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2019.05.09

勝つために厳しくは必ずしも結果に直結しない |ペップトークの活用でチームは劇的に変わる


「ペップトーク」をご存じでしょうか?(写真:kanetaku/PIXTA)

「ペップトーク」をご存じでしょうか?(写真:kanetaku/PIXTA)

「ペップトーク」をご存じでしょうか? プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手を大躍進させた元コーチのサーシャ・バイン氏が使っていたことで日本でも徐々に知名度が上がってきているようです。

もともとスポーツ大国アメリカで試合前のロッカールームで監督やコーチが選手を前向きな言葉で励まし、心に火をつけるために行う激励のショートスピーチとして誕生しました。ペップトークはどのような効果があり、どうしたらできるようになるのでしょうか。また、部活や会社、地域のスポーツチームなどで応用することはできるのでしょうか。『実践!ペップトーク』から一部抜粋し再構成のうえお届けします。

『実践!ペップトーク』 ※外部サイトに遷移します

ちゃんと捕れよ!エラーすんじゃねー!

2018年のある日、東京・品川にある創部50年を迎える少年野球クラブチーム「旗の台クラブ」は、小学3年生以下の関東124チームが参加する「荒川竹の子育成大会」の決勝戦の舞台に立っていました。

しかし、その4カ月前までは、このチームが決勝戦を戦っていることを想像した監督・コーチ、保護者、子どもたちは誰一人いませんでした。

4カ月前のチームの練習試合の状況は、子どもたち同士が「ちゃんと捕れよ!」「エラーすんじゃねーよ!」と責任を押し付け合ってケンカをしていました。ミスした選手には、コーチが「何やってんだ!」と責め、やる気の見えない子どもに監督は「やる気がないなら帰れ!」と途中交代させていました。

実際に、多くの少年野球チームが、このような状況だと聞きます。できなければ子どもを叱りつけ、やる気のない子どもには余計やる気をなくす言葉を投げかける……。勝つためには厳しく接する。これは多くのスポーツチームにもいえることかもしれません。

旗の台クラブの大矢敦監督は、「指導者が勝利にこだわっているだけで、勝利によって子どもたちが本当に楽しいと感じているのか? 子どもたちに野球を楽しんでもらうために指導者は何をするべきか?」と悩んでいました。

そんなとき、筆者が小学校のPTAに「ペップトーク」の講演会をしたことがきっかけで、この少年野球チームと関わることになったのです。私は監督・コーチと話し合い、ネガティブな言葉を使わずにポジティブな言葉に変えるよう伝えました。

以前なら「何やってるんだ! ミスするなよ!」「なんでそんなボール球を振るんだ!」「ボーッとするな!」と言っていたのを、「大丈夫、次はいけるぞ!」「真ん中のベルト付近にきた球を思いっきり振ろう!」「集中していこう!」と明るい表情で言うように変えていきました。

すると、それまで監督・コーチの顔色をうかがいながらプレーしていた子どもたちも変わっていきました。攻撃前の円陣では「最高! 最幸!! さぁ~いこう!!!」という合言葉もつくり、チームの一体感も生まれました。そして、それまでケンカしていた子どもたちも、仲間のプレーを褒め合い、ピンチのときは声をかけ合って困難を乗り越えるようになっていったのです。

そこから旗の台クラブの快進撃が始まりました。そして、試合を勝つごとに応援していた保護者も本気になっていったのです。

そして迎えた決勝戦。相手チームは現役プロ野球選手の息子さんがピッチャーという強豪チーム。試合は逆転、再逆転のシーソーゲームで延長戦に。延長表の回に相手チームが2点を入れ、リードされたその裏。ベンチは負けている雰囲気はありません。

「野球を楽しもう!」「いける! いける!」「打てる! 打てる!」とベンチや声援を送るお父さん、お母さんの言葉が選手の背中を押し、なんとサヨナラゲームで優勝を果たしました。大矢監督が実践していたのは、まさにペップトークだったのです。

ペップトークはアメリカで生まれた

ペップトークとは、1900年初めごろに「相手のやる気を引き出す言葉がけ」「相手を励ます言葉がけ」として、アメリカで生まれた話術です。

当時のアメリカのスポーツ界では、勝つためには何でもありという無法状態にあり、それを変えるために「下品な言葉遣いを禁止」したことから、ポジティブな言葉でチームを鼓舞する言葉がけとしてペップトークが誕生しました。

ペップ(PEP)とは「元気、活気」という意味で、試合前に緊張している選手たちの緊張感を解き、それをやる気に変える言葉がけとして、現在ではスポーツに限らず、ビジネスでも仲間内のプライベートでも家族同士でも、アメリカでは普通にペップトークが使われています。

特にペップトークが使われたのはアメリカンフットボールで、試合前のロッカールームでヘッドコーチが緊張する選手に対して、やる気を引き出し、チームを鼓舞するための短いスピーチでした。

実際に1980年のレイクプラシッド冬季オリンピックでのペップトークが有名です。当時、無敵といわれた旧ソ連アイスホッケーチームに、学生編成チームで臨んだアメリカ代表チームは、ハーブ・ブルックス監督が放ったペップトークで、選手はやる気に震え、勝利したという映画にもなった話があります。

