2017.08.03
集中力が切れるのは「休め」のサイン!能率を高める5つの方法
仕事中や勉強中に集中力が途切れて、ついダラダラ作業してしまい、やるべきことがほとんど進まなかった…という経験はありませんか? 集中力が続かないのは、睡眠不足や脳に蓄積した疲労などさまざまな原因があります。今回は、精神科医で脳科学にも精通する西多昌規(にしだまさき)先生に、仕事のスピードやパフォーマンスを上げるための、集中力アップのコツについて教えていただきました。
目次
-集中力とは
-集中力が発揮されるメカニズム
-集中力が落ちる原因
-集中力を高める方法
集中力とは
集中力とは、「あるひとつの物事に対して、意識を働かせる能力」のことを指します。ここではまず、集中している状態について、詳しく解説します。
「集中している」とはどんな状態?
人の脳は集中して作業を行うとき、能率を上げるために、作業に必要な感覚のみを活性化させます。ほかの感覚の感度は低下するので、メリハリがつき、ひとつの物事に対して意識して継続的に働かせることができます。
例えば、机に向かって勉強をしているときは、活字を読むための視覚が強く働き、作業に不要な聴覚が弱まるため、周囲の雑音が聞こえにくくなります。このように「集中している状態」とは、脳の特定の部分が活性化し、一部の感覚が研ぎ澄まされた状態が継続していることを指します。
集中力には2つの種類がある
集中力は、ポジティブな「攻めの集中」とネガティブな「守りの集中」の2つのタイプに分けられます。この2つの特徴と、取り組む内容やシーンに応じた集中を促すポイントをご紹介します。
攻めの集中
自らが望んで物事に取り組むときに発揮される集中力が「攻めの集中」です。例えば、スキルアップのための資格の勉強などが、攻めの集中が発揮されやすい場面です。目標を設定し、達成できたときの喜びや具体的なメリットを想像して、ポジティブなイメージで気持ちを高めることで集中力が発揮できます。
また、目標を立てるときは、極端に高いハードルを設けないのもポイント。到底実現できないような大きな目標を立ててもモチベーションが上がらず、達成する喜びも得にくくなります。頑張れば達成できるくらいの少しだけ難しい目標を設定するのがよいでしょう。
守りの集中
自分が望んでいなくても、やらなければいけないことに対して発揮されるのが「守りの集中」です。「守りの集中」を高める原動力は、他人からの批判や怒り、罰、苦痛といったネガティブなイメージです。例えば、「試験に落ちたら留年してしまう」など、できなかったときのペナルティーを想像して危機感があおられることで、集中力が高まります。
作業に締め切りを設定することで強制的に集中できる環境をつくるのが効果的。さらに、緊張状態を高めて作業を確実に完了させるため、締め切りを誰かと共有しましょう。
集中力が発揮されるメカニズム
集中できないと感じていても、作業を行ううちに集中力が高まり、「乗ってきた」と思える状態のことを「作業興奮」といいます。このように、脳内の興奮物質が活発になって起こる「集中」のメカニズムについて以下で解説します。
集中するときの脳のメカニズム
集中力を高める主な脳の神経伝達物質は、「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」です。
ドーパミンとは
ドーパミンは喜びや快楽をつかさどる神経伝達物質です。ドーパミンが分泌されると行動意欲が高まり、「攻めの集中」の向上につながります。
例えば、仕事が忙しいと感じているときは、「これが終わったら好きなお菓子を食べよう」「もう少しで連休だから、残業になっても頑張ろう」など、仕事を達成したときの喜びや、それによって得られる利益、将来への期待をイメージすることで集中力が高められます。
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリンとは、危険やストレスを回避しようとしたときに分泌される脳の神経伝達物質で、「守りの集中」につながります。ノルアドレナリンが分泌されると、心身が緊張して警戒状態に入り、自分の身を守るために注意力や集中力が高まります。この働きを活性化させるコツは、集中したい作業に締め切りを設け、強制的に緊張状態を生むことです。これを「デッドライン効果」といいます。このとき、自分への甘えが生じないように、他人に「いつまでに何を終わらせる」など、期限を公言するとより効果的です。
集中力が落ちる原因
集中力には限りがあるため、長時間持続させることはできません。また、作業環境や生活スタイルなどさまざまな要因で集中力は切れていまします。集中力が切れたときに脳が発するサインと、集中力が切れてしまう要因を以下にまとめました。
「飽きた」は「休憩しなさい」のサイン
作業中に「飽きた」「疲れた」「眠い」と感じたら、集中力が切れたサインです。集中しているときは、脳の一部分がフルパワーで働いているため、脳が疲れやすい状態に。集中している状態はあまり長い時間は続きません。そのため、無理に作業を続けていると、フルパワーで働いた脳の部分に疲労が蓄積し、パフォーマンスが低下して、「飽きた」という形で休息をうながすサインを送ってきます。集中力をもう一度高めるには、使いすぎた脳を休ませることが第一。脳のサインを無視せず、コーヒーブレイクをとったり、ストレッチをしたりするなど、いったんリフレッシュの時間を入れるようにしましょう。
集中を妨げる要因
マルチタスク
複数の仕事を同時並行で進めるマルチタスクは、ほかの作業に気を取られて集中力を損なうため、おすすめできません。特にインターネットやメールへの過度なアクセスは、集中すべき物事以外のことへ頻繁に意識が向いてしまうため、集中力だけでなく、考えをまとめるための思考力の低下をも招きます。
集中力を下げる要因
睡眠不足
睡眠不足は、最も集中力の低下につながりやすい原因です。睡眠不足は物事を考えたり覚えたりする認知機能の低下を招き、集中を妨げます。また、脳に備わっている、同時にいくつもの情報処理を行うときに機能する「ワーキングメモリ(通称“段取り脳”)」は、睡眠時間が足りないと、その活動が低下します。そのため、睡眠不足の状態では気が散りやすくなり、正しい状況判断がしづらくなるほか、優先順位をつけてテキパキと作業をすることが難しくなります。
体内時計の乱れ
「昼は活動的に過ごし、夜は眠る」というリズムをつくる「体内時計」は、体温やホルモン、自律神経などの生命活動をコントロールする大切な機能です。集中力も体内時計の影響を受けています。体内時計は光を浴びる時間に左右されるので、夜に明るい光を浴びて過ごしたり、日中に薄暗い部屋の中に閉じこもっていたりすると、体内時計が狂いやすくなり、慢性的な時差ボケのような状態で正常に頭が働かなくなってしまいます。
ストレス
職場や家庭のストレスなど、悩み事や不安を抱えていると、その問題に気を取られて精神状態が不安定になります。すると仕事へのモチベーションが落ちて、集中力の低下を招きます。精神状態が安定していることは、集中力を保つうえでの最低条件です。
加齢
加齢によって集中力が低下してしまう原因は主に2つあります。1つ目は、「選択的注意能力の低下」です。加齢ともに脳の情報処理のスピードが落ち、集中すべき対象に注意を払って効率よく処理する能力が低下するのです。
2つ目の原因は、「脳のよそ見」が増えてしまうことです。年齢を重ねると経験や知識が豊富になり、自然と雑多な情報を認識してしまうため、余計なことに気を取られ注意力が散漫になりがちになります。
集中力を高める方法
ここぞというとき、パフォーマンスを発揮するためには集中力が必要不可欠です。集中力を高めるためには、普段から無理のない生活をすることが大切です。以下で、集中したいときにすぐできる効果的な方法と、普段の生活習慣の見直しで集中力をアップする方法をご紹介します。
今すぐ集中力を上げたいときに効果的な方法
作業中に眠気がおそってきたり、気が散ったりして集中できないとき、まずは脳に休息を与えることが大切です。速攻で集中力を高めたいときに使える4つの方法をご紹介します。
仮眠
体内時計のリズムは、就寝時刻からおよそ15時間後に眠気のピークがくるようになっています。日中12~16時ごろは眠気を感じやすく、集中しにくい時間帯です。15時までに15〜20分程度の適度な仮眠をとることで、眠気や脳の疲れを効率よく解消でき、集中力が回復、作業能率アップが期待できます。ただし、15時以降に仮眠をとると、体内時計のリズムが乱れ、夜の寝付きが悪くなりやすくなるので避けましょう。
ゆっくり深呼吸する
集中するためには、「力を入れる」よりも「力を抜く」ことが大切です。力を入れることによって興奮をつかさどる交感神経が過剰に刺激されると、気持ちが焦ったりイライラしたりするので、うまく集中することができません。力を抜いて、副交感神経を優位にすることで、集中しやすいコンディションに整えることができます。
副交感神経を優位に働かせるために、簡単にできる方法が「深呼吸」。息を吸う時間よりも吐く時間を長めにとることで身体の力が抜けて、副交感神経が活性化し、集中しやすくなります。2〜3秒かけて息を吸い、約5倍の10〜15秒かけて息を吐きましょう。自分で数を数えながら呼吸すると、雑念が入らなくなるのでより集中力が高まります。
タスクリストはひとつずつ作業に取り組む
人間の脳は本来、2つ以上の大事な作業を同時に処理することができず、マルチタスクには向いていません。そのため、資料を作りながらメールを確認するなど複数の仕事をこなしていると、どの作業に対しても意識が散漫になり、集中力を欠きます。そこで、複数の課題がある場合は、まず最優先のものをはっきりさせることから始めましょう。そのうえでタスクリストを作り、ひとつずつ片付ける意識で取り組みましょう。目の前の作業だけに意識を向けることで集中力が増し、能率も上がります。
「ホワイトノイズ」を活用する
作業中に耳に入ってくる音は、集中を阻害する要因のひとつ。しかし、「ホワイトノイズ」と呼ばれる雨や風、川のせせらぎなどの自然音は、脳にとって音が持つ意味を判別しづらいため、脳の不要な活動を防ぎ集中しやすくなります。
カフェなどで聞こえる人の話し声や歌詞のある音楽など、情報を持った雑音は集中を乱してしまいますが、ホワイトノイズを流しながら作業をすると、雑音を紛らわせ、集中をサポートしてくれます。商業施設などで流れるイージーリスニング系の音楽やクラシック音楽なども、ホワイトノイズと同様の働きがあるためおすすめです。
集中力を高めるための生活習慣
集中力を左右するのは脳の健康状態です。食事を抜くと脳の栄養が足りなくなりますし、睡眠不足では脳の疲労は回復せず、集中力はどんどん低下してしまいます。大切なのは日頃の生活習慣の見直しです。気をつけたいポイントを以下にまとめました。
毎日安定した睡眠時間を確保する
睡眠不足は集中力の低下を招き、作業効率を著しく低下させます。しっかりと睡眠時間を確保することが大切です。しかし、睡眠時間を長くとりすぎても、逆効果になる場合もあります。日中に頭がぼーっとして働かなくなり、夜の睡眠も浅くなって睡眠不足を招き、翌日の集中力を低下させることにつながります。重要なのは、「自分に最適な睡眠時間」を安定して確保すること。
朝食は抜かない
体内時計を調整する意味でも、朝食をとることは大切です。内臓など身体の細胞も体内時計を持っていて、光を浴びるだけでなく食事にも体内時計をリセットするはたらきがあります。一日のリズムをしっかり維持するためにも、スターターの役割を担う朝食は欠かせません。体内時計調整の役割だけでなく、朝食は腸を刺激するので、規則的な排便、便秘予防にも効果的です。食べ過ぎる必要はないので、少しでもとることに意味があります。
週に1度は軽い運動を行う
持続的な運動は、神経細胞の機能を活性化させる“脳由来神経栄養因子”の働きを強め、脳機能を高めたり、うつや不安を和らげたりする働きがあります。特に、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は、脳を活性化させるので、集中力アップにもつながります。汗をかく程度の軽い運動を習慣化し、平日は無理という人は週末に1度は運動を行うとより効果を実感できるでしょう。
【参照】
『精神科医が教える「集中力」のレッスン』西多昌規著(大和書房)
photo:Getty Images
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提供元:集中力が切れるのは「休め」のサイン!能率を高める5つの方法|フミナーズ