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2019.03.29

実録!がん経験者が語る「お金」のコト ~40代、仕事を続けながらがん治療を続けたA子さんの場合~


テレビなどでも多く取り上げられる「がん」。特に乳がんは、日本人女性の約11人に1人が生涯のうちに罹患するといわれるなど、女性がなるがんで最も高い発症率となっています(※)。

(※)出典:国立がん研究センター「がん情報サービス」最新がん統計「がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2014年データに基づく)」 ※外部サイトに遷移します

そんな「がん」になって一番の不安は病気を克服できるかということですが、次に心配になるのはやはり金銭面の負担なのではないでしょうか?「わたしはがんになったら治療費が払えるかしら?」と、漠然とそんな不安を持つ人も少なくないはず。
がん治療にはお金がかかるとよく耳にしますが、実際にどんな費用がどれだけ必要になるかは、具体的にはわからないもの。

そこで今回は、40代で乳がんを発症・手術をして、現在も通院治療を行っているA子さんを例に、どんなことか大変だったのか、また実際にかかった費用などについて具体的にご紹介します。

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入院治療にかかった費用は1年間でなんと70万円!

皆さんもご存じの通り、日本は公的医療保険が充実しているため、通院や入院で医療費がかかった場合、本人が会計窓口で支払う金額は3割で済みます(小学校入学から69歳まで)。

万一、高額な治療費がかかった場合も、70歳未満の給与所得者であれば自己負担の上限額は月約8万円程度(会社員で標準報酬月額28~50万円の場合)に収まることを知っていますか?これは健康保険の「高額療養費制度」というもので、1カ月の医療費負担額には上限が設けられています。たとえ入院中にかかったその月の医療費が100万円だったとしても、約8万円で済むわけです。わたしたちにとってとてもありがたい制度ですよね。

このありがたい制度があっても、たとえば長期の入院で治療費がたくさんかかってしまったり、差額ベッド代(希望して個室や少人数部屋に入院した場合にかかる費用で。高額療養費制度は適用外)など治療費以外にもかかるお金が発生したりすると月約8万円では済まず、負担が大きくなることも十分に考えられます。
とはいうものの、では一体どれくらいのお金があればいいのか?想像しにくいですよね。

そこで、実際にがんの治療にはどれぐらいのお金がかかるのか、乳がんになったA子さんの例で紹介していきましょう。

A子さんは当時41歳、夫と2人暮らし、共働きの家庭(DINKS)です。A子さんの乳がんが判明したのは、婦人科検診でのこと。親戚で何人かが乳がんになったため、「念のために検査しておこう」と、軽い気持ちで検診を受けました。ところがその結果、ステージⅡA(リンパ節転移あり)の「乳がん」と告知されてしまいます。

告知を受けたことの精神的なショックはもちろんありましたが、同時に心配だったのは、治療費など金銭面のことだったと言います。また、A子さんは会社では責任のある立場を任されていたため、入院で会社を休まなければならないことで迷惑をかけてしまうことにも、後ろめたさを感じていました。

そんな不安を抱える中、手術前に4回の検査を経て、A子さんは手術入院しました。入院時には、他の患者さんと接することでのストレスを感じたくないという理由で個室を希望。そのため10日間の入院に対して、差額ベッド代が治療費とは別に約22万円かかりました。

入院前の手術前検査に4万円、手術入院費は差額ベッド代を含めて27万8000円、退院後にも通院治療費などがかかり、1年間の入院治療にかかわる費用は総額約70万円にもなったのです。

他の病気とは異なり、再発予防のための治療費がかかる

A子さんは、片方の乳房を全摘出することでがんを摘出することができました。一般の病気なら、それで治療は終了のことが多いですが、がんの最大のポイントは、手術治療が無事に終わった後も、5~10年間は転移と再発の可能性が残るということです。そのため、がんの摘出をした後も、薬物療法などによる再発予防治療を行い、その後、定期な検査のため通院するのが一般的。5年程度は通院して投薬を受けるというケースも多くなります。

A子さんの場合、手術入院の期間は10日ほどでした。退院後の通院治療のほうが大変で、3週間に1回の抗がん剤治療、放射線治療などで、通院での治療が約8カ月間も続くことになりました。A子さんは現在、抗がん剤治療、放射線治療の通院治療は終了し、薬によるホルモン療法に加え、半年に1回ずつ乳腺科と婦人科への通院を続けています。これは、再発・転移を予防するために欠かせない治療で、医師からは術後5~10年続くと言われているそうです。

このように、がんの場合は手術後も、長期の通院治療が続き、それにかかる治療費が高額になることを考えておく必要があるといえます。
A子さんは実際に、退院後の通院治療費は約39万円と、差額ベッド代を含めた手術入院費の約28万円を超える費用がかかりました。

治療費以外にかかるさまざまな出費にも注意!

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さらに、あまり考えたことがないかもしれませんが、治療費以外の費用についてどんな費用が必要なのか、A子さんのケースでイメージしておくと良いかもしれません。

A子さんは特に仕事と通院の両立が大変で、入院前の通院はタクシーなどを多用して乗り切りました。手術後も職場にすぐ復帰しましたが、抗がん剤治療が始まると、投薬後は体調がすぐれなくなることもあり、結果的に会社を8カ月間休職しました。それでも、抗がん剤治療や放射線治療時は、とても電車に乗って帰れる状況ではないため、タクシーで帰ることも多く、それらの交通費が積もって約5万円の出費になってしまったと話します。
そのほかにも、サプリメントやウィッグなどの費用がかかり、治療以外の費用負担は、1年間合計で約30万円となってしまいました。

会社員が病気やけがで働けない状態になると、健康保険から標準報酬月額の3分の2の「傷病手当金」が、最長1年6カ月支給されます。もちろん、A子さんも休職中は傷病手当金の支給を受けていましたが、それでも大幅な収入減とこのような思わぬ出費が重なり、貯蓄の切り崩しが必要になったそうです。

おわりに

今回はA子さんのケースでご紹介しましたが、同じ乳がんになった場合でも、かかる費用は個々の状況に応じて変わってきます。

がんの場合、入院手術費だけではなく、再発予防の通院治療費や、治療費以外にかかる費用も意外と多く、公的保障や通常の医療保険だけでは費用が不足する可能性も高くなります。

もしものがんに備えるためには、こうした治療費以外にもお金がかかることを想定しながら、貯蓄でカバーするのか、それ以外の対策を講じるのかなどを、事前に考えておきたいものです。

取材協力・監修

すわやまクリニック院長 田島厳吾(たじまげんご)
慶應義塾大学医学部卒業後、国立がんセンター勤務等を経て、目黒区ですわやまクリニックを開院。とくに乳腺外科に力を入れており、新聞等への執筆、漫画への監修を務めるなど、乳がんへの関心を高める活動を行う。自身のクリニックで地域医療に貢献する傍ら、乳がんなどの手術も行っている。

執筆者プロフィール

酒井富士子(さかいふじこ)
経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。 日経ホーム出版社(現日経BP社)入社後、「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。その後リクルートに入社。「あるじゃん」「赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に「60代の得する『働き方』ガイド」(近代セールス社)などがある。

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