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2019.09.27

笑いは長生きのヒケツ?


久しぶりの友人たちとの再会。懐かしい思い出話や失敗談、今だから言えるあんなことやこんなこと…。時が経つのも忘れて、おしゃべりが続きます。気のおけない仲間が集まれば必ず起きるのが“笑い”。「わははぁーっ!」と笑い合えば、おなかの底の重石が取れて、体がスッと軽くなったような、スッキリ爽快な気分になりますね。

最近では、笑いを健康法に取り入れる人たちもいるそうです。ちょっと知られているのが“笑いヨガ”。本場インドから日本にやってきて、じわりじわりと広がっているとか。インストラクターの指示に従いながら、老若男女が歩き回り、お互いの顔を見たり、ハイタッチをしたりしながら「うわはははは!」「ふふふふふ」「がーっはっはっ!」「うへへへへ~」と、声を出して笑い合うこと十数分。終わった後は身も心もほぐれ、見知らぬ人同士で始めたのに、自然と会話が弾み、心の距離も近づくようです。

笑いの健康効果:どこまで科学的に解明?

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笑いの健康効果は、医学や生理学の領域でずいぶん前から研究されています。初期の研究は、数人の被検者を使って、笑う前に比べて笑った後では血液中の免疫細胞が活性化されたとか、ストレスホルモンが減ったといったことを検証する、いわば笑いの医学実験が多かったようです。でも、本当に健康によいかどうかは、血液検査の値だけでは不十分。本当に長生きしたり、病気になりにくかったりするかを追跡調査する必要があります。

たとえば、普段からよく笑うグループとあまり笑わないグループとを年余にわたり追跡します。そして、どちらが長生きするか、あるいは病気になりにくいかを検証するのです。しかも、世の中にはさまざまなタイプの人たちがいますので、数人、数十人というオーダーではなく、数千、数万の人々を追跡する必要があります。

 筆者らは、日本全国の10万人以上の高齢者へ、生活や健康の状況を伺うアンケートを送り、追跡調査をしています。その中に、笑いに関する設問も加えました。アンケートからわかったのは、どうやら普段から笑う機会が多い人たちは、そうでない人たちに比べて「自分は健康だ」と思う人の割合が多く、また、心臓病や脳卒中の人が少ない、という結果でした[1][2]。また、一人で(テレビや雑誌などを見ながら)笑う場合と、人と一緒に(家族や友人と過ごすときに)笑う場合とでは、後者の方が健康度とより強く関連する可能性も示されました。

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ただし、これらはいずれも、笑いと健康状態を同じアンケートの中で聞いているため、相関関係を示したにすぎません。つまり、たくさん笑うから健康なのか、健康だから笑いが多くなるのかは区別できません。それでも、笑いが健康と強く関連しそうであることがわかったのは興味深いですね。

なぜ健康によい?笑いの健康効果のメカニズム

笑いが健康によい理由は二つあるといわれています。一つ目は、笑いが運動になること、もう一つはストレス発散になることです。おなかが痛くなるほど“爆笑”すれば結構な運動になりそうですし、ストレスも飛んでいきそうです。筆者はさらにもう一つ、笑いが人との交流を促すことも重要と思っています。笑いは、社交的な環境でよく起きることが知られています。笑いは人との距離をぐっと縮め、信頼できる関係づくりにもつながりそうです。さまざまな人とたくさんの円満な関係をつくれば、日々の生活が豊になり、つながりがいざというときの助けにもなることでしょう。実際、孤立がたばこに匹敵するほど不健康な状態であることが知られています[3]。

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どんな人がよく笑うのか…笑いにも社会格差が!?

