいられるのですが……」と答えました。すると、Wさんが「最近、『お風呂の前に縄跳びをやる』と言って、自分で『縄跳び』というカードを作って追加しました。クラスにライバルがいて負けたくないそうです」と教えてくれました。

やることカードで自己管理する方法がわかってくると、自分で必要だと思ったことをカードにして頑張るようになるという話は、他の方にも聞いたことがあります。親としては本当にうれしいことですね。それで思い出しましたが、冒頭で紹介した千葉県のSさんの息子K君はもう高校生だそうですが、今はホワイトボードに自分でやることを書いたり消したりして自己管理しているそうです。

最後にいくつか付け加えます。やることカードはホワイトボードでなく冷蔵庫に貼るのでも効果があります。また、やることカードをつくるのが面倒だという場合は、やることをホワイトボードに直接書き込むのもいいでしょう。その場合は、やったところにおしゃれなマグネットを貼るなどして、やったかどうかがわかるようにします。

やることカードなどによる「見える化」は、子どもだけでなく大人にも有効です。「腹筋20回」「英語7分」「片づけ5分」「日記」「領収書の整理と入力」など、毎日やることを見える化することで継続が可能になります。頭で「やらなきゃ」と思っているだけだと、つい易きに流れてしまいます。でも、見える化されていると無視できなくなり、行動につながりやすくなります。

やるべきことをやれるようにするために、本連載でもすでに下記の方法を提案してあります。ぜひ、ご参考にしてください。

「はやく」と言わず子どもを動かす魔法の時計 ※外部サイトに遷移します

「とりあえず方式」が勉強しない子に響くワケ ※外部サイトに遷移します

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漢字の「とめ、はね」にこだわる教育は有害だ

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提供元:「はやく」と叱らず子を動かす「魔法のカード」│東洋経済オンライン

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