このように、アメリカでは普通に親しまれているペップトークですが、そもそもペップトークとは何なのでしょうか? 冒頭にお話しした「旗の台クラブ」の監督も、決勝戦の試合前のベンチで子どもたちにこう伝えました。

「さぁ、きたぞ、決勝戦。本気でやればできるということがわかったはずだ。今日の相手も最高のチームだ。しかし、勝つのは旗の台クラブに決まっている。みんなで新たな歴史をつくろう。それが今日だ。さあ、始まるぞ。思いっきり野球を楽しんでこい。チームの合言葉、いくぞ!(円陣を組んで)最高! 最幸!! さぁ~いこう!!!」

4つの骨組みからなる

こうした短いスピーチがペップトークです。ペップトークの構造は、4つの部分(骨組み)から成り立っています。

【1】 受容(事実の受け入れ)

「さぁ、きたぞ、決勝戦。本気でやればできるということがわかったはずだ。今日の相手も最高のチームだ」

【2】承認(捉え方変換)

「しかし、勝つのは旗の台クラブに決まっている。みんなで新たな歴史をつくろう。それが今日だ」

【3】行動(してほしい変換)

「さあ、始まるぞ。思いっきり野球を楽しんでこい」

【4】 激励(背中の一押し)

「チームの合言葉、いくぞ! 最高! 最幸!! さぁ~いこう!!!」

【1】の受容とは、今置かれている事実を受け入れてもらうことで、不安や緊張といったマイナスの感情をゼロに持っていきます。【2】の承認とは、事実の捉え方をポジティブに変換し、感情をプラスに持っていきます。【3】の行動とは、【2】で変換した捉え方を、どう行動に移せばいいかを示します。そして、最後の【4】の激励で、その人の背中を押して本番に送り出すのです。

これがペップトークの基本的な構造です。この順番で相手に話をすれば、相手は100%の力を発揮し、100%の結果を引き出すのです。

相手を励まし、やる気と結果を引き出すペップトークですが、リーダーがいきなりペップトークをしても効果はほとんどありません。なぜならば、ペップトークは「何を言うか」「どう言うか」よりも前に、「誰が言うか」が大事になってくるからです。

普段から厳しい上司や、逆に何も言わない上司が「大丈夫、君ならできる!」といきなり言っても、相手がその気になるはずがありません。つまり、自分自身が変わらなければ、相手にその思いは伝わらないということです。

そのためには、日頃から「何を言うか」「どう言うか」を練習しておくとともに、自分自身に投げかける言葉もポジティブに変えていかなければなりません。これを「セルフペップトーク」と呼びますが、セルフペップトークは自分自身を励ましやる気にさせる言葉がけです。

例えば、仕事から家に帰ったときに「今日も最高の仕事ができた!」、苦手な仕事が回ってきたときに「自分の幅が広がるぞ!」、大事なプレゼンの際には「できる! できる! 絶対できる!」と、自分自身にペップトークを投げかけます。

そうすると、自己承認欲求が高まり、先ほどのペップトークの構造で説明した、相手への「受容と承認」の訓練へとつながっていくのです。

自己受容とは、自分で自分の状態を受け入れて受容することであり、自己承認とは、自分にあるものを認め承認していくことです。この自己受容と自己承認のプロセスをパワフルに進めていくことで、相手に対する受容と承認もできるようになるのです。

「ポジティ語変換」をする

そして、この受容と承認に「何を言うか」「どう言うか」を考えることが、「ポジティ語変換」というものです。ポジティ語変換は、ネガティブな言葉や思い込みの言葉を、その見方、捉え方によってプラスに変換し、どうしてほしいかを言葉にしていく練習です。

ポジティ語変換には「捉え方変換」と「してほしい変換」があり、捉え方変換は【1】の受容、してほしい変換は【2】の承認や【3】の行動への言葉につながっていきます。

例えば、「リーダーシップがない」→「協調性がある、縁の下の力持ち」、「ミスが多い」→「伸びしろがある」、「単純作業はつまらない」→「どうやったら早く終わるか工夫しよう」と、捉え方変換をします。

「何度も同じことを言わせるな」→「どうやったら改善できるか考えてみよう」、「言い訳ばかりするな」→「正直に報告して」と、してほしい変換をします。

こうした練習により、自分自身に対しても相手に対しても、日頃からペップな言葉が生まれていきます。繰り返し練習し、日常でも使っていくと、相手も「この人が言う言葉だから頑張れる」と変化していき、実際にペップトークを投げかけると100%の結果を引き出せるようになるのです。

こうしたリーダーを「ペップトーカー」と言います。あなたもペップトーカーになって、周りに影響力を与える人になれるのです。

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最後に、あなたへのペップトークを送ります。

「あなたは日々、頑張っている。時には不安になったり、自信をなくしたり、落ち込むこともあるだろう。でもそれは、よりよい人生にしたい、家族や仲間に貢献したい、もっといいチームをつくりたいと思ってチャレンジしているからだ。

今日、これを読んだのは運命だ。このチャンスをものにするんだ。そして、今日から自分の言葉と向き合おう。今日という日は残りの人生の最初の日だ。始めるのは今日からだ。あなたなら、できる! さぁ~、いこう!!」

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提供元:勝つために厳しくは必ずしも結果に直結しない |東洋経済オンライン

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