2017.06.22
もしかして「うつ病」?寝ても寝ても眠い理由とは
日々の生活に追われ、心身の不調のサインを見逃していないでしょうか。「やる気が出ない」「眠れない日が続く」などの兆候を放っておくと、うつ病につながる可能性があります。今回はうつ病の原因と対策をご紹介します。
目次
ーうつ病とは
ーうつ病の原因
ーうつ病の症状
ーうつ病と睡眠の深い関係
ーうつ病予防のためのメンタルケア
うつ病とは
これまで楽しめていたことが、急につまらなく思えたり、理由もなく悲しくなったり、ちょっとした感情の変化のように思えることが、うつ病の兆候だといわれています。まずはうつ病について知り、症状に当てはまるものがないかどうかチェックしましょう。
うつ病は、「不眠や食欲不振などを含めた特定の症状が、2週間以上にわたりほぼ毎日続いている状態」と診断基準が決まっており、気分の落ち込みのほかにもいくつかの精神的・身体的な症状を伴います。(雨晴クリニック副院長:坪田聡先生)
うつ病には明確な診断基準があります。気持ちが落ち込む「抑うつ気分」のほかにも、興味や喜びがなくなったり、強い焦燥感に襲われたりすることもあります。当てはまる項目があり、不安な場合は早めに専門医を受診しましょう。
うつ病の原因
うつ病になる原因は、感情や意思を司る脳の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」の分泌異常だと考えられています。分泌に異常をきたすきっかけは「精神的・身体的・環境的」要因が多数を占めます。
うつ病の最も代表的な原因が、精神的なストレスによるものです。具体的には、主に下記の出来事がきっかけで発症する人が多いとされています。
<主な原因>
仕事や人間関係でのストレス、家族や親しい人との離別、仕事や財産の喪失、幼少期のつらい記憶、進学、就職、結婚、引っ越し、昇進など環境の変化(雨晴クリニック副院長:坪田聡先生)
ほかにも、慢性的疲労や、がん、感染症によるストレスなどの「身体的要因」、寒さなどの「環境要因」などさまざまな要因が重なることで、うつ病になってしまいます。
うつ病の症状
寝ても寝ても眠い
ストレスにより寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりして睡眠の質が下がると、睡眠不足の状態となり、日中眠くなる症状が出ます。睡眠時間を確保しているつもりでも、実は睡眠不足の状態になっている可能性があります。
過度のストレスがかかると夜寝つけなくなり、不眠症状に悩まされることがあります。さらに、その不眠症状自体が翌朝の疲労感や憂うつ感などの新たなストレスに繋がる悪循環にも陥ります。日中の眠気の改善には、ストレスを和らげる自分なりの発散方法を持っておくことが重要です。(雨晴クリニック副院長:坪田聡先生)
「寝ても寝ても眠い」と感じたら、自分自身の心身の状態を今一度見つめ直して、無理をしていないか確認してみてください。
やる気が出ない
心配ごとがあって眠れなかったり、深夜残業で睡眠不足が続いたりして心身の疲労が蓄積すると、やるべきことがあっても「やる気がでない」という状態になります。
私たちの脳では、様々な脳内物質が分泌されています。脳の神経伝達物質は、心に影響して喜びや不安などを感じさせたり、身体に影響してだるさをもたらしたりします。やる気が出なくなるのは、「セロトニン」や「ドーパミン」、「ノルアドレナリン」という神経伝達物質のバランスが乱れているからです。(雨晴クリニック副院長:坪田聡先生)
脳の神経伝達物質のバランスが乱れ、セロトニン不足になると、うつ病になり、喜びの喪失や悲壮感にかられるなど精神障害の症状が出てしまいます。
その他代表的な症状
上記の症状以外にも、「今まで楽しんでいた趣味などに興味がなくなる」「食欲が減る」など心身に変化があった場合、うつ病の可能性があります。
抑うつ気分
気持ちが落ち込み、理由もなく悲しくなったり、絶望的な気持ちになったりします。
興味または喜びがなくなる
これまで楽しめていたことに急に関心がなくなります。
食欲が減る、または増す
食欲が減り、それに伴い体重も減少するケースが多いといわれています。
強い焦燥感が増えたり、動きが鈍くなったりする
落ち着きがなくなり、イライラしやすくなります。逆に、反応や動作が鈍くなったりすることもあります。
自責感が増える
必要以上に罪悪感を覚えたり、「迷惑をかけてしまった」などと思い込み、自分を責めたりするようになります。
思考力や集中力が低下する
集中力と決断力の低下により仕事の効率が悪くなったり、ミスを繰り返したりするようになります。
死にたくなる
「自分には生きている価値がない」「死んでしまった方がいい」と考えるようになると、自殺の可能性があり、危険です。
うつ病と睡眠の深い関係
うつ病と睡眠には深い関係があります。うつ病になっている患者さんのほとんどが睡眠に問題を抱えており、そのうち8割が夜中に目が覚める「中途覚醒」や朝早くに目が覚める「早朝覚醒」、残り2割に日中に強い眠気を感じる「仮眠症状」が出ています。
うつと睡眠は、ニワトリと卵のような関係です。うつだから眠りが乱れ、眠りが乱れるからさらにうつ病が進行する、という悪循環を繰り返してしまいます。
(愛知医科大学 睡眠科 教授:塩見利明先生)
睡眠障害が原因でうつ病にならないようにするために、不眠の治療を優先するのも有効とされています。
うつ病予防のためのメンタルケア
早めに実践したい心のケア
不眠状態をはじめとする心身の変化に気づかず、思わず「消えたい」と思ったり、口に出したりする時は、かなりストレスがたまり、心が疲れてしまっている状態です。早めに心の疲れをとりましょう。
不安や緊張が強くなると呼吸が浅く、速くなる傾向があります。呼吸が浅くなると交感神経が優位になるので、ずっと身体が緊張している状態になってしまいます。そんなときは、意識して「深い呼吸」を心がけましょう。3秒かけてゆっくりと口から息を吐き出し、次に3秒数えながら、鼻から息を吸いこみます。これを5~10分程度くりかえしましょう。(精神科・心療内科:井上智介先生)
心の疲れをとるためには、まず睡眠の質を上げることが重要です。続いて、「自分をいたわる時間」を増やしましょう。
冬季うつ病とは
私たちのメンタルヘルスは天候や季節に影響を受けており、心の健康を左右する要因になっています。とくに、秋から冬にかけては、自覚症状がないまま気分の落ち込みや過食症状が出る「冬季うつ病」に注意が必要です。
この冬季うつの主な原因は、「冬の日照時間の短さ」と考えられています。通常入眠物質のメラトニンは、太陽光を浴びてから約14時間後に分泌がはじまり、私たちを眠りに導き、朝、目が覚める頃に止まります。(メンタルフードマイスター:飯田恵美子さん)
冬季うつ病の予防策は、積極的に太陽光を浴びることと、規則正しい生活や適度な運動、バランスのよい食事です。特にバナナや納豆をとりいれた朝食を摂ると、セロトニン不足を補えるので、睡眠の質の向上につながります。
まとめ
季節の変わり目に気分が憂うつになる、という人もいるかもしれません。詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、気圧や気温などがうつ病の原因になることもあります。気圧の低い日に体調が悪くなる、暑さ、寒さが苦手という人は、体調不良を予防するために事前に対策をたて、休息の時間をとるなどの準備をしましょう。
photo:Getty Images
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提供元:もしかして「うつ病」?寝ても寝ても眠い理由とは|Fuminners