普段からよく笑う人はどんな特徴を持っているのでしょう?まず、高齢になるほど、笑う回数が減ることが知られています。そういえば、子どもはよく笑いますね。一日中笑わない幼な子がいたら、むしろ何かあったのではないかと心配になるくらいです。だんだん分別が付いてくると、単純に笑わなくなったりします。年を重ね、自分や家族、周囲のさまざまな人々の人生を背負い込むようになると、笑ってばかりもいられなくなります。自分の健康のこと、行く末のことなど、心配事も多くなります。何歳になっても1日1回くらいは「わはははっ!」と自然と笑い声を発する機会があるような生活をしたいものです。

そして、どうやら、笑いにも“格差”があることもわかってきました。ストレスの多い生活は、笑いが少なくなりがち。収入が乏しいなど、経済的な不安があると笑いも起きにくそうです。私たちの調査によると、世帯の所得が下位25%の範囲の人では、上位25%の人に比べて2割ほど、“ほぼ毎日笑う”人が少ないことがわかりました[4]。

笑う機会をつくるには…人と会うことが大切

笑いが本当に長生きや病気をしない体づくりに役立つかを明らかにするには、今後も追跡調査をしていく必要があります。とはいえ、笑うのは健康によくないということを示した研究結果は見たことはありません。どの程度の健康効果があるかはまだわかりませんが、笑う機会を積極的につくるのは多かれ少なかれ健康によいといえるでしょう。

 では、日々の生活の中で、笑いが起きるような機会をどのように増やしていくとよいでしょうか。家で気軽にできることとして、落語や漫才のDVD、テレビのお笑い番組を見るのもよいかもしれません。でも、筆者のおすすめは“出かけること”、“人に会うこと”です。気のおけない人たちに会うでもよし、新たな出会いを求めるもよし。人に会えば、自然と笑いが起こるのが人間です。前述のように、人と一緒に笑うほうが健康との関連が強いというデータもありますし。

人との交流が多いほど、笑いが多いこともわかってきています。東日本大震災の翌年に、福島県内の住民に行ったアンケート調査から、ほぼ毎日笑う人は、震災後に同居家族が増えた人に多く、震災後に引っ越し回数が多かった人では少ない、ということが報告されています。家族と過ごすことが笑いにつながる一方、引っ越して顔見知りがいなくなることが、笑いの機会の減少にも関係している可能性があります[5]。

笑い療法に期待

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笑いには、病者を癒す効果も期待されています。笑いを病気の予防や治療に取り入れている事例は世界中に見られ、科学的な効果検証もされています。国内でも、“笑い療法”といった言葉で実践されているようです。世界中の笑い療法の効果に関する研究を整理した結果では、笑いはうつ病を予防・改善する可能性があることがわかっています[6]。国内の研究でも、笑いとエクササイズを組み合せた週1回の活動に参加した人は、骨密度や血糖値、健康度の自己評価が改善する可能性が報告されています[7]。

文献
1. Hayashi K, et al.: J Epidemiol. 2016; 26(10): 546-52.
2. Hayashi K, et al.: J Nerv Ment Dis. 2015; 203(12): 934-942.
3. Holt-Lunstad J, et al.: PLoS Med. 2010; 7(7): e1000316.
4. Imai Y, et al.: BMJ Open. 2018; 8(7): e019104.
5. Hirosaki M, et al.: Qual Life Res. 2018; 27(3): 639-50.
6. van der Wal CN, Kok RN.: Soc Sci Med. 2019; 232: 473-88.
7. Hirosaki M, et al.: Geriatr Gerontol Int. 2013; 13(1): 152-60.

著者:近藤 尚己

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東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学分野/健康教育・社会学分野 准教授、医師・博士(医学)
2000年山梨医科大学医学部医学科卒業。卒後医師臨床研修後、山梨医科大学助教・同講師・ハーバード大学フェローなどを経て、現職。社会と健康との関係を統計的に解明する研究を進めている。
<近著>
「健康格差対策の進め方:効果をもたらす5つの視点」(医学書院)、「社会疫学<上・下>(監訳)大修館、「社会と健康:健康格差解消のための統合科学的アプローチ」(東大出版会)(共同編著)Global Perspectives on Social Capital and Health (邦訳:ソーシャル・キャピタルと健康政策:地域で活用するために)など。

記事提供:リンクアンドコミュニケーション

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