2017.09.07
ストレス対処のポイントは2つ!「問題」と「気持ち」へのアプローチ
コーピング・レパートリーを広く持っていますか?
問題を抱えてストレスを感じた時、どのような方法で対処していますか? 「寝て忘れよう!」と早々にベッドに入る。誰かに愚痴を聞いてもらってすっきりする。「ストレスになんか負けない!」と現状を打破するために頑張る・・・。などなど、無意識のうちにさまざまな方法を実践していると思います。
ストレスへの対処を「コーピング」と呼びます。その時々の感情のみにしたがってストレスに対応していると、同じパターンのコーピングに偏り、ストレスをさらに募らせてしまったり、解決すべき問題が放置されたままになってしまったりすることがあります。
大切なのは、日ごろから自分なりのコーピングをたくさん持っておくこと。これを「コーピング・レパートリー」と呼びます。そして、ストレスに遭遇した時には少し離れた位置から自分の状況をモニタリングし、コーピング・レパートリーの中からコーピングを柔軟にデザインしていくことがポイントになります。
「問題焦点型」とは問題を解決するコーピング
コーピングのデザインにあたってまず必要なのは、コーピングのタイプを知ることです。コーピングのタイプは、大きく分けて2種類あります。一つは「問題焦点型」、もう一つは「情動焦点型」です。
「問題焦点型」は、問題解決することで問題から生じるストレスを軽減させるタイプのコーピングです。
たとえば、隣家の騒音が不快で困っているとしましょう。こうした場合、隣家に直接交渉して騒音が出ないようにしてもらう。相談窓口に相談して、専門家と一緒に解決方法を考える。コミュニケーションの勉強をして、上手に交渉する術を身につける。
このように問題そのものに働きかけ、それが解決してなくなれば、ストレスもなくなります。これが問題焦点型のコーピングです。
「情動焦点型」とは気持ちをケアするコーピング
一方の「情動焦点型」は、ストレスを受けて生じる不快な感情を落ち着かせたり、考え方を変えたりすることで気持ちが変わるようにアプローチするコーピングです。
気晴らしをして騒音のことを忘れる。友人に愚痴を聞いてもらって、イライラや憂うつを発散させる。「迷惑をかけるのはお互いさま」と大らかに考える。十分に睡眠をとって気分をリセットさせる。このような行動が、情動焦点型に入るでしょう。
問題は続いていても、気持ちをリラックスさせたり、他のことに意識を向けて楽しんだり、考え方を柔軟にして感情に振り回されないようにすれば、ストレスは軽減します。これが、情動焦点型のコーピングです。
コーピング上手はストレスにどう対処しているの?
ストレスへの対処が上手な人は、幅広いコーピング・レパートリーの中から、問題焦点型、情動焦点型のコーピングをバランスよく組み合わせて実践しています。
たとえば、人間関係の問題で困っているとき、角を立てずに交渉できるように作戦を練ったり、その問題を相談できるキーパーソンを探したりして、一人で問題を抱えないようにしています。同時に、睡眠やリラックスできる時間をしっかりとって気分をリセットし、その問題のことを忘れる時間をつくったりしています。また、人や物事の良い面を見るようにもしています。
つまり、コーピングにあたってもオンとオフのスイッチを上手に入れ替えているのが、ストレスへの対処が上手な人なのです。
足りないコーピングを見つけ、意識して実践してみよう
このように、問題焦点型、情動焦点型のどちらかだけに偏らずたくさんのコーピング・レパートリーを組み合わせていけば、ストレスに強くなることができます。
そのためには、まず自分自身のコーピングのパターンを分析してみましょう。問題焦点型に偏っている人は、問題のことばかり考えていつもイライラし、気持ちに余裕がなくなりがちです。このタイプの人は、ぜひ情動焦点型のコーピングを取り入れてみてください。
あるいは、情動焦点型に偏っている人は、気持ちのケアに時間を費やし、問題を放置しがちです。したがって、問題解決力が身につきにくく、いざという時に問題と真っ向から向き合いにくいのです。このタイプの人は、ぜひ問題焦点型のコーピングを取り入れてみてください。
自分に足りないコーピングが見つかったら、意識してそのコーピングを日々の暮らしの中で実践していきましょう。問題焦点型が足りない人は、思い切って相手に交渉してみる。相談に乗ってくれそうな人を探してみる。情動焦点型が足りない人は、気晴らしや趣味を増やしてみる。ネガティブ思考をやめて物事の良い面を見つけてみる。心地よい睡眠をとれるように眠りの環境を見直してみる。
こうした中から、まずはできそうなものを思い切って始めてみませんか? すると、ストレスに押しつぶされそうな自分を楽にし、ストレスを上手に解決・解消しながら、毎日を送っていくことができるようになると思います。
photo:Thinkstock / Getty Images
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大美賀直子
早稲田大学教育学部を卒業後、出版社やIT関連企業に在籍し心身の健康等の編集の仕事に携わり、独立。メンタル領域専門のコラムニストとして、ストレスや心の健康、対人関係、モチベーション等に関する執筆活動、講演活動を行う。同時に心理カウンセラー、研修講師としても活動し、メンタルヘルス支援企業「(株)ハートセラピー」に所属。法人向け研修、労働者や大学生へのカウンセリングを行っている。雑誌・新聞等メディアへの出演も多く、著書多数。『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』(さくら舎)、『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』(明日香出版社)などの書籍を出版している。
提供元:ストレス対処のポイントは2つ!「問題」と「気持ち」へのアプローチ|フミナーズ