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2017.07.11

どんどん高度化?「働く母」が抱える"罪悪感"│共働きが当たり前になったからこその悩み


自分を責めてしまうワーキングマザーが増えています(写真:プラナ / PIXTA)

自分を責めてしまうワーキングマザーが増えています(写真:プラナ / PIXTA)

結婚・出産で大きく変化する女子の人生は、右にも左にも選択肢だらけ。20代はもちろん、30代になっても迷いは増すばかり。いったいどの道を選べば幸せに近づけるのか? 元リクルート“最強の母”堂薗稚子さんがお答えします。
※お悩み相談はこちらのアドレス(onnaーsodan@toyokeizai.co.jp)まで

【ご相談】

4月から復職したワーキングマザーです。子どもはなんとか保育園の1歳クラスに入園でき、夫も一緒に育児と仕事を両立しようと言ってくれています。復職してからは、子どもの発熱で保育園から頻繁に呼び出しがありますが、夫も対応してくれますし、遠方に住む実母が駆け付けてくれることもあります。職場では同僚もフォローしてくれて、「早く帰りなよ」「ここはやっておくよ」と温かい言葉をかけてくれるので、私はなんて恵まれているんだろうと心から感謝する日々です。

でも、やっぱりつらいです。仕事で職場に迷惑をかけてしまうことがありますし、産前と同じようには仕事にチャレンジできない歯がゆさもあり。かといって子どもにも十分手をかけているともいえません。「何をやっているんだろう」「なんのために必死に頑張ろうとしているんだろう」とときどき、ふいに涙があふれてきます。何もかも中途半端で、不器用な私のようなタイプは環境に恵まれていても、やっぱり両立は難しいのではないかと弱気な気持ちになっています。もう仕事は辞めたい……と考えてしまう私に、明日も頑張れるアドバイスをお願いします。

誰にだって新米の時期はある

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ぴかぴかのワーママ1年生ですね! ドキドキしながら復職した新しい仕事生活は思い描いていたようには、なかなかうまくいかないことが多いでしょう。毎日必死に時間をやり繰りして頑張れば頑張るほど、「こんな日々がずっと続くのか」と時にしゃがみ込んでしまいそうになる。育休生活が懐かしくなり、そのギャップに心身ともに疲れ果てて、仕事も会社も投げ出したくなってしまう。そして、そんな自分が嫌になってきて、自信がどんどんなくなっていく……。

あなたの気持ち、めちゃくちゃよくわかりますよ。多くのワーキングマザーが共感するのではないでしょうか。世の中、保活がうまくいかずに復職をあきらめた人がいたり、夫が妻が働くことに前向きでなく、何もかもを抱えてくたくたになっている人もいる。子どもに病気や障害があって苦しむ人、職場の理解があまりなくてストレスに苦しむ人、実家からのフォローが望めなくて日々の対応に悩む人……個々がそれぞれの事情を抱える中では、あなたは、あなたの言うとおり、きっととても恵まれた環境にいるのだと思います。

しかし、夫や職場、実家の協力など「全部そろっている」状態ならば、育児と仕事との両立に問題はなくまったく悩まずに済む、なんてことがあるわけありません。あなたは、自分が悩んでいることにさえ「罪悪感」を感じているような気がして、私はなんだかとても胸が痛くなりました。初めての両立生活なんですから、悩んでジタバタして当たり前です! 誰にだって新米の時期はあるのです。あなたの周囲の、仕事もプライベートもキラキラ輝いているように見える先輩女性たちだって、きっとそんな時期があったはず。みんな、一つひとつ、なんとか乗り越えてきたのでしょうし、おそらく今もなんらかの問題を必死に乗り越え中なのだと思いますよ。

バージョンアップした罪悪感

私の周囲にも、第1子の出産後で復職したばかりの女性が何人もいます。彼女たちと仕事をしたり話をしたりすると、「弱音を吐けない」と自分を追い込みすぎているのかなと、最近よく感じます。

近年はワーキングマザーが珍しくなくなってきて、すてきに両立しているように見える人たちがたくさんメディアなどで紹介されるようになりました。私たちワーキングマザーは新しい罪悪感を抱えることになったのかもしれません。「みんなちゃんとやっているのに、自分は……」という気持ち。

私がときどきお仕事をお願いする新米ワーキングマザーにも、いつも謝っている人がいて、「私のせいで予定が狂ってごめんなさい」「思ったように仕事が進められなくて申し訳ない」とすごく恐縮するのです。驚きながら、「そんなこと、よくあることだから大丈夫だよ」と言っても、「でも、〇〇さんは育児があってもしっかり仕事をやりきるのに」などと自分の未熟さを嘆くので、さらにびっくりしてしまいます。彼女はとてもすばらしい仕事をする人で、周囲の評価は産前も産後も変化がなく、気に病むようなトラブルも起こしてはいないのです。「ひとりで苦しむ必要ないのに!」と感じつつ、彼女の胸に響く言葉はかけてあげられませんでした。

「あの人に比べて苦労が少ないはずなのに、うまくいかない」「私は恵まれた環境にいるのに」と自分を責めてしまうまじめなワーキングマザーが増えているように感じます。以前は、かけられる時間が限られることから「家事や育児がちゃんとできていない」という罪悪感を抱えて、仕事か育児かの選択を迫られがちだったワーキングマザーたちが、昨今は「もっと両方うまくいくばずなのに」「私の頑張りが足りないのではないか」と、以前よりかなり“バージョンアップした罪悪感”を抱えるようになってきたように思えてならないのです。

CMとかドラマに出てくるような、かっこいい完璧なスーパー・ワーキング・マザーなんて、ほとんど実在しないと思いますが、私たちに新しいステレオタイプの母親像が植え付けられ始めているような気さえしてきます。事情はそれぞれで、正解の姿だってそれぞれのはずなんですけどね。

あなたの抱える悩ましさは、きっとバージョンアップしたほうの罪悪感からきているものではないでしょうか。「女性が働き続けること」がだんだんと当たり前になってくる中で、改めて「私はなんのために働くか」を考える必要が出てきたというか。そうやって腹がくくれたとしても、「なぜ私はこんなに頑張っているんだろう」と独り相撲のような気分になることは、誰にだってあるのです。なにもかも投げ出したくなることも仕事を辞めたくなることも、熱を出した子どものそばでPCを立ち上げる自分が情けなくなることも、制約のない誰かがうらやましく感じることも、職場のみんなに申し訳なさでいっぱいになることも、きっとほとんどのワーキングマザーにある感情です。それを感じることを「悪」だとか「未熟」だとか思ってしまったら、それはしんどくなるはずです。

復職したばかりとのことですから、まじめなあなたが「うまくいっている!」と思える日はまだまだずっと先かもしれません。今は肩の力を抜いて、「最初からうまくいくはずないか」と自分に言い聞かせましょう。

子どもの頃より大人になってからのほうが時間の流れが速く感じるように、また楽しい時間のほうがつらい時間より短く感じるように、ワーキングマザーとしての時間があっという間に過ぎていくことを感じられる日がきっとやってきます。将来の自分に笑い飛ばしてもらえるように、日記をつけてみてもすてきかもしれませんよ。

肩の力を抜いて一息つく

もう昔話だけれど、私が長女を出産して復職したとき、携帯電話に保育園の電話番号が表示される度に、泣きたくなったことを思い出します。そして、子どもの病院にいるのに、オフィスからの着信が山のようにあって、途方に暮れたことも。夫がどんなに一緒に育児に対峙してくれても「母親として失格なのかも」と自分を責める気持ちはなぜか起こってくるし、温かく見守ってくれる職場への後ろめたさや、仕事で配慮されるありがたさの反面にある悔しさや嫉妬、あきらめ感や、いろいろな感情が自分の中で折り合いがつかずに、ぐるぐる堂々巡りしてしまうこともたくさんあったものです。こういうときは、たとえば先輩たちからの言葉で、肩の力を抜いて一息つくことができたり、ものすごく楽になったこともありました。

すごく印象的だったのは、「ワーキングマザーは、『すみません』って言いすぎだと思う。『ありがとう』『助かります』と言い換えてみると、不思議と気持ちが楽になるよ」という言葉でした。

また、保育園へ入園したばかりで集団保育に慣れない頃、子どもの頻繁な発熱でため息をついているとき、「風邪の菌って300種類あるんだって。300回は呼び出されるってことね。でも300回以上は呼び出されないんじゃない?」と言われたときも、「へー、300も?」と驚きながらも、「発熱での呼び出しもいつまでも続くわけじゃない。子どもも今、新しい環境で頑張ってるんだな」と悲観的な気持ちから救われたように感じました。あなたの周りにもこんな言葉があふれているはず。受け止めることで少しでも気持ちが軽くなるといいなと思います。

毎日、一生懸命頑張るあなたが、今つらいのは仕方ないかもしれない。けれども、そんな一日一日の積み重ねがきっとあなたをそこから引っ張り出してくれます。経験者が言うんだから間違いない! 「罪悪感」をはね飛ばすのではなく、そんな自分を自分で感じられるようになれば、もうそこから突破する日は近いのかもしれませんよ。

堂薗 稚子 :ACT3代表取締役